インターネットの黎明期からパイオニアとしてSSLサーバ証明書サービスを提供してきた「ベリサイン」のブランドが、2013年9月、「シマンテック」へと移行する。これまで培ってきた安心と信頼を引き継ぎ、包括的なWebセキュリティソリューションを提供しようとする同社の戦略を、米シマンテック・コーポレーション(以下米シマンテック)のトラストサービス担当バイスプレジデント、トム・パウレッジ氏に語ってもらった。
インターネットの普及はわれわれの生活に利便性をもたらしたが、同時に「安心」「信頼」の重要性も浮き彫りにした。ネットの向こう側とのさまざまなやりとりを、どうすれば安全に行えるのだろうか。
その回答の1つが、SSLサーバ証明書だ。Webサイトの運営元の実在性を確認し、「このサイトはアクセスしても大丈夫だ」というお墨付きである証明書を発行してなりすましを防ぐ「認証」を行うと同時に、SSLによってWebサーバとの通信を「暗号化」し、第三者による盗聴を防ぐ役割も果たす。ネットの向こうにいる見ず知らずの相手とのやりとりも、これによって安全に行えるというわけだ。
ベリサインはインターネットの黎明期からパイオニアとしてこの認証サービスを提供し、オンライン上の情報とアイデンティティを保護してきた。そして2013年9月から、サービスのブランドを、買収に伴いシマンテックへと切り替えることになった。
ブランドの変更、シマンテックとベリサインの相乗効果によって、認証から総合的なWebセキュリティソリューションへとさらに進化しようとする同社の戦略を、米シマンテックのトラストサービス担当バイスプレジデント、トム・パウレッジ(Tom Powledge)氏に聞いた。
@IT シマンテックがベリサインの認証サービス事業を獲得したのは2010年8月のことですね。パウレッジさんは長年、シマンテックでコンシューマー向け製品などを担当してきましたが、その立場から見た獲得の意義について、あらためてお聞かせいただけませんか?
Powledge おっしゃるように米シマンテックは2010年5月に約12億8000万ドルで米ベリサインの電子証明・認証サービスに係る事業を獲得し、8月にその作業を完了しました。
シマンテックは「世界をより安全な場所にする」というミッションの下、長年「ノートン」ブランドの下でコンシューマー向け製品を提供してきたほか、企業向けにも包括的かつ先進的なセキュリティソリューションを築いてきました。一方ベリサインは、一貫して高い品質で認証サービスを提供し続けており、ECやオンライントランザクションの分野で非常に高い信頼のブランドを確立してきました。このたびのベリサインの事業獲得は、この両者を組み合わせることによって高い価値を生み出し、他社の追随を許さない、オンライン上の安全と信頼を提供することを目指したものです。
ベリサインはインターネットの黎明期である1995年から認証サービス事業を展開しており、シマンテックの傘下に入る前から、オンライン上の情報とアイデンティティを保護するための信頼できるブランドとして広く認知されていました。サードパーティの調査によっても、最も信頼できるブランドとしてコンシューマーに認知されていることが明らかになっています。
ベリサインのシールは世界165か国の10万サイト以上に採用されており、1日の表示回数は6億5000万回以上に上ります。また、シマンテックの証明書の検証プロセスは8年間のダウンタイムはゼロという非常に高い品質を誇っています。これを支えているのが、軍事施設と同様のミリタリー・レベルのセキュリティを誇るデータセンターで運営されているベリサインの認証局(CA)です。物理的なセキュリティはもちろん、強固なセキュリティ手順とベストプラクティスに従って運用されており、秘密鍵を守っています。これは、日本のデータセンターも同様です。こうした高い品質が評価され、世界の主要な金融機関100社のうち97社がベリサインのSSLサーバ証明書を採用しています。
このように高い信頼を得てきたベリサインのブランドと、シマンテックが培ってきた、コンシューマー向けで圧倒的な認知度を誇る「ノートン」ブランドとが融合することで、インターネットの利用者にとって最も身近で見付けやすい、安全・信頼の印を提供することを目指しています。
@IT ベリサインの認証サービス事業獲得後、まず「ベリサインセキュアドシール」のブランドを変更し、「ノートンセキュアドシール」として提供を開始しました。段階的にブランドの移行を進めているのでしょうか?
