サーバ統合からクラウドまで 改めて注目高まるWAN高速化製品 |
仮想化技術を生かしたサーバ統合の進展とクラウドコンピューティングの普及を背景に、「WAN高速化製品」が改めて注目を集めている。地方拠点から本社やデータセンターに置かれたサーバへのアクセスを高速化することの重要性がいっそう高まっているのだ。 |
どうしていま「WAN高速化」? | ||
いま、「WAN高速化製品」が改めて注目を集めている。WAN高速化市場自体は数年前から存在していたが、ここにきて、地方拠点から本社やデータセンターに置かれたサーバへのアクセスを高速化することの重要性がいっそう高まっているのだ。背景には、仮想化技術を生かしたサーバ統合の進展とクラウドコンピューティングの普及がある。
まず、WAN高速化製品の特徴について簡単におさらいしておこう。
WAN高速化製品が生まれてきた背景には、LAN内でファイルサーバにアクセスする場合と比べ、WAN越しにリモートアクセスする際のレスポンスが非常に劣ってしまうという問題があった。ならばブロードバンド化すればいいだろう、と思うかもしれないが、ことはそう単純ではない。帯域を追加しても望んだパフォーマンスが得られるとは限らないのだ。
例えばファイル共有に使われることの多いプロトコル、CIFSの場合、ファイルサーバの参照/書き込みを行う際には、クライアントとサーバとの間で要求/応答を何度も繰り返すことになる。だがCIFSはLANでの利用を想定したプロトコルであり、仕様上、一度に送ることができるデータの量が制限されている。遅延がほとんど無視できるLANとは異なり、数十ミリ、場合によっては数百ミリ秒の遅延が避けられないWAN回線を経由すると、要求/応答のたびに待ち時間が積み重なり、レスポンスに大きな影響が生じてしまうのだ。
インターネットを支えるプロトコルであるTCPにも同じことが言える。TCPには通信の信頼性を確保するための仕組みが組み込まれている。クライアントは、データを受け取ったときに到達通知を送り返し、それを受けてサーバは続きのデータを送り出すようになっている。だが、ここで回線の遅延が大きいと、データが往復するたびに待ち時間が長くなり非常に非効率な通信しか行えない。
WAN高速化製品は、こうした問題の解決を目指して生まれてきたものだ。通常は、拠点と本社/データセンターの両方に、対向に配置して利用する。そして、キャッシュや圧縮に加え、TCPならばウィンドウサイズ(一度に送出するデータの量)を調整したり、2台のアプライアンスの間でまとめ送りや先読みをしたり、あるいはデータ送信タイミングを最適化するといったさまざまなテクニックを駆使し、レスポンスを大幅に改善してくれる。それまでファイルを開くのに数十秒かかっていたのが、数秒に短縮されるといった具合だ。
この結果、帯域が限られたWAN回線を介しても、本社/データセンターとの間のやり取りをストレスなく行えるようになるため、従業員の生産性向上につながる。WAN高速化製品はまた、どの回線をどのようなトラフィックが流れているかを可視化し、ミッションクリティカルなアプリケーションについては優先的に帯域を確保するといった、QoS/帯域幅管理も提供する。
WAN高速化の組み合わせでサーバ統合の効果をフルに享受 | ||
このWAN高速化製品導入の流れが、さらに加速する気配がある。その大きな理由が、仮想化を駆使したサーバ統合の広がりだ。
この1〜2年の間に、仮想化技術は大きく進化し、実際にさまざまな企業で導入が広がっている。その大きな用途はサーバ統合。企業のあちらこちらにばらばらに置かれていたサーバを仮想化技術を用いて集約すれば、イニシャルコストを削減できるうえ、運用管理の手間を省いてTCOを削減できる。
しかし、サーバを集約すればするほど、その分リモートアクセスを強いられるシーンが増えることになる。仮想化でサーバの構成を変えても、ネットワークインフラがそのままだと、リモートにある業務上必要なデータにアクセスするたびに延々と待たされ、ユーザーから「なかなかレスポンスが返らない」と苦情が出てくる恐れもある。せっかくのサーバ統合の効果もこれでは半減だ。
こうしたシーンにまさにぴったり当てはまるのが、WAN高速化製品だ。仮想化によるサーバ統合と同時にWAN高速化を導入すれば、コスト削減効果を享受しながら、これまでと同等の生産性を実現することができる。
クラウドコンピューティングを快適に | ||
このようにWAN経由でデータセンターにアクセスする場合だけでなく、インターネットを介してクラウドサービスを利用する場合にも、高速化、最適化の必要が生じる。
例えば、Amazon EC2やGoogle App Engineといったパブリッククラウドサービスを利用する場合、太平洋を越えてデータセンターにアクセスすることが多い。この場合、距離の壁は越えられないから、数百ミリ秒単位の遅延は避けられない。Salseforce.comに代表されるSaaSにも同じ課題はつきまとう。もしここで、クラウドサービス側と自社拠点の両方にWAN高速化装置が導入できれば、レスポンスは改善されることだろう。
現状では、WAN高速化装置の導入だけでは、パブリッククラウドサービスの遅延自体を克服することは困難だ。しかしベンダによっては、クラウドコンピューティングの採用と同時にネットワークトポロジを変更し、インターネットには拠点から直接接続し、それ以外のトラフィックは従来通り本社/データセンターへ流すというソリューションを提案しているところもある。1本のWAN回線にすべてを載せるのではなく、二手に分けることで負荷を減らすというアプローチだ。これはプライベートクラウドを構築する際にも、ぜひ考慮に入れたい点だ。
WAN高速化製品は誕生以来、対応するプロトコル/アプリケーションを増やし、同時にセキュリティ機能を組み合わせるなど、継続的に進化を遂げてきた。今後は、クラウドと連動する機能も登場してくるだろう。あるいはWAN高速化がクラウドの一部として動作し、メニューの1つとして提供される可能性も十分にある。今後も注目したいソリューションの1つといえるだろう。
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制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2010年08月29日
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