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@IT > SPSS Open House 2004 イベントレポート後編 |
企画・制作:アットマーク・アイティ
営業企画局 掲載内容有効期限:2004年12月19日 |
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千葉銀行では、銀行窓口/テレマーケティング/インターネット・バンキング/ATM/ダイレクトメールなどの全チャネル(顧客接点)において、ワン・ツー・ワンでのコミュニケーションによる統合型CRMを実現している。そのターゲットをセグメンテーションするためのコアスキルとして、データマイニングを最大限活用しているという。 同行は、1997年にデータベース・マーケティングを実践するため、営業部門が直接検索・分析ができる顧客データベースを構築。1999年にはデータマイニングソフトを導入し、顧客のセグメント化を強化するとともに、本格的なCRMシステムの開発を開始し、2001年以降、店舗へのCRM導入と、インターネット・バンキングやATM画面でのワン・ツー・ワンメッセージの表示を開始した。そして、2003年には全チャネルへのCRMシステムの導入が完了。と同時に、データマイニングソフトは「Clementine」に全面リプレースされたそうだ。 こうして進められてきた同行のCRM導入の背景や目的について、向後氏は「行内の要因」と、「マーケティング的な要因」の2つの視点で説明する。まず「行内の要因」としては、データベース・マーケティング・スキルが蓄積されてきたこと、コンタクトセンターが拡充され、アウトバウンド・コールが強化されたこと、インターネット・バンキングが普及したこと、ATMへのPC導入が進んだことなどを挙げた。すなわち、CRMを導入できる環境が整ったのと同時に、それを使いこなせるレベルまで社内スキルが高まっていたということだ。 一方、「マーケティング的な要因」としては、限定されたマーケットを商圏とする地方銀行としては、商圏内人口の増加が頭打ちになり、顧客1人1人における収益の拡大が課題となってきたこと、また同様の理由で、広域に告知を図るマス・マーケティングよりもダイレクト・マーケティングの方が効果的だと考えられたこと、商品アイテムが多様化するとともに、特別金利やキャッシュバックなど、柔軟な価格訴求型のキャンペーンが可能となったことなども示し、全チャネルが連係したマーケティングの重要性が高まったという。こうした背景があって、同行ではCRMの導入が促進されてきた。 具体的なCRMシステムの活用方法は次のようなものである。まず、データベース・マーケティング・システムからデータを抽出、「Clementine」で決定木分析などを行い、次のような予測モデルを決定する。
こうした予測モデルから顧客セグメントルールを設定し、購入見込みの高い顧客リストを作成、そして全チャネルに発信する。各チャネルでは、それぞれの顧客に最もふさわしいコミュニケーションを行う。例えば、ダイレクトメールでは、顧客セグメントごとにあいさつ状や同封するパンフレットの内容を細かく変える。ATM画面やインターネットバンキング画面でも、顧客別に最適なキャンペーン情報などの自動表示を行う。テレマーケティングではアウトバウンド・セールス、インバウンド電話の機会をとらえたクロスセル(主に投資信託、外貨預金)に活用。店舗窓口でも窓口担当者(テラー)が手元のPCディスプレイに表示された来店客の詳細情報を見ながら、適切なワン・ツー・ワン対応を行っているという。 実際のところ、同行ではCRMシステム導入当初、行員のシステムの利用率がなかなか高まらなかったというが、現在では、CRMシステムなしでは顧客対応ができないという担当者が増加しているという。 最後に、向後氏は「Clementine」を選択した理由として下記の4点に触れ、事例発表を終えた。
食品メーカーを経て、現在は研究者としてデータマイニングツールを利用する芳賀氏は、学術的な先端的取り組みはなく、実際に「使える手法」を紹介することを狙いとして、研究成果の報告を行った。 芳賀氏が、今回紹介してくれた研究テーマは「食品のおいしさとは何か」を探るものである。芳賀氏によれば、“おいしさ”とは、「食品の成分(1次要因)」、その食品のパッケージやコピーから得られる「視覚・言語情報(2次要因)」、さらに摂取時間や摂取空間といった「環境(3次要因)」から構成されていると考えられる。つまり、おいしさは、食品の成分に加えて、その食品のパッケージのデザインやコピー、あるいは、その食品をいつ、どこで食べるのか、ということにも影響されるということである。 こうした考え方が必要になる背景には、食品の製品開発における新しい取り組みがある。基本的に食品は成熟した製品であり、中味の配合設計だけでは「おいしいもの」「買ってもらえるもの」が作れなくなっているのが現状だ。企業の技術力の格差がなくなったということでもあり、そもそも「まずいものがない」という市場においての開発は、「中身」以外で勝負するしかない。したがって、感性工学やブランド論的なアプローチが盛んになっているという。 