デルのHyper-V戦略を探るHyper-Vが普及する理由、
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マイクロソフトが2009年後半に提供開始したWindows Server 2008 R2の大きな目玉は、サーバ仮想化技術「Hyper-V 2.0」であることは間違いない。ライブマイグレーション機能の搭載など、Hyper-Vはこの新バージョンで企業ITインフラの仮想化に活用しやすいものに進化した。企業はこのサーバ仮想化技術をどう使っていくべきか。デルとAMDの答えは次のとおりだ。 |
マイクロソフトのWindows Server 2008 R2に含まれるサーバ仮想化技術「Hyper-V 2.0」は急速なスピードで普及するだろうと、デル ラージ エンタープライズ・マーケティング サーバ マーケティング マネージャーの布谷恒和氏は指摘する。これを強力に後押しするのは、マルチソケットサーバの存在と、サーバプロセッサのメニーコア化だという。
Hyper-V 2.0はWindows Server 2008 R2の機能だ。つまり、WindowsをサーバOSプラットフォームとして使っている企業は、基本的なサーバ仮想化機能を事実上無償で手に入れることができる。「いますぐにサーバ仮想化を実施する予定がなくとも、Windows Server 2008を買えばHyper-V 2.0が付いているので、将来的に使ってもいいし、検証テスト用に試すことも簡単にできる」(布谷氏)。
デル株式会社 ラージ エンタープライズ・マーケティング サーバ マーケティング マネージャー 布谷恒和氏 |
布谷氏はHyper-Vの経済性を、Windows Server 2008 R2のライセンス体系からも説明する。最上位製品であるDatacenter Editionを除くと、Windows Server 2008 R2は物理サーバ(ノード)単位のライセンスだ。ということは、サーバのCPUソケット数やコア数にかかわらず、OSのライセンスはサーバ1台当たり1ライセンスで済むということになる。そしてOSのライセンスには、必ずHyper-Vが含まれている。
Windows Server 2008 R2には、Standard Edition、Enterprise Edition、Datacenter Editionの3エディションがある。このうち、Datacenter Editionは仮想マシンのライセンスが無制限(つまり、Datacenter Edition上ではライセンス上、Windows Server 2008 R2をいくつでも仮想マシンとして稼働可能)だ。しかし、Datacenter Editionは2CPU単位のライセンスであり、4CPUサーバなどの環境では、コストインパクトが大きい。また、既存のサーバを仮想環境に移行するかぎり、仮想化ライセンスが無制限だということにメリットはない。一方、Standard Editionでは、Hyper-Vは動かせても、フェールオーバークラスタの構築ができない。そこで多くのユーザー企業は、仮想化の基盤としてEnterprise Editionを選ぶだろうという。その場合、4ソケットサーバでのHyper-Vのライセンスコストは、VMware vSphere 4の約半額になるという。
「Hyper-V 2.0は、VMware vSphere 4と比べると機能的には非常にシンプルで、ベーシックな仮想化ハイパーバイザといえる。しかし、VMware vSphere 4で備えている、FT(フォルトトレランス)やStorage vMotionといった高度な新機能が現時点で必須というユーザーはかなり限られているといえる。基本的にはHAとライブマイグレーションの環境が担保されればいいというお客様がほとんどだろう。これにHyper-Vが2.0の機能強化によって対応したということはメリットが大きい。もし仮想マシンとしてほぼ全てがWindows Serverであるという環境であれば、操作面、サポートの面、コスト面いずれにおいてもHyper-V 2.0は最適なハイパーバイザであるといえる」(布谷氏)。
Hyper-VではSystem Centerを使いこなせ | ||
Hyper-Vでサーバ仮想化環境を構築し、本格運用していく際のポイントは何か。デルでは、最大のポイントとして、マイクロソフトの管理ツール製品群「System Center」およびデルの無償ハードウェア管理ソフトウェア「Dell OpenManage」との連携を挙げる。
デル株式会社 ソリューション・サービス・デリバリー本部 インフラストラクチャ・コンサルティング・サービス コンサルティング第2部 テクニカルコンサルタント 鷲尾圭一氏 |
「System CenterとDell OpenManageを利用すると、物理環境と仮想環境、サーバとクライアントを一括管理できる。また、多くのシステム管理ツールはシステムの稼働監視や、インベントリ、パッチ管理、アプリケーション配布などが機能の中心だが、System Centerでは、さらにOSの展開を自動化できる機能やバックアップツールも提供している」と、デル ソリューション・サービス・デリバリー本部インフラストラクチャ・コンサルティング・サービス コンサルティング第2部テクニカルコンサルタントの鷲尾圭一氏は評価する。
