9月25日に「第2回 仮想化ソリューションセミナー」(主催:仮想化ソリューションセミナー実行委員会)が東京都内にて行われた。
基調講演には、各種帳票の電子化とシンクライアントの導入を行った大和証券の鈴木孝一氏(常務取締役 管理副本部長兼業務・システム担当兼制度ビジネス担当)が登壇。仮想化も含めたIT投資の効果を高めるには、適切な目的の設定とユーザーの参画がポイントになると述べた。
「仮想化を進める上で、システムだけ先行しても意味がない。目標となる数値を具体的に挙げ、そのゴールに向けた最短ルートを取ることが必要だ」(鈴木氏)。一見無茶と思われるようなことでも、IT技術の進展によって可能になることもあるのだから、ニーズを満たす可能性を常に模索し続けるべきだという。
続いて、主に費用対効果の観点からデータセンターのあり方について考察する「ビジネストラック」と、柔軟かつ安定したデータセンターを実現するために必要なサーバ仮想化をはじめとする具体的な手法について解説する「テクニカルトラック」の2トラックに分かれて、より詳細に踏み込んだ講演が行われた。ここではそのテクニカルトラックの中から、サン・マイクロシステムズ、リバーベッドテクノロジー、シトリックス・システムズ・ジャパンの講演内容を紹介する。
イベントレポート インデックス | |
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仮想化のバックエンドにZFSを ‐ サン・マイクロシステムズ |
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サーバ仮想化を効率化し、高速化する ‐ リバーベッドテクノロジー |
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高度な仮想デスクトップ体験を提供 ‐ シトリックス・システムズ・ジャパン |
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テクニカルトラック:サン・マイクロシステムズ 仮想化のバックエンドにZFSを |
「サーバは統合した。ストレージはどうするんですか? せっかくサーバを統合してサーバの数を減らしたのに、ストレージ機器は増えていませんか」――サン・マイクロシステムズ マーケティング統括本部 プロダクト・ストラテジック・マーケティング本部の寺島義人氏は、会場に向かってこのように問いかけた。
「サーバ統合によって、ストレージには大きな負荷が掛かり始めている。しかしそれを解消するためにストレージを増やしストレージネットワークを複雑にし、コストを増やしてしまっては、サーバ統合した意味はありません」(同氏)。
サン・マイクロシステムズ マーケティング統括本部 プロダクト・ストラテジック・ マーケティング本部 寺島義人氏 |
そもそもCPUやメモリに比べてディスクの読み書き速度は極端に遅く、ディスクI/O待ちがボトルネックとなっていた。一般に、CPUやメモリが「ナノ秒」単位の世界で処理を行うのに対し、HDDでは「ミリ秒」単位の時間がかかる。この解決策の1つとして注目を集めているのが、SSD(フラッシュメモリ)だ。SSDは、磁気ディスクに比べて読み書きが高速であるばかりでなく、HDDに比べて故障が少なく、消費電力が少ないなどの多くの特徴がある。もちろん、メモリに比べれば低速ではあるが、その差は150倍程度。十分必要な処理能力を持っており、ストレージ高速化のブレイクスルーを起こす可能性のある技術として期待されている。
「しかし、SSDはHDDに比べて価格が高い、という欠点がある」(寺島氏)。
そこでサンが提案するのが、Open Storageだ。Open Storage製品であるSun Storage7000シリーズは、同社が開発したファイルシステム「ZFS(Zettabyte File System)」を用いたコストパフォーマンスに優れたネットワーク共有ストレージである。このSun Storage7000シリーズの特徴は、ZFSの機能を生かしたハイブリッドストレージプールにある。ハイブリッドストレージプールは、SSDはHDDを混在させた1つの仮想ボリュームで、ハイブリッドストレージプールから必要に応じてファイルシステムを切り出したり、いったん作ったファイルシステムの容量追加などが自由に行える、仮想化サーバ環境に最適なストレージである。
また最大の特徴は、SSDとHDDをその特性に応じて自動的にかつユーザーに透過的に使い分けてくれる点にある。ファイルシステム自体が「高速なI/Oが求められるログの読み書きはSSDで、実際のデータの格納はHDDに」という具合に、自動的に使い分けを行ってくれる。高速だが高価なSSDと安価だが低速なHDDを組み合わせて、全体として高速で安価なストレージを実現している。
このハイブリッドストレージプールを使用したストレージは、HDDのみのシステム以上のパフォーマンスを実現しながら、消費電力は5分の1、設置面積は半分で済むというメリットもあり、コスト削減効果も大きいという。
