今でもWindows Server 2003ベースの古いファイルサーバーを運用しているならば、できるだけ速やかに新しいサーバーへ移行することをお勧めしたい。その理由はハードウェアの故障率の高まりや製品サポート終了によるセキュリティリスクの増大の問題だけではない。最新環境に移行することで、ファイルサーバーの性能とデータ格納効率は向上し、社員のPC環境を大幅に改善できるからだ。
Windows Serverベースのファイルサーバーは、PCがビジネスに活用され始めて以後、企業における情報共有や共同作業、集中的なデータの管理と保護の“要”となった。ファイルサーバーは信頼性が高い大容量のディスク装置やバックアップ装置と合わせて導入されることが多いため、長期間の運用が想定されるが、古いシステムは拡張性に限界があり、ハードウェアの故障率も高まる。加えて、マイクロソフトの製品サポートライフサイクルの終了期限も考慮しなければならない。
つい先日、Windows XPのサポートが終了したばかりだが、その直後に発覚した脆弱(ぜいじゃく)性の問題が社会を大きく騒がせたのは記憶に新しい。1年後の2015年7月にはWindows Server 2003およびWindows Server 2003 R2のサポートが終了する。これらのOSを搭載したファイルサーバーがあるとしたら、おそらくWindows XPと同時期に導入されたことだろう。Windows XPの製品サポート終了を機に、クライアントを後継バージョンに入れ替えたように、同じことがサーバーでも必要となるが、猶予期間はあと1年。ファイルサーバーの移行は、共有設定やアクセス権、データの移動など、さまざまな作業が必要で、それほど簡単に入れ替えできるものではない。まだ1年あるのではなく、もう1年しかないのだ。
ファイルサーバーを新しいハードウェアにリプレースした場合、サーバーOSは最新のWindows Server 2012 R2になる。Windows Server 2012 R2には多くの最新技術が搭載されており、ファイルサーバーの機能では、ファイル共有プロトコル、ファイルシステム、ハードウェアに近い記憶域サービスのすべての層に重要な新機能が実装されている。
「SMB」(Server Message Block)は、Windowsネットワークの標準のファイル共有プロトコルである。Windows Server 2003やWindows Server 2003 R2はSMB 1.0だが、高速化するネットワークではもはや効率的ではない。最新のWindows Server 2012 R2に搭載されたSMB 3.0では、マルチチャネルによる高速化、高可用性やスケールアウト機能、暗号化機能など、主にデータセンター向けの機能が大幅に強化されている。
ファイルシステム関連では、Windows Server 2012から実装されている「データ重複除去」(Data Deduplication)が注目される。データ重複除去は、ブロックレベルでデータを統合、圧縮して、利用可能なディスク領域を解放する機能である。ファイル単位でのZIP圧縮やNTFS圧縮よりも効率良くディスク使用量を節約できる。マイクロソフトによると、一般的なユーザードキュメント用共有で30〜50%、ソフトウェア展開用共有で70〜80%、仮想化ライブラリ(仮想マシンのテンプレートイメージ)で80〜95%の節約効果があるという(*1)。
ITの技術革新は、ハードウェア面でも目覚ましい。PCサーバーはマルチコアからメニーコアへと進化し、数十GB(ギガバイト)のメモリも珍しくなく、ハイエンドではTB(テラバイト)のメモリを実装することも可能だ。さらに、PCサーバーのプロセッサーやハードウェアの省電力性能は、数世代前に比べて劇的に向上している。そのため、以前と同等、またはそれ以上のIT環境をより少ない台数のPCサーバー、より少ない消費電力で実現することができる。これは運用コストの削減に寄与するだけでなく、グリーンITの観点からも重要なポイントになる。
実際に、最新のPCサーバーとWindows Server 2012 R2を導入することで、ファイルサーバー環境はどう変わるのか。@IT編集部ではNECの協力を得て検証してみた。
