エンドースメントアプローチ採用も検討
IFRS任意適用の要件緩和へ、企業会計審議会に新しい流れ
2013/04/25
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金融庁の企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議が4月23日に開催され、IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)についての審議が行われた。金融庁からは新たにIFRSを任意適用できる要件の緩和や、IFRSの一部基準をカーブアウトして日本の実態に合わせる案などが出された。再開されて2回目の合同会議でIFRSの今後について方向性が見えてきた(関連記事:IFRS適用のロードマップが示される可能性は? 経団連が求める)。
2012年7月に出された「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの議論(中間的論点整理)」では、IFRS任意適用企業の増加が訴えられている。しかし、IFRSを任意適用済み、または今後適用すると公表済みの企業は合計18社にとどまる。日本経済団体連合会の推計でも合計60社程度の見込みだ。
現在IFRSを任意適用するには4つの要件があり、そのうち1つの要件が、任意適用を目指す企業にとってのハードルになっている。その要件では、以下3項目のうち少なくても1つを満たす必要がある。
- 外国の法令に基づき、IFRSで作成した企業内容に関する書類を開示していること
- 外国金融商品市場の規則に基づき、IFRSで作成した企業内容に関する書類を開示していること
- 外国に連結子会社(資本金が20億円以上に限る)を有していること
いずれの項目も海外で資金調達をするような企業を想定している内容で、国内ビジネス中心の企業では満たすことが難しい。任意適用要件の緩和ではこれらの項目が議論になるだろう。
また金融庁には、新規上場時にIFRSを任意適用できるようにすることを求める意見も届いているという(現在の要件では上場済みの企業しか任意適用できない)。
エンドースメントアプローチ採用を審議
もう1つの議論はIFRSの基準のうち、日本企業の実態に合う基準は受け入れて、合わない基準は適用しない(カーブアウトする)「エンドースメントアプローチ」の採用だ。現在は、IASB(国際会計基準審議会)が定めたIFRSを基本的に全て受け入れる「指定国際会計基準」が適用されている。しかし、のれんの償却や開発費の資産計上など「マネジメントの考え方として受け入れがたい基準があることも事実」との指摘が委員からある。これらの基準を適用しないことで、任意適用企業を増やすことが金融庁の狙いだ。
金融庁が作成した資料では「今後の検討」として「PureなIFRSを念頭に置いている現行の指定国際会計基準のほかに、わが国においても個別基準を1つ1つ検討して採択するプロセスを設ける必要があるのではないか」「わが国が考える『あるべきIFRS』あるいは『わが国に適したIFRS』といった観点から、IFRSの個別基準について、その適用の是非を具体的に検討する必要があるのではないか」と説明されている。
ただ、エンドースメントアプローチを採用すると、日本国内に指定国際会計基準、エンドースされたIFRS、日本基準、米国基準と4つの基準が併存することになり、「国際的に説明可能かどうか。比較可能性の問題もある」(臨時委員の三菱電機 常任顧問 佐藤行弘氏)。
金融庁の企業開示課長 栗田照久氏は「確かに4つは分かりにくい」とした上で、「ただ、4つのうち日本基準は同等性評価を受けていてIFRSと大きく変わらない。エンドースメントされたIFRSもピュアなIFRSと変わらないだろう。4つと言ってもバラバラなものが4つあるわけではない」と話し、比較可能性への影響を否定した。
栗田氏はまた、「日本は単一で高品質な国際基準を策定するという目標や、会計基準の国際的な調和にコミットしている」として「この方向を取りつつ、他方で会計思想や制度論でIFRSには受け入れがたい部分がある。この両者を調和させるにはエンドースメントされたIFRSが必要になると考えている」と話した。
次回以降の合同会議では任意適用要件の緩和やエンドースメントアプローチについて審議を続ける。栗田氏は「強制適用か否かなどの大きな議論には時間がかかる。だが、当面できることについては時間をかけず、近いうちに審議会としての意見をとりまとめていただきたい」と述べた。
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