仮想化技術によるサーバの仮想化と集約が進むなか、性能評価の重要性が増している。今回、AMD Opteron6200および6300シリーズを搭載したHP ProLiantサーバ上で、仮想化環境のデータベース検索性能をベンチマークテストで測定。約20%性能が向上することを確認できた。さらにSSDをHDDのキャッシュとして利用可能な新技術を取り入れることで、ディスク性能向上も可能だ。
「仮想化システムの設計では、『性能が出るのか』という疑問がつきまといます。メモリ容量やHDD容量と違って、CPU性能やディスク性能が総合的に影響するアプリケーションには、性能を測るための『物差し』がなかなかありません。そこで今回はベンチマークテストを実施しました」
こう語るのは、宮原徹氏(日本仮想化技術 社長兼CEO)である。
仮想化技術の普及により、1台のサーバ上に多数の仮想化環境が配置されるようになった。この状況下でのサーバの追加導入や機種の更新を考える上で、必ず必要となるのが性能の見積もりである。
新しい世代のCPUになるほど性能は向上するため、より多くの仮想マシンを載せたり、あるいは同じ数の仮想マシンでもより処理速度を向上させることが可能となる。とはいえ、どれだけ処理性能が向上するかを定量的に知ることができなければ導入計画を立てることは難しい。
単純な演算処理性能なら、プロセッサ単体の処理性能を見ればよいが、データベースにアクセスするエンタープライズ・アプリケーションの処理性能の見積もりは一筋縄ではいかない。トランザクション処理を筆頭にデータベースの検索・更新が必ず発生するために、プロセッサ単体だけでなく、メモリのアクセスやストレージへのアクセスを含むシステム全体の性能が問われるからだ。
この疑問に回答を出すべく、最新のプロセッサAMD Opteron 6300シリーズを搭載した「HP ProLiant BL465c Gen8」でサーバ性能をベンチマークテストにより評価した。比較対象として、同構成でプロセッサだけ1つ前の世代である6200シリーズ搭載サーバの性能も評価した。対象となるソフトウエア環境は、最新のWindows Server 2012と同OSが搭載する仮想化環境Hyper-V、そしてデータベース管理システム(DBMS)のMicrosoft SQL Serverである。
このベンチマークは日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の依頼により、日本仮想化技術が実施した。ベンチマークの処理内容は、システム全体のトランザクション処理性能を測定するTPC-Bに準拠した検索処理である。今回は、CPU性能による違いを調べる目的から、ディスク性能が大きく効く更新処理については対象外としている。
「最近のエンタープライズ・アプリケーションでは、メモリ割り当てを大きくし、オンメモリ・データベースに近い環境となっている事例が多い。CPUでどれだけ性能が出るかを見ることには意味がある」と前出の宮原氏は語る。
以下、ベンチマーク結果を見てみよう。
図で分かるように、データベース検索性能でおよそ20%の向上が見られた。
このベンチマークが示しているのは「CPU世代の違いでデータベース検索性能が目に見えて向上する」という事実だ。データベース検索性能は、エンタープライズ・アプリケーションにとっては非常に価値があるものだ。サーバの機種、ディスクなどシステムの他の要素は同じままでも、CPUの最新版を選択することで、これだけのデータベース性能を手に入れることができるのだ。
「このベンチマークが意味していることは、大きくは2つあります。1番目に、CPUとして前世代のAMD Opteron6200シリーズを搭載している機種に比べ、最新のAMD Opteron6300シリーズを搭載している機種では、1台のサーバに集約できる仮想マシン(VM)の数を20%増やすことができます。2番目に、仮想マシンがリソースを使い切っていない場合は、プロセッサ性能が向上している分、処理時間の短縮が期待できます」
実は、AMD Opteron6200シリーズと6300シリーズのスペックを比較すると、コア数は変わらず、クロック周波数も2.4GHzから2.5GHzと微増に留まっている。6300シリーズは世代が新しい分、命令を追加するなどして性能向上を果たしているが、その違いはベンチマークテストを実施しないと分からない。例えば、BMI(Bit Manipulation Instructions) 、TBM (Trailing Bit Manipulation Instructions)といった拡張命令セットのサポートにより、Java仮想マシンの処理速度も向上している。サーバサイドのJava仮想マシン(JVM)の実行速度を測るSPECjbb2005ベンチマークの結果は24%向上している。また、6300シリーズでは省電力技術の進化により、ワット性能を測定するSPECpower_ssj2008の結果も6200シリーズに比べ40%の向上を示している。
