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中堅・中小企業向けの効率化事例も募集

“簡素化”内部統制は2011年4月以降に適用、金融庁が草案

2010/12/22

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 金融庁は12月22日、財務報告に係る内部統制報告制度改訂の公開草案を公表した。内部統制の基準、実施基準について簡素化・明確化したのが改訂の柱で、企業の実務に与える影響は大きそうだ。「企業自体に問題があると受け止められる」と指摘されてきた「重要な欠陥」については「開示すべき重要な不備」と言い換えた。

 公開草案に対する意見は2011年1月25日まで募集する。決定された場合、2011年4月1日以降に開始する事業年度の内部統制の評価および監査から適用する。

 改訂案の柱は3つ。(1)「企業の創意工夫を活かした監査人の対応の確保」、(2)「内部統制報告制度の効率的な運用手法を確立するための見直し」、(3)「『重要な欠陥』の用語の見直し」だ。

 (1)「企業の創意工夫を活かした監査人の対応の確保」では、経営者が創意工夫した内部統制の評価方法・手続きなどを監査人が尊重・理解することを求め、杓子定規な対応を採らないようにした。実施基準では以下のように記述している。

 「監査人は、経営者による会社の状況等を考慮した内部統制の評価の方法等を適切に理解・尊重した上で、内部統制監査の基準・実施基準等の内容や趣旨を勘案して内部統制監査を実施する必要があり、各監査人の定めている監査の手続や手法と異なることをもって、経営者に対し、画一的にその手法等を強制することのないよう留意する」

 また、中堅・中小企業に対しては「効果的かつ効率的な内部統制の構築や評価を行うとの観点から、適切な指摘を行う必要があることに留意する」として、監査人が指導的機能を発揮できることを明記した。

 (2)「内部統制報告制度の効率的な運用手法を確立するための見直し」では、業務プロセスに係る内部統制の評価範囲決定について、対象の事業拠点が前年度に重要な事業拠点として業務プロセスに係る内部統制の評価範囲に入っていて、その評価結果が良好で、整備状況に大きな変化がないことなどを条件に、今年度の内部統制評価の対象にしなくてすむことを明記した。評価範囲を絞り込むことで、結果的に評価範囲の指標としている売上高の3分の2を下回ることも認める。

 また、業務プロセスに係る内部統制について、前年度の評価結果が有効で、整備状況に大きな変化がない場合、前年度の評価結果を使い回すことを可能にし、複数年度に1度だけ評価を行うローテーション化を認める。

 さらにITに係る業務処理統制の評価についても、ITシステムで自動化された内部統制については、前年度の評価結果を今年度に引き続き使えるようにする。企業にとっては運用状況のテストを毎年行う必要がなくなり、数年度に1度のローテーションで運用評価を行えばよくなる。

 中堅・中小企業に対しても簡素化する。「事業規模が小規模で、比較的簡素な構造を有している組織」では、業務プロセスに係る内部統制の有効性評価について、「適切な全社的な内部統制が整備及び運用されていることを前提に、一律に、通期において業務プロセスに係る内部統制については運用状況の評価が求められるものではない」と明記。また、「組織内における各階層(例えば、部長レベル、担当者レベルなど)において必ず評価が求められるものではない」としている。

 中堅・中小企業に対しては文書化作業も簡素化を認める。一律に内部統制用の文書作成を求めるのではなく、「さまざまな記録の形式・方法を取り得る」として、「経営者から組織の内外の者に対する質問書」「各業務の業務内容を前任者から後任者に伝達するための文書」「販売担当者が受注の際に作成した文書」「ソフトウェアのマニュアル」「伝票や領収書などの原資料」「受注入力後販売管理システムから出力される出荷指図書」などを内部統制評価の記録文書として利用できるとした。

 また、内部統制監査についても、中堅・中小企業は「経営者が直接行った日常的モニタリングの結果や監査役が直接行った内部統制の検証結果(例えば、棚卸の立会などの往査の結果をまとめた報告書など)」を利用可能であるとした。

 (3)「『重要な欠陥』の用語の見直し」については上記のように「開示すべき重要な不備」と言い換えることにした。

内部統制の効率化事例を募集

 金融庁はまた、中堅・中小企業が利用できる「効率的な内部統制報告実務」事例の募集を同日に始めた。すでに4つの事例は公表している(金融庁の資料PDF)が、加えて一般から「内部統制の有効性を保ちつつも、効率的に内部統制の評価などを行っている事例」を集める。

(IFRSフォーラム 垣内郁栄)

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