「BCPの観点からも、工数・コストを掛けずに安全にバックアップしたい」という企業は多い。マイクロソフトでは、その解として、“バックアップデータの保管先をクラウド環境上に設ける”という方法を提案する。
データのバックアップ、特に遠隔地にデータを保管するオフサイトバックアップの重要性が増している。
2011年3月11日に発生した東日本大震災において、被災した企業や自治体が貴重な業務データを消失させてしまったことを受け、現在多くの企業が災害対策やBCP(事業継続性計画)の一環として、オフサイトバックアップの仕組み構築に取り組んでいる。
一方で、お金を掛けていざバックアップの仕組みを導入したものの、その運用を回し切れていない企業も多いようだ。
日本マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 プラットフォーム戦略部 エグゼクティブマーケティングマネージャ 鈴木祐巳氏によれば、特にITの専任要員を確保できない中堅・中小企業では、バックアップの運用が有名無実化しているケースが決して少なくないと言う。
「バックアップの導入・運用にあまり予算を掛けられない企業では、Windows Serverにデフォルトで付属しているバックアップツールを使っていることが多いが、テープにせよディスクにせよ、きちんと世代管理をすると意外と容量を食うし、逆に綿密に世代管理できていないと、いざというときのリストアでトラブルになるケースが多い。特に、バックアップ作業を通常業務と兼任で行うことが多い中堅・中小企業では、こうしたことが起こりやすい」
そこで、こういった課題を解決するためにマイクロソフトが提案するのが、“バックアップデータの保管先をクラウド環境上に設ける”という方法だ。2013年10月より提供が開始されたばかりの「Windows Azure Backup」というサービスがそれに当たる。
Windows Azure Backupは、Windows Server 2012およびWindows Server 2012 Essentialsが導入されたサーバ上のデータバックアップを、マイクロソフトが提供するパブリッククラウド基盤「Windows Azure」のストレージ領域上に自動的に取得する、というサービス。ユーザーは、専用のツールをマイクロソフトのサイトからダウンロードし、後は普段使っているバックアップツールとほぼ同じ操作感覚で設定を行えば、それまでテープやローカルディスクにとっていたバックアップを、そのままWindows Azureのクラウドストレージ上にとることができる。
日本マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 クラウドプラットフォーム製品部 エグゼクティブプロダクトマネージャー 大谷健氏によれば、このようにユーザーがクラウドを使っていることを意識させない点にこそ、Windows Azure Backupの最大の特徴があると言う。
「近年、クラウドを使ったオフラインバックアップのサービスが増えてきているが、その多くは導入に当たってそれまでと異なる運用スキルを必要とする。その点Windows Azure Backupは、管理者がそれまで培ってきたバックアップの運用ノウハウやスキルセットをそのまま生かしながら、バックアップ先に新たにクラウドストレージを加えることができる」
ちなみにWindows Azure Backupは、価格がリーズナブルな点も大きな特徴だ。バックアップのためのソフトウェア機能一式に、データ圧縮処理、データ暗号化処理、回線の帯域制御といった数々の付加機能を提供しながら、初期導入コストはほぼゼロ、月々の利用料もバックアップ対象データのサイズが100Gバイトなら4000円程度で済む。
また、バックアップの運用自体も極めてシンプルになる。テープやディスクなど、物理的なバックアップメディアを管理する必要がなく、世代管理もすべてクラウド上で行われるため、それまで中堅・中小企業において有名無実化していたバックアップ運用を正常化する上でも導入効果は高い。
ただし、以上で挙げたようなWindows Azure Backupの使い方は、どちらかと言うとエントリークラス的な運用方法であり、機能にも若干の制限が設けられている。例えばバックアップデータの容量は最大で850Gバイトまで、バックアップ対象データの種類はあくまでもフォルダとファイルのみで、ドライブの丸ごとバックアップやベアメタルバックアップはサポートされていない。
しかしWindows Azure Backupは、Windows Server 2012(およびEssentials)を通じた利用のほかにも、System Center 2012のData Protection Manager(DPM)機能と連携して動作することもできる。
つまり、System Center 2012を通じて管理されるバックアップのデータ保管先として、Windows Azureのクラウド環境が容易に使えるようになるのだ。
「System Centerを使った従来のバックアップ運用ノウハウをそのまま生かしながら、シームレスにクラウドを使ったオフラインバックアップ体制へ移行できる。また、Windows Server 2012を通じたバックアップでは、フォルダとファイルしかバックアップできなかったが、DPMとの連携ではドライブ丸ごとバックアップやベアメタルバックアップもサポートされるので、より高度なバックアップ運用も可能だ」(大谷氏)
ところで、Windows Azure Backupのバックエンドで使われているクラウドのストレージ基盤とは、一体どのようなものなのだろうか。
ここでは、マイクロソフトがかねてよりWindows AzureのIaaS型サービスとして提供してきたクラウドストレージサービス「Windows Azureストレージ」が使われている。このサービス、クラウドストレージサービスとしては先行しているAmazon Web Servicesの「Amazon S3」とほぼ同等のものと見ていいだろう。HTTPやREST APIでアクセス可能なオブジェクトストレージ領域を、月額課金で提供するパブリッククラウドサービスだ。
