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クラウドサービスは、ITにおける最大のトレンドだ。いま、サービスの選択肢がどんどん増えつつあり、ユーザー企業側の関心も高い。そうしたなか、オンラインバックアップに特化したクラウドサービスを15年前に開始し、いまやフォーチュン1000にリストされる企業の多くに利用されている企業があるという。その企業、アイロンマウンテンデジタルの日本法人社長であるガース・ラムジー氏に、@IT編集長の三木泉がインタビューした。
いまでこそクラウドが大ブームだが、アイロンマウンテンデジタルは、PCのオンライン・バックアップサービスである「Backup for PC」を15年前に開始、その後オンラインサーババックアップサービスの「LiveVault」など、クラウドストレージサービスで幅広いラインアップを展開してきた。15年前というだけでもIT業界においてはかなりの昔だが、これらのオンラインサービスは、60年近く前から同社が続けてきた重要書類やマイクロフィッシュの保管サービスで得た信頼がベースとなっているのだという。
欧米の大企業は、重要データをなぜ外部に委託するのか
三木 アイロンマウンテンデジタルの名前は、かなり前から米国のニュース媒体などで目にしていました。一番不思議に思ってきたのは、欧米企業がオンラインストレージのサービスを使う勇気をなぜここまで持てるのかという点です。データ保護に関する法規制が整備され、データの漏えいや改ざんを防ぐことには神経質になっている米国で、なぜ多くのデータ保管を外部に委託しているのでしょうか。
ラムジー 最近は特にそうですが、どの企業もコスト削減のソリューションを探してきました。クラウド・ストレージが流行ってきたのは、コスト削減ができるためです。そのうえで、データを外に預けるならどこが一番いいかをお客様は選択します。
アイロンマウンテンデジタル 日本法人社長
ガース・ラムジー氏
アイロンマウンテンは、これまで58年間もインフォメーション・マネジメントをやってきた会社です。企業のために書類を保管するサービスから始め、コンピュータ利用の広がりとともにバックアップ・テープの保管、そして15年前からバックアップ・データをネットワーク経由で転送していただいて保管するサービスを提供しています。その間、ずっと1つのことしか考えてきませんでした。それは、お客様のデータをしっかり管理するということです。こういうDNAがある会社はほかにないと思います。米国では、フォーチュン1000にリストされる企業の93%がアイロンマウンテンのお客様です。世界中の企業および公共機関のデータもアイロンマウンテンが管理しているという話をすると、そこまでの信頼性ならば大丈夫だろうという話になります。
アイロンマウンテンには15年にわたるクラウド・ストレージの経験があります。セキュリティおよびデータの一貫性保証は、われわれのサービスの基盤となっています。
例えば、保管するデータは256ビットのAESで暗号化しています。復号するにはパスワードと暗号鍵が必要で、お客様しかできません。われわれが調べても見えない。だから金融関係でも利用されているのです。また、基本的にはバックアップ対象のディスクドライブにしかリストアできません。別のディスクにリストアしたい場合は、そのディスクに暗号鍵をまずインポートしなければならないのです。暗号鍵も暗号化しているので、そのパスワードも必要です。セキュリティは厳重です。管理者権限についても、上位の管理者はすべての機能を使えるが、下位の管理者はバックアップ以外の作業ができないといったことをお客様によって自由に設定できます。監査ログもあるので、誰が何をやったか、全部レポートできます。
三木 もしお客様のデータがなくなったとか、復旧しようと思った時にサービスが止まっていたという場合、止まっていた間の料金を返しますということでは済まないのではないですか?
