全国各地で医薬品の説明や医師のニーズをヒアリングするMR職を多数抱える製薬企業は、スタッフが連日地方出張も当たり前。そんな中、情報システム整備のミッションを受けたボスが最初に着手した改革とは?
東京都日本橋に本社を構えるセオリア ファーマ株式会社は、耳鼻咽喉科領域の医薬品の開発、製造、販売を行う製薬会社だ。2010年10月に、あすか製薬の耳鼻咽喉科が独立する形で創業された同社は、創業してまだ3年あまり、社員数72人と規模は小さいながらも、全国の病院や開業医、薬局に製品を広く提供している。
同社従業員のうち、約40人がいわゆるMR職に就く。ドクターに自社製品の説明や、ニーズのヒアリングを行う業務がメインであるが、全国各地の医療機関を訪問する彼らのスケジュールは多忙だ。場合によっては数日間かけて遠方の医療機関を回ることも少なくない。病院は都市部だけでなく、広く点在することから、場合によっては長距離の移動を行う場合もある。
こうした業務スタイルゆえ、終業時間に毎日オフィスに立ち寄れるというわけではない。
一方で、オフィスには、医薬品の効能説明などの販促情報や、ドクターからのヒアリング情報などが蓄積されている。理想としては、情報をリリースしたタイミングで外回りのスタッフ全員が共有できていた方が良いものだ。
そんな同社のIT活用を推進する立場にあるのが、管理本部 情報システム部だ。実は同部は、2013年4月に設立されたばかり。それまでは、総務部の業務の一部として位置づけられ、IT施策を取りまとめて実行する専任者が存在しない状態だったという。2013年4月に、管理本部長として同社に加わった前川裕貴氏は、当時の社内ITの状況について次のように振り返る。
「入社当時は、メールも使い勝手やコストパフォーマンスが決していいとは言えないホスティングサービスが使われており、かなりIT環境が貧弱だった。これでは業務効率の向上は望めないため、何とかしなければと考えた」
そこで同氏が真っ先に思い付いたのが、前職で利用していたMicrosoft Office 365(以下、Office 365)だった。Office 365のメールやスケジュール管理、ファイル共有といった機能にスマートフォンを組み合わせたIT環境に慣れ親しんでいた前川氏は、セオリア ファーマでも同様の仕組みが導入できないか、早速配下の情報システム部に指示した。
これを受けて、情報システム部 部長の小野壽氏は早速、Office 365を含む何種類かのメール・グループウェア製品の調査に乗り出した。その結果、早々にOffice 365が筆頭候補に挙がったという。
「Office 365のライセンス体系を精査して利用コストを見積もったところ、大幅なコストダウンを図れることが分かった。また、弊社の情報システム部は2013年4月に立ち上がったばかりで、2人しか要員がいないため、自社内でサーバを管理するのは難しい。その点、Office 365はクラウドサービスなので、サーバを社内に導入する必要がない」
また、それまで同社内では、メールクライアントソフトとしてMicrosoft Outlookを長く利用しており、Office 365でも引き続きこれを利用できる点も、重要な選択ポイントになったという。
こうして同社は2013年5月、正式にOffice 365の導入を決定、早速その導入作業を開始した。実際の導入作業の大部分は、同社のパートナー企業である協立情報通信株式会社が担当した。
このOffice 365導入プロジェクトの最大の目的は、メール環境の刷新とメーリングリストの導入にあった。既存のメール環境から、各ユーザーのメールデータをExchange Onlineのメールボックスに全て移行させた上で、メーリングリストを含むExchange Onlineの全ての機能を使えるようにする。さらには、全社員にスマートフォンを支給し、いつどこにいてもExchange Onlineにアクセスできるようにした。
ちなみに、同社 管理本部 情報システム部 芳賀崇浩氏によれば、このメール移行作業は極めてスムーズに運んだという。
「ユーザーによっては、全てのメールデータの移行に丸2日ほどかかったこともあったが、協立情報通信さんと弊社で手分けすることで、地方の営業所も含めて特に大きなトラブルもなく移行を完了できた」
また、これまで営業支援システムの一部機能を間借りする形で運用していたスケジュール管理も、これを機にExchange Onlineに統合することにした。さらには、SharePoint Onlineによるファイル共有も、Office 365導入の大きな目的の1つだったという。
「弊社の営業担当者は、連日朝から晩まで外回りで外出していることが多いため、各人に携帯電話とノートPCを支給していた。しかし、メールの連絡や会議召集の通知はノートPCでしか受け取れないため、タイムリーに連絡を取るのが難しかった。また、販促資料などを配布する際にも、いちいちメールに添付して各担当者に送付していた。こうしたもろもろの課題も、Office 365の機能を活用することで一気に解決することを狙った」(小野氏)
Office 365の実際の導入作業は、特に大きなトラブルに直面することもなく、実質的にはわずか2カ月程度で無事完了した。こうして2013年8月からメール環境が、そして同年10月からはスケジュール管理やファイル共有をはじめとするイントラネット環境が、Office 365に一斉に切り替わった。これによって、日々の業務の効率は確実に向上している前川氏は言う。
「以前は会議召集の際、各参加者といちいちメールでやりとりして開催日時の調整を行っていたが、Office 365に移行してからは以前とは比べ物にならないほど会議召集が楽になった。また、資料を社員に配布する際も、SharePoint Onlineのフォルダ上で資料を一元管理し、社員間で効率的に共有できるようになった」
また小野氏によれば、Office 365の導入によるコスト削減効果も絶大だったという。
「以前利用していたメールサービスにメーリングリストとファイル共有の機能を追加する場合と比べ、Office 365は3分の1程度のコストで同等の機能を実現できた」
同社では発足したばかりの情報システム部門が主導して、ごく短期間でOffice 365環境を導入、既にコスト削減や業務改善で成果を見せている。前川氏は、これをきっかけに、長期的な業務改善の展望を語った。
「今後は、ワークフロー機能やLync Onlineのビデオ会議機能なども有効活用し、より業務効率向上の効果を引き出していければと考えている」
前川氏らは、取材中、Lync Onlineの機能の活用方法や評価についても検討する考えを示した。外回りの多いMR職のスタッフとオンライン会議が実現すれば、より効率的な業務展開ができる。会議のためだけに本社に立ち寄るムダなコストも時間も不要になるかもしれない。
※本記事は日本マイクロソフトにより提供されたコンテンツを一部編集の上、掲載したものです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2014年1月3日