System Center製品群に含まれる稼働監視ツール「System Center Operations Manager」を使えば、仮想マシンの稼働負荷を、複数の物理サーバ間で動的に分散する機能(「PRO(Performance and Resource Optimization)」と呼ばれる)も活用できる。また、構成管理ツールの「System Center Configuration Manager」では、仮想マシンが停止している状態でもパッチを適用できる「Offline Patching」という機能も使える。そのほか、System Centerでは物理サーバと仮想サーバを包括的に管理できる機能が、複数の管理ツールを通じて豊富に提供されている。System Centerに管理機能を集約すればするほど、IT環境の管理をシンプルなものにすることができる。
このSystem Centerのメリットをさらに高めるため、デルは自社製品をマイクロソフト環境と統合運用するのに役立つ、4つの無償ツールを提供している。
その1つである「Dell Deployment Pack」は、Configuration ManagerのOS展開機能を拡張するもの。サーバ機やクライアントPCのBIOS設定、RAIDの設定、帯域外管理カードの設定など、ハードウェアの設定も含めて、OS展開の自動化が図れる。
また、Operation Manager向けの無償ツールとしては、「Dell Management Pack」がある。これは、デルのサーバ機、ストレージ、プリンタといった製品におけるイベントを、System Centerのコンソールで監視できるようにするものだ。
さらに、Configuration Manager用の「Hardware Update Catalog」では、デル製ハードウェアのBIOS/ファームウェア、デバイスドライバなどの更新を自動化できる。
そして、「Dell PRO Pack」は「System Center Virtual Machine Manager」のPROを拡張する機能だ。PROでは、Virtual Machine ManagerとOperations Managerが連携し、物理サーバのCPU、メモリの負荷状態に応じて、仮想マシンを余裕のあるサーバへ自動的に移動することができる。VMwareでいえば、DRS(Distributed Resource Scheduler)に相当する機能だ。これを拡張するのがDell PRO Packで、デルのハードウェアの障害をトリガにした仮想マシンの自動移行も可能になる。例えば、サーバ機に搭載している複数の空冷ファンの内、1つが故障したとする。この時、デルの無償サーバ管理ソフトDell OpenManageがこのイベントを検知して、System Centerに伝える。PRO Packが適用されたSystem Centerは、これを受けて、この物理サーバ上のすべての仮想マシンをほかの正常な物理サーバに移動することができる。こうして、サーバが完全に故障する前に予防措置を講じることができる。
デルはマイクロソフトと、仮想化運用管理で広範な提携を行っている。Hyper-Vとサーバの省エネ機能の連動など製品面での連携もさることながら、統合的な管理の実現やこれまでのノウハウを生かしたコンサルティングなどが特徴だ(図をクリックすると拡大します) |
また、つい最近10GbEにも対応したiSCSIストレージのDell EqualLogicシリーズでは、「Auto-Snapshot Manager」という無償のスナップショット管理ツールを提供している。このツールでは、稼働中の仮想マシンのスナップショットを、ストレージ側から取得できる。記事執筆時点では、Hyper-V 1.0への対応にとどまっているが、ライブマイグレーション環境でスナップショットを取れるHyper-V 2.0対応のバージョンが、まもなくリリースされる予定だ。
System Centerの統合ライセンスとHyper-Vのネットワーク構成 | ||
System Centerの製品群は複数のツールの集合体であるため、ライセンス購入コストという点で、全ツールをそろえると高価だというイメージがつきまとっている。
しかし、「Operations Manager エンタープライズサーバ管理ライセンス」「Configuration Manager エンタープライズサーバ管理ライセンス」「Data Protection Manager エンタープライズサーバ管理ライセンス」「Virtual Machine Manager エンタープライズサーバ管理ライセンス」の4つの製品を安価に購入できるライセンス・パッケージがあると、鷲尾氏は話す。「System Center Server Management Suite Enterprise」(SMSE)と「System Center Server Management Suite Datacenter」(SMSD)と呼ばれるもので、上記4つのエンタープライズサーバ管理ライセンスについて、物理環境とその上で動作している仮想環境の管理対象サーバをまとめて1つのライセンスにしたものだ。