ラムジー サービスレベルについては、お客様と最初にコンサルティング的な話し合いをします。言えることは、データを外部に預けるなら、まず財務状況のしっかりした会社であることが大前提だということです。アイロンマウンテンは1兆円程度の財務規模ですから、小さい会社ではありません。次に必要なのがセキュリティで、次がSLAです。われわれは99.999%の稼働率を提示していますし、業界最高レベルのSLAを持っていると思います。
当社のサービスは冗長構成がしっかりしていて、多数のデータセンターにミラーリングしています。だから稼働率99.999%を実現しているのです。24時間365日の管理も提供しています。同じことをお客様が自分でやるとしたら、大変な投資が必要です。アイロンマウンテンのサービスを使えば、必要な分だけの料金を払って高度な可用性やセキュリティを享受できます。
本サービスは米国が発祥ですが、もちろん日本のお客様のデータは日本国内のデータセンターにてお預かりしています。
バックアップサービスのコスト削減効果をどう考えるか
三木 新しくITシステムを導入する場合はメリットが明快ですが、従来からあるシステムでそれなりにバックアップをしてきていると、人件費や管理のコストが表に出ません。アイロンマウンテンを使うと、この部分が表に出ることになりますね。つまり、見かけ上は必ずしもコスト削減にならないのでは。
ラムジー 会社によります。小さな会社では、インフラストラクチャ導入に関して莫大な予算があるわけではないので、コスト削減効果はあまり見えないかもしれない。その点、アイロンマウンテンが提供しているようなPay-as-you-go(利用量に応じた課金に基づく)サービスの場合は、費用対効果を測定しやすく、コストプランニングにも優しいでしょう。一方、例えば大手金融機関で全国に支店があり、各支店のサーバをバックアップしている場合、かなりの人件費が必要です。支店のスタッフに十分な管理ができるかというと疑問です。アイロンマウンテンのサービスなら、1つのコンソールから全拠点のバックアップを管理できます。
日本でも紹介している弊社の事例ですが、全国600カ所に支店があって、各拠点にサーバ管理者がいて、それぞれ考えが違う。使っているバックアップ製品も違うし、バラバラなやり方でバックアップしていました。これをアイロンマウンテンのサービスに統合することにより、1人で管理できるようになりました。これによるコスト削減は年間1.5億円です。
コスト削減効果がすぐに出るかどうかは企業規模やそれまでのバックアップのやり方によりますが、コスト削減だけでなくそのデータがどのくらい大切かということが重要です。データによっては、従来のテープバックアップで大丈夫でしょう。しかし、データベースやメールサーバといったビジネスクリティカルまたミッションクリティカルなデータでは、1日1回しかバックアップしていないと、もしデータが破損したら1日間あるいは2日間のデータがなくなる可能性があるということです。その大切なデータを、最大1日96のリカバリポイントまで提供するわれわれのLiveVaultサービスなら保護できる。そういう重要なデータがわれわれのサービスのターゲットです。
クラウド・ストレージは経費化と効率をもたらす
三木 アイロンマウンテンは「クラウド・ストレージ」という言葉を使っていますが、どういう意味でこの言葉を使っているのですか。
ラムジー 簡単にいうと、お客様が自分のインフラを買う必要がない、オンラインですぐに拡張できる形のもの、という米マッケンジー・グループの説明が当社の考えと同じです。その条件は、ハードウェアの管理をバイヤーから分離し、サービスプロバイダにまかせる、そして投資ではなくオペレーションに対する料金という形で支払い、拡張性が高い、の3点です。
例えば、1TBのストレージが必要であるという場合、自社で買うなら1TBのものは買いませんね。5年先を考えて、いまのデータの増加度合いから考えて多分5TB必要だろうと思えば5TBのストレージを買います。すると、5年後は5TB使うかもしれないが、現時点では4TBは使っていないわけだから、その分の金額はもったいない。それがサービスの形にすると、今日1TB必要なら1TB、明日1.1TB必要なら1.1TBという利用ができます。最初に5TB分のコストは必要ない。ビジネスプランニングに対してより詳細なコストプランニングが可能になります。これはわれわれだけの考えではなく、いろいろなベンダがいっています。
われわれのクラウドストレージソリューションのポートフォリオとして、クライアントバックアップ「Backup for PC」も提供しています。クライアントバックアップは、ライセンスストウェアでの提供もしています。日本ではいずれも弊社のリセラーおよびパートナー経由で販売しています。また、バックアップ以外にも、VFS(バーチャル・ファイル・ストア)の製品とASP(アーカイブ・サービス・プラットフォーム)に取り組んでいます。今は米国だけですが、将来は日本にも入ってくるでしょう。
ASPというのは一番下のレイヤで、APIレイヤを持ち、ほかのベンダやインテグレータの製品からアクセスすることができ、すべてのデータがアイロンマウンテンのストレージに入ってくる。多くのベンダやSIerは、アーカイブ製品は作れてもバックエンドのストレージインフラは作れない。しかし、彼らのお客様もPay as you goでやりたい。そこで、アイロンマウンテンのストレージサービスが受け皿になるということです。当社のストレージで受け入れたデータを、お客様は検索・活用できます。ただ保存するというだけでなく、当社の哲学であるデータ活用のメリットも受けられるのです。
