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@IT > 仮想化の良さだけではなく、現実的な使い方を提案する |
2006年のIT業界で最も注目されているキーワードは、仮想化かもしれない。ハードウェア、ソフトウェアのベンダーはもちろん、メディアもこぞって仮想化システムのメリットを伝えている。仮想化により複数のシステムを物理的に1台のハードウェアに統合できれば、スペースを削減できるというメリットはもちろん、従来、単独のサーバではほとんど使い切っていないコンピュータリソースを平準化し、利用効率を向上させることが可能となる。 さらに、仮想化ソフトウェアの「VMware」で多く利用されているケースに、Windows NT 4.0などレガシー環境上のアプリケーションを、今後も継続して利用したいという要望に応えるものがある。Windows NTをサポートしない最新のマシン上に仮想化環境を構築し、古いアプリケーションを使い続けるといった利用法だ。仮想化により、ハードウェアとOSのライフサイクルを分離して、ベンダーの都合ではなくユーザーのビジネスの都合で、システムの寿命を決めることができる。ユーザーにとってはメリットの高い仮想化の利用法だ。
「仮想化の情報は、かなり行き渡ってきたと感じている。ユーザーからはこれまで、『仮想化とは何か』『いったい仮想化で何ができるのか』という質問が多かったが、現在は『仮想化をどう使うのか』といった具体的な質問へと変化してきている」。日本ヒューレット・パッカード(HP)のコンサルティング・インテグレーション統括本部の丸山昌平氏は、仮想化に対するユーザー意識の変化を指摘する。
丸山氏は、開発現場のコンサルタントとして顧客に近いところで仮想化システムの提案、構築を行っている。その活動の中で、仮想化に関する多くの情報が顧客の元に届くようにはなってきたが、メリットの情報が多く、デメリットの情報は伝わっていないと感じている。 顧客は、仮想化を導入したいという目的でベンダーに相談するわけではない。仮想化はあくまでも顧客の課題を解決する手段であり、仮想化の導入がそもそもの目的ではないのだ。物理的に増え過ぎたx86サーバを、なんとか集約したいというコンソリデーションの課題。さらに乱立するサーバ群の運用管理の効率化、標準化も同時に実現したい。これらが、結果的として仮想化環境の導入に結び付く。 ところが、仮想化によって解決する部分もあれば、仮想化で逆に問題が生じる部分もあるという。日本HPのコンサルティング・インテグレーション統括本部大久光崇氏は、その問題を次のように指摘する。 「1台の物理サーバに複数の仮想サーバを載せることには弊害もある。仮想化によって、CPU、メモリの集約は単純に達成できるが、運用管理やデータは集約されないからだ。例えば、統合するx86サーバ群が複数の部署にまたがっていると、集約した仮想化環境について『どの部署が管理責任を負うのか』、『どの部署が所有するのか』という問題が新たに発生する。また、ストレージが持つスナップショット機能を用いたバックアップを行う場合、仮想マシンごとのバックアップ可能な時間帯が異なる中、どのタイミングでバックアップ作業を行えばいいのかといった、運用面でも問題が生じる可能性もある」 仮想化で統合した後の、システムの運用管理は特に重要だという。そもそも、出自の異なるさまざまなサーバを物理的に統合はできても、運用管理の方法はバラバラのままだ。仮想化で統合する前に、仮想化後の運用管理方法および体制を標準化する必要があるのだ。 そのため仮想化を導入する際には、システムの運用管理担当者の理解を得ることが重要となる。仮想化環境における仮想ディスクや仮想スイッチなどの管理は、誰がどのように行うかを、あらかじめ考慮しておかなければならない。極端な話をすれば、従来であれば設置してあるサーバに直接出向いて、点灯しているLEDを確認する、バックアップ用のテープをセットするといった物理的な運用管理作業が可能だった。しかし、仮想化環境では、すべてをソフトウェア上で管理するというまったく異なる作業となる。 「従来であれば、ハードウェアを追加する際にはあらかじめ計画を立て、予算を申請して購入、導入、セットアップするという段取りがあったが、VMwareであれば簡単に仮想化マシンを増やすことができる。CPUだけでなく、システムにディスクを追加するといった作業をどのように実施するかルールを決めておかなければならない。ある顧客では仮想化環境の運用に責任を持つ管理担当者を、別途設けたという事例もある」(丸山氏)