そこで、芳賀氏は、食品の開発にあたって、設計条件の1つとして「情報」を取り上げ、総合的に製品・ブランドとして作り上げる必要性を指摘する。おいしさに影響を与える「情報」を分かりやすく定量化することにより意思決定に役立てたり、実際に人が実感できる形で定量化する取り組みを行っているのである。 こうした考え方を述べたうえで、芳賀氏は2つの研究事例を紹介してくれた。そのうちの1例、アイスクリームを対象とした研究事例を紹介しておく。 アイスクリームはどの製品も味に大差はなく、生きるために不可欠な食品ではないが、し好性/ファッション性の高い成熟商品である。したがって、ブランディングが非常に有効な製品となっている。この調査では、バニラカップアイスのロングセラーとなっている「エッセル」「ハーゲンダッツ」の2製品について、次の4要因各2水準での実験的調査が行われた。
調査方法としては、「コンジョイント分析」が採用され、上記4要因2水準のさまざまな組み合わせを調査対象者が評価した。調査結果は「Amos Ver.4.0」によって解析され、いわゆる「構造方程式モデル(SEM)」が作成された。当モデルは、製品、ブランド名、価格、コピーといった要因が製品の品質機能(おいしさの評価)や製品の魅力(買いたい、試してみたい、好きといった評価)に対してどのように影響を与えているのかを構造化したものである。 「エッセル」「ハーゲンダッツ」に関する調査結果では、品質機能(おいしさの評価)については製品そのものの差より、ブランド名による差の方が大きかったという。ただし、今回の調査では価格やコピー表現の有無についての差は見い出せなかったという。 芳賀氏は、この研究の成果として、次の3点を挙げた。
講演のまとめとして、成熟したコモディティ商品である「食品」においても、「ブランド」が機能していることを指摘し、特に品質機能に起因する製品への信頼感に影響を及ぼすブランド力を実際の製品差として検証できたことを述べて報告を終えた。
給湯器、システムバス、システムキッチンなどの住宅設備機器メーカー、株式会社ノーリツでは、既存顧客を対象としたWebサイト上でのコミュニティサイト「つかりコムねん」を運営している。当コミュニティサイトは、Webサイト上でのコミュニケーションを通じ、エンドユーザーとの直接の接点を持たないメーカーが顧客ロイヤルティを醸成することを目的としている。今回、浦上氏は、同社のeCRM戦略の概要、およびコミュニティサイトの評価を目的とする「顧客ロイヤルティの測定方法」について、生のデータを示しながら詳細に説明してくれた。 同社のeCRM戦略の目標は、顧客ロイヤルティモデルの確立であり、その最大の狙いは、「顧客の想起集団に入ること」だという。すなわち、エンドユーザーが住宅設備機器の購入を考える際に、購入検討先メーカーとしてノーリツの名前を思い浮かべてくれることである。当然のことながら、実際のビジネスとしての成功モデルは、新築、リフォームの需要をつかみ、購入につなげることであるが、eCRM戦略としては次の3つの成功イメージを持っているという。
コミュニティサイトを運営するうえで同社が重要と考えているのは、eCRM戦略の目標達成に向けて、客観的指標を策定し、評価することである。そこで、同社では「どんな顧客を育成していくのかという定義」「顧客ロイヤルティ醸成度の把握」「効果的なWeb上でのサービス展開」の3点をきっちりと抑えたうえでWebサイトを運営しているのだそうだ。「どんな顧客を育成していくのか」ということについては、次の4つをロイヤルティと定義し、4から1へと顧客を育成していく流れを想定している。
コミュニティサイトを通じたロイヤルティの醸成度を把握するため、サイトの会員、非会員に対して同時にアンケートを行うことにより、同社に対する好感度やイメージの差を比較している。またWebサイトの利用状況についてのデータを収集することで、行動データの分析に基づく会員間のロイヤルティの違いを測定しているという。 具体的には、Webサイト上でのユーザーの行動を「見る」「作る」「書き込む」「投稿する」「答える」「ポイント交換」などの軸に分類し、各会員の行動を「RFM分析」の考え方を枠組みとした数値に置き換える。その上で、SPSSツールを用いて因子分析やクラスター分析を行い、会員のロイヤルティ別のセグメント分布を見ることによって、同社にとっての望ましいターゲット(購入可能性の高いリアルなターゲット)がどの程度含まれているのかを把握している。そして、こうした分析に基づいてロイヤルティ醸成に効果的なWeb上のサービスとは何かを見極めているという。
「重要なポイントとして、顧客の意見が反映される「参加型コンテンツ」の方が、ニーズに基づく情報を掲載する「情報発信型コンテンツ」よりもロイヤルティ醸成に効果があるという分析結果が得られています」(浦上氏)。 浦上氏は、SPSSツールの便利な使い方として自社の事例を取り上げ、Webアンケートを簡単に作成するアプリケーションや回答データをSPSS形式に変換する前処理のアプリケーションを利用していることも紹介してくれた。
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