聞き手:
アイティメディア株式会社 @IT編集部
編集長 三木泉
三木 自社でバックアップするのではなく、アイロンマウンテンのクラウドストレージサービスを利用することで得られるメリットは何ですか。
ラムジー 投資金額が必要ないことと、そして24時間の管理とモニタリングという点ですね。例えば、自分でテープにバックアップしている場合、テープはリカバリータイムが大きいことが問題ですが、バックアップタイムも時間がかかります。例えばテープに大きなデータを入れるのには8時間かかることもある。8時間かけて次の日までかかってテープにバックアップを取っているが、その8時間のあいだ誰もモニタリングしていないので、どのようにバックアップが取れたのか取れなかったのか、正直分からない。次の日にテープが終わったらそれを交換するだけです。
しかし、われわれのサービスでは、データの一貫性に関するいろいろなチェックがあります。ユーザーは、1日で最大96回のバックアップまで可能な継続性バックアップのスケジュール設定が可能であり、その中でユーザーが任意にスケジュールを設定できます。データの一貫性チェックという点から、われわれが、24時間、7日、365日間常に包括的に監視しているので、ユーザーは、バックアップが確実に取れている保証があり、安心してその場を離れることができます。
テープバックアップではそんなことはできませんね。これが大きなメリットではないでしょうか。
災害復旧(DR)の点でも大きなメリットがあります。事業継続性はもちろん大切ですが、テープではそれが保証できない。以前はテープでないと大容量のバックアップができなかったが、今はそれがオンラインバックアップで可能になりました。
まずはクラウド・ストレージのベストな活用法を広めたい
三木 いまの日本の市場の状況をどう考えていますか。
ラムジー うまくいっていると思います。日本でのビジネスは8年目です。2007年には日本法人も設立しました。多くのパートナー、リセラーと共に、しっかりした足場を築いたところです。8年間ですからそれなりに歴史はあると思います。お客様の評判も上々です。毎年数回バージョンアップしています。日本のお客様はアフターサポートやバグフィックスを一番心配しているでしょうから、それはしっかりやっています。ユーザーさんもパートナーさんも、それは理解していただいています。
LiveVaultは今年の4月にホスティングパートナーと組んでサービスインしました。それからかなり多くの会社に興味を持っていただいています。実はサービスインより前に、ベータ版の形で導入していただいた会社も2、3社あります。やはりオンラインバックアップはコスト削減もできますし、データがきちんと使えるという点でもメリットがあります。バックアップを取ることとそれをいざという時に本当に使えるというのは同じではないので。
テープだと本当にバックアップできているかどうかは戻す時にしか分からない。ほとんどの管理者はバックアップログも読めません。専門家でないと分からないのです。ミッションクリティカルなデータや大きなExchange Server、SQLやOracleなどのデータベースで利用されることが多いですね。トランザクショナルなデータベースでも、われわれはオープンファイルハンドリングができますから。今はそこまでの考えがないとベストプラクティスではありません。
LiveVaultはアプリケーションに特化したプラグインのライセンスは必要ありません。他の製品ではSQLのプラグイン、Exchangeのプラグイン、Oracleのプラグインと個別に必要でそれでコストがかかってしまうものもあります。ベースのバックアップソフトはさほど高価でなくても、違うものをバックアップするにはそれ用のプラグインが必要ということがあります。LiveVaultではそういうことがまったくありません。
三木 日本ではまだ競合となるような企業はでてきていませんね。
ラムジー もちろん、オンラインストレージを扱っている会社はありますが、われわれは独自の技術をもっています。そういう意味では、まだいないかもしれません。われわれはビジネスですから利益は追求しますが、まずはお客様にベストプラクティスなやり方を知らせたいと思います。会社の一番大切なものはデータです。それをしっかり守ってくださいと。われわれは日本だけでなくグローバルにデータ保護をやっています。そのためグローバルでの使い方も知っています。製品の機能にももちろん自信はありますが、経験、ノウハウ、デリバリ、会社の財務体質など総合的に見て、当社には強みがあると思います。
●「LiveVault」の詳しい情報は、ホワイトペーパーとして公開されている。興味ある読者はこちらも参照されたい。
「LiveVault」の詳細はこちらのホワイトペーパーで公開しています | ||
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提供:アイロンマウンテンデジタル株式会社
アイティメディア営業企画
制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2009年12月31日