サーバ選びの新常識 |
システム全体の消費電力を確認する |
サーバを巡る話題で最近最もホットなのは消費電力であることは間違いない。電力価格の高騰やエネルギーの節約、二酸化炭素排出量の増大による地球温暖化など環境に関する関心が高まる中、消費電力に注目してサーバ選びをする人が多くなっている。また、サーバの初期価格だけでなく、そのランニングコストを意識することが常識となり、低消費電力のサーバが求められているという背景がある。これは現場のサーバ管理者だけではなく、サーバの導入やランニングコスト、運用管理コストに責任を持つ、マネジメント職の上長が特に気を遣っている点だ。
ただ、サーバの消費電力で最も注目されているのはプロセッサの消費電力という現実がある。各プロセッサメーカーは、新製品を出すごとに性能向上だけでなく、消費電力低減のアピールをすることを忘れない。消費電力を抑える新技術の開発や、新しい製造プロセスの導入でプロセッサの消費電力が下がり続けていることは確かだ。
しかし、サーバは当然ながらプロセッサだけでは動かない。メモリやハードディスクドライブなど電力を消費する多くのコンポーネントで構成されているのだ。サーバの消費電力を意識する際は、プロセッサだけではなく、そのシステム全体に注目する必要があるだろう。低消費電力のプロセッサを搭載したと触れ込みのサーバを購入しても、サーバ全体では電力を多く消費していれば意味がない。
他社プロセッサの消費電力と クアッドコア AMD Opteron™ プロセッサの消費電力 (クリックで拡大) |
電力消費で差が出るのはメモリ |
日本ヒューレット・パッカードのESSプリセールス統括本部 ISSソリューション本部 ISS技術部 エグゼクティブコンサルタントの飯島徹氏によると、実際、「プロセッサだけで消費電力を比較すると、どの最新プロセッサでも5W、10W程度しか差が出ない」という。プロセッサメーカーが技術を競い、大きな開発予算をかけて少しずつ減らしているプロセッサの消費電力だが、同じ世代のプロセッサ同士の比較では、実は大きな差にはならないのだ。
これはプロセッサメーカーの努力に意味がない、ということではない。当然ながらサーバの中でプロセッサが消費する電力の比率は大きく、その省電力技術は重要だ。しかし、サーバやシステム全体のランニングコストをチェックし、サーバ選択の意思決定を行う立場の人にとっては、プロセッサだけを考えていると見誤ってしまう危険があるということだ。
それではシステム全体で考えた場合、どこで消費電力に差が出るのか。飯島氏は「あまり知られていないが、それはメモリで差が出る」と説明する。
メモリ1枚で10Wも差が出る消費電力 |
サーバで利用されるメモリのタイプで現在主流なのは、「クアッドコアAMD Opteron™ プロセッサ」が採用する「DDR2 DIMM」と、他社プロセッサの「Fully Buffered DIMM」(FB-DIMM)。DDR2 DIMMは高速なメモリアクセスに対応するタイプで、低消費電力も特徴。対して、FB-DIMMはコマンド、アドレス、データなどをメモリ上に実装したバッファ・チップの「AMB」(Advanced Memory Buffer)に蓄積することで、メモリアクセススピードをアップさせるタイプだ。「サーバ機の実装によるが、FB-DIMMは挿せば挿すほど速くなる」(飯島氏)といい、サーバのメモリアクセス性能を向上させることが容易だ。単一サーバで高い性能が求められるアプリケーションを利用する場合などに適しているだろう。
一方、FB-DIMMには「デメリットもある」と飯島氏は指摘する。メモリ当たりの消費電力がDDR2 DIMMと比較して高いのだ。高速化のために載せているAMBチップが電力を消費しているからだ。飯島氏によると、FB-DIMMとDDR2 DIMM、1枚あたりの消費電力の差は約10W。それほど差は大きくないようにも思えるが、特に、FB-DIMMの場合はその特性を活かすために多くのメモリを挿すことになる。単純に言って、メモリを10枚挿したときの差は100Wに広がる。加えて、複数台のサーバを使っている場合、無視ができない消費電力の差がランニングコストの差となって現れる。
