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サン・マイクロシステムズは12月9日、「事例に学ぶ! オープンソースの実践的導入・活用セミナー」を都内にて開催した。自社のニーズに合わせてオープンソースソフトウェアをどのように活用すべきかというポイントが、事例を通じて紹介された。 |
サン・マイクロシステムズは2009年12月9日、「事例に学ぶ! オープンソースの実践的導入・活用セミナー」を都内にて開催した。
コスト削減や迅速な開発を目的に、商用ソフトウェアに代えてオープンソースソフトウェアの導入に踏み切る企業が増えているが、このセミナーでは、オープンソースデータベースの「MySQL」やWebアプリケーションソフトウェア「GlassFish」を例に、オープンソースソフトウェアがどのように活用されているか、実例を踏まえた説明が行われた。
「The Network is The Computer」と |
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サン・マイクロシステムズ 執行役員 矢崎博雅氏 |
冒頭の挨拶にたったサン・マイクロシステムズの執行役員、矢崎博雅氏(ソフトウェア事業本部事業本部長兼MySQLビジネス統括本部統括本部長)は、サンとオープンソースソフトウェアとの関わりについて紹介した。サンの創業は1982年だが、その当時から「The Network is The Computer」というビジョンの中で、オープンソースは重要な役割を果たしてきた。実際に、ネットワークファイルシステムのNFSやBSD、最近ではJavaやOpenOffice.orgなど多くの成果がオープンソースとして公開されている。
「The Network is The Computerという考え方とオープンソースはオーバーラップしてきた」(矢崎氏)。その上でさらに、「顧客の経済性や成長性、信頼性を確保できるよう、オープンソースといえどもしっかりしたものを提供できるように、日々取り組んでいる」と述べ、セミナーを通じて、オープンソースにどのような利用手段があるかをつかんでもらいたいと呼び掛けた。
「運用を楽にしたい」から |
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最初のセッションでは、インターネット地図情報検索サイト「マピオン」の技術開発部、中村和也氏が「地図リニューアルとOSS活用」というタイトルで、2008年に行ったサービスリニューアルの概要を紹介した。
マピオンは日本最大級の地図情報サイトで、位置情報を生かしたモバイルビジネスにも取り組んでいる。同社は2008年4月、よりデザインの自由度を高めるため、独自の新地図システム開発に取り組むことになった。そこで採用したのが、オープンソースのWebGIS「MapServer」や「PostGIS」。それらを配信するシステムには「Sun Java System Web Proxy Server」と「GlassFish」を採用した。
新システムは、フロントセグメントにキャッシュ/プロキシサーバを配置し、その下に地図配信用のアプリケーションサーバと検索システム用アプリケーションサーバ、認証システム用アプリケーションサーバを配置。さらにそのバックエンドに、MySQLで構成する地図配信用のデータベースと、検索システム用のデータベースを置くという3層構成だ。アクセスがあれば、アプリケーションサーバを介して表示するべき「地図タイル」を問い合わせ、そのつどストレージから取り出してレスポンスを返している。
「レスポンスを上げたいが、しかしキャッシュが多すぎてデータを消すのが大変というのもいやだった。だからといって、外に配置するのも手間が掛かる。そういった要件に加え、『運用を楽にしたい』というニーズを満たすものとして、Squidなど複数の候補の中からSun Java System Web Proxy Serverを選択した」(中村氏)。
マピオン 技術開発部 中村和也氏 |
同様に、アプリケーションサーバについても「運用を楽にしたい」というニーズがあったという。「アプリケーション更新の際に停止を伴わず、また、一括プログラム配信をして運用を楽にしたいなと考えていた」(同氏)。
というのも「Tomcatを使っているサービスもあるが、更新のたびに、1台ずつサーバからTomcatを切り離して停止し、更新し、再起動して動作を確認する……という作業を行わなければならなかった。作業が複雑なうえに時間が掛かり、作業ミスにもつながっていた」(同氏)という。
これに対しGlassFishは、アクティブクラスタ構成を取ることで、管理サーバから一括したオペレーションを行える点がメリットだったという。メンテナンス時にはアクセス参照先をアクティブ側からスタンバイ側に切り替え、最新のアプリケーションを送り込む。つまり、ロードバランサ側の操作や切り離し操作などを行うことなく、プログラム更新などの作業を完了できるようになり、作業時間の短縮と作業ミスの防止につながったという。「サービスに影響を与えることなく、簡単に改修を行えるようになった」(中村氏)。
サポートが付いていることも大きな安心感を与えたという。「すべてをオープンソースでというわけではなく、用途に合わせてうまく活用できたと思っている。その中で感じたのは、オープンソースであるにもかかわらず、いざというときにサポートが受けられるのはいいということ。手間や時間をかけずに障害の少ない環境を作ることができた」(中村氏)。
広がるMySQLの活用場面 |
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続く伊藤忠テクノソリューションズ ITエンジニアリング室 ミドルウェア技術部の菊池研自氏は、「もしかしてこれから? どこもかしこも始めてるオープンソースデータベース活用術」と題したセッションにおいて、金融危機を背景に、企業におけるオープンソースソフトウェア導入が加速しつつあると述べた。それも、OSのレイヤだけでなく、これまで商用ソフトウェアが適用されることが多かったミドルウェアやアプリケーション層まで浸透しつつあるという。
