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財務報告の虚偽記載リスクは順位下げる

「IFRSへの対応遅延」が企業リスクに、トーマツ調査

2011/01/07

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 トーマツ企業リスク研究所は1月6日、国内276社に対して行った企業リスクマネジメントに関する調査結果を公表した。優先して対応すべきリスクとして「IFRS(国際財務報告基準)への対応遅延」が4位に入る一方で、前回までの調査で上位に入っていた「財務報告の虚偽記載」リスクが大きく順位を下げた。

 「IFRSへの対応遅延」リスクは今回から選択肢に加えた。複数回答で17%の企業がリスクとして挙げている。トーマツ企業リスク研究所は、「IFRSの導入が制度として確定していない現時点でこのリスクが上位に挙がったのは、回答者がIFRSに対し自社が取り組むべき方向性や現状について漠然とした不安を抱いていることを示していると考えられる」と背景を分析。企業の対応としては「不安感に起因するリスクに対しては、正しい情報の適時共有が重要である。少数特定の部門や担当者のみで検討を進めるのではなく、一定のタイミングで社内の取組みを共有するとよいと考えられる」と指摘している。

risk01.jpg 主要リスクの推移(トーマツ企業リスク研究所の発表資料から、クリックで拡大)

 優先対応すべきリスクのトップは、過去5回の調査のうち4回で1位となっている「情報漏えい」。今回の調査でも25%の回答者がリスクと認識していて企業の危機意識は強い。同研究所は「情報漏えい時の社会的影響が非常に大きい一方で、情報の種類や記録媒体が多岐にわたり、管理が難しい側面があるため、対策に頭を悩ませている企業が多いものと考えられる」と説明している。

 もう1つ注目されるのは「財務報告の虚偽記載」リスクの順位ダウン。前回調査では2位だったが、今回調査では8位となった。同研究所は「内部統制報告制度(J-SOX)への対応が一段落したことが考えられる」と理由を分析している。ただ、「J-SOX導入後に粉飾が明るみに出た企業もあり、そのリスクは依然として高いと考えられる」として「J-SOXを導入したことで気を緩めず『財務報告の虚偽記載』リスクに対して引き続き取り組むことが望まれる」と訴えている。

 企業のリスクマネジメント全般では体制がほぼ整ったようだ。リスクマネジメント体制を構築したという企業は90.5%。同研究所は「日本企業のリスクマネジメント体制の構築が一巡した感がある」としている。2002年調査では51.3%だった。

 体制の内容では、83.7%が「リスク管理部署およびコンプライアンス統括部署の設置」をしていると回答。「倫理綱領・行動指針の策定」「コンプライアンス社員相談窓口(内部通報相談窓口)の設置」「非常事態発生時の体制整備」もそれぞれ90%以上の対応率だった。

 一方で「コンプライアンス教育の実施」が77.2%、「コンプライアンス実施状況のチェック」は78.6%で、前年と比較して微増に留まった。同研究所は「改善の余地を残している」と指摘している。

 調査結果によると、コンプライアンス実施状況のチェックを行っている企業の8割がその手段として内部監査を実施している。ただ、内部監査部門はJ-SOX対応にリソースが割かれているケースが多いとして、「コンプライアンスに関するモニタリングを十分に行えているかどうかは懸念が残る」と指摘している。また自己チェックによりコンプライアンス実施状況のチェックを行っている企業が15%あり、同研究所は「自己チェックでは、実効性の確保に一定の限界がある。自己チェックのみに頼っている企業は、独立部門による監査の実施を検討することが望まれる」としている。

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(IFRSフォーラム 垣内郁栄)

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