また、消費電力が多いということはそれだけ発熱するということ。発熱したチップを冷やすにはそれだけ冷却ファンを高速に回転させる必要があり、やはり消費電力の増加につながる。メモリ自体の消費電力差に加えて、これもシステム全体の消費電力の差になって現れるのだ。
無視できないサーバアイドル時の消費電力 |
加えてクアッドコアAMD Opteron™ プロセッサは、サーバアイドル時の消費電力も低い。サーバは常に最大の性能を発揮しているのではなく、休んでいるアイドル状態と最高性能状態が入り乱れて発生するのが一般的だ。複数台のサーバがあれば、アイドル状態とピーク状態が入り交じることになる。サーバの使用率は平均すると25%程度と言われるが、逆にいえば75%はアイドルということになる。アイドル時間はサーバ運用の中で少なからぬ時間を占め、その消費電力も無視はできないのだ。
クアッドコアAMD Opteron™ プロセッサはコア別に電力供給をコントロールできる「AMD CoolCore™ テクノロジ」をサポートする。CoolCore テクノロジでは実行中のアプリケーションを分析し、ダイ上のコアやメモリなど、どの部分がそのアプリケーションの実行に必要かを判断する。そして、アプリケーションを実行する上で必要でない未使用のトランジスタ領域に対しては、電力供給を極めて細かい時間単位でストップする。これがアイドル時の消費電力削減につながっている。
日本HPが独自に検証したデータがある。クアッドコアAMD Opteron™ プロセッサ 2356を搭載する「HP ProLiant DL365 G5」の検証データで、OSを起動して10分後、CPU使用率が0%の時の消費電力を測定した。その結果は186Wの消費電力であった。他社製プロセッサを搭載した他社サーバの場合は297Wあり、クアッドコアAMD Opteron™ プロセッサはこの場合、38%の電力を節約できたことになる。
「HP ProLiant DL365 G5」 |
また、サーバ機は電源がオフでも電力を消費する。いわゆる待機電力だ。その電力も見過ごすことはできない。日本HPの検証データによると、DL365 G5の電源オフ時の消費電力は18.4Wで、他社プロセッサを搭載した国産他社サーバの23.2Wと比べて20%程度低かった。HPは「待機サーバ15台分の電力があれば、サーバを1台稼働することができる」としている。利用できる電力に上限があるデータセンター設備を利用する場合、低消費電力なサーバを使えば、より多くのサーバを使うことができるのだ。
クアッドコアAMD Opteron™ プロセッサは、CPUコアとメモリコントローラに独立した電力供給を可能にする「Dual Dynamic Power Management」にも対応する。別々に電力供給を行うことで、コアとメモリコントローラのそれぞれの負荷状況に合わせて電圧を設定でき、効率的な電力消費が可能になる。アイドル時の消費電力低減にも役立つ。AMDによると、クアッドコアAMD Opteron™ プロセッサは供給電力を6段階に調整できるという。
アイドル時の消費電力低減はほかのプロセッサも機能として実装しているが、クアッドコアAMD Opteron™ プロセッサは「休ませるモジュールの面積が大きい」(飯島氏)。そのため、ほかのプロセッサと比べて、より消費電力を下げることができるという。
クロック周波数と性能、省電力の新しい関係 |
近年、プロセッサについての常識が大きく変化している。これまではパフォーマンス一辺倒で、クロック周波数が大きいプロセッサ=高性能なプロセッサだった。しかし、発熱や消費電力の増大で各プロセッサメーカーは、これ以上クロック周波数を上げることが難しくなった。そのため、クロック周波数を上げる代わりにコアを増やして並列で処理を行えるようにした。コアを増やすことで消費電力を抑えながら、性能の向上を果たしたのだ。これはプロセッサのパラダイムシフトだった。
