Loading
|
@IT > ネットワーク/ストレージ接続を仮想化する「HP バーチャルコネクト」 |
日本ヒューレット・パッカード(HP)は2月22日、サーバのネットワーク接続、およびストレージ接続を仮想化する「HP バーチャルコネクト」を発表した。これは、2006年6月の<第3世代>ブレード「HP BladeSystem c-Class」発表時に日本HPが投入を予告していた製品。ネットワークで使用するMACアドレスやワールドワイドネーム(WWN)をあらかじめ設定しておき、ブレードを交換してもネットワーク側で再設定する必要がないという画期的な新技術だ。
これまでの企業システムは、サーバやストレージなどが部門単位で導入・運用されてきた。こうしたアプリケーションやデータが縦割りに独立した垂直統合型システムは「サイロ型システム」とも呼ばれ、部分的に個別最適化されているものの、情報の共有や連携が難しいという欠点がある。また、プロセッサー処理能力やストレージ容量などのリソースが、あるシステムでは不足、別のシステムでは余剰する場合でも、リソースを転用することは不可能だった。 しかし、現在の企業システムには、ビジネスの変化に即応できる柔軟性が求められている。ビジネスチャンスを逸しないためにも、サーバを増強したり、限られたリソースを再配置したりすることを迅速に行わなければならない。 そうした課題に応えるソリューションとして注目されているのが、「仮想化」である。これは、サーバやストレージなどのハードウェアを物理的に統合し、そのハードウェア上に個別システムを仮想的に構築・運用するもの。とりわけ、サーバの仮想化技術は、「VMware」などの仮想化ソフトウェア技術の高度化や、「Intel VT」など、プロセッサー自体もハードウェア仮想化機能を備えるようになったことで、急速に普及しつつある。
ところが、仮想化が浸透するにつれて別の「サイロ化」が顕在化しているという。
「サーバを仮想化することによりOSのインスタンスは増加し、リソースの再配置や設定変更も頻繁に発生します。ところが、サーバ側に変更があるたびにサーバ管理者とネットワーク管理者やストレージ管理者との調整が必要になり、迅速に対応できないという現状があります」(日本HP エンタープライズ ストレージ・サーバ統括本部 インダストリー スタンダード サーバ製品本部 ブレード・バリュー プロダクト マーケティング部 部長 正田三四郎氏) なぜサーバ側の設定がすぐに反映できず、システムの変更時間が遅延するのだろうか。その原因は、ネットワークアダプタのMACアドレスやホストバスアダプタのWWNがハードウェアごとに異なり、それをネットワーク側、ストレージ側でも設定しなければならないところにある。しかも、MACアドレスやWWNは、各ハードウェア固有の識別子であり、サーバが納品されるまでわからない。 「企業規模が大きければ大きいほど、情報システム部門のサイロ化が課題になってきます。従来のシステムでは、サーバが納品されてからMACアドレスやWWNが判明し、それをネットワーク管理者やストレージ管理者に伝え、それぞれの管理者が作業を終えてからようやくサーバがシステムに接続されます。つまり、“組織の壁”がシステムの変更を大きく減速させているのです」(日本HP エンタープライズ ストレージ・サーバ統括本部 インダストリー スタンダード サーバ製品本部 ブレード・バリュー プロダクト マーケティング部 山中伸吾氏) また、ブレードを利用する場合、エンクロージャに搭載可能な内蔵スイッチを利用することで、ネットワークを物理的に集約できるメリットがあるが、例えば、複数の部署が各々で使用しているサーバブレードを一つのエンクロージャに収容し、複数のネットワークにそれぞれのサーバブレードを個別に接続したい場合、VLANを構築する必要がある。それはサーバ管理者にとっては非常に複雑な作業といえる。また、エンクロージャ内のサーバブレードの台数を変更したい場合、そのたびにVLANの設定も変更しなければならない。そういった場合、内蔵スイッチの利用をあきらめ、各サーバブレードに直接ケーブルを接続するケースが多いという。こうすれば、サーバの接続先ネットワークを簡単に分けられるからだ。しかしその代わり、ケーブル数が激増し、ケーブリングを簡素化できるというブレードの特長が生かせなくなる。
このような課題に対し、HPが取り組んだのは、システムの変更時間が遅延する原因であるMACアドレスやWWNを仮想化し、サーバとネットワーク、またはストレージを完全に分離するという解決策だった。それを具現化した製品が「HP バーチャルコネクト」である。 HP バーチャルコネクトは、従来の内蔵ネットワークスイッチまたはファイバチャネルスイッチの代わりとして、「HP BladeSystem c-Class エンクロージャ」の背面にあるインターコネクトのスロットに挿入する。各サーバブレードのMACアドレスやWWNを仮想的に保持する機能を備えており、エンクロージャのスロットに対し、あらかじめ仮想アドレスを振って利用する。ネットワーク管理者やストレージ管理者は、HP バーチャルコネクトの仮想アドレスを事前に登録しておくだけで、後の設定変更は一切不要になる。
