日本マイクロソフトが、5月29、30日の両日に開催したデベロッパー/アーキテクト向けカンファレンス「de:code」では、「Mobile First, Cloud First」をスローガンに、クラウドやモバイルデバイスへの対応を迅速に進める、同社の最新のテクノロジが多数披露された。イベント会場の中には、多数のパートナーによる展示ブースも設けられ、各社が最新のテクノロジをふんだんに活用したソリューションを来場者にアピールしていた。ここでは、17ブースの出展内容を紹介する。
マイクロソフトとアクセンチュアの合弁企業である「アバナード」は、Microsoft Azureに加え、Microsoft Surface、Kinect、デジタルサイネージなどを組み合わせた「スマートバンキング」ソリューションを中心とした展示を行った。消費者はサイネージ上に表示されるQRコードを通じて、簡単に金融商品に関する詳細な情報にアクセスでき、その履歴は見込み客情報として、営業担当者にも伝えられる。
担当者はWindowsタブレットの画面を通じて商品プランの提案や、関係する部署への連絡などを一括して行える。これらの一連のプロセスを、クラウドとタブレットを含むシステム上で行えるようにすることで、より効率的な提案や顧客との関係構築が可能になるという。
セキュリティベンダーのトレンドマイクロは、Microsoft Azure上で展開できるセキュリティソリューション「Trend Micro Deep Security」を紹介した。システムのクラウド移行が進むに従い、そこでのセキュリティをどう確保するかが、ユーザーにとっての課題にもなっている。
Deep Securityは、Microsoft Azure上のオプションメニューとして用意されているセキュリティソリューションの1つ。ウイルス対策だけではなく、IPS/IDS(仮想パッチ)、ファイアウォール、変更監視、ログ監視などの機能を総合的に提供し、Microsoft Azure上に複数のシステムを展開する企業が、クラウドに対して行われる攻撃からシステムを守ることを支援するという。
組み込み向けのノウハウに基づく開発支援サービスを提供している両社では、.NET Micro FrameworkとMicrosoft Azureを利用した「チョコレート自動補充機」を展示して技術力をアピール。来場者が小皿の中からチョコレートを取り出すと、重量計のセンサーがそれを感知してMicrosoft Azureに送信。
機械のモーターを動かして、新たなチョコレートを小皿に補充する仕掛けだ。ハードには「.NET Gadgeteer」のボードと各種モジュール、市販のモーターを使用。組み込み機器向けの開発がMicrosoft Visual Studio上のC#で可能になることで、バックエンドとフロントエンドの開発スキルの共通化が進み、開発期間も大幅に短縮できるという。
インフォテリアでは、EAIツール「ASTERIA Warp」と、モバイルデバイス向けのコンテンツ配信ツール「Handbook」を中心とした連携ソリューションを紹介。
ポータル製品であるMicrosoft SharePoint上で更新された情報を、ASTERIAで自動的にHTMLへ変換し、Handbookへと配信する仕組みを披露した。これにより、SharePoint上で管理している最新の情報を、Handbookによるペーパーレス会議の場などで、いつでも参照できるという。
両社のブースでは、.NET Framework(C#)で、Windows、iOS、Androidといったデバイス向けのクロスプラットフォーム開発を可能にする「Xamarin」を中心に展示。共有されたコードベースと、それぞれのデバイスに対応したUIコンポーネントを組み合わせて、各プラットフォーム向けのネイティブアプリケーションを生成できる。
.NET開発のスキルセットでクロスプラットフォーム環境に対応できるようになることで、開発作業の効率化、開発期間の短縮を実現できるという。
パッケージのセキュリティソリューションベンダーとして知られるウェブルートは、今回、主にパートナー向けの「BrightCloud Security Solution」(以下、BrightCloud)を中心に紹介。
BrightCloudでは、同社が世界中のエンドポイントから収集したセキュリティ情報を集約した「Webroot Intelligence Network」上のURL、IPアドレス、ファイル、モバイルアプリなどのレピュテーション(評価)情報を利用できるAPIとSDKが提供される。パートナーは自社で開発する機器やソフトウェアで、ウェブルートによる信頼性の高いセキュリティ評価機能を容易に利用できるという。
グリーで提供されているモバイルゲーム「神獄のヴァルハラゲート」を開発しているグラニ。同タイトルは、AWS上で「Windows Server 2012」「C# 5.0」「ASP.NET MVC 5」というマイクロソフトテクノロジを使って構築されているという。これまで、特にWebのB to Cの分野では、.NETに関するスキルを持った開発者が少なかったそうだが、グラニでは開発部にMicrosoft MVPが4人在籍しており、より広い分野への.NET、C#普及を目指しているという。
会場では、さまざまなモバイルデバイス向けのデモゲームを展示して技術力をアピールした。
タブレットメーカーのワコムでは、Windows 8を搭載した液晶ペンタブレット「Cintiq Companion」を展示していた他、同社が提唱しているデジタルインクデータの標準化技術である「WILL」について来場者にアピールした。
