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@IT > 5分で分かる! サーバ仮想化のメリット |
マネジメント層から見ると、「ITはなぜこんなに金が掛かり、面倒が多いのだろう」という印象になりがちです。こうした状況を打開する技術の1つとして、ITの世界ではいま「サーバ仮想化」が話題になっています。サーバ仮想化は、IT部門の人たちだけではなく、経営トップの方々にこそ考えていただきたい問題だともいえます。「そうはいっても、何がメリットなのか分からない」とお思いの方に、「5分で分かる! サーバ仮想化のメリット」をお届けします。
サーバ仮想化とは、単一のサーバをあたかも複数のサーバであるかのように使える技術のことです。サーバ仮想化では、単一のサーバ機の上で、アプリケーションだけでなく、コンピュータの基本ソフト(OS)の部分までを含めて複数に分割して動作させることができます。このOSからアプリケーションまでを含めた「仮想サーバ」は、単一のサーバ上で動いていてもお互いに悪影響を及ぼしません。ある仮想サーバのソフトウェアがダウンしても、ほかの仮想サーバは別のOS上で動いていますので、道連れになってしまうことはありません。サーバの動作の管理も個別に行うことができます。サーバ仮想化はこのように、複数の物理サーバで行っていることをほとんどそのまま、単一のサーバでできるようにする技術だといえます。 高度なサーバ仮想化技術では、仮想化をベースに各種の付加価値が実現できます。1つは物理サーバのメモリやCPUなどの資源を予備としていつでも利用できる状態で蓄えて(「プーリング」と呼ばれます)、これを複数の仮想サーバのいずれもが利用できるようにしておき(「共有化」と呼ばれることがあります)、特定の仮想サーバの処理負荷が高まったときにその場で稼働を止めずに資源の割り当てを追加することです(「プロビジョニング」と呼ばれます)。また、仮想サーバやアプリケーションを即座にサーバ上に実現することもできます。
複数のサーバで行ってきたことを単一のサーバで実現するサーバ仮想化技術を使えば、社内に存在する多数のサーバを無駄なく、少数にまとめることができます。これは「サーバ統合」と呼ばれることがあります。サーバの台数を減らすことができるわけですから、コスト削減につながります。もちろん、サーバ仮想化に利用するサーバは、別個に業務ソフトを動かしていたサーバよりも堅牢で高性能なものでなければなりません。しかし、特に「見えないコスト」も含めて考えると、全社的なコストが大幅に削減できる可能性があります。 これを考えるには、まず社内で何台のサーバが稼働しているかを知る必要があります。多くの企業では、全社的なソフトウェアとは別に、各業務部門がさまざまなソフトウェアとそのためのサーバを自らの権限で購入し、利用しています。このため社内に存在するサーバの数を把握できていない企業が多いのが実情です。国内企業でも、調べてみると社内で1000台を超えるサーバが稼働していることが分かったというケースがあります。しかも、ほとんどの企業では、こうした部門レベルのサーバの利用率は10%程度で非常に低く、せっかく調達した資源が事実上遊んでいる状態になってしまっています。
各業務部門が個別にサーバを導入し、運用しているために、各部門におけるサーバの購入、運用コストは分かりにくくなっています。しかしこれを「見える化」してみると、実際には膨大なコストであることが分かります。サーバ本体のコストもさることながら、有形・無形の運用コストを含めて考えると、ばらばらに運用するよりもまとめて管理したほうがコスト削減余地の大きいことは明らかです。 サーバの利用に関するコストでは、運用管理のための人件費が大きな割合を占めています。人件費はサーバ台数の増加にほぼ比例します。サーバ仮想化によって、管理対象となるサーバ機の数を減らすことは、人件費の抑制と削減に大きく貢献します。また、多数のサーバ機を稼働させることは、大量の電力消費と発熱につながり、環境コストの点で非常に不利になります。企業の社会的責任として環境コストの抑制がますます求められるようになってきていることを考えても、サーバ仮想化を活用してサーバの台数を減らす必要があります。
各システムをそれぞれ別個のサーバ機で稼働していると、システムの安定稼働という点で管理が難しい面があります。特に問題となるのは処理負荷のピークへの対処です。例えば経理関連のシステムでは、毎月の月末や期末にアクセスや処理の負荷が集中します。経理システムを専用のサーバ機で稼働している場合、膨大なコストをかけて、処理負荷のピーク時にも問題なく稼働するように、余分な処理能力を備えたハードウェアを調達しなければなりません。 しかし、システムごとのピークには時間的なずれがあります。サーバ仮想化技術を使って複数のシステムがサーバの処理能力を共有できるようにしておき、システムのピークのずれをうまく生かせば、サーバ機のCPUやメモリの全体としての利用効率を高めながら、個々のシステムのピークに対しても効率的に備えることができます。 社内で多様なアプリケーションがばらばらに使われていることからくる非効率、そして管理の不十分による稼働レベルの低下という問題を解消するために、アプリケーションを社内で統一したり、サーバ統合に取り組んだりする企業が増えています。