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@IT > ハードウェアを知り仮想化を知る技術者が実践的なノウハウを提供する |
日本ヒューレット・パッカード(HP)は、VMwareをいまや1つのOSと同じように考えているという。HPでは顧客に対し、適切な組合わせや構成を提案できるよう、WindowsやLinuxを搭載したハードウェアについて、事前にさまざまな機能および性能検証を実施している。VMwareの仮想化環境についても同様に機能、性能検証を詳細に行っているという。 同社 テクニカルセールスサポート統括本部 システム技術本部 IAサーバ技術部 エグゼクティブコンサルタントの飯島徹氏は、パフォーマンス検証センターで各種物理サーバのパフォーマンス検証をこれまで実施してきた。WinodwsやLinuxを搭載したマシンを顧客に提案する際に、適切なサイジングを行うための根拠となる技術的な数字を導き出し、それを社内・社外の技術者に提供してきたのだ。
「検証センターの目的は、実際の提案を行うための根拠となる数字を求めることだ。本当に顧客に適切なシステムサイズを提案するための根拠となるデータを求めている」と飯島氏。 マーケティング的に発表される性能を示す数値データなどは、ほかの製品や旧バージョンと比較してどれくらい性能が向上したかといったものになりがちだ。もちろん、それらのデータが悪いわけではない。仮にこのデータ上の性能が2倍に向上しても、現実的に顧客の行いたい処理が、従来に比べ半分の時間で終了するとは限らないということだ。 その検証センターでの検証対象に、2005年の12月からVMwareの仮想化環境が加わった。
「VMware Infrastructure 3が出てくるというタイミングで、仮想化ソフトウェアが本格的に利用され始めると予測し、VMwareの検証を開始した。この時点で、仮想化ソフトウェアもWindowsやLinuxなどのOSと同等な存在になったといえる。VMwareのような仮想化環境は、そんなに遠くない将来、仮想化ソフトウェアではなくOSの一種として位置付けられるようになると思う」(飯島氏) VMware仮想化環境の検証には、現在3人の専任者がいる。それに加え、専任者からのアウトプットを利用し、自ら手を動かし仮想化環境を担当するエンジニアが約60人いるという。パフォーマンス検証の結果は、もれなく社内に公開されており、さらにパートナーに公開できるものについては、積極的に公開している。社内・社外向けの技術セミナーの開催や、案件支援などにも積極的に対応しているとのことだ。検証センターの社内ポータルサイトについては、社内の技術者が最も利用するサイトだという。
パフォーマンスの検証には、さまざまな方法を用いている。業界標準のアプリケーションを利用してNFSサーバ機能(SPEC SFC)やMicrosoft Exchange Server(LoadSim)などの性能を検証するといったもの、さらに、独自にパフォーマンスを検証するためのアプリケーションを作成しているものもある。また、パフォーマンステストのツールとして定評のあるMercury LoadRunnerを利用してpop3/smtpサーバやWebアプリケーションの性能テストを行ったり、LoadRunnerと独自アプリケーションを組合わせてのテストも行っている。
「業界標準のアプリケーションやLoadRunnerだけではできない検証を、独自開発のアプリケーションで実施している。実は、標準的な手法では取れないところがかなりたくさんある。そういった部分について、自分たちで開発したアプリケーションを使って、かなり踏み込んだ詳細な検証を行っている。ここまでやらなくても、ある程度の提案はできるかもしれない。しかし、きちんと根拠になるデータを求めているというのがわれわれの特長だ」(飯島氏) 飯島氏は、単純な機能検証までは行っていても、詳細まで踏み込んだ検証を行っているベンダーは、まだ少ないだろうという。HPでは、例えばVMotionの機能であれば、何秒でリカバリが完了し、それはどの組合わせで起こり、条件によってどのように変化するかについても詳細にデータを取得している。 独自に作成した検証の内容は、受け身ではなく自分たちで能動的に考えているという。もちろんマーケティング部隊とは連携して市場ニーズを把握し、想定される現実的な顧客データを作成して検証に利用している。単なる製品の機能検証ではなく、あくまでも顧客に提案するためのノウハウを蓄積し、それを営業現場のフロントに立つ技術者が活用してプリセールス活動をすることになるのだ。 