大企業を中心に導入が進んだ仮想化やクラウドの導入は年々加速しており、中堅中小企業に広まり、今では多くの企業にとって“利用していて当たり前。どれだけ有効活用できるか”の話に移行しつつある。一方で、プライベートクラウドとパブリッククラウドを使い分けながら併用する“ハイブリッドクラウド”の利用も始まっているものの、セキュリティや運用面から苦労している企業も多い。
今回は、ハイブリッドクラウド時代に応えるべく「Windows Azure」や「Microsoft System Center 2012」を提供しており、さらに9月からサーバ最新版「Windows Server 2012」をリリースし、対応を強化している日本マイクロソフトに、同社のクラウド/仮想化戦略や今後の展望について聞いた。インタビューに応えたのは、同社でサーバ部門の責任者を務めるサーバプラットフォームビジネス本部 業務執行役員 本部長 梅田成二氏。
日本マイクロソフト株式会社 サーバープラットフォームビジネス本部 業務執行役 本部長 梅田成二氏 |
加速する仮想化・クラウド市場に
マイクロソフトはどう取り組んでいくか
――昨今、仮想化やクラウドの導入に向けた動きが本格化しつつあり、その流れは大手企業から中堅・中小企業にまで拡大しています。仮想化・クラウド市場の現状をどのように捉えていますか?
梅田氏:まず、サーバの出荷台数を見ると、現在国内で約55万台のサーバが出荷されており、そのうち2割が仮想化されているのが実状です。そして、「仮想サーバ1台当たり、約5台の仮想マシンが動いている」と仮定すると、すでにサーバ出荷台数と同等数の仮想マシンが動いていると考えられます。今後、サーバマシンの性能が向上すれば、仮想マシンの1台当たりの稼働数がさらに増加するのは確実で、来年、再来年には仮想マシンの数が物理サーバを上回ると見ています。
――仮想化・クラウドへの流れは、これからも加速すると
梅田氏:企業のITシステムのトレンドが、仮想化・クラウドへと向かっていることは間違いありません。この流れは、当社のお客さまの動きを見ても明らかです。実際に、仮想化・クラウドを前提にしたサービスやビジネスが立ち上がってきています。
ソーシャルネットワーキングサービス「mixi」を運営するミクシィでは、昨年オンラインでクリスマスソーシャルキャンペーンを実施しましたが、このキャンペーンには1日で約100万人の参加があり、サービス運用には大量のサーバ台数が必要でした。しかし、自社で大量の物理サーバを新規購入するのは現実的ではありません。そこで同社は、仮想化・クラウドを活用することで、最小限のコストでソーシャルキャンペーンのサービスを実現しました。
これは、先進のネット系企業の事例ですが、トラディショナルな企業でも、仮想化・クラウドを活用したビジネスに着手し始めています。タクシー/ハイヤーの配車を手掛ける日本交通では、スマートフォンを利用した配車サービスをスタートしました。
このサービスは、利用者がスマートフォンのGPS機能と連携したタクシー配車アプリから位置情報を送ることで、タクシー/ハイヤーをいま自分が居る場所に呼ぶことができるというものです。この仕組みを物理サーバで構築しようとした場合、トラフィック量の計算やサイジングなど多大な工数がかかりますが、仮想化・クラウドを利用すれば柔軟なシステム構成で迅速にサービスを立ち上げることができます。
――仮想化・クラウドへと向かう市場の中で、日本マイクロソフトとしてはどのような戦略を展開しているのでしょうか
梅田氏:仮想化・クラウド市場に対しては、2つの方向性で戦略を考えています。まず、1つ目の戦略は、製品の機能強化・拡張です。当社では、2008年にリリースしたサーバOS「Windows Server 2008」で、初めて仮想化基盤「Hyper-V」を標準搭載しましたが、それ以降も、継続して仮想化・クラウド機能の強化を進めています。2009年に発売した「Windows Server 2008 R2」では、新たにライブマイグレーション機能やダイナミックメモリ機能を追加し、より仮想化・クラウド環境への親和性を高めました。そして、今回リリースする最新バージョン「Windows Server 2012」では、第3世代の「Hyper-V」を搭載し、仮想化・クラウド機能を大幅に強化しています。
こうした製品の機能強化と併せて、当社が取り組んでいるのが、仮想化・クラウドの市場規模拡大に向けた戦略です。仮想化・クラウドは、もはや大手企業のものだけでなく、中堅・中小規模企業でも導入が本格化しつつあります。そこで、さらなる市場拡大のためには、中堅・中小規模企業に向けて、仮想化・クラウドをより導入しやすい環境を提供することが重要なポイントだと考えています。
この一環として、「Windows Server 2012」ではシェアドナッシングのライブマイグレーション機能を提供しています。これにより、従来まで必要だったクラスタ構成を行うことなくライブマイグレーションが可能となり、中堅・中小規模企業における仮想化・クラウド導入へのハードルを下げています。
Hyper-Vの標準搭載が市場を変えた
――これまでの仮想化・クラウド戦略を振り返ると、やはり「Windows Server 2008」への「Hyper-V」の標準搭載は、市場にとっても大きな転換点となったのでは
