HDDだけではI/O性能に限界がある。かといってSSDはまだまだ高価。それぞれを組み合わせて利用するシーンが増えたいま、両者の特性を最大限に生かすアーキテクチャを持つストレージ製品が注目を集めている。本稿では、このストレージ製品の全貌を紹介するセミナーを取材、その革新性を紹介する。
2014年2月19日、東京ミッドタウンホール&カンファレンス(東京・六本木)にて、株式会社 東芝 クラウド&ソリューション社主催のイベント「Nimble Storageの全貌がわかるスタートアップセミナー」が開催された。Nimble Storage(以降、ニンブル ストレージ)は、新興ストレージベンダーである米国Nimble Storage, Inc. が開発・提供するストレージ製品。日本国内では東芝が総代理店として、2014年2月から各販売代理店を通じて提供を開始したばかりだ。
その先進性と、米国を中心とした海外での高い実績を引っさげて、いよいよ日本に本格上陸した話題の製品とあって、本イベントには数多くの参加者がつめかけた。本稿では、その内容をダイジェストでお届けする。
冒頭、東芝 クラウド&ソリューション社 ストレージシステム推進部 部長 生藤芳一氏が登壇し、本セミナー開催の挨拶を行った。東芝グループでは現在、「エネルギー」「ヘルスケア」「ストレージ」の3つの事業分野に注力しており、ニンブルストレージはストレージ事業の中核製品の1つと位置付けられているという。同社ではニンブルストレージの日本における総代理店を務めるほか、グループ会社である東芝ITサービス株式会社が同製品のサポートサービスを一手に担う。「ニンブルストレージは、来るべきビッグデータ時代には最適なストレージ製品。販売パートナーさまとともに、日本のお客さまが安心して利用できる環境を整備していく」(生藤氏)。
続いて、東芝 クラウド&ソリューション社 ストレージシステム推進部 ストレージシステムプロダクトマーケティング・商品企画部 部長 花井克之氏による製品紹介セッション「時代はハイブリッドへ 〜Nimble Storageが創造する新たなイノベーション」が行われた。
「ニンブルストレージはいわゆる『ハイブリッドストレージ』と呼ばれる製品だが、ハイブリッドカーが1990年代の電池技術のイノベーションによって一気に製品化と普及が進んだように、ハイブリッドストレージもニンブルストレージによるイノベーションが今まさに進行している」。花井氏はこう述べ、ニンブルストレージがストレージの世界に技術革新をもたらす画期的な製品であることを強調する。
こうした技術革新の具体的な内容として、同氏は真っ先に「CASL」と呼ばれる、ニンブルストレージ独自のアーキテクチャを挙げる。独自のリード/ライト処理方式によって、従来は高価なSSDを大量搭載しないと高パフォーマンスが得られなかったのに対して、少量かつ安価なSSDをHDDとうまく組み合わせることで、高スループット・大容量を低コストで実現できるようになったという。
また、ニンブルストレージはディスク容量効率に優れた高速なスナップショットを作成でき、頻繁にバックアップが取れる。しかも、スナップショット機能は標準機能の中に組み込まれているため、追加コストを掛けることなく好きなだけ何世代ものスナップショットを取ることができる。システムの拡張性も、上位コントローラへのアップグレードによるスケールアップが容易に行えるほか、今後リリース予定の最新バージョンでは筐体を最大4ノードまで並列接続するスケールアウトにも対応できるようになる。
さらには、「InfoSight」と呼ばれる独自の運用管理の仕組みも、ニンブルストレージのユニークな特徴の1つだ。ストレージの監視や運用管理は、ユーザーがローカルに行うのではなく、クラウド上のサポートセンターが機器をリモート監視し、一元的に集中管理する。もし何らかの障害が発生したり、あるいは障害の予兆が検知された場合には、サポートセンターからユーザーに通知やアラートが送られる。ちなみに、日本におけるサポートサービスは東芝ITサービスが一括して提供する。
このように、これまでのストレージ製品には見られない斬新な機能を数々搭載したニンブルストレージだが、今後も技術革新を休まず継続していくという。「具体的な内容はまだ話せないが、今後1年間だけでも非常にエキサイティングな機能強化が幾つも予定されており、個人的にもとても楽しみにしている」(花井氏)。
米国Nimble Storage, Inc. の日本法人であるニンブルストレージ合同会社のシニア・システムズエンジニア 川端真氏からは、ニンブルストレージの製品技術についてさらに詳しい紹介が行われた。
「データは増えているのに、ストレージの基本性能は一向に向上していない。無理にパフォーマンスを上げるためには、RAIDでなるべく多くのHDDにI/Oを分散させるスピンドルバウンドアーキテクチャを取る必要があるが、これは規模やコストが膨大になる上に管理も面倒。こうしたジレンマを根本的に解決するために、ストレージのアーキテクチャを一から見直した結果出来上がったのがニンブルストレージだ」(川端氏)
川端氏はまず、ニンブルストレージの最大の特徴である「CASLアーキテクチャ」の仕組みについて解説した。ニンブルストレージに入ってきたデータ書き込み要求は、即座にインライン圧縮され、さらにランダムアクセスをバッファ上に一度溜め込み、連続データにした上であらためてHDDに送られる。HDDはランダムアクセスには弱いものの、連続データのシーケンシャル書き込みに関してはSSDをしのぐほどの高パフォーマンスを発揮するため、こうした一連の前処理を行うことで、SSDを使わずとも高い書き込み性能を実現できるのだ。
