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金融庁「公認会計士制度に関する懇談会」

注目集める公認会計士制度の新試験案、議論の収れんは

2010/01/20

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 公認会計士制度に新試験か――公認会計士制度の見直しを議論している金融庁の「公認会計士制度に関する懇談会」の2回目が1月20日に開催された。初回同様にさまざまな立場のメンバーがそれぞれの思惑で発言し、議論の収れんはまだ見えない。ただ、現行試験制度のままでいいとは、懇談会のどのメンバーも思っていないのは確かだ。新試験のアドプションはあるのだろうか(第1回についての記事:会議は踊る――会計士試験見直しで議論百出)。

 懇談会の第2回では公認会計士試験の受験指導を行っている立志舎、TAC、東京CPA会計学院の代表らが参加し、それぞれ意見を述べた。その中で、TACの取締役 福岡広信氏の意見が注目を集めた。TACは2010年1月に公認会計士試験の受験予定者に対してアンケートを実施した。その結果によると、試験合格後の希望就職(転職)先について「監査法人のみを希望」は38%。対して「監査法人を中心に、一般企業や金融機関等も二次的に検討」が49%でトップだった。「監査法人と一般企業等を同等に検討」(9%)などを合わせると回答の半数以上が「一般企業も検討する」だった。

jicpa01.jpg 議論が続く「公認会計士制度に関する懇談会」

 では、「監査法人のみを希望」「監査法人を中心に、一般企業や金融機関等も二次的に検討」と答えた受験予定者は、なぜ監査法人のみを希望するのか。最多の回答(複数回答)は「会計士の独占的業務である監査に従事し、資格の価値を生かしたいから」(30%)だったが、「監査法人以外に就職すると補習所に通いづらいから」(20%)、「監査法人以外に就職すると公認会計士としての登録が難しいから(実務要件面)」(20%)も大きな割合を占めた。現行公認会計士試験の合格者は監査法人に就職し、業務補助を行いながら、実務補習を受け、最終的な修了考査に備えるケースが一般的だ。一般企業でも実務従事を行うことで修了考査を受けられるが、その実務従事と認められるのは資本金5億円以上の企業で働いた場合だ。平日の夜間に行われる実務補習所への通学が一般企業では難しいとの声もある。

 福岡氏はこれらの結果から「受験予定者は監査法人にこだわるわけではない。条件が整えば企業も検討する。だが、公認会計士資格の取得にはこだわる」と指摘した。実際、同じアンケートでは、補習所や実務要件の制約がない場合に、監査法人以外への就職も検討するかどうかも聞いた。回答者の63%は「業務内容や収入によっては検討する」と答えた。「検討しない(監査法人にこだわる)」は18%だった。

 福岡氏はこれらの分析を踏まえて、新しい試験資格制度を提案した。案では現行と同様に、短答式試験と論文式試験を課すものの、その後に口述(面接)試験を行う。この口述(面接)試験では職業倫理や専門科目、経済一般などについて試験し、一般企業で求められるコミュニケーション能力などを測る。口述(面接)試験の合格者には、現行の「公認会計士試験合格者」ではなく、「会計士補」「会計士」「准会計士」などの称号を与える。高度な監査能力の取得を求めない受験者はこれらの称号を手に、一般企業などに就職することになる。企業側にとっても合格者のコミュニケーション能力や経済知識が担保されることで採用しやすくなるとみている。

 「会計士補」「会計士」「准会計士」のうちで監査能力の取得を目指す者は、上位の「公認会計士」取得を目指す。TAC案では資本金5億円以上という実務従事の条件を緩和し、ベンチャー企業などでも実務経験を積めるようにする。また、実務補習所での学習についても簡素化し、社会人が通いやすくする。修了考査をパスすれば「公認会計士」を名乗ることができる。会計士の教育については、会計専門職大学院とも連携し、資格取得後の継続教育(CPE)に重心を移す。

 懇談会メンバーの野村総合研究所 研究創発センター 主席研究員の大崎貞和氏は「企業が求める人材とのギャップを埋める」とTAC案を評価。TAC案で得られる「公認会計士」資格を「監査会計士」とすることも提案した。全国銀行協会 企画委員長の小山田隆氏は「TAC案も1つの参考になる」と話し、「試験制度にフレキシビリティをもう少し与えて、1つクリアしたところで何らかの肩書きを付ける。それをインセンティブに会計知識を蓄えて会社で役立てていく。そういう回転を作っていくことで、監査法人とも回転ドアのように人材の流動化も進むのではないか」と提案した。

 第2回懇談会では公認会計士試験の受験資格要件の引き上げ(現在は資格要件なし、を大学卒業などにする)をめぐって激論が繰り広げられた。金融庁の大臣政務官 田村謙治氏からは「中長期的には公認会計士と税理士との関係も見直すべき」との意見も出た。TAC案も検討案の1つであり、まだ結論を予測するのは早いようだ。そもそもメンバーの中で会計監査や公認会計士制度についての前提知識が共有されていないとの指摘もある。懇談会の座長である金融庁 副大臣の大塚耕平氏は「全員が賛成する案をまとめるのは難しいが、収れんはできる」と今後への期待を示した。2月中に開催される第3回懇談会でも関係者を呼び、意見を聞く予定だ。懇談会では6月にも結論を出すことを想定している。

 

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(IFRSフォーラム 垣内郁栄)

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