検証に使用したPCサーバーは、小規模オフィス向けの1ソケット、スリムタワー型サーバー「Express5800/T110f-S(水冷)」(2013年10月発売)(写真1)。筐体は幅約98mm、高さ約341mmと、デスクトップPC並の省スペース設計であり、NEC独自の水冷式冷却システムで静音性、安定稼働にも優れる。CPUには最新のインテル Xeonプロセッサー E3-1200 v3製品ファミリーを搭載し、4コア(インテル ハイパースレッディング・テクノロジーを有効化することで8論理プロセッサー)の処理能力を提供。また、省スペース筐体ながら拡張性も優れており、最大32GBのメモリの搭載や、2.5インチと3.5インチのいずれかの組み合わせて構成できる多様なディスクアレイ構成に対応する。2.5インチの場合は、アクセス性の良い前面扉から着脱でき、ホットスワップ対応で最大6台のSASまたはSATA HDD/SSDを構成、最大7.2TB(2.5インチSASの場合)を内蔵可能だ。
最初の検証テストは、SMBの違いによるファイルサーバーのアクセス性能差だ。比較対象として「Express5800/GT110b」(2010年4月発売)を用意し、Windows Server 2012 R2(T110f-S)とWindows Server 2003 R2(GT110b)の新旧2世代のファイルサーバー環境を構築。あえて閉域な環境の中で、Windows XPクライアントを用意し、Windows Server 2003 R2が使用されている状況を再現してみた。クライアントは更にWindows 8.1も用意し、新旧の環境を用意して、ファイルサーバー上に準備した100MB、1GB、10GBのファイルを3回ずつダウンロード(ファイルのコピー)して、ファイルサイズごとに平均値を計測した(図1)。
検証の結果、Windows Server 2012 R2のファイルサーバーとWindows 8.1クライアントの最新環境の組み合わせは、旧環境よりも2〜2.5倍のダウンロード性能を示した。そのスループットはファイルサイズやSMBのバージョンに影響されることはなく、Windows XPで350Mbps前後、Windows 8.1で850Mbps前後という結果になった。
検証中、Windows XPは1Gbpsのネットワーク帯域の40%前後を利用してファイル転送を行うのに対して、Windows Server 2012 R2とWindows 8.1の組合せではネットワーク帯域のほぼすべてを利用していた。ダウンロード性能の差異は、ネットワーク帯域の使用率やハードウェア性能がそのまま現れたものであり、これがSMBプロトコルのパフォーマンスを最大限引き出すことができたためと考えられる。
そこで計測方法を変更し、ディスク性能を測定するフリーのベンチマークソフト「CrystalDiskMark」を使用して、ネットワークドライブ越しのファイルアクセス性能を測定してみた。具体的にはWindows 8.1のエクスプローラーに各ファイルサーバーの共有フォルダーをネットワークドライブとして割り当て、ドライブごとにCrystalDiskMarkのテストを実行した(グラフ1、画面1)。
結果、SMB 3.02アクセスは、SMB 1.0アクセスよりもシーケンシャルアクセスおよび512KBのランダムアクセスで読み取り性能が約2倍、書き込み性能が約6〜8倍となった。つまり、大きな単位でのファイルアクセスには、SMB 3.02が優れた性能を発揮することが分かった。また、小さな単位でのファイルアクセスについては、書き込み性能でSMB 3.02のほうが約8〜10倍の性能を示した。
特に、書き込み性能の大幅向上は、作業効率の大幅な向上につながりやすい。例えば、作業中のファイルを一時保存する際に、保存に時間がかかって作業が止まってイライラした経験はないだろうか。最新サーバーに置き換えることで書き込み時間が大幅に短縮され、このイライラも解消されるようになる。
続いて、Windows Server 2012 R2を実行するExpress5800/T110f-Sのディスク空き領域(RAID5上の428GB)を利用して、データ重複除去によるディスク領域の節約効果を検証した。データ重複除去はボリュームごとに有効化することができる。
検証では3つのボリューム(各100GB)を作成し、それぞれに異なる種類のデータを保存した上、各ボリュームでデータ重複除去を有効化した。また、比較対象として同じデータを3台のハードディスク(75GB)に格納し、NTFS圧縮を有効化した。表1がデータ重複除去を有効化する前後の使用領域、空き領域、使用率になる。また、表2は比較対象のNTFS圧縮の結果となる。