寺島氏は、ZFSによるハイブリッドストレージプールは仮想化のバックエンドのストレージとして非常に優れた特徴を持っていると述べた。「ZFS機能を搭載したSun Storage7000シリーズは柔軟に利用できる仮想ボリューム機能と、そのコストパフォーマンスの高さで、仮想化されたサーバ環境のボトルネックを解消する」(寺島氏)。
Sun Storage7000シリーズはまた、NFSやCISF、WebDAVといった複数のプロトコルへの対応に追加ライセンスが必要ないだけでなく、スナップショットやレプリケーションなどのデータ管理ソフトウェアやDtraceによる管理機能が無償で付属している。
「かつてサンが開発し、一般に公開したNFSは、ネットワークファイル共有の標準となった。ZFSも同じように、仮想化システムのバックエンドにおける新しい標準になっていくだろう」(寺島氏)。
さらに詳しい資料を、TechTargetジャパンでご覧いただけます。 Open Storage:仮想化環境に最適なハイコストパフォーマンスストレージ |
テクニカルトラック:リバーベッドテクノロジー サーバ仮想化を効率化し、高速化する |
サンのセッションでは、仮想化技術を活用したサーバ統合によってストレージがボトルネックとなる可能性が指摘されたが、ボトルネックとなりうるポイントはほかにもある。データセンターとユーザーを結ぶ「ネットワーク」だ。
リバーベッドテクノロジーのマーケティング本部 マネージャ 伊藤信氏は、「日本国内の回線は品質が高いためあまり意識することはないかもしれないが、実は、データセンターとユーザーを結ぶ回線、特にWAN回線の遅延は大きな問題である」と述べた。仮想化の導入によってサーバを統合し、アプリケーションを共有すれば、必然的にWAN越しにデータにアクセスする機会は増加する。そうした場合に、遅延の影響を極力抑える手だてが必要だという。
リバーベッドテクノロジー マーケティング本部 マネージャ 伊藤信氏 |
リバーベッドでは、WAN最適化アプライアンス「Steelheadシリーズ」を通じて、この問題への解決策を提供している。あるコールセンターでは、データセンター側に置かれた情報の参照に従来20秒もの時間を要していた。それがSteelheadシリーズによって5秒にまで短縮できたという。
こうした高速化を実現するために、Steelheadはいくつかの高速化技術を組み合わせている。1つは、ネットワークを流れるデータのうち、新しいものだけをキャッシュし、重複するものを可能な限り排除する「重複排除」だ。これに「TCPの最適化」を組み合わせることで、データ転送に必要な帯域を大幅に削減することができる。それまで100Mbpsの回線が必要だったところを、20Mbps、あるいは10Mbps程度の帯域でまかなえるようにする仕組みだ。
遅延を回避する技術はほかにもある。その1つが、サーバとクライアントがいちいちWAN越しに応答を交わす代わりに、Steelheadアプライアンスがサーバの手前で一種の「代理応答」を行うことで、仮想的にアプリケーションの遅延を回避する仕組みだ。WAN越しに応答を行っていると、そのたびに数十ミリ秒の遅延が発生し、最終的には大きな遅延を引き起こす。これはユーザーにとって大きなストレスだ。Steelheadが代わりにLAN内で呼び出し/応答を行うことで、1ミリ秒程度の遅延で済ませ、高速にアプリケーションを利用することができる。
さらに、「いまのプロトコルごとの遅延状況はどのくらいか」「どの程度の帯域を消費しているか」という状況を監視し、場合によってはアラートを発することにより、WANの高速化、最適化を実現。「Steelheadは、アプリケーション高速化や帯域の最適化、そしてサーバ統合と仮想化といったプロジェクトを効率化する。もちろん、ディザスタリカバリにも有効だ」(伊藤氏)。
伊藤氏はまた、サーバ以外の領域における仮想化も支援していくと述べた。
その1つが、「拠点、ブランチオフィスの仮想化」だ。「仮想化によってサーバを統合しても、どうしてもエッジ側に必要なサーバは残ってしまう。プリントサーバやDNS/DHCPサーバはその代表例だ」(伊藤氏)。
そこで同社は、これらのサーバを仮想化して、Steelheadアプライアンスの上に搭載する「Riverbed Service Platform(RSP)」という取り組みを進めている。プリントサーバだけでなく、ファイアウォールやWindows Serverのコア、つまりDNS、DHCP、ActiveDirectoryの機能を搭載していく計画だ。これにより、WAN高速化プロジェクトと同時に、「サーバレス」なブランチオフィスを実現できるという。
またデスクトップの仮想化についても、VDIイメージ配信の高速化や、シンクライアントでのアクセスに用いられるプロトコル、RDPの高速化を通じて、効率化を支援する計画だ。年内にSteelheadをアップデートし、RDPの暗号/復号化と高速化機能を追加する具体的な予定があるという。
さらに詳しい資料を、TechTargetジャパンでご覧いただけます。 仮想化プロジェクトの成功の秘訣は、仮想化データの転送速度改善に有り! |
テクニカルトラック:シトリックス・システムズ・ジャパン 高度な仮想デスクトップ体験を提供 |
シトリックス・システムズ・ジャパンは、「デスクトップ仮想化」をテーマにセッションを行った。