伊藤忠テクノソリューションズ ITエンジニアリング室 ミドルウェア技術部 菊池研自氏 |
ただ、データベースは、企業にとってかけがえのないデータを格納し、システム全体の中で重要な役割を果たすものだけに、オープンソースの導入に慎重になるケースもあるという。クエリキャッシュやパーティションといった機能により、高速な参照など、機能や性能面では充実しつつあるが「懸念としてサポートを挙げる人が多い。また、長期間でのサポートに不安を抱く人もある。商用ソフトウェアの場合はロードマップが示されているのに対し、オープンソースソフトウェアの場合は、開発の中心人物が転職するなどして、それ以降メンテナンスを続けられなくなるという懸念もあるようだ」(菊池氏)。
この点、サポート付きの商用版MySQLは、オープンソースの利点を享受しながら、企業としてサポートのことを心配せず使える選択肢だとした。
現に、いくつかの企業がMySQLを導入し、活用しているとし、菊池氏はいくつか導入事例を紹介した。あるサービスプロバイダーでは、初期コストおよび運用コストの削減を目的に、ホスティング環境としてMySQLを導入した。また、一時期に極端にアクセスが集中する試験結果の閲覧システムとしてMySQLを採用した教育事業者もあるという。このケースでは「レプリケーションやキャッシュなど、参照処理に適した機能を標準で備えていたことが評価され、採用に至った」(菊池氏)という。
ユニークなところでは、あるプロ野球球団のバックエンドシステムがある。選手情報やイニングごとのハイライト情報を提供するためのシステムだが、同じくオープンソースソフトウェアのHeartbeatやDRBDを組み合わせ、「低コストでハイアベイラビリティ構成を実現した」(同氏)。
菊池氏はこうした事例を踏まえ「MySQLの使いどころは、やはり、圧倒的なコストダウンを実現するという部分にある。特に初期導入費用については大幅な削減が可能だ」とした。ただ、運用コストについては、サポートサービスの有無や担当者のスキルなどに依存するため、一概には言えないという。
「やはり、機能を把握した上でうまく使い分けていくべきだろう。インターネット関連ビジネスなどではオープンソースDBの採用が多いが、ミッションクリティカルなシステムでは、長い年月を掛けて止めないための機能を備えてきた商用製品が採用されているケースも多い。結局のところ、完全にオープンソースで置き換えをしているところはまだ少なく、商用DBとオープンソースDBのハイブリッドになるのではないか」とした。
大規模環境でも安心して使えるアプリケーションサーバ |
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サン・マイクロシステムズのソフトウェア事業本部・システム技術部 Javaエバンジェリストの寺田佳央氏は、「安心と便利さを提供するオールインワン製品 GlassFish Portfolioのご紹介」と題し、アプリケーションサーバ「GlassFish」の機能とロードマップをデモを交えながら説明した。
サン・マイクロシステムズ ソフトウェア事業本部・システム技術部 Javaエバンジェリスト 寺田佳央氏 |
GlassFishは、Java EE 5準拠のアプリケーションサーバを軸に、WebスタックやWeb/プロキサーバ、SOA基盤などから構成されている製品群だ。クラスタ環境の構築が楽ということもあり、「中〜大規模のエンタープライズでも安心してお使いいただけるアプリケーションサーバになっている」(寺田氏)。また、クラウド環境への適用も容易だ。「というのも、仮想化を意識したライセンス形態になっており、ニーズに応じて増やしていくことができるし、自社でSaaS、PaaSを展開するときには無制限ライセンスを選択できる」(同氏)。
オープンソースとしてのメリットに加え、有償のアドオンツール「Enterprise Manager」では、パフォーマンス監視やパフォーマンスアドバイザー、インストール後のチューニングを支援する「チューナー」など、一歩進んだ管理機能を提供している。
さらに、12月にリリースした新バージョン「GlassFish v3」は、「Java EE6のリファレンス実装という位置付けだ。軽量化、高速化も図られており、「2〜3秒でプロセスが立ち上がる。さらにOSGiをサポートし、動的にモジュールをロードできるようになっている」(同氏)という。
大きな特徴として、Java以外のスクリプト言語のサポートが挙げられる。JRubyをロードしてRubyのアプリケーションをロードすることも可能だ。「GlassFish v2はJava EEを動かすためのエンジンという位置付けだったが、v3はJavaも動かすことができるアプリケーションサーバであり、ほかのダイナミック言語も動作させることができる」(同氏)。
寺田氏は、こうしたバージョンアップを通じて、GlassFishでは「安心と便利さの両方が得られる」うえに、ほかのアプリケーションサーバに比べ圧倒的なコストパフォーマンスを実現すると述べた。
GlassFish を本格的に採用したマピオン 最新アプリケーションサーバの魅力は運用負荷の低減とサポート体制 1996年2月に国内初の本格的インターネット地図情報サービスとしてスタートしたマピオン。同社が提供する地図情報サービスでは、サン・マイクロシステムズがフルサポートするオープンソースのアプリケーションサーバ「GlassFish」が採用されている。
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提供:サン・マイクロシステムズ株式会社
アイティメディア 営業企画
制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2010年2月27日