鷲尾氏はさらに、Hyper-V 2.0のネットワーク構成における重要な要素を指摘した。
Hyper-V 2.0の目玉機能であるライブマイグレーションを使用するためには、クラスタの共有ボリューム(CSV)を構成する必要があり、CSVのアーキテクチャではノード間のボリューム共有に関してSMBのテクノロジーを応用利用している。
このため、CSVへのパスに関与するすべてのネットワークアダプタに対して“Microsoftネットワーク用クライアント”および“Microsoftネットワーク用ファイルとプリンター共有”を有効にしておく必要がある。
[参考情報] Hyper-V: Using Live Migration with Cluster Shared Volumes in Windows Server 2008 R2
http://technet.microsoft.com/en-us/library/dd446679(WS.10).aspx
「システムを構築する際、不要なネットワークプロトコルを意図的に無効にしている方も多いと思うが、ライブマイグレーションを構成する場合には、この点に注意していただきたい」と鷲尾氏は語る。
また、世間ではHyper-VがNICチーミングに対応していないという認識が広まっているようだが、実際はそうではない。2009年11月現在、NIC製造ベンダーはHyper-V 1.0および2.0に対応したデバイスドライバおよびチーミングソフトウェアをリリースしている。ただし、「この機能をサポートするかしないかはサーバベンダにまかされている。現在、Hyper-VのNICチーミングをサポートしているサーバベンダは少なく、われわれデルと数社のみ」と鷲尾氏は話す。
デルでは、上記のように細かく検証しなければ分からないようなノウハウを大量に蓄積しており、鷲尾氏の所属するインフラストラクチャ・コンサルティング・サービスが、設計/導入/運用コンサルティングの一環としてグローバルでサービスを提供しているという。
Hyper-Vに求められるハードウェアの要件 | ||
では、Hyper-V環境の構築に当たって、ハードウェア構成ではどのようなことを考慮すればいいのだろうか。
鷲尾氏は、マイクロソフトが「1CPUコア1仮想マシン」をサイジングのガイドラインとして示していることを指摘する。仕様上は1コア当たり最大8仮想マシンまで稼働可能だが、パフォーマンス面を考慮すると、通常はこのガイドラインに従うのが安全だという。メモリ容量の割り当てについても、ペアレントOS用として2GBを確保し、仮想マシンが利用するメモリ容量の合計については、安全のためマージンとして最初の1GBに32MB、追加1GB単位で8MB加算することを推奨している。つまり、Hyper-Vでは、まずCPUコア数とメモリスロット数の多いサーバの利用を考えるのが得策だという。
4ソケットブレードサーバPowerEdge M905は24のDIMMスロットを装備し、最大192GBの大容量のメモリを搭載できる。また、このサーバはクアッドコアおよび6コアのAMD Opteronに対応している。ソケット数、コア数、メモリ容量のすべてにおいて高い拡張性を実現できる(画像をクリックすると拡大します) |
日本AMD マーケティング&ビジネス開発本部 エンタープライズプロダクトマーケティング部 部長の山野洋幸氏も、これに同意する。
「Hyper-Vを利用するときには新規にサーバを立てるケースが多い。つまり1つの仮想マシンで要求されるメモリ容量はどんどん増えてきており、最低でも2GB、場合によっては4GB、8GBを割り付けなければならない。AMD Opteronプロセッサを搭載したデルの4ソケットサーバ『PowerEdge R905』では、1ソケット当たり8本のDIMMスロットを備える。また、Registered DIMMとしては安価なDDR2タイプを利用できるため、大容量DIMMを安価に多く実装できる点でAMD Opteronプロセッサを搭載するデルのサーバは、メリットが大きい」(山野氏)。
非常にすっきりとしたアーキテクチャに基づくAMDの6コアOpteron™プロセッサ(Istanbul)。DDR2メモリで、コスト効率よくメモリを増設できる |
山野氏はさらに、競合他社のアーキテクチャが、4ソケットサーバでは現在でもフロントサイドバス形アーキテクチャを基本としているのに対し、AMDではすべてのCPU製品が古くからダイレクトコネクト・アーキテクチャに基づいており、サーバCPUでも2003年当初からダイレクトコネクト・アーキテクチャが採用されていることを指摘した。当然この4ソケットのサーバでもダイレクトコネクト・アーキテクチャが採用されていて、多数の仮想サーバを実装したときでもパフォーマンスがスケールするという。
