クラウド化する世界をSolaris 10はどう照らすのか
〜New Tech Trend with Solarisセミナー レポート 〜
次の時代に求められる技術要件とは
「Next Generation Web - Web2.0/SaaS/Cloud Computing時代のOpen Technology InfraとSolarisの重要性」と題したセッションでは、サン・マイクロシステムズ 新規ビジネス開発本部 テクノロジー・マーケット&コミュニティ開発統括部 統括部長 藤井 彰人氏が登壇した。
サン・マイクロシステムズ 新規ビジネス開発本部 テクノロジー・マーケット&コミュニティ開発統括部 統括部長 藤井 彰人氏 |
藤井氏はまず、Webによるインフラの隠蔽化の潮流を示し、ITトレンドは「デバイスプラットフォーム、ソフトウェアプラットフォーム(OSを含む)、アプリケーションプラットフォームなどがすべて下の層を隠蔽しメタ化していく」流れであると整理した。そのうえで、次の潮流として「クラウド」の時代の到来が迫っているとした。
定義が難しいクラウドだが、藤井氏は「コンピューティング環境を支えるリソースをネットワークの向こう側に隠蔽するサービス」とした。また、物理サーバ/月という課金体系のビジネスではなく、仮想サーバインスタンス/時間のビジネスがすでに始まっている、とも加えた。
競争が激化すればOSは無視できないファクターとなる
藤井氏によると、クラウド化とはすなわち、「サービス提供者がワールドワイドな競争の下に置かれる」ということである。つまり、「電力コストや人件費などが格段に安い地域で提供されるサービスとも互角に争わなくてはならない時代が迫っている」という。このためには、コスト面を考えても積極的にオープンなプロダクトを採用していく必要がある。
クラウドコンピューティングに必要な要素として、藤井氏は「リソースの仮想化、ユーティリティ化、オープンなテクノロジ、サーバ/ストレージの効率的な利用などは必須の条件となる。これらの要素を十分に考慮し、有効な解を得るためには、OSというファクターは無視できないものだ」とした。
さて、それでは、こうした状況に対してSolarisはどのような答えを示すのだろうか。
・マルチコア・マルチスレッドを効率的に利用する稼働実績SolarisはマルチコアCPUが出現する以前から100CPU超のサーバを1インスタンスで効率よく稼働させるなど、数多くの実績を持つOSである。複数の物理CPUを稼働させることとマルチコアCPUを稼働させることとは「基本的に同じこと」(藤井氏)だという。この特徴はもちろんSolaris 10も継承しており、先日販売を開始した1台のサーバで8コアで最大256スレッドを同時実行できるSPARC Enterprise T5440のようなマルチコア・マルチスレッドCPUを搭載するサーバであっても性能を十分に引き出して稼働させる実力を持っている。
・仮想化環境Solaris 10に実装されている「Solarisコンテナ」は、OSより上の層を仮想的に分割する機構。近年一般的に用いられつつあるハードウェア層で仮想化する機構と比べると、複数のカーネルを立ち上げる必要がないため、稼働時のオーバーヘッドは15〜10分の1程度になるという。
・オープンテクノロジへの対応Solaris 10では188以上のオープンソースソフトウェアプロダクトが統合されている。例えばsquidやlibtoolなどのほか、開発環境も豊富に含まれている。
藤井氏はこれらの点を挙げ「LAMP構成を考えるよりも、Solaris+AMPの構成が結果的には効果的であり、コスト面でも有効」だと結論付けた。
運用・開発面から見たアドバンテージ
「Solarisテクノロジーの魅力と活用術」と題したセッションでは富士通 サーバシステム事業本部 UNIXソフトウェア開発統括部 第一開発部部長 東 圭三氏が登壇した。富士通は、SolarisおよびSPARCプラットフォームの開発などでサン・マイクロシステムズと協業、Solarisについて知り尽くした企業である。
M9000とSolarisの組み合わせは512CPUの性能をフルに生かす
富士通 サーバシステム事業本部 UNIXソフトウェア開発統括部 第一開発部部長 東 圭三氏 |
現在、富士通とサン・マイクロシステムズが販売している「SPARC Enterprise M9000」は、最大512の論理CPUをサポートしている(4コアCPU・2スレッド×64基)。CPUはもちろん、PRIMEPOWER時代から数々の実績を持つSPARC64プロセッサの最新版であるSPARC64 VI/VIIが搭載されている。
一般に、SMP構成では、CPU数をある一定の数以上追加しても、OS側の処理の問題などに起因して性能が頭打ちになる場合が多い。しかし、東氏によると「SPARC Enterprise M9000とSolaris 10の組み合わせでのベンチマーク評価は、スループットがリニアに上昇する」性能を示しており、そうした常識を覆すものとなっているという。
強力な運用支援機構
Solaris 10には前述の藤井氏のセッションで見たように数多くの新機能が盛り込まれているが、ハードウェアベンダーとして東氏が注目するのは、FMA(Fault Management Architecture)、DTraceの2つだ。
・蓄積されたDTraceによるチューニング、障害対策のノウハウDTraceはOSを含むさまざまなソフトウェアの障害調査などに有効なツールだ。DTraceを使えば、問題発生時であっても、ダンプファイル解析を行ったり、syslogを手作業で追いかける必要はない。
経験のある方なら分かるように、例えば、malloc()の解放忘れが原因でメモリリークが発生した場合などでは追跡調査を行い、原因となる関数呼び出し部分にたどり着くだけでも相当な労力が必要であったり、そもそも調査ツールを使うためにシステムを停止する必要があったが、「DTraceではプロセスやスタックを指定して調査できるため、問題の特定が短時間で行える」と東氏。
DTraceについては、プラットフォームソリューションセンター プロダクトテクニカルセンター プロジェクト課長 志賀 真之氏がデモを交えて紹介した。
Solaris 10に含まれるDTraceならば、システムを停止しなくても使えるうえ、OSを含むすべてのソフトウェアをチェックできる。同社では、こうしたDTraceを使ったシステム障害調査のノウハウも蓄積しており、セミナー当日も志賀氏から実際のサンプルスクリプトの利用例がいくつも紹介された。
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Solaris 10は、マルチコア・マルチスレッドに対応し、オープンプロダクトを柔軟に取り入れられるうえ、堅牢なファイルシステムや自動修復機能、強力な調査ツールまでを持ち合わせている。加えて、富士通に蓄積されたハードウェアへの深い見識・実績を組み合わせれば、クラウドな時代に必要となる「リソースの仮想化、ユーティリティ化、オープンなテクノロジ、サーバ/ストレージの効率的な利用」のそれぞれのポイントについて、しっかりとした解答を持っていることが分かる。まさに次の時代を見据えたハードウェアとOSの組み合わせだといえるだろう。
提供:サン・マイクロシステムズ株式会社
企画:アイティメディア 営業本部
制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2008年12月24日
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