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オープンソースソフトウェアはエンジニアにとって身近な存在になった。しかし、ビジネスとしてそれを選択できるかどうかはまた別の話だ。
まもなく開催されるセミナー「秘策はオープンソースにあり〜コスト削減時代を生き抜く、エンタープライズシステム構築最前線〜」では、オープンソースソフトウェアの“誤解”を解くためのセッションが開催される。サン・マイクロシステムズ、レッドハット、住商情報システム、アットウェアの4社から集まった6人の「オープンソースソフトウェア伝道師」は、その現状と未来をどう考えているのだろうか。セミナーに先立ち開催された座談会の様子をお伝えしよう。
SIerから見た「オープンソースソフトウェア」 |
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アットウェア 取締役 ビジネス創出本部長 重田篤史氏 |
オープンソースソフトウェアは、ライセンスが無料でソースを自由に改変できるが、そのサポートも自分たちでやらなくてはならない。だからエンタープライズのシステムではなかなか選択できないもの――ユーザー、さらにはシステムエンジニアですら、そのような認識の人も多いのではないだろうか。
オープンソースソフトウェアを積極的にシステムに取り入れるSIerである、アットウェア 取締役 ビジネス創出本部長の重田篤史氏は「オープンソースソフトウェアの適用を提案した際に、受け入れのハードルは高い。誰もサポートしてくれないのではないかという誤解は確かにあるが、実際はもうエンタープライズに適用できるくらいのパワーがある」と語る。
そしていま、未曾有の経済危機が企業を襲い、すべてのエンジニアはコスト削減圧力にさらされている。これこそがオープンソースソフトウェアへの「追い風」だ。重田氏は「SIerはお客様に投資対効果の高いシステムを提案するために、さまざまな努力をしていく必要性に迫られている。顧客要求を満たし、かつ品質が確保できるのであれば、オープンソースソフトウェアも選択肢の1つとなる。このような背景から、MySQLやJBossなどオープンソースのミドルウェアを提案することが多くなった」という。
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アットウェア 代表取締役 牧野隆志氏 |
アットウェアにとって、ミドルウェアとしてオープンソースソフトウェアであるMySQLとJBossを選択できたのはなぜか。それは社内に“ファン”がいたからだという。アットウェア 代表取締役の牧野隆志氏は経営者であるが、それ以前に1人のエンジニアだ。
牧野氏は「オープンソースを選択することに対する経営層の反応はさまざまだが、自分もエンジニアだったから社内の“ファン”の意見を採用することができた。実際のところ、特にミドルウェアはお客様からは見えず、むしろ気にしたくない部分でもある。サポートがあるからいい、サポートがないからダメではなく、その時々の案件に最適でいいものを選択したい」と述べる。
サポート力は? 機能は? コストは? |
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しかし、作り手側がどれだけいいと思っていても、システム構築の決裁権を持つユーザーが納得しなければオープンソースソフトウェアの導入は困難だ。ここで最も大きなハードルとなりうるのはサポートの状況、ひと言でいえば「安心感」だ。
商用製品として販売されているクローズドソースのソフトウェアは、当然ながら保守費用の対価として充実したサポートサービスを前面に打ち出している。サポート能力はベンダによってさまざまだが、サポートサービスが用意されているという安心感は大きい。それに対しオープンソースソフトウェアではいまだに「ボランティアによるメンテナンスしかない」と誤解されている面も多い。
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サン・マイクロシステムズ ソフトウェア事業本部 システム技術部 システムエンジニア 守屋聡氏 |
サン・マイクロシステムズ ソフトウェア事業本部 システム技術部 システムエンジニアの守屋聡氏は、この誤解を一刀両断する。サンは、それまでクローズドソースとして企業向けに提供していたSolarisやアプリケーションサーバを 2005 年からオープンソースにしている。しかし、「オープンソースとなったいまでも、当時と同じレベルのサポートを提供している」と述べる。サンでは、オープンソースソフトウェアに対しても、電話・メールでの問い合わせ窓口を持ち、開発元と連携した根本的な問題解決行うなど、ワンストップのサポートが可能だ。
オープンソースソフトウェアとひとくくりにされていても、実際には企業が支援したり、サン・マイクロシステムズのように企業がオープンソースソフトウェアのスポンサーとなっているものもある。MySQLやJBossなどのオープンソースもフルタイムの支援、サポートが存在するからこそ、作り手が安心して選択できるのだ。
MySQLやJBossなどは、いまでは企業やSIerのサポートが受けられることも認知され始めている。アットウェアの牧野氏は、「以前、金融系のシステムでオープンソースのミドルウェアを提案したときに、お客様からはやはり難色を示された。しかしアメリカでのサポートがスタートしたということを伝えたところ、それがきっかけで案件がまとまったということがある。実際にはアメリカのサポートに調査依頼を行うことはほとんどなかったが、『サポートが始まった』という事実が重要だった」と述べた。