リード処理に関しては、SSDをリードキャッシュとして利用することでスループット向上を図っている一方で、ライト処理では基本的にSSDを使う必要がないため、システム全体ではSSDの容量を少なく抑えることができ、かつ書き込み耐性の低い安価なMLC型製品で事足りるため、よりコストを抑えつつ高スループット・大容量を実現できるというわけだ。
また同氏は、ハードケースに実物のニンブルストレージを格納したデモ機を会場に持ち込み、実際にPCからIOMETERを使ってベンチマーク用の大量書き込み処理を実行してみせた。デモ用に持ち込んだニンブルストレージは、8基のディスクを搭載したベーシックグレードのものだったが、それでも1万8000IOPSのパフォーマンスを発揮する様子がスクリーン上に表示されると、会場からは感嘆の声が漏れた。
「このように、持ち運びできるデモ環境も用意しているので、もしニンブルストレージの実物を見てみたいというお客さまのご要望があれば、ぜひお声がけいただきたい」(川端氏)
また日本マイクロソフト ビジネスプラットフォーム統括本部 Cloud OS営業本部 本部長 吉川顕太郎氏からは、マイクロソフトが提唱するビジョン「クラウドOS」、そしてニンブルストレージとのパートナーシップについて紹介が行われた。同社は現在、Windows Azureをはじめとするクラウドサービスを同社の製品・サービス開発の中心に据えるイノベーションを急速に進めており、その一環としてニンブルストレージをクラウドOSにふさわしいストレージの1つとして位置付けているという。「米国では既にNimble Storage, Inc.との密接なパートナーシップの下にリファレンスアーキテクチャなどを発表しており、近い内に日本でも提供したいと考えている」(吉川氏)。
続いて、東芝 クラウド&ソリューション社 ストレージシステム営業・技術部 部長 平田雅一氏より、ニンブルストレージの販売代理店の紹介が行われた。本稿執筆時点(2014年2月)では、ニンブルストレージの販売を手掛ける企業は、アセンテック株式会社(以下、アセンテック)、シーティーシー・エスピー株式会社(以下、CTCSP)、ソフトバンクBB株式会社(以下、ソフトバンクBB)の3社。
アセンテックは、シンクライアントやVDIのソリューション、またそれにかかわる製品を主に手掛けるベンダーで、日本国内ではいち早くニンブルストレージの取り扱い開始を表明していた。その理由を、同社 取締役 ソリューション本部 本部長 松浦崇氏は、「VDI案件で必ずネックになるのが、ストレージの性能とコストの問題。ある程度の規模のVDIを快適に利用するには、I/O性能の高いストレージ製品が必要になるが、そうなるとコストが跳ね上がってしまう。長らくパフォーマンスと価格のバランスが取れたストレージ製品を探し続けていたが、ニンブルストレージはそうした条件にぴたりと合致した」と説明する。
同社では今後、ニンブルストレージ製品の販売のほかにも、同製品を使ったSI案件を手掛ける企業に向けた営業支援や技術支援の取り組みを強化していくという。既に2014年3月と4月には、同社による技術者向けセミナーの開催が決まっている。
CTCSPは数多くのストレージ製品を取り扱うベンダーだが、ニンブルストレージを今新たにポートフォリオに加えた理由について、同社 事業本部 ソリューション営業部 部長 大網健二氏は「CPUやネットワークが高速化する中で、ストレージだけが置きざりにされており、特に仮想化環境においては性能のボトルネックになることが多い。これを回避するための方法はあるものの、どれも一長一短。そんな中、ニンブルストレージは性能とコストのバランスがちょうどいい具合に取れた製品だと直感した」と説明する。
さらに同氏は、「シンプルさ」もニンブルストレージの大きな魅力だと言う。「これからますます増えてくるであろう仮想化環境におけるストレージ性能の問題を、極めてシンプルな方法で解決できるニンブルストレージは、今後キラープロダクトになるのではないかと期待している」。同社では今後、パートナー向けに販売を行うが製品の再販だけでなく、パートナーが自社のシステムと有機的な組み合わせを行うためのリファレンスソリューションからの作成支援を行う。全国6拠点から、パートナー企業のニンブルストレージビジネスを営業・技術両面で強力にサポートしていくという。
またソフトバンクBBでは、既に約1年前からニンブルストレージに注目し、独自に調査を進めていたという。それだけに、今回正式に販売代理店としてニンブルストレージの取り扱いを開始できたことは、同社 コマース&サービス本部 仮想化ビジネス統括部 統括部長代行 友秀貴氏によれば「心待ちにしていた出来事」だという。「近年のシステム案件は仮想化が当たり前になっており、特にVDIなどではストレージのI/O性能がこれまでになく求められている。そうしたシーンにおいて、ニンブルストレージはぴたりとはまる製品だ」。
ソフトバンクBBも他の2社と同様、製品販売とともに営業・技術支援を提供するほか、同社が取り扱う膨大な数のIT製品やサービスをニンブルストレージと組み合わせて提供することで、「より付加価値の高いソリューションを、パートナーさまと協力しながらエンドユーザーさまに提供できる」(友氏)としている。
本稿で紹介したセミナーの発表資料はこちらのWebページからダウンロードできます。技術詳細や各社のソリューションなどをPDFで確認できます。
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提供:株式会社 東芝 クラウド&ソリューション社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2014年5月11日