仮想化は、ソフトウェアの品質の向上やハードウェアベンダーの積極的な対応などもあり、導入については技術的な敷居はかなり低くなったという。 実際の導入の際には、技術的なノウハウはもちろん、“人間系”の部分が重要だ。この人間系の運用管理も含め、きめ細かい提案ができるのが、HPのコンサルティングサービスの強みだという。 「コンサルティングサービスでは、人間系を含んだ運用管理の部分を提供できる。仮想化システムをどうやって構築するかだけでなく、どうやって使うのかをきちんと提案しなければならない。仮想化の甘い部分だけを並べて提案するのではなく、こういう使い方をすると問題となるという苦い部分もきちんと伝える。現状では、むしろその苦い部分のノウハウが顧客から評価されている」(丸山氏)
この現実的な提案をするためには、たくさんのノウハウが必要。HPのコンサルティングサービスの後ろには、HPが経験してきた数多くの事例がある。国内だけでなく世界中の事例を蓄積し、WindowsやLinux、HP-UXといったOSと同じレベルで、VMwareの社内技術コミュニティが形成されている。技術コミュニティは、ありとあらゆる世界中の技術ノウハウを集約。特に欧米では、日本より企業がITサーバの導入に積極的で、コンソリデーションの活用事例は豊富だという。HPのコンサルタントやプリセールス技術者は、そこに蓄積された最新ノウハウをいつでも活用できるのだ。 例えば、開発環境に仮想化を利用するメリットもよく取り上げられる。実運用の環境と同じ環境を開発用に用意するのは難しいので、仮想化で簡単に切り出して開発に利用する。出来上がったソフトウェアの導入も、ネットワーク越しに仮想化環境をデプロイしてしまうだけで簡単に終了する。実運用のマシンで新たに環境をインストールし、セットアップしてといったステップは必要ない。 もちろんこれでうまくいく場合もあり、その場合は確かにメリットは大きい。しかしながら、うまくいかないこともある。例えば、開発環境と実運用環境では、サーバ自体でも IP アドレスやドメインが異なる。また、サーバの周辺でも DNS、NTP、ルーティング情報、セキュリティレベルなどが異なってくる。これらの差異を十分に把握し、吸収することが重要となってくる。 また、物理システムではサポートされている市販のソフトウェアが、仮想化環境では正式なサポートが受けられない場合もある。この場合にリスクを承知で仮想化環境を選択するのか、このソフトウェアだけを物理サーバで別に運用するのかといったことを、あらかじめ考える必要がある。メリットとリスクは同時に発生し、その発生状況は顧客の環境やシステムの目的などによって変化する。このケースバイケースの部分を提案できるのが、HPの仮想化システムでの実績なのだ。 HPの仮想化の実績を示す例として、次のようなケースがある。日立製作所の運用管理ソフトウェア「JP1」については、HPのハードウェアでHPからソフトウェアを提供するのであれば、仮想化システムであっても正式な運用環境として認証される。これは、HPの仮想化環境での実績があるからこそ実現できたことだといえるだろう。
HPでは仮想化を促進するために、さらにさまざまなサービスを準備している。 「顧客の既存環境を分析し、仮想化でコンソリデーションを実施した際の適切なサイジングを行うサービスを、体系立ててメニュー化していく予定だ。このサービスではITキャパシティ分析/プランニングツールの VMware Capacity Planner が用いられる」(大久氏) 新サービスをうまく活用すると、短期間で現状のシステムを正確に棚卸しでき、コンソリデーション後の仮想化構成の提案だけでなく、ITの資産管理にもつながるという。10〜20台程度のコンソリデーションであればそれほど心配はないが、100〜200台と規模が大きくなると、サイジングの際の誤差が問題になる。50台以上のコンソリデーションを計画しているのであれば、HPのコンソリデーションのサービスをぜひ検討して欲しいと大久氏は語った。 また、仮想化システムを構築、運用する際のノウハウを集約し、定型サービスとして提供する。前出の丸山氏が心掛けているのは、顧客に使い方を理解してもらうこと。導入は一時的だが運用は継続していく。継続的な運用コストを考慮したトータル的なサービスを提供するという。 「仮想化システムの構築をパッケージ化して、顧客に対してサービスの内容を明確化していく。バックアップについてはすでに提供しているが、今後さらにたくさんのオプションを用意していく予定だ。特に、運用の部分にフォーカスしたサービスを加えていきたい」(丸山氏) 仮想化環境の企業の採用は、今後さらに加速するであろう。その際には、仮想化のメリットだけでなく継続的な運用管理を含めて、中長期的な視野で検討する必要がある。仮想化システムの成功のためには、実績のあるパートナーとの出会いが重要な鍵となりそうだ。
提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社 企画:アイティメディア 営業局 制作:@IT編集部 掲載内容有効期限:2007年1月31日 |
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