1つ目のボリュームの用途はユーザードキュメント用。筆者個人の仕事用PCに保存されていた約1万ファイル、総容量43.7GBのデータを利用した。ファイルの約50%が写真データで、それ以外はOfficeドキュメントや音声、ビデオデータ、圧縮ファイル、テキストファイルになる。2つ目のボリュームの用途はソフトウェア展開用。WindowsやMicrosoft Officeなど、OSとアプリケーションのインストール用DVDおよびCDイメージ(.iso)を59ファイル、合計70.5GBを保存した。3つ目のボリュームの用途は仮想化ライブラリ用。Windows仮想マシンの仮想ハードディスク6ファイル、Linux仮想マシンの仮想ハードディスク4ファイルで、すべてバージョンが異なるOSがインストール済みのものを保存した。
データ重複除去による重複除去率は、ユーザードキュメントが37%、ISOイメージが20%、仮想化ライブラリが66.6%という結果になった。ユーザードキュメント用ボリュームの重複除去率は、想定される参考値(30〜50%)の範囲内。ISOイメージ用のボリュームの重複除去率は展開用共有の参考値(70〜80%)より小さい結果になったが、展開共有の参考値はソフトウェアバイナリ、圧縮ファイル(.cab)、シンボルファイルが対象であり、ISOイメージとは形式が異なることが影響したと考えられる。仮想化ライブラリの重複除去率も参考値(80〜95%)と比較して小さい結果となったが、すべてバージョンが異なるOSイメージであり、WindowsとLinuxの仮想ハードディスクが混在していることを考慮すれば良い結果と言える。例えば、同じマスターイメージから作成されたイメージであれば大部分が重複することになるので、95%という重複除去率は十分に達成可能だ。
重複除去率の大小はデータの種類や数に左右されることは間違いないが、より注目していただきたいのは、NTFS圧縮との効果の違いである。違いは一目瞭然。特に、ISOイメージはNTFS圧縮では数%しか圧縮効果がない。ファイルごとのNTFS圧縮よりも、データ重複除去のほうが劇的にディスク領域を節約できている。
しかも、NTFS圧縮の処理はボリューム全体で行うと数時間かかったりするが、データ重複除去は初回でも短時間で完了する。実際、検証では3つのボリュームを20〜30分程度で処理できた。実運用では、システム負荷が高くないときにバックグラウンドで最適化処理が行われるため、エンドユーザーのエクスペリエンスに影響することもない。
検証結果から、最新のExpress5800シリーズ、最新のWindows Server 2012 R2を搭載したPCサーバーの環境へ移行するだけで、ファイルサーバーの読み書きは高速化され、ディスク領域を効率的に利用できるようになることを理解していただけただろう。
また、今回の検証では触れなかったが、Windows Server 2012 R2では「記憶域スペース」という機能を利用して物理ディスクをプール化し、シンプロビジョニングによるディスク領域の効率的な利用や柔軟な拡張、SSDとHDDを組み合わせた階層化によるスループットの向上といった最新環境のメリットを簡単に引き出すことができる。また、新機能である「ワークフォルダー」を展開すれば、個人所有のPCやモバイル/タブレット端末に対しても社内ストレージへのセキュアなアクセス、いわゆるBYOD(Bring Your Own Devices:私物端末の業務利用)の環境を提供することが可能になる。
残り1年という限られた期間の中では、最新ファイルサーバーへのスムーズな移行計画もポイントとなる。Express5800シリーズでの最新Windows Server 2012 R2のサポートはもちろん、「NEC Easy Data Migration for File Server」というWindows Server 2003/2003 R2環境のファイルサーバーから最新OSを搭載したサーバーへのデータ移行に特化した簡単データ移行ツールも販売されており、これらNEC製品を組み合わせることで、製品サポート終了対策を早急に完了できるだけでなく、オフィスのIT環境をより快適に、より効率的にしてくれるのである。
NEC ファーストコンタクトセンター
TEL:03(3455)5800 受付時間:月〜金(祝日を除く)9:00〜12:00、13:00〜17:00
URL:http://www.nec.co.jp/exp/windows/
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:日本電気株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2014年8月31日