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異論もあり、まだ不透明

合格者に順位付け――新公認会計士資格制度の事務局案公表

2010/06/07

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 金融庁の公認会計士制度に関する懇談会は6月7日に第7回の会合を開催し、公認会計士資格制度改正の事務局案を公表した。公認会計士になるまでの課程を多段階にし、途中段階の合格者にも資格を与える。ほぼ旧制度の「会計士補」の復活だが、合格者に順位付けを行い、加えて実務経験を早い段階で求めることで、受験者が早期に就職するような資格にする。これによって問題化している公認会計士試験合格者の就職難の解消を目指す。事務局はこの案を報告書のベースにしたい考えだが、委員の間で依然として異論があり、調整が続くようだ。

第1回:会議は踊る――会計士試験見直しで議論百出

第2回:注目集める公認会計士制度の新試験案、議論の収れんは

第3回:産業界が望む公認会計士資格の二段階化、その実現性は

第4回:公認会計士資格の二段階化に筋道、大手監査法人が支持表明

第5回:新公認会計士資格制度は旧制度のよみがえりか

第6回:「准会計士」が誕生へ、しかし議論は混迷

 事務局案では監査・会計関連の資格、または段階を3つに分ける。1段階目の試験合格者は「プロフェッショナルを目指す者」であり、2段階目の試験合格者は「フルスペックでない会計のプロフェッショナル」、そして監査業務ができる「フルスペックの公認会計士」の3つだ(名称はそれぞれ当然未定)。それぞれについてどのような要件で受験を認め、どのような資格を与えるかは未定だが、概略は示されている。

jicpa01.jpg 金融庁の事務局が示した「たたき台」

合格者に順位付け、選抜も

 1段階目の資格試験は短答式とする。1段階目の合格者全員に合格順位を通知し、合格者はその順位によって自らの位置付けを知ってもらう(一般企業に就職するか、もしくは監査法人を目指すか、などを判断する)。1段階目、2段階目とも科目別合格の有効期間を10年とする。この1段階目の合格者に対して何らかの資格を与えることも検討する。

 2段階目の試験を受けるには3年程度の実務経験(一般企業、監査法人など、現行制度の実務経験は2年)を要件とする。試験は短答式と論文式の組み合わせ。1段階目の合格者が多数になることが想定されるため、2段階目の短答式試験の時点で、受験者の選抜を行い、一定以上の成績の受験者だけ論文式の採点を行うようにする。金融庁では2段階目の合格者を当面、2000人程度にするとしている。

 このフルスペックでない会計プロフェッショナルに対して公認会計士資格を与えるか、もしくは別の呼称とするかは議論が続いている。この段階の合格者を「准会計士」とする案も懇談会では出ている。産業界からは公認会計士とする意見が多く、日本公認会計士協会は反対している。一方で、フルスペックでない会計プロフェッショナルについても職業倫理感を持って活動することが求められるとして、日本公認会計士協会への加入を義務付けて、自主規制による品質管理の対象とする。CPEの履行も求める。

修了考査の合格率低下へ

 2段階目の資格を取得した合格者(フルスペックでない会計プロフェッショナル)は、実務補習と場合によっては追加の実務経験を行い、修了考査に合格すると監査証明業務を行うことができるフルスペックの公認会計士となれる。ここで求める実務補習は監査実務と税実務に特化した内容とする。また、監査業界の実務経験がない者はより多くの監査実務単位数を求める。

 一方、質の向上を目指すために、修了考査の合格率は現状の約70%から引き下げる。これによってフルスペックの公認会計士の数は現状の年間1500人を下回るとしている。

 実務補習については社会人が学びやすいようにeラーニングの拡大やカリキュラム編成、期間の柔軟化を求める。また、実務経験として認める企業の資本金を現状の5億円から緩和することも検討。国際教育基準を踏まえて、いずれかの資格取得について、大学など高等教育機関で一般教養課程の授業を一定単位数、履修することを求める。

 事務局案に対しては懇談会の委員の間で意見が集約されたとはいえない。大筋については合意を得ているが、上記のようにどの段階の合格者が公認会計士と呼称できるのかについては意見が割れている。また、会計士になる標準的なルートのほかに、1段階目と2段階目の試験を一気に合格するような優秀な学生に対しては実務経験を2段階目の試験合格後に求める案、実務を積んだ社会人に対しては2段階目の受験要件である実務経験の要件を緩和する案などもある。金融庁の大臣政務官 田村謙治氏は将来的な制度改革として、社会の期待に応えられる公認会計士を育成するために「税理士資格も含めた抜本的見直しも視野に入れる」と話した。

 懇談会座長の金融庁 副大臣の大塚耕平氏は、「議論は収れんしてきたと思っている」と話し、「(公認会計士資格までに)多様な登頂ルートを設けることは多様な人材を育成するうえで望ましいとの意見が多数になっている」と取りまとめに自信を見せた。ただ、一部の論点については委員の間で意見の隔たりが大きいことに加えて、新政権の発足を受けて、6月中を予定していた報告書の公表時期は不透明。これまで会合の最後には次回の日程がアナウンスされていたが、今回は「事務方から別途連絡する」だった。

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(IFRSフォーラム 垣内郁栄)

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