SAP IFRS CONFERENCE 2010 TOKYO
村田製作所・元副社長が語るUS GAAP採用とIFRS
2010/06/28
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SAPジャパン主催のイベント「SAP IFRS CONFERENCE 2010 TOKYO」が6月23日開催され、村田製作所の元代表取締役副社長で、現在は野村総合研究所や住友ゴム工業の社外監査役を務める泉谷裕氏が基調講演した。泉谷氏はIFRSの適用について「単なる会計基準の制度変更ではなく、背景となる経営の仕組みを変更しないといけない」と話し、社内の経営管理を含めて改革することの重要性を訴えた。
村田製作所は日本で連結財務諸表の開示が義務化される前の1969年から連結財務諸表を作成していた情報開示の先進企業。会計基準や開示に対する姿勢はこれからIFRSを適用する企業にとっても参考になる。同社は1977年に欧州での資金調達に際し、米国会計基準(US GAAP)で連結財務諸表を作成し、投資家の信頼を得ようとした。US GAAPを選んだ理由は「事業がグローバル化し、得意先や従業員、仕入れ先も世界に広がっていく。そのときに会社を取り巻くステークホルダーに対する開示がローカルなルールでは理解されない」と考えたからだ。IFRSがまだ存在しない時代、最も信頼性が高く、グローバルで受け入れられていたのはUS GAAPだった。
US GAAPを採用した狙いには海外展開していたグループ子会社や事業所の会計処理の効率化、透明性の向上もあった。「海外の事業所では日本の会計基準は分からない。しかし、米国会計基準ならまだ分かる」というのが実情だった。US GAAPの採用で、「得意先にも投資家にも信用された」と泉谷氏は振り返った。
ただ、US GAAPもやはりローカルな基準に過ぎない。そのため「米国の社会制度に乗っかっている」(泉谷氏)。村田製作所も年金の処理などでは海外の投資家を説得するのに苦労したという。泉谷氏はこのような経験から、企業が採用する会計基準を変更するならその会計処理だけでなく、社会制度に基づく企業の制度も変更する必要があると訴えるのだ。日本企業であれば株式の持ち合いが挙げられる。最新のIFRS第9号「金融商品」では株式の持ち合いについて一定の配慮がされたが、このような特定の商慣習に基づく会計処理は「やっていけなくなる」と泉谷氏と話す。将来的にはIFRSに合わせて株式の持ち合いという日本の商慣習が変わっていく可能性がある。
グローバル展開を目指す企業にとって必要なのは日本の商習慣を反映した財務会計、管理会計の制度ではなく、グローバルなビジネスの要求を反映した制度作りだ。グローバル展開を目指すなら「経営制度、組織、権限委譲、決済手続き、人事制度などをグローバル化しないといけない」(泉谷氏)。企業にとってIFRSはグローバル展開のゴールや手法を定義し、経営管理を見直すためのよい機会なるだろう。
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