設定方法は簡単だ。操作性に優れた管理用ツールを利用し、まずはエンクロージャのスロットに設定するプロファイルを作成する。プロファイルには、どの仮想MACアドレスまたは仮想WWNを利用するか、どの仮想ネットワークまたはストレージに接続するかといったが書かれている。さらに、HP バーチャルコネクトの各ポートにつながっているネットワークやストレージを設定する。この3つの設定を終えたのち、仮想MACアドレスまたは仮想WWNをネットワーク管理者やストレージ管理者に伝えればよい。 「HP バーチャルコネクトを利用すれば、サーバを変更するたびにネットワーク管理者やストレージ管理者と調整する必要がなくなり、システムの変更時間を大幅に削減できます。シンプルでわかりやすい仕組みなので、ネットワークが不得手なサーバ管理者でも簡単に使いこなせます」(山中氏)
HP バーチャルコネクトは、ブレードの物理アドレスを仮想アドレスに変換しているわけではない。各ブレードのフラッシュメモリに保持されている物理アドレスをHP バーチャルコネクトのプロファイルで設定した仮想アドレスに書き換えているのだ。ネットワーク管理者からは、単なるパススルーデバイスとしか見えないのだ。
例えば、スロット1に装着されているブレードAが故障したとしよう。HP バーチャルコネクトでは、エンクロージャのスロットに仮想アドレスが割り当てられているため、故障したブレードAを抜き取り、新しいブレードBを装着すれば、初回のブート時にブレードBの物理アドレスが仮想アドレスに書き換えられる。たったこれだけの作業なので、ネットワーク管理者やストレージ管理者には、ブレードAが故障し、ブレードBに交換したことを報告する必要もない。ちなみに、故障したブレードAの物理アドレスは、エンクロージャのスロットから抜き取った時点で、自動的に元に戻るようになっている。したがって、同一のMACアドレスまたはWWNを持つブレードが複数台できてしまうような不都合は発生しない。 また、設定はプロファイルだけで行うので、プロファイルを適用するスロットを移動すれば、サーバブレードを切り替えることもできる。これは、内蔵ハードディスクではなく、SANブートを利用している場合に特に有効だ。 「エンクロージャ内に4台のサーバブレードを搭載し、そのうち3台は業務システムが稼働するWindowsサーバ、1台はスタンバイ用途として、通常はLinuxサーバのテスト環境が稼働しているとします。業務システム用のサーバブレード1台が故障したとき、スタンバイ用途のサーバブレードを停止し、HP バーチャルコネクトのプロファイルを、故障したサーバブレードが搭載されているスロットから、スタンバイ用途のサーバブレードが搭載されているスロットへ移動します。この状態でスタンバイ用途のLinuxサーバを起動すると、業務システムが稼働するWindowsサーバに即座に切り替わります」(日本HP テクニカル セールス サポート統括本部 シェアード サービス本部 IAサーバ技術部、辻寛之氏)
HP バーチャルコネクトには、ネットワーク用の「1/10Gbバーチャルコネクト Ethernetモジュール」(税込価格79.8万円)と、ストレージ用の「4Gb バーチャルコネクト ファイバチャネル モジュール」(税込価格134.4万円)の2製品が用意されている。接続ポートは、ネットワーク用が10/100/1000BASE-T 8ポートと10GBASE-CX4 2ポートの合計6ポート、ストレージ用が4Gbpsファイバチャネル アップリンク 4ポートを備えている。 なお、現在はプロファイルの設定や移動はエンクロージャ単位でのみ行えるが、2007年内には複数のエンクロージャをまたがった仮想ネットワーク/ストレージ環境に対応した製品も投入予定とのこと。また、将来的には、プロファイルを自動的に適用、運用できる仕組みも計画されている。 また、HP バーチャルコネクトの発表と同時に、新たにいくつかのHP ProLiant BLサーバブレード製品や、ブレード専用の仮想化ソフトウェアパッケージとなる「VMware Infrastructure 3 Enterprise ブレード専用パッケージ」を投入。あわせて、日本の電源環境でのシステム導入を考慮し、「c7000エンクロージャ」のAC100V対応の表明や、工場組み込み導入サービス「HP Factory Express」において、c-Class対応のメニュー拡充などを発表した。
提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社 企画:アイティメディア 営業局 制作:@IT編集部 掲載内容有効期限:2007年4月16日 |
|