そして今回新たに、データベース検索処理のベンチマークテストを実施することで、より業務アプリケーションに近いテストでも性能が向上していることを確認できたといえる。
日本HPで同サーバのプリセールスを担当する小川大地氏(プリセールス統括本部 サーバー技術本部 ITスペシャリスト)は次のように語る。
「仮想化ベンダはCPU性能のガイドラインを出していますが、例えば『2コア』と指定されていても、いつの世代のCPUでの2コアなのかは分かりません。一方、プロセッサのベンダが測定している演算処理性能のベンチマークを見ても、実際のアプリケーションに必要な性能がどれだけ向上するかは、やはり分からない。アプリケーション寄りのテストをしないと現実と乖離してしまいます。そこで今回、日本仮想化技術にベンチマークをお願いしました」
日本HPのサーバ機の特徴として、対応するプロセッサにIntelとAMDの2社のプロセッサをラインナップに揃えていることがある。
「AMD Opteron 6300シリーズは戦略的な価格設定を行っていることから、もう一方のプロセッサに比べて20%前後のコストを圧縮できます」(日本HP小川氏)。
先に示したベンチマークにより6300シリーズの仮想化環境の構築において最新プロセッサとしての能力をいかんなく発揮しているが、その一方で競合製品よりも低コストで入手できるという魅力があるのだ。
システムのコストに反映するのは、CPUだけではない。ディスクも大きな要因となる。
ここで日本HPの小川氏は、HPのサーバ機のディスク搭載能力をうまく活用するやり方を提案する。
「お客さまによっては、外付けストレージ製品が高価なことから、なるべくサーバ機の内蔵ディスクを活用してシステムを構築したいと考える場合があります。この場合、ぜひ注目していただきたいのがProLiant DL385p Gen8のディスク搭載能力です。この機種はラック内で2Uのスペースに格納できるサーバ機ですが、25台のHDDを搭載できます。通常の1Uサーバに積めるHDDはせいぜい10台ですから、1Uサーバ2台よりも高密度にディスクを集積できるわけです」
ただし、専用のストレージ製品に比べれば、サーバ機の内蔵ディスクのI/O性能は見劣りする。そこで日本HPが推進する新技術が、SSDをHDDのキャッシュとして使うことで性能を向上する「HP Smartキャッシュ」だ。
「HP Smartキャッシュは、1台以上のSSDをHDDのキャッシュとして使うことで、システム全体のディスク性能を高めます。先のProLiant DL385p Gen8の例では、1台のSSDと24台のHDDを搭載することで、コストを最小限に留めつつ、SSDに近い性能の大容量ストレージを構成することが可能になります。HP Smartキャッシュを実現するための追加投資はSSDとライセンスになりますが、両方合わせても10万円以下です」(日本HP小川氏)。
そしてもう1つのHP Smartキャッシュの大きな特徴は、「OSを問わない」ことだ。
「Smartキャッシュは、RAIDコントローラのファームウェアにより実現しています。つまりOSのデバイスドライバには依存しないため、どのOSでも同様に有効です」(日本HP小川氏)。
このように、サーバにどのOSを搭載しているかにかかわらず、HP Smartキャッシュは有効だ。このことは、Linuxのディストリビューションを選ぶ場合などの選択肢も豊富であることを意味する。
以上見てきたように、日本HPのサーバ製品ProLiant、最新のAMD Opteron 6300シリーズ・プロセッサ、日本HPのSmartキャッシュテクノロジーの組み合わせは、「高性能・低コスト」というエンタープライズユーザーの悲願を実現する上で、要検討の組み合わせといえるだろう。
日本仮想化技術が新世代プロセッサ「AMD Opteron 6300」シリーズの仮想環境における性能を明らかにするために、搭載サーバのベンチマークテストを実施。旧世代シリーズと同一環境でのデータベース性能を比較する。
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提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社/日本AMD株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2013年6月6日
日本仮想化技術が新世代プロセッサ「AMD Opteron 6300」シリーズの仮想環境における性能を明らかにするために、搭載サーバのベンチマークテストを実施。旧世代シリーズと同一環境でのデータベース性能を比較する。