オープンソースソフトウェアは“適材適所” |
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次にオープンソースソフトウェア選択の懸念となっているのは「品質」や「機能」だ。この点についてサン・マイクロシステムズの守屋氏は「例えばMySQLは、エンタープライズ環境で利用するだけの品質に達していないのではないかと思われているが、これは大きな誤解だ。eBayなど大規模なシステムを持つ企業がMySQLを利用していることを伝えても、お客様からは『特殊な用途なのでしょう』『エンジニアがいるからできるんでしょ』といわれてしまう」という。実際には品質も機能も成熟しているのだが、それを伝えたときにユーザーからは「では比較表を持ってきて」といわれてしまう。
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住商情報システム プラットフォームソリューション 事業部門 IT基盤ソリューション事業部 基盤インテグレーション第1部 アプリケーション基盤技術チーム 主任 池田徹郎氏 |
しかし、実際は機能同士の単なる比較ではなく、お客様のやりたいことを実現できることが大切だ。その要件を突き詰めるとMySQLで実現できないケースはほとんどない。
SIerとして多くのオープンソースソフトウェアをインテグレーションするだけでなく、MySQLシアトルオフィスに勤務した経験を持つ、住商情報システム プラットフォームソリューション事業部門 IT基盤ソリューション事業部の池田徹郎氏は「プログラムである以上、オープンソースソフトウェアだろうが商用製品であろうがバグは存在する。そして案件によっては、バグを直したというだけでは説明が不十分で、なぜこのバグがあるのか、どのバージョンからバグが発生したのかを調べなくてはいけない場合がある」と述べる。
池田氏はそれを踏まえ、オープンソースソフトウェアの大きなアドバンテージとして、「オープンソースソフトウェアであれば、バグの原因を自分たちで調べることもできる。その結果、お客様に自信を持って説明を行える」と語る。
サポートに対する不安、品質に対する懸念を乗り越えると、オープンソースソフトウェアによる最大の利点「コスト」のメリットが魅力となるだろう。ただし、オープンソースソフトウェアを利用しただけでコストが確実に下がるわけではないと指摘するのが、レッドハット JBossグループ ビジネスディベロップメントマネージャーの岡下浩明氏だ。
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レッドハット JBossグループ ビジネスディベロップメント マネージャー 岡下浩明氏 |
岡下氏は「例えばサーバ台数が非常に少ない場合、人件費の割合が高くなり、ライセンスの代金は全体のコストからみると小さくなるため、場合によってはオープンソースソフトウェアを選択した方が割高になる」と指摘する。オープンソースソフトウェアで安さだけを追い求めてはならず、そこには適材適所の「選択」が必要だ。
レッドハットは2009年6月1日、「JBoss Open Choice」というプログラムを発表した。これはサポートされるオープンソースソフトウェアに「幅広い選択肢」を与え、よりオープンな環境のもと、正しい場所に正しいプロダクトを取り入れることができる、「安心できる選択の自由」を与えるという考えの表れだ。
昨今、さまざまな製品を1つのベンダが提供できる体制をとる例が多い。この利点はもちろん「ワンストップのサービス」を期待できる点だ。しかし、裏を返すとそのベンダが持つ製品が、企業のサイズや希望する機能と合わなかったとしても「押し付けられる」という場合も少なくない。これは「マーケットとしては不健康な状態」と岡下氏は語る。
その状況において、「本当に正しいワンストップ」を実現するのはSIerの役割だ。必要十分な機能を相応のコストで実現する、ベンダ中立的な選択ができるパートナーこそがSIerのあるべき姿だ。その点で住商情報システムは、JBossミドルウェアの導入、構築、および高度なテクニカルサポートをワンストップで提供できる、JBoss Premier Business Partnerとして、レッドハットと強力なパートナーシップを持っている。
「企業システムでも利用できるオープンソースソフトウェア」についてもっと詳しく
仮想化との相性は抜群 |
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そしてオープンソースソフトウェアの採用を後押しするのが、昨今のハードウェア事情だ。岡下氏はオープンソースソフトウェアがコスト削減に最も貢献する事例として、仮想化環境における採用のメリットを挙げた。
岡下氏は「仮想化で集約を行うには、それなりのハードウェアリソースが必要だ」という。そして仮想化環境と最新のハードウェアを活用するために、正しいミドルウェアを選択する必要も生じる。
その点、オープンソースソフトウェアは有利だ。住商情報システムでは、オープンソースソフトウェアを稼働させる環境において、さまざまな取り組みを行っている。例えばレッドハットとは仮想化によるコスト削減を見込んだ、月額課金によるサブスクリプションモデルを発表している。またサン・マイクロシステムズとはSolarisの仮想化機能(Zone)を利用し、障害時に切り替えを行うことのできるHAモデルを作り、その上にMySQLを載せるアプライアンス製品を発表した。
