企業価値向上を支援する財務戦略メディア

中堅・中小企業の参考に

内部統制制度の簡素化で「事例集」追加、金融庁

2010/10/28

PR

 Q&Aに続き事例集――財務報告に係る内部統制報告制度の見直しを進めている金融庁の企業会計審議会 内部統制部会は10月28日に会合を開き、中堅・中小上場企業が参考にできる内部統制簡素化のための「事例集」を参考資料として公表した。金融庁は、すでに公開している「内部統制報告制度に関するQ&A」と並ぶ資料として利用してほしいとしている。

 現在進んでいる内部統制報告制度の明確化、簡素化は中堅・中小上場企業向けと、前年度の内部統制評価が有効な企業向けの2つに分けることができる。中堅・中小上場企業向けの簡素化は、業務プロセス評価の合理化や、経営者による日常的なモニタリング結果を監査人が評価の一部として利用する代替手続きの容認、引継書や受注メモなどの社内作成文書を監査人が利用できる、などが挙がっている。

 その中で「中堅・中小規模上場企業向け事例集」(仮称)は新たに提案された簡素化策で、中小上場企業が監査人と協議しながら行ってきた「さまざまな工夫」を記している。参考として挙げられている事例は4つ。1つは、決算・財務報告プロセスで「3点セット」(業務記述書、リスクコントロールマトリックス、業務フロー図)ではなく、「チェック・リスト」を作成して、決算・財務報告プロセスの評価に活用した事例。事例集ではチェック・リストの例も含めて紹介している。

 2つめの事例は監査役と内部監査人が定期的、または適宜打ち合わせを行うなど適切に連携をしていて、リスクを効果的、効率的に抽出できた事例。お互いの監査状況を共有することで、リスクが大きい取引を行っている事業や業務のプロセスを効果的、効率的に内部統制の評価範囲に含めることができたという。

 3つめはIT統制のうち、子会社の重要性が高いものを本社に集中させ、IT統制の評価や監査を効率化した事例。従来、子会社ごとにシステムを採用し、その開発や保守、外部委託契約などを子会社が行っていたが、その権限を本社に集中させたという。これによってITに係る全般統制や業務処理統制の整備、運用状況の評価、監査を本社のみで実施できるようになり、効率性が向上したという。

 4つめは、重要な業務プロセス以外の評価を3年ごとのローテーションで行っている事例。連結売上高のおおむね5%程度以下となる「僅少な業務プロセス」を除く、「重要でない業務プロセス」については監査人と協議のうえで、ローテーションによる運用評価として、対象業務プロセスを大幅に削減しているという。

 これらの事例は基本的には「事業規模が小規模で、比較的簡素な組織構造を有している」中堅・中小企業向けで、そのような企業が参考にすることを期待している。しかし、金融庁の企業開示課長 古澤知之氏は、4つめの事例について「大規模企業も中小規模の企業も差がない」と話し、大企業でも参考にできるとした。金融庁は今後行う、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」「実施基準」改正のパブリックコメント募集に合わせて、企業などから事例を募る計画。古澤氏は「事例は10以上は用意したい」としている。

 内部統制報告制度の見直しでもう1つ焦点となっている「重要な欠陥」用語の見直しについては、「開示すべき重要な不備」「重要な要改善事項」の2つの案が提案された。

 11月25日に開催予定の次回部会では「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」「実施基準」の改正案が公表される見込みだ。

関連リンク

(IFRSフォーラム 垣内郁栄)

情報をお寄せください:

@IT Sepcial

IFRSフォーラム メールマガジン

RSSフィード

イベントカレンダーランキング

@IT イベントカレンダーへ

利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | サイトマップ | お問い合わせ
運営会社 | 採用情報 | IR情報

ITmediaITmedia NewsプロモバITmedia エンタープライズITmedia エグゼクティブTechTargetジャパン
LifeStylePC USERMobileShopping
@IT@IT MONOist@IT自分戦略研究所
Business Media 誠誠 Biz.ID