企業価値向上を支援する財務戦略メディア

「意味があるのはバランスシート」

HOYAがIFRS決算短信を公表、日本基準との差異が明確に

2011/05/10

PR

 HOYAは5月10日、IFRSに基づく2011年3月期の連結決算を公表した。売上収益は2.7%増、当期利益は43.5%増と好調な業績だったが、その他の包括利益の影響を受ける当期包括利益合計額は前期比2.1%のマイナスだった。

 HOYAは2011年3月期からIFRS(指定国際会計基準)を早期適用。2010年12月にはIFRSを初度適用した2010年3月期の連結財務諸表を公表していた(参考記事:HOYAが2011年3月期からIFRS任意適用へ)。IFRSを早期適用し、IFRSの決算短信を公表するのは2010年の日本電波工業に続き、2社目。

 HOYAの2011年3月期のその他の包括利益では、在外営業活動体の換算損益がマイナス要因になった。2010年3月期は58億6700万円のプラスだったが、2011年3月期は円高の影響を大きく受けて141億8800万円の赤字。売却可能金融資産評価損益も8900万円のマイナスで4億600万円。一方、持分法適用関連会社のその他の包括利益持分は、前期の2億8100万円の赤字から、2011年3月期は2億4100万円の黒字に転じた。これらの合計である、その他の包括利益(損失)合計は、前期から190億4500万円減少し、130億3000万円の赤字となった。結果的に当期包括利益は前期比2.1%減の465億4900万円だった。

 同社 CFOの江間賢二氏はIFRSの包括利益について「IFRSの損益計算書の立て付けは清算所得(編集注:清算価値か)を計算していると認識している。そのため為替が変動すると損益計算書を通して反映する」と指摘。企業が事業継続を前提にビジネスを行い、開示していることを考えると「(包括利益表示は)ナンセンスに思える」と話した。そのため「包括利益計算書はあまり意味が無くて、意味があるのはバランスシート」と訴えた。

 HOYAは同日、決算短信の補足資料も公表し、2011年3月期のIFRS連結財務諸表と同期の日本基準ベースの数値を比較した。主要な項目では、のれんがIFRSで非償却になることで、連結財政状態計算書の資産で13億6000万円のプラスの影響があった。持分法で処理する投資先ののれんについても、IFRSでは負ののれんは利益に一括計上するため、17億1200万円の増加となった(2010年3月期のHOYA連結財務諸表についての参考記事:徹底分析――HOYAのIFRS財務諸表)。

 また、固定資産の減価償却については、償却方法が定率法から定額法に変更され、耐用年数も見直すことなどで日本基準ベースと比べて有形固定資産−純額が29億9200万円増加した。収益認識が変わり、棚卸資産や売上債権についても増減があった。税効果についても、未実現利益の消去に伴う税効果の調整で10億6700万円の増加。繰延税金資産の回収可能性についてもIFRSで再検討し、18億9800万円増える結果となった。その他の流動負債では、IFRSでは未払有給休暇を12億9300万円計上している。

 売上高では、収益認識が日本基準の出荷基準から、IFRSの「リスクと経済価値が移転した時点で認識」する収益認識に変わることや、カスタマー・ロイヤルティ・プログラムの認識の変更で、8億8600万円減少した。

 江間氏はIFRSと日本基準の並行処理について「本当に大変。決算発表の時期を遅らせたくらいだ」と話した。

関連リンク

(IFRSフォーラム 垣内郁栄)

情報をお寄せください:

@IT Sepcial

IFRSフォーラム メールマガジン

RSSフィード

イベントカレンダーランキング

@IT イベントカレンダーへ

利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | サイトマップ | お問い合わせ
運営会社 | 採用情報 | IR情報

ITmediaITmedia NewsプロモバITmedia エンタープライズITmedia エグゼクティブTechTargetジャパン
LifeStylePC USERMobileShopping
@IT@IT MONOist@IT自分戦略研究所
Business Media 誠誠 Biz.ID