しかし、こうした取り組みは業務部門の抵抗を受けがちです。 理由の1つは、アプリケーションを社内で統一しようとする場合、業務部門にとっては従来から使い続けてきたシステムの使い勝手が失われてしまう懸念があることです。しかし、サーバ仮想化技術を使ったサーバ統合なら、各業務部門がこれまで使ってきたシステムをそのままの状態で、仮想サーバに引っ越すことができ、従来の使い勝手をそのまま保つことができます。古いOS上でしか動かないようなシステムでも、サーバ仮想化を使えば新しいハードウェアにいつでも移行できるようになるので、古いシステムを延命させながら、パフォーマンスを上げられる可能性も出てきます。 また、業務部門はサーバ統合について、単一のサーバ上でほかの部門とアプリケーションを共有すると、レスポンスが低下したり、不安定になったりしてしまうのではないかという心配を感じることもあります。 しかしサーバ仮想化では、各仮想サーバの動作はほかの仮想サーバと隔離されるため、ある部門のための仮想サーバがダウンしたとしても、ほかの部門のサーバが一緒にダウンすることはありません。また、各仮想サーバへの処理能力の割り当てを%単位できめ細かく管理することもできます。そうすれば、ほかの部門のサーバの処理が増えた影響で自部門の仮想サーバのレスポンスが低下するという心配もありません。逆に、各アプリケーションにふさわしいレスポンスを、情報システム部門による十分な管理の下で実現することができるようになります。その際に、各業務部門の利用した処理能力に応じて、各部門に費用を賦課することも可能です。
サーバ仮想化技術を使ったサーバ統合には、業務部門にとってありがたいことがたくさんあります。 まず業務ソフトをすぐに利用できることです。現状では、新しい業務システムを構築したい場合、業務部門ではまず稟議書を作成してサーバを購入し、ソフトウェアの各種設定を行ったのちに稼働を開始します。この一連の作業には、どう少なく見積もっても1週間、場合によっては1カ月以上かかります。しかし、同じことをサーバ仮想化で行えば、利用したいと思ったら即座に利用開始することも可能になります。これは、サーバ仮想化の場合、サーバは設定1つで作り出せるからです。 業務部門レベルの業務システムのなかには、構築当初はどれだけ使われるようになるかを予測できないこともよくあります。このため、オーバースペックなサーバ機を買わざるを得ないケースがよくあります。しかしサーバ仮想化技術では、稼動開始後に各業務システムの利用状況に応じて個々の仮想サーバへのCPUやメモリの割り当てを変更することにより、利用状況の変化に柔軟かつ迅速に対応することができます。
サーバ仮想化では、業務システムの開発やエラーの原因追求も非常にやりやすくなります。本番機と同一の環境を即座に作り出すことができるからです。システム開発でサーバ仮想化技術を用いると、仮想的な開発機を即座に調達し、不要になったら処分できるほか、開発環境を統一化できるために分散的な開発作業の統合が安心して行えます。また、システムエラーの原因追求も、サーバ仮想化技術で本番システムと同じ環境をつくることで、本番システムの稼働を止めずに行うことができるようになります。
マネジメント層にとっての関心事は、ITがビジネスにどれだけ役立つのかということにあります。サーバ仮想化はビジネスとITの整合性向上により、ITの利用効果を高めることにあります。 サーバの調達や処理能力増強に多大な時間を要してしまうため、ビジネス側からの要請にITが満足に対応できず、市場機会を逸してしまったり、システムの予期せぬ停止を招いてしまったりすることがあります。これはすなわち、ITとビジネスの整合性が十分でなく、ITがビジネスの足を引っぱっているともいえます。企業全体としては十分すぎるほどのコンピュータ資源があるにもかかわらず、それを迅速に最適な分配ができないために、売り上げを最大化できないわけです。サーバ仮想化を利用することは、物理的なサーバを分散的に利用することに起因するこうした不整合を改善し、無駄のないITシステムを実現することと同義です。 多くの大企業では、重要ではあっても他社との差別化につながらないシステムに対して過剰な資源が投資され、必要以上のサービスレベルが提供されています。しかし企業にとって重要なのは、他社との差別化をもたらす要素に対し、資源を意識的かつ継続的に再配分していくことです。柔軟で機敏なITシステムを可能にするサーバ仮想化は、ITをビジネスに摺り寄せるための重要な契機となります。だからこそ、ITのプロだけでなく、マネジメント層に理解していただきたい技術なのです。 「でも、サーバ仮想化って本当に使いものになるのだろうか」「運用管理が複雑になりそうで不安……」とお思いの方は、次回の『サーバ仮想化の運用管理』をお読みください。日本ヒューレット・パッカードが、仮想化環境の運用管理におけるデメリットを緩和し、仮想化によるメリットを最大限に高める方法について運用管理者の視点から説明します。
提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社 企画:アイティメディア 営業局 制作:@IT 編集部 掲載内容有効期限:2007年2月28日 |
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