ただしWindows Azureストレージは、他社のクラウドストレージサービスとは異なる幾つかの特徴を持っている。その1つが価格だ。
「最も下位のプランでは、総容量1Tバイトまで利用可能だが、その場合の1Gバイト当たりの容量単価は5.82円と、競合他社のサービスに比べ安価なプライスを実現している。さらに、上位プランになればなるほど、この容量単価はさらに安くなっていく」(鈴木氏)
しかも、安さと同時に極めて高いサービスレベルも実現しているところに、Windows Azureストレージの最大の強みがあると同氏は言う。
「顧客のデータは、電源や回線が異なるラック3つに、それぞれコピーが分散配置される。このデータ三重化によって、機器故障などに対する耐障害性を高めている。さらに、『地理的レプリケーション』というオプション機能を付ければ、この3つのコピーがそのまま遠隔地のデータセンターに複製されるため、全部で六重化されることになる。このような仕組みによって、安価なパブリッククラウドでありながら、アップタイム99.9%のSLAを保証している」
ただし、Windows Azureストレージはこれまで、海外のデータセンターからのみ提供されていた。そのため、セキュリティポリシーの都合でどうしても海外のデータセンターを使えない企業は、これまでWindows Azureストレージが安く高品質なサービスであることは知りつつも、利用できなかった。
しかし、いよいよ近日、マイクロソフトが日本国内にクラウドデータセンターを開設することが決まった。2013年11月21日にマイクロソフトが行った発表によると、2014年の前半には、関東圏および関西圏の2つのリージョンからなる国内データセンターが稼働開始するという。
「Windows Azureのストレージは世界統一価格を設定しているため、日本国内のデータセンターでサービスを提供する場合でも、Windows Azureストレージの価格は世界共通に設定される。つまり、国内リージョンを選んでも追加費用は発生しない。そのため、競合他社が国内データセンター上で提供するストレージサービスと比べ、かなり安価にサービスを提供できる。また、関東と関西の2箇所にデータセンターを設けるため、国内だけで災害対策・BCPを実現できるのも大きな強みだ」(大谷氏)
このように、価格や可用性の面で、企業ユーザーにとって極めてリーズナブルな選択肢になりそうなWindows Azureストレージだが、一方で同サービスをはじめとするクラウドストレージサービスの導入には、一般的に幾つかの技術的なハードルが立ちはだかっていたのも事実だ。代表的なものが、サーバとストレージ装置間のプロトコルの相違だ。一般的なストレージ装置ではiSCSIやFC(Fibre Channel)が使われる一方、クラウドストレージではHTTPやREST APIを通じてデータがやりとりされる。
またパフォーマンスやセキュリティの面でも、クラウドストレージは新たな課題を企業のシステム運用現場に持ち込む。WAN越しのデータアクセスは、SANやNASに比べるとパフォーマンスが劣るし、そもそもクラウド環境上にデータを置くことに対するセキュリティ上の懸念を払拭できないことには導入は進まない。
マイクロソフトでは、こうした課題をクリアした上で、「企業がクラウドストレージをあたかも、従来のローカルストレージ装置と同様に使えるソリューション」を提供している。それが、2UサイズのiSCSIストレージ装置「StorSimple」だ。この製品、一見するとごく普通のストレージ装置にように見える。
しかしこの製品の最大の特徴は、「筐体内に装備したSSDとHDDだけでなく、Windows Azureストレージの領域も併せて管理できる」という点にある。具体的には、アクセス頻度が高いデータはSSDもしくはSASに、そしてアクセス頻度が低いデータは、自動的にHTTPやREST APIを通じてWindows Azureストレージの領域に格納するのだ。
アクセス頻度が高いデータはローカルディスクに保存しているため、バックエンドでクラウドストレージを活用しつつ、ストレージシステム全体としてのパフォーマンスも維持できる。かつ、データを暗号化した上でSSLを使ってクラウドへ送出するため、データ漏えいの心配もない。しかもサーバから見ると、ストレージとのインターフェイスは従来と何ら変わらぬiSCSIであるにも関わらず、バックエンドではクラウドストレージがフル活用されていることになるのだ。
日本マイクロソフト ビジネスプラットフォーム統括本部 インキュベーションセールス部 テクノロジースペシャリスト 工藤政彦氏は、こうしたStorSimpleの特徴を、クラウドストレージへのゲートウェイ機能を提供する「クラウド統合ストレージ」と表現する。
「StorSimpleは、オンプレミス環境にある既存サーバからクラウドストレージにアクセスする際の『プロトコル変換ゲートウェイ』『WAN遅延解決ゲートウェイ』『セキュリティゲートウェイ』としての機能を提供する製品だ。また、『クラウドスナップ』という機能を使えば、極めて高速なリストアが可能な災害対策システムを、Windows AzureストレージとStorSimpleを使って安価に実現できる」(工藤氏)
データ階層化の範囲を、ストレージ筐体内のディスク装置からクラウドストレージにまで拡張するという、これまでにない斬新な発想で作り上げられたStorSimple。
結果として、企業がクラウドストレージを導入する際のハードルを極限まで引き下げることに成功した。しかも現在、日本マイクロソフトでは、このStorSimpleとWindows Azureストレージの価格を大幅に下げた特価キャンペーンを展開している。本稿を読み興味を持たれた方は、このキャンペーンの情報も併せてチェックしてみてはいかがだろうか。
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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2013年12月24日