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Insider.NET編集長 一色政彦が実践している 技術情報検索術 〜技術情報の宝庫「MSDNオンライン」を賢くシンプルに活用〜 |
マイクロソフトの技術情報を網羅的に提供するサービスであるMSDN(Microsoft Developer Network)。そのWebサイト版として「MSDNオンライン」が無償で提供されている。圧倒的な情報量なのだが、あまりに情報量が膨大過ぎるため、MSDNオンラインをトップ・ページからドリルダウンしていき、欲しい情報を見つけ出すという使い方は現実的ではない。
やはり、ほとんどの開発者は「Webで検索を行ってMSDNオンラインのページがヒットしたら、そのページを開いて内容をざっと確認し、再び検索ページに戻って、ほかのオンライン・リソースにも当たってみる」という技術情報の検索をしているのではないだろうか。確かに、このような情報検索の方法が「より効率的」という場面もあるだろうが、MSDNオンラインを上手に活用すれば、情報検索にかける時間や手間をさらに節約できる可能性がある。本稿では、@ITの.NET技術フォーラム「Insider.NET」編集長の一色政彦が、日ごろの原稿執筆などで実践しているMSDNオンラインの情報検索のコツを紹介する。
技術情報の検索の目的には、主に以下の2つがあるだろう。
- コーディング時のAPIの使い方やサンプル・コードの検索
- 学習時の入門的な概要記事や技術解説記事の検索
それぞれに分けて説明する。
■コーディング時の情報検索テクニック
「MSDNオンラインは、サンプル・コードの宝庫だ」ということを、ご存じだろうか。コーディング中に、「クラスやメソッドの使い方を調べたい」という場合には、外部のオンライン・リソースのTIPSやブログ、記事などを探すよりも、最初にMSDNオンラインを調べた方が時間の節約になるケースが多い。
筆者が「MSDNオンラインは便利」と思う最大の理由は、何よりもMSDNオンラインなら、サンプル・コードが簡単に手に入るからだ。そこで、筆者が普段どのようにしてサンプル・コードを探しているのかを紹介しよう。
●【1】サンプル・コードの検索
まずは、GoogleやBingなどの検索エンジンでMSDNライブラリを検索することから始まる。検索時のポイントは、検索キーワードの後に「site:msdn.microsoft.com/ja-jp/library」というサイト指定を含めることだ。だが、サイト指定を毎回入力するのは面倒である。そこで、筆者がお勧めしたいのは、MSDNライブラリ用の検索ページを自分用に用意することである。
その例として、下に検索ボックスを用意したので、取りあえず本ページをそのままブックマークして活用してもよい。検索ページのサンプル・コードはこちらからダウンロードできる。また、サイト指定だけでなく、具体的な検索ワードもポイントになってくるだろう。MSDN検索術サイトでは、「エラー・コードを調べたい」といったシナリオ別に検索ワードの実例を紹介している。一歩進んだ検索術をまとめてダウンロードでも提供しているので、参考にしてほしい。
MSDN ライブラリ |
ここでは例として「Math.Ceiling」という用語で検索してみよう。検索結果ページの最上位に[Math.Ceiling メソッド (System)]がヒットするので、これをクリックして開く。
開かれたページを見ると、下の表のように、このメソッドには複数のオーバーロード(=名前は同じだがパラメータが異なるメソッド)が提供されているのが分かる。
オーバーロードの一覧名前 | 説明 |
Math.Ceiling (Decimal) | 指定した 10 進数以上の数のうち、最小の整数を返します。 |
Math.Ceiling (Double) | 指定した倍精度浮動小数点数以上の数のうち、最小の整数を返します。 |
【活用ヒント】ビューの選択 |
(本稿執筆時点では)MSDNオンラインは下記の3種類のビューを提供しており、ページ右側の上部もしくは下部に表示される項目から切り替えられる。
本稿の例では、ライトウェイト・ビューで表示する。なおクラスやメソッドを探す場合は、表示速度は遅くなるものの、表示される情報量の多いクラシック・ビューの方が、実は便利である。 |
【活用ヒント】英語から日本語への切り替え |
開いたMSDNオンラインのページが英語だった場合、クラシック・ビューにして上部の右側の方にある言語選択から[日本語 - 日本]を選択するか、URLアドレスの「en-us」の部分を「ja-jp」に書き換えて再表示してみるとよい。日本語が提供されていないページもたまにあるが、これで日本語情報が表示できる場合も多い。 |
今回は、(上の表にもある)[Math.Ceiling メソッド (Decimal)]リンクをクリックする。今回の目的はサンプル・コードを発見することなので、ともかくページを最後までスクロールしてサンプル・コードがあるかどうかを確認してみよう。
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図1 メソッドのページ |
今回の例では、サンプル・コードは掲載されていない。次に、ほかのオーバーロード・メソッドのページでもサンプル・コードを探してみよう。
●【2】オーバーロードされたメソッドのページを確認
取りあえず、すべてのオーバーロード・メソッドのページを開いて、そのどれかにサンプル・コードがないか、一通りざっと確認してみる。手順としては、(前述の検索後に表示した)オーバーロード・メソッドのインデックス・ページを再び開き、そこに掲載されているページのリンクを、それぞれタブで開く(※ここではInternet Explorer 8のようなタブ・ブラウザを想定している。タブで開くには、[Ctrl]キーを押しながら左クリックすればよい)。本稿では[Math.Ceiling (Double)]のページを開く。