ところが、多くのユーザーには高いクロック周波数=高性能、低いクロック周波数=低性能という昔のイメージが残っている。そのため、シングルコアのプロセッサとクアッドコアのプロセッサを比較して、クロック周波数が高いシングルコアのプロセッサの方が高性能と誤解するケースがある。クアッドコアAMD Opteron™ プロセッサも性能が誤解されることがたびたびあるという。「しかし、クアッドコアAMD Opteron™ プロセッサは低い周波数でもよい性能を出す」と飯島氏は強調する。「クロック周波数と性能はもう比例しない」のだ。
だが、プロセッサにはまだ比例する領域が残っている。それは「クロック周波数と消費電力」だ。製造プロセスが同じ場合、基本的にクロック周波数と消費電力は比例する。高いクロック周波数のプロセッサはそれだけ電力も消費するというわけだ。つまり、クロック周波数がほかのプロセッサと比べて低いAMD Opteron™ プロセッサは、消費電力が少ないということになる。
AMD Opteron™ プロセッサにすれば |
サーバやシステム全体における消費電力の違いは、最終的にどこに影響するのか。それはランニングコストである。上記のHPの検証データによると、クアッドコアAMD Opteron™ プロセッサを搭載するDL365 G5と、他社プロセッサを搭載した国産他社サーバの年間の消費電力を比べると、DL365 G5の方が1万2746円安いという結果が出ている(1kWh:15円の計算)。
この差だけでは実感がわかないが、大抵の企業ではサーバを10台以上稼働させているだろう。仮にDL365 G5を10台使っている場合は、年間で約12万円。1000台のサーバで大規模なシステムを運用している場合は、約1200万円の差が出る。この差はITシステムの予算管理する立場の者にとって、とても大きい。企業経営にも影響を与える額だ。だからこそ、プロセッサの消費電力だけでなく、サーバ全体の消費電力に注目する必要があるのだ。このような検証データや技術の特徴から飯島氏は「いま、あえてAMD Opteron™ プロセッサ搭載サーバを避ける理由はない」と断言する。
HPが持つ豊富なAMD Opteron™ プロセッサ搭載サーバ |
HPはそのクアッドコアAMD Opteron™ プロセッサ搭載のx86サーバを7ラインで展開している。ラックマウント型のサーバだけでなく、ブレード型サーバのモデルも用意。また、プロセッサを1基搭載するラインから、最大4基搭載できるラインまで幅広いラインアップがあり、顧客は求めるシステムの要件や予算に応じて選ぶことができる。これだけのラインアップをそろえるサーバベンダは国内にほかにないといい、HPがそれだけ、クアッドコアAMD Opteron™ プロセッサの性能と低消費電力を評価していることの証しと言えるだろう。
AMDからのコメント:「ワット性能を追求する」 |
AMDでは2003年に最初のAMD Opteron™ プロセッサ発表以来、業界に先駆けて、性能と消費電力の高次元でのバランス、つまりワット性能を追求した製品の提供を行っています。一定の電力枠で、より性能の高いCPUを提供することは、日本HPをはじめとしたサーバーOEMパートナーにおける製品開発を容易にするだけではなく、企業ITユーザーのサーバー運用におけるキャパシティプランニングの負荷を軽減します。 つまりITユーザーは電力キャパシティや冷却効率などを意識することなく従来のシングルコアで運用されていたサーバーを最新のマルチコアAMDプロセッサを搭載したサーバーに切り替え、システム全体のワット性能を向上させることができるのです。またCPUのみならず、低消費電力の業界標準メモリを採用するなど、サーバー、ひいてはシステム全体のワット性能向上に努めています。 日本AMD マーケティング&ビジネス開発本部 |
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提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社
企画:アイティメディア 営業本部
制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2009年1月23日
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