WILLは、これまでプラットフォームごとにバラバラだった「デジタルインク」に関する情報の標準化を目指すもので、インクのレンダリング、インクデータの保存や読み込み、ストロークのストリーミング配信などを、クロスプラットフォームで実現できるという。WILL SDKは、Windowsストアアプリ、iOS、Androidに対応しており、同社の開発者サイト(wdnet.jp)で詳細な情報が確認できる。
クラウドワークスでは、デザインやシステムなどを発注したい企業と、受注したいフリーランスとをネット上で結び付けるクラウドソーシングサービスを展開している。
会場では、ネットイヤーゼロが発注して開発されたWindowsストアアプリの「Ippin」、グノシーのコンペ形式による「アイコン」の発注といった多数の事例を紹介しつつ、発注者、受注者双方の「納得感」を重視した案件仲介サービスを目指している同社の取り組みをアピールした。
グレープシティでは、5月29日バージョンアップしたばかりの業務アプリ向けコンポーネントパッケージ「ComponentOne Studio」と、6月25日に発売予定の新製品「CalenderGrid」といった開発支援製品を紹介。
新製品のCalenderGridは、グリッドの機能とカレンダーの機能を合わせ持つUIコンポーネントを提供するもの。「カレンダー」「グリッド」は、いずれも業務アプリでのニーズが高いコンポーネントだが、CalenderGridは、この2つの機能を合わせ持ったものだ。「日付関連の処理も行える高機能なグリッドUI」を使いたい開発者にとって便利な製品だという。
同社が日本での販売代理店を行っている、クラウドによるメール配信プラットフォーム「SendGrid」を紹介した。
SendGridは、全世界で月間110億通の配信実績があるといい、Microsoft Azureのアドオンとして利用することも可能となっている。さまざまなAPIが用意されており、マーケティングメールだけではなく、サイト上でのイベントをトリガーとして通知のメールを配信する機能などを、Webアプリケーションに容易に組み込むことが可能だという。
日本ではサムライズムが代理店となっている「JetBrains」の開発支援ツールを中心に紹介。特に、Microsoft Visual Studioのアドオンとして、コードの問題個所を指摘したり、自動リファクタリングなどを行ってくれる開発支援ツール「ReSharper」が、.NET開発者の関心を集めた。
ちなみにJetBrainsは、最新の標準に対応したJava IDEとして近年ユーザー数が増えている「IntelliJ IDEA」の開発元でもある。
Microsoft Azureをバックエンドに、システムの「クラウド化」や「タブレット化」を通じて多様な分野での業務改善を支援する総合サービス「SkyDream」を紹介。ブースでは、同社が手掛けているいくつかのシステムをデモとして披露した。
例えば、路線バスの運転士がタブレットから利用する、CRM機能を兼ね備えた業務アプリケーションや、ICTを使って農家が培養液の供給を自動化する「ZeRo.agri」といったシステムだ。同社ではかねてより「UX」の向上を主眼としたフロント開発を行っており、SkyDreamでは、バックエンドも含めた全体的な視点で、業務改革を実現するシステムの開発に取り組んでいるという。
同社では、クラウド上のリソースを利用して、Microsoft Visual Studioのビルド作業を高速に分散処理する「IncrediBuild」を紹介。現在の開発環境は変更せずに、クラウド上にリソースを追加していくことで、開発にかかわる処理の高速化を実現できるという。
分散ビルドを行うための下処理などは、IncrediBuildが自動的に行う。従来の同様のツールに比べて、圧倒的に低価格な点がポイントで、約10万円前後から導入が可能とのこと。また、導入による高速化の効果は、最大で約30倍だという。
マイクロソフト製品を利用している企業の、運用管理やシステム監視を自動化、効率化するための各種ソリューションを紹介。
「System Center Orchestrator応援サービス」は、日々の運用管理業務の中で定型化が可能なものを抽出し、Microsoft System Center Orchestratorによる自動化を支援するもの。設定ツールである「Runbook」のサンプル集の提供も行っている。また、参考出品として「Visio」によるシステム構成図とAzure上のインスタンスを同期し、クラウドの管理やサーバー構築を効率化するソリューションも紹介された。
メイドさんが出迎えてくれた博報堂アイ・スタジオ。ブースでは、結婚披露宴などで複数のユーザーがスマートフォンで撮影した写真を、リアルタイムにネット上で共有できる「フォトシュシュ」(バックエンドにMicrosoft Azureを利用)や、Kinectとデジタルサイネージを組み合わせて、画面上に映し出された人が話した言葉がリアルタイムに「吹き出し」として表示されるシステムなどを展示していた。
「クリエイティブ」と「デジタル技術」が組み合わされたコミュニケーションスタイルの提案を行っているという。
クラウド上にシステムを展開したい企業向けに、導入設計から運用、保守、24時間365日の監視などを行うフルマネージドサービス「cloud.config」を紹介。高可用性が求められるシステムを大規模にクラウド展開したいというニーズの強いゲーム業界や、企業のキャンペーンサイトなどでの導入実績が多いという。
また、同社ではトレンドマイクロとの協業による「Deep Security」向けの管理サービスも提供しており、スクウェア・エニックスのネットゲームインフラでの導入事例なども紹介されていた。
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