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図2 オーバーロード・メソッドのページ |
今回の例では、目的のサンプル・コードが見つかった。このように、大半の場合、オーバーロード・メソッドのページを確認した段階でサンプル・コードが見つかる。残念ながらサンプル・コードが掲載されていない場合は、クラス自体のページを参照してみよう。
●【3】クラスのページを確認
今回の場合、左側のツリーから[Math クラス]を選択して、クラスのページを開く。多くのクラスでは、クラスのページに何らかのサンプル・コードが掲載されているので、コーディングの参考にできるだろう。
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図3 クラスのページ |
●【4】そのほかのメンバのページを確認
それでもサンプル・コードが掲載されていないという場合は、望みは薄いが、最後にコンストラクタなど、めぼしいメンバのページも確認してみよう。サンプル・コードが見つかればラッキーだが、見つかりそうになければ、インターネット上のほかのコンテンツをグローバル検索するしかない。とはいえ、筆者の経験からいえば、このような事態になることはほとんどない。
以上が、筆者がサンプル・コードを探す手順である。
■学習時の情報検索テクニック
MSDNオンラインは、とても読み切れないほどの情報量である。.NET技術を習得するうえで、どこからどこまでを読めばよいのかは誰にも分からない。以前はそれが、初学者がMSDNオンラインを敬遠する一因となっていた。しかし現在マイクロソフトは、「.NET技術を学びたい」という開発者に対して、より親切なコンテンツ作りに積極的に取り組んでいる。ここでは、そのような学習時に有用なページを簡単に紹介する。
●.NET Framework学習者向けのステップ・バイ・ステップ
.NET Frameworkの初学者にとってMSDNオンラインはあまりに取っつきにくい。その反省から最近、新たに作成されたのが、ステップを踏んで順番に学習できるようにするナビゲーションである。初めて.NET Frameworkを学ぶ人は、ほかのMSDNコンテンツは見ずに、まずは「.NET Frameworkコンテンツ・ナビゲータ」のみをマスターしてみることをお勧めする。
●技術を学べる入門的なサンプル・コード集
.NET技術の新陳代謝は速く、次々と新しい技術が登場する。そのため、初学者でなくとも、それらの新技術をどうやって使えばよいのかを学ぶ必要がある。その学習時に最適な、入門的なサンプル・コード集「Code Recipe」が提供されている。このコンテンツは、日本人エンジニアが日本語で分かりやすく説明することを心掛けて作成されているので、翻訳コンテンツよりもはるかに理解しやすい。
●標準レベルの技術解説記事
.NET技術の基礎をある程度理解できたら、その次のステップが欲しくなる。そのような場合には、各技術に詳しい人が日本語で技術紹介を行っている「Tech Fieldersコラム」を読むのがお勧めだ。
●高レベルの技術解説記事
さらに高度で実務レベルの技術情報を学びたい場合は、「MSDNマガジン」がお勧めである。ただし、MSDNマガジンは技術レベルが高いエンジニアを読者対象としているので、初学者が読むのには向いていないものが多い。
■
マイクロソフトの独自調査によると、MSDNオンラインをあまり活用していない人の、MSDNオンラインに対するイメージは「重い、堅い、遠い、迷路、外国、公式、網羅」というもので、満足度もあまり高くはないという。正直に書くと筆者も同じ感想である。
確かに、MSDNオンラインのドキュメントの多くは、堅いロジカルな表現になっているし、さらに英語から日本語に翻訳する際も、できるだけ原文に忠実であろうとしているためか、日本語としてこなれていない部分もある。だからといって、MSDNオンラインが情報として役立たないわけではない。本稿の例のように上手に活用すれば、単にインターネット上であてもなく情報を探し回るよりも、はるかに効率的に必要十分な情報が得られる場合もあるのだ。
またマイクロソフトは、初心者がMSDNオンラインの情報の洪水でおぼれてしまわないように、.NET Frameworkの開発者向けページをシンプルにしたり、(「学習時の情報検索テクニック」でも説明した)ナビゲーションを用意したり、(前述のCode RecipeやTech Fieldersコラムなどで)日本人による日本語のコンテンツを提供したりと、前述のイメージとは正反対の「軽い、シンプル、日本、概要」というイメージを目指したコンテンツを拡充しようと、いままさに努力している最中のようだ。またWindowsの開発者向けページでは、新機能を中心にさまざまなリソースをまとめて紹介したり、ガイダンスのダウンロード資料を用意するなど、目的別に情報を固めたりするような試みも行っている。今後、MSDNオンラインは網羅的なコンテンツだけでなく、概要的なコンテンツも数多く提供されるようになるだろう。
MSDNオンラインを利用するのに、そのすべてを活用する必要はない。本稿が最も伝えたかったメッセージは、「MSDNオンラインの『おいしいとこ取り』を効率的にやっていこう」ということだ。それがMSDNオンラインに接する正しい開発者の姿なのだ、と筆者は考えている。
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提供:マイクロソフト株式会社
企画:アイティメディア 営業本部
制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2010年03月31日
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