梅田氏:サーバの主な用途として、従来はファイルサーバ、Webサーバ、アプリケーションサーバが中心でしたが、最近ではこの中に仮想サーバが入ってきています。
つまり、サーバOSに仮想化基盤を標準搭載することは、市場のニーズに沿った必然の流れであり、これを機に「Hyper-V」の導入企業も急速に拡大しています。直近の仮想化ソフトのシェアでは、「Hyper-V」がついにトップに立ちました。2008年の時点では、トップの「VMware」とは20ポイント近い差がありましたが、「Windows Server 2008」への標準搭載、また機能面の強化・拡充により、その差を縮め、トップシェアを獲得することができました。
今後「Windows Server 2012」のリリースによって、「VMware」との差をさらに決定的なものにしたいと考えています。
――では、これからの仮想化・クラウド戦略において、「Windows Server 2012」が担う役割を教えてください
梅田氏:Windows Server 2012は、クラウド生まれのサーバOSと位置付けています。当社では、約3年前から製品開発の方向性をクラウドにシフトしており、「Windows Server 2012」に関しても、設計段階からクラウドOS「Windows Azure」と密に連携し、ハイブリッドクラウドでの利用を強く意識した設計になっています。そして、クラウドからオンプレミスまで“地続き”の仮想サーバ環境をワンストップで実現します。
――ハイブリッドクラウドを重視しているのは、どのような狙いからですか
梅田氏:オンプレミスで構築されたシステムを、丸ごとクラウド環境に移行するのは、実は簡単なことではありません。特に、各アプリケーションのネットワーク設定は、クラウド上ではそのまま動作しないため、修正作業が必要になります。
また、セキュリティの観点から、機密性の高い情報をクラウド環境に移すことを不安視する企業は少なくありません。そのため、オンプレミスとクラウドをまたがって利用するハイブリッドクラウドへのニーズが高まっているのが実状です。こうしたニーズに対応するべく、「Windows Server 2012」では、ハイブリッドクラウドの構築を支援するさまざまな機能を提供します。
「ネットワーク仮想化」と「ストレージ仮想化」へ対応
――実際に、「Windows Server 2012」を先行利用しているパートナー企業などからの反応はいかがですか
梅田氏:先行ユーザーのほとんどが「Windows Server 2012」にポジティブな反応を示しています。なかでも高評価を得ているのが、第3世代「Hyper-V」による仮想化・クラウド関連の新機能および機能拡張です。
例えば、ネットワーク仮想化への対応。これにより、アプリケーションのネットワーク設定を変えることなくオンプレミスからクラウドへの柔軟な移行が可能になりました。また、ライブマイグレーション機能を強化し、複数の仮想マシンを同時にライブマイグレーションできるようになりました。さらに、ストレージ仮想化に対応した点も好評で、分散されたストレージを仮想集約することにより、仮想化・クラウド環境におけるストレージの利用率向上を図ることができます。
そして、「Windows Server 2012」のインターフェイスや操作性への評価も高く、オンプレミスのサーバを仮想化してクラウド環境に移行する一連の作業が、マウスのコピー&ペーストで直感的に行えることから、“クラウドとの距離感が縮まった”という声も多く寄せられています。
このほか、昨今話題を集めている災害対策(DR)/事業継続計画(BCP)強化の一環として、簡易的な遠隔バックアップを行える新機能「Hyper-V Replica」も注目されています。この機能では、約5分置きに本番サーバのレプリケーションを、遠隔地のバックアップサーバに自動で保存することができます。これにより、万が一災害や障害が発生した際にも、直近の状態までシステムを復旧することが可能です。
――「Windows Server 2012」の今後の展開についてはどうお考えですか
梅田氏:「Windows Server 2012」によって実現する仮想化やクラウド環境は、あくまでビジネスを行うための手段や道具でしか過ぎません。この手段や道具をうまく活用することで、お客さまのビジネス拡大に寄与していきたいと考えています。
特にクラウドへの移行は、各企業のワークロードやデータの機密性に応じて、一度にクラウド化できるケースもあれば、段階を追ってクラウド化していくケースもあります。当社の持つノウハウを生かしながら、お客さまそれぞれのシステム環境に適した、クラウド移行へのベストプラクティスを「Windows Server 2012」によって提案していきます。
また、開発者に対しては、「Windows Server 2012」が提供する仮想化・クラウドの新しいテクノロジを存分に活用して、今までにないアプリケーションやソリューションを開発してもらい、仮想化・クラウド市場のさらなる活性化へとつながることに期待しています。
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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2012年12月31日
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