AMDが以前より採用してきたダイレクトコネクト・アーキテクチャ。CPUとメモリが広帯域で直結することにより、パフォーマンス・ボトルネックを回避している |
「多くのサーバを集約するのに、4ソケットサーバは最適なプラットフォームだ」(山野氏)。また、仮想化支援機能AMD-V™、およびその拡張機能である「RVI」(一般にはネステッドページングと呼ばれる)についても、AMDではすでに2年前から実装された実績のある技術であり、4コア、6コアAMD Opteronプロセッサではこれがより高速に動作するように進化してきていると山野氏は話した。
Hyper-Vの場合はソケット数、コア数のどちらもできるだけ多いサーバを使うことが、統合率の向上に直結する。「AMD Opteronプロセッサなら、2ソケットでも4ソケットでも6コアを選んでいただける」と山野氏は言う。
AMDは、2010年の第1四半期に、12コアのサーバプロセッサ(コードネーム:Magny-Cours)を出荷開始の予定だ。このプロセッサは、仮想化環境の運用において、現在出荷されているAMDの4コア/6コア・プロセッサと問題もなく混在利用することが可能で、相互間のライブマイグレーションもサポートされる予定だ。従って、現行のプロセッサで仮想化環境を構築し始めておき、将来この環境が拡大するに従って12コアCPUのサーバを追加していくことも得策だ。
CPU以外にも、Hyper-Vにおけるサーバ・ハードウェア要件として考えるべきことがいくつかある。布谷氏は足回りの考慮点を指摘する。
「NICのポート数も重要だ。当社のラボで検証した結果、Hyper-Vでは最低限1台のサーバから8本の接続が必要だ(iSCSIストレージへのデュアル接続を含む)。このため、オンボードのネットワークポートや拡張PCIスロットの数は多い方がいい。PowerEdgeの場合、ラックマウント型のR905、ブレードサーバのM905の双方とも、オンボードで4ポートのNICが載っている。これで親パーティションの管理、ハートビートの管理、仮想マシンのポートなど基本的なネットワーク接続をさばき、あとは拡張PCIスロットの増設NICを、外との通信が多い仮想マシンに対して割り当てるなどができる。特に仮想マシンに対しては、10GbEのNICを用いてNIC自体を統合し、ハイパーバイザによって帯域分割して利用するという方法も有効だ。競合他社には、NICのポート数を確保するために10GbE NICと独自の専用スイッチを組み合わせて仮想的に帯域を分割し、複数の仮想NICを作成する製品があるが、元々仮想化ハイパーバイザは「ネットワーク帯域を分割して割り当てる」という概念を持っている。従って、仮想化としての利用を前提で考えるのなら、ネットワーク帯域の管理はハイパーバイザにまかせたほうがオープンな仕組みを保てるし、コスト的にもメリットがある」(布谷氏)。
デルがストレージに強力な選択肢をそろえていることも、Hyper-V環境構築に役立つと布谷氏は話す。
「ファイバチャネルのDell|EMCとiSCSIのEqualLogic。どちらを使うかはお客様のポリシー次第だ。ストレージ管理者がどの領域(LUN)をどの仮想マシンに使わせるか割り当てて明確に管理したい場合は、設計重視のファイバチャネルのほうがいい。一方、仮想化ストレージであるEqualLogicでは、サーバ仮想化とともにストレージも仮想化し、複数のアレイにまたがったリソースプールの中で自律型運用が行えるため、自動車でいえば完全にオートマチック車のような環境が作れる」(布谷氏)。
布谷氏は、今後のHyper-Vによる仮想化の見通しについて次のように話した。
「今後、多くのITインフラがクラウド・コンピューティングの概念を取り入れ、サーバのイメージ運用や迅速な展開、そして効率的なワークロードの管理などが要件とされるようになる。その際、仮想化技術は、なくてはならないものになる。Hyper-Vは、Windowsの仮想マシン環境をホスティングするには最適なプラットフォームだ。コスト面での優位性もある。今後の課題としては、管理ツール側、つまりMicrosoft System Center製品群がいかにシンプルに統合されていけるか、ということが1つのポイントだ。元々はバラバラの製品として開発されていたものであるが、特に製品間・バージョン間の制約などがなく、連携ができるようになれば、非常に強力にWindows仮想化の統合運用管理環境を構築できる」(布谷氏)。
Hyper-V 2.0と、メニーコア化するマルチソケットサーバ、そしてiSCSIストレージ、この組み合わせが今後の仮想化プラットフォームの1つの重要なトレンドになっていくだろうと布谷氏は付け加えた。
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制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2010/02/12
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