検証の方法自体は、物理サーバでも仮想化環境でもそれほど大きく変わるものではない。ただし、現時点で、仮想化環境特有な条件があり、踏み込んで検証作業を実施し、ノウハウを得る努力を行っている。例えば、1台で複数の仮想マシンが動くので、どうしてもリソースの奪い合いが発生し、それが結果的にボトルネックになることがあるという。また、ネットワークやハードディスクなどのI/O関連は、かなりの部分をホストマシンのプロセッサで処理することになる。仮想化環境でなければ、最近の物理サーバに搭載されているNIC(Network Interface Card)では、NIC側に処理がオフロードされCPUのリソースはほとんど消費されない。そのため物理サーバでこうだから仮想化でこうなるとは予測できず、実際に負荷をかけてテストをしてみないとどういう形でオーバーヘッドが発生するかは状況により異なるという。 「例えば、仮想化環境でCPU負荷が上がるということが分かったとしても、パフォーマンスモニターを見ただけでは、実際にはどこでボトルネックが発生しているかを突き止めるのは難しい。さまざまな角度からテストを実際に行わないと、その傾向をつかむことができない」(飯島氏) 仮想化においては現在のテクノロジの限界で、ボトルネックがプロセッサ負荷であるかのように(表面上)見えてしまう傾向がある。ボトルネックの本質的な原因はさまざまであり、その原因をつかめるというのがHPの強みとなっている。HPはワールドワイドで、さまざまなOSに対するハードウェア提供で高いシェアを誇っている。そのため、システムを普通に稼働させるうえでのトラブルはほとんどないという。つまり、土台となる稼働検証は米国の本社サイドで検証済みなので、日本サイドではハードウェアに搭載された新しい機能などを、いかに使い切れるかといった検証や、性能面の検証に注力できるのだ。
パフォーマンス検証センターでは、もともと物理マシンの検証を徹底的に実施してきたので、ハードウェアを知り尽くしている。例えば、最新のFully Buffered DIMM(FB-DIMM)メモリを搭載する際にも、メモリスロットへの差し方で性能がかなり異なるという。こういった細かいところにも、マニュアルなどには現れないノウハウがたくさんあるのだ。このハードを徹底的に知っている技術者が、仮想化についても検証してきているので、ハードウェアと仮想ソフトの組合せでトータルなパフォーマンスを引き出すことができるのだ。
「単体の機能を比べれば、物理マシンより性能が上がることはない。とはいえ、現状の仮想環境でも世の中の70〜80%のシステムについてはカバーできると思われる。さらに、複数台のサーバを仮想環境で動かすことでVMware HAやVMotion、DRS(Distributed Resource Scheduler)などの機能を利用できるため、単体のサーバよりも管理面などで有利となる」と語るのは、同社のテクニカルセールスサポート統括本部 システム技術部 IAサーバ技術部の池田拓也氏。 仮想化の根本的なメリットは、管理面が大きく変わるということ。バックアップ、リカバリなど仮想化特有の機能において、運用管理面をどのように効率化できるかで、仮想化環境を導入する価値が決まってくる。この部分に抵抗感があると、なかなか導入に踏み切れないかもしれない。それを解消するようなノウハウを提供するのも、検証センターの仕事となる。 実際、飯島氏や池田氏も検証を始める前は、疑心暗鬼な部分があったという。ところが実際にテストしてみて、現状の仮想ソフトがかなり使えるということを実感したという。 「実際に触ってみないと、仮想化環境についてはなかなか分からない。触るとよく分かる。特にVMware Infrastructure 3からは、運用面でもかなり楽になる機能が搭載され、仮想化のメリットを引き出しやすくなっている。OSは、今後どう考えても仮想化の方向に向かうと思われる。その商用版で、世界で最初に実用的な環境となったVMwareに携われるということに技術者として興味を持ち、ワクワクしながら取り組んでいる」(飯島氏) 今後は、ハードウェアやCPUに、仮想化をサポートする機能が続々と実装されてくることが、インテルやAMDなどからロードマップとして示されている。そのため、現状のボトルネックの多くの部分は、今後解消されていくと思われる。
提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社 企画:アイティメディア 営業局 制作:@IT編集部 掲載内容有効期限:2007年1月31日 |
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