デスクトップの仮想化(Virtual Desktop Infrastructure)とは、ローカルシステム側でOSを動作させる代わりに、データセンター内の仮想マシン上でデスクトップOSを動作させるシステムだ。ユーザーはPCやシンクライアントから、仮想デスクトップ環境にリモートでアクセスすることになる。
シトリックスのマーケティング本部 リードプロダクトマーケティングマネージャ 北瀬公彦氏は、デスクトップ仮想化によって複数の利点が得られると述べた。「デスクトップ仮想化のメリットはいくつかあるが、中でも最も大きいのはセキュリティの向上だ。ほかにも、クライアントマシンの管理コスト削減や冗長構成による可用性の向上、省スペース化など数々のメリットが得られる」(同氏)。
シトリックス・システムズ・ジャパン マーケティング本部 リードプロダクトマーケティング マネージャ 北瀬公彦氏 |
一方、デスクトップ仮想化における一般的な課題としては、ネットワーク越しにアクセスを行うことによるパフォーマンスの低下やストレージプールの管理が挙げられる。特に、「動画やマルチメディアの再生やCADのような高度なアプリケーションの利用、そしてUSBをはじめとする、クライアントに接続される周辺機器の利用に制限があること」(同氏)という。
シトリックスでは、こうした課題を踏まえて、デスクトップ仮想化製品「Citrix XenDesktop」の機能を強化してきた。その最大の特徴は、クライアントと仮想デスクトップとの間の通信に利用している独自プロトコル「ICA」だ。
ICAは、RDPなどほかのプロトコルに比べ、少ない帯域でもスムーズに動作するよう設計されている。大きなファイルや重たいアプリケーションを動かしても、スムーズに描画され、ユーザーがストレスを感じることなく仮想デスクトップ環境を利用できるという。北瀬氏は、実際にXenDesktopでプレゼンテーションを行いながら「特に威力を発揮するのは、帯域を絞ったとき」と説明。CADなどの重たいアプリケーションが、数Kbpsという低速な環境でもスムーズに描画されるデモンストレーションを披露した。
さらにXenDesktopでは、最新版で「HDX(High Definition eXperience)」と呼ばれる一連の機能を実装することで、「高度なユーザーエクスペリエンスの実現に特に力を入れている」(同氏)という。
HDXには、ストリーミングデータを圧縮して送信し、必要に応じてクライアントのリソースを使用してマルチメディアコンテンツをスムーズに再生できるようにする「HDX MediaStream」、ソフトフォン等のVoIPアプリケーションを仮想デスクトップで使用するための、双方向コミュニケーションを支援する「HDX RealTime」、GPUやCPUによるハードウェアレンダリングを行う「HDX 3D」といった複数の技術が含まれている。また、仮想環境において、USB、マルチモニター、プリンタなどの周辺機器や、ローカルにある情報端末にシンプルな接続を実現する「HDX Plug-n-Play」も実装される。さらに、クライアントPCやサーバ、ネットワーク状態を調査して、どの程度のリソースが利用可能かを把握する「HDX Adaptive Orchestration」に基づいてこれらの技術が協調動作することで、「高度なユーザーエクスペリエンスを実現する」(同氏)という。
XenDesktopはほかにも、部署やグループ単位で必要な仮想デスクトップOSをネットワークブートする「プロビジョニングサービス」、シトリックスが得意としているアプリケーションを仮想化して配信する「Citrix XenApp」も搭載している。北瀬氏は、「XenDesktopは、少ない帯域を有効に活用して、HDXテクノロジにより高度なユーザーエクスペリエンスを実現し、パフォーマンスをはじめ、すべてのエリアをカバーするデスクトップ仮想化ソリューションである」と述べた。
さらに詳しい資料を、TechTargetジャパンでご覧いただけます。 デスクトップ仮想化が実現する管理コスト削減 調査レポート |
提供:サン・マイクロシステムズ株式会社
リバーベッドテクノロジー株式会社
シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社
アイティメディア 営業企画
制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2009年11月13日
イベントレポート
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仮想化のバックエンドにZFSを ‐ サン・マイクロシステムズ |
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サーバ仮想化を効率化し、高速化する ‐ リバーベッドテクノロジー |
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高度な仮想デスクトップ体験を提供 ‐ シトリックス・システムズ・ジャパン |
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