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サン・マイクロシステムズ システムズ事業部長 システム技術統括本部 ストラテジー&テクノロジー 担当本部長 大曽根明氏 |
サン・マイクロシステムズ システムズ事業部 システム技術統括本部 ストラテジー&テクノロジー担当本部長の大曽根明氏は「OpenSolarisは簡単に高機能な仮想化環境を提供できる。特に同じOSを複数動作させる場合は、Solarisコンテナのイメージを一度作ってしまえば、それをZFSで一瞬で大量にコピーできる。かつ、メモリもCPUも効率よく利用できる」という。海外での事例にもあるように、MySQLを並列で動かす場合には、このような構成が最も性能が高い。
さらに大曽根氏は、MySQLとSolarisを組み合わせることで、更なる安定性とスケーラビリティを確保することができるようになると述べる。「OpenSolarisは、その基となったSolarisの長年の実績をそのまま受け継いでいる。Solarisのよく知られた安定性は数多くの顧客によって使われてきた経験の中で培われたもので、ミッションクリティカルな環境での稼働に必要な機能が、実際に使われることによって実証されてきている。また、長い歴史の中で4CPUから64CPUのSMPマシンに16年以上も前に対応しており、MySQLをはじめとするアプリケーションと近年のマルチコア、マルチスレッドのハードウェアの組み合わせにおいても最大限のスケーラビリティを発揮できる」という。
サンはSolaris上で動かしたMySQLの処理性能が、ほかのOS上で稼働させるよりも優れたパフォーマンスを発揮するというベンチマーク結果を公開しているが、次期MySQL 5.4では、Solaris上のスケーラビリティをさらに向上させると発表している。
そしてサンは、OpenSolarisにおいてすべてのネットワーク要素をパフォーマンスを下げずに仮想化する「Crossbow」、本番稼働のシステムであっても詳細、かつ動的にシステムを解析できる「DTrace」、これらとSolarisコンテナ、ZFSなどを組み合わせることによって、クラウドコンピューティングを強力にサポートしていくことをコミットしている。
【関連記事】 CommunityOne Westレポート サンのクラウドは、Amazon EC2とどう違うのか?(@IT NewsInsight) http://www.atmarkit.co.jp/news/200906/02/sun.html |
勇気を持って選択を |
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今回座談会に参加した「6人の伝道師」が皆一様に発していたメッセージは「オープンソースソフトウェアの誤解を解き、エンジニアにオープンソースソフトウェアの本当の姿を知ってほしい」ということであった。サポートの不安はSIerが解消し、品質に対する誤解はオープンソースソフトウェアを自社内でカバーするベンダが解きほぐす。それを生の言葉で伝えるためのセミナーが2009年7月15日(水)と17日(金)に開催される「秘策はオープンソースにあり〜コスト削減時代を生き抜く、エンタープライズシステム構築最前線セミナー〜」だ。
このセミナーで語られる、本記事では伝えきれなかった真実を聞いていただければ、日本のオープンソースソフトウェアの「ファン」がさらに増えていくことだろう。オープンソースソフトウェアだから素晴らしい、プロプライエタリな製品だからダメだ、ということではなく、適材適所、必要な機能を必要なだけ選択できる「健康なマーケット」を目指すことが、エンジニアとユーザー、双方にとってあるべき未来であることが分かるだろう。それを再確認するためのセミナーに、ぜひ注目したい。
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セミナー インフォメーション
![〜秘策はオープンソースにあり〜 コスト削減時代を生き抜く、エンタープライズシステム構築最前線セミナー](ttl_event_490.jpg)
開催日 | 2009年7月15日(水)、7月17日(金) ※両日とも開催内容は同じ |
会場 |
晴海アイランド トリトンスクエア オフィスタワーZ 8階 住商情報システム 東京本社 |
参加費 | 無料/事前登録制 |
プログラム | >>プログラム一覧 |
特典 |
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提供:住商情報システム株式会社
アイティメディア 営業企画
制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2009年7月14日
セミナー インフォメーション
2009年7月15日(水)、7月17日(金) ※両日とも開催内容は同じ |
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会場 |
晴海アイランド トリトンスクエア オフィスタワーZ 8階 住商情報システム 東京本社 |
参加費 | 無料/事前登録制 |
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