Powledge 実はその前に、シマンテックはコーポレートロゴの変更を行っています。ベリサインセキュアドシール(当時)のチェックマークをシマンテックのコーポレートカラーであるイエローに変更した意匠を採用したのです。事業を取得した側が、取得先の企業ブランドを企業ロゴに採用するケースは珍しいことですが、それだけ、インターネットセキュリティの分野におけるベリサインのブランド価値が圧倒的に高く、シマンテックがそれを評価していたことを示しています。
その後、2012年4月には「ノートンに生まれ変わる信頼の証」というメッセージに象徴されるように、ベリサインセキュアドシール(当時)の名称と色彩をノートンブランドと融合させた「ノートンセキュアドシール」の提供を開始しています。
@IT こうしたステップを踏んで、日本でも2013年秋に、製品名に冠するブランド名称をベリサインからシマンテックに統一するのですね? しかし、それだけ強いブランドをあえてシマンテックブランドに移行するのは、大きなチャレンジではありませんか?
Powledge 実は、日本以外の世界各地域ではすでに2012年4月からシマンテックへのブランド変更が完了しています。我々は12期連続売上目標を達成しており、シマンテックブランドでも非常に強い支持を得ていることは実証済みです。「ベリサイン」ブランドのネットユーザーからの信頼度と認知度が、消費者向けウイルス対策製品として広く浸透するシマンテックの「ノートン」ブランドと融合することによって、さらなる認知度、信頼度向上につながっていることが、売上の面でも実証されています。
@IT ここまで、主にインターネット利用者の視点から、ベリサインとシマンテックのブランド融合のメリットについて伺ってきました。では、御社にとっての顧客となるWebサービスを提供する企業側にもたらされる価値として、どういったものがありますか?
Powledge オンラインで何かを購入するとき、ユーザーはまず、そこが信頼できるところかどうか、安全なのかどうかを確認し、安心できるWebサイトで購入したいと思うでしょう。そんなときに、シマンテックブランドの証明書とノートンセキュアドシールは、誰にでも伝わる「安全の目印」となります。安心して取引できる場所であると示すことで、オンラインビジネスの活発化につながることでしょう。
特に今回実施する製品名変更は、セキュリティ企業としてトップベンダであるシマンテックのブランドを製品名に冠することで、比較的ニッチなセキュリティ製品としてお客様から認識されていたSSLサーバ証明書を、より大きなWebサイトセキュリティソリューションとして飛躍させる機会と捉えています。
いま、エンドユーザーを取り巻く脅威はますます高度化し、ゼロデイ攻撃が多発しています。こうした現実の脅威から身を守るには、コンシューマー側がセキュリティソフトウェアを導入して自らを保護するとともに、Webサイトオーナー側も安全にサービスを実装するなど、双方での対応が必要です。
我々は、セキュリティ対策ソフトを提供してコンシューマー側の対策を支援するとともに、SSLサーバ証明書に脆弱性アセスメントやマルウェアスキャンといった、Webサイトの脆弱性を検査し、改ざん被害を受けていないかどうかをチェックするセキュリティ検査機能を無料で実装することで、ゼロデイ脅威からの保護を提供しています。さらに、サイトだけでなく検索結果上でリンクの安全性を示し、検索サイトからの安全な誘導を促進するシールインサーチ機能も無料で備えています。
検索からサイト閲覧、そして購買に至る一連のオンライントランザクションのプロセスすべてにおいて、安全性を向上することが我々の使命です。今回のブランド移行によって、単にベリサインの高い信頼を継承するだけでなくいっそう高め、インターネットサービスを提供する企業のビジネスをさらに促進する、という他のベンダにはない独自の価値をご提供できると考えています。
@IT 最後に一言、顧客に向けたメッセージをお願いします。
Powledge モバイルデバイスの普及にともない、Androidを狙うマルウェアも増加してきました。今後、さらに多くのトランザクションがモバイルデバイス上で行われることになるでしょう。モバイルの世界において、SSLサーバ証明書や信頼の目印となるノートンセキュアドシールが果たす役割は、これまで以上に重要なものとなるでしょう。
シマンテックとベリサインは、これまで培ってきた技術と経験を生かし、こうした新たな潮流にも対応したセキュリティソリューションを提供して、オンライントランザクションのプロセスすべてにおいて、安全性を向上させていきます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:日本ベリサイン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2013年9月30日