3社が統合し総合ファームに
コンサルティング業界が再編成、新生PwCの狙いは
2009/12/07
PR
IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)の日本企業適用を前に、日本のコンサルティングファームが新しい競争に入りつつある。
PwC アドバイザリーとプライスウォーターハウスクーパース コンサルタント(旧ベリングポイント)、プライスウォーターハウスクーパース HRSの3社は2010年1月1日に経営統合し、社名を「プライスウォーターハウスクーパース株式会社」に変更すると12月3日に発表した。PwC アドバイザリーはM&Aや事業再生を担い、PwC コンサルタントは経営戦略の立案からITシステム導入までのコンサルティング業務を担当。PwC HRSは組織・人事関係のコンサルティングを提供してきた。
3社は統合で国内約1600人の人員を抱え、規模では国内有数のコンサルティングファームとなる。監査法人である、あらた監査法人や、税理士法人プライスウォーターハウスクーパースとも協力し、顧客に総合的なサービスを提供する。
12月3日に会見した新生プライスウォーターハウスクーパースの代表取締役社長 内田士郎氏は日本のコンサルティング業界の流れを振り返り、新生PwCを「時代の要請だ」と説明した。同氏によると、1990年代はビジネスコンサルティングとアドバイザリー、テクノロジソリューションが個別に提供されてきた時代。2000年代はビジネスコンサルティングとテクノロジソリューションが融合し、コンサルティングファームやシステムインテグレータ(SIer)から提供されることが多かった。
しかし、2010年以降は、「複合サービス案件の実行力」「クロスボーダー案件の実行力」「世界で通用する能力」の3つが必要と指摘。「ビジネスコンサルティングとディール、ITの機能を統合するPwCは時代の要請にあっている」と説明した。
確かにビジネスコンサルティングとITソリューションの提供は多くのコンサルティングファームやSIerが行っているが、加えてM&Aの支援やコーポレートファイナンス、事業再生などを手掛けるディールアドバイザリー部門を抱えるコンサルティングファーム、SIerは多くない。内田氏は新生PwCのライバルとしてアクセンチュアやIBM、そして監査法人系のグループを挙げた。ただ、アクセンチュアやIBMは「メンテナンスやアウトソーシングが主体」(内田氏)といい、新生PwCが狙う「顧客の中に入り込んで一緒に経営課題を解決する」というスタイルとは異なるとの認識だ。
監査法人系のグループはディールアドバイザリーでぶつかる相手といえる。あらた監査法人以外の大手監査法人(新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツ、あずさ監査法人)はいずれもグループ内にコンサルティングファームやディールアドバイザリーのファームを抱える。監査報酬の伸びが期待できない中で、各グループともコンサルティングやディールアドバイザリーの業務に力を入れたいところだ。あらた監査法人は「4大監査法人の中で一番小さい」(内田氏)といえ、監査対象企業数は多くない。結果としてコンサルティングサービスの新規顧客を開拓しやすいことも(皮肉なようだが)メリットといえる。
ただ、国内は市場の低迷もあり、M&Aや事業再生は減少。「2006年をピークにディール件数は減っている」(新生PwCの代表取締役副社長 三橋優隆氏)。そのため、新生PwCは顧客数を広げるのではなく、少数の企業に深く入り込み、確実に利益を上げる戦略を採る。内田氏によると新生PwCの顧客数は約150社。そしてそのうち50社で全体の売り上げの8割を占めているという。経営課題が起きてから対応をするのではなく、「すべてのビジネスサイクルに応じてサポートするデマンド−プル型のサービスを提供する」。新生PwCは上位50社に集中することで、今後3年間に年率15%の成長を目指す。陣容も1600人から2500人に増やし、ほかのコンサルティングファームと差別化する考えだ。
関連記事
情報をお寄せください: