富士通が投入した「仮想化環境専用ストレージ」って何?ここまで来た自動化と可視化

富士通は2014年8月、「FUJITSU Storage ETERNUS TR series」の提供開始を発表した。富士通は同製品を、「仮想化環境専用ストレージ」だと表現する。何が「仮想化環境専用」なのかと調べると、これまでのストレージ装置とは発想がまったく異なることが分かってくる。

» 2014年09月25日 10時00分 公開
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 富士通が8月27日に国内提供を開始したストレージ製品「ETERNUS TR series」。これは同社が、米ティントリ社と世界初のOEM契約を結び、国内に投入した「仮想化環境専用ストレージ」だ。

 では、仮想化環境専用ストレージとは何なのか。それは、一から仮想化環境のために設計され、仮想化環境の運用において、ストレージにまつわる数々の課題を、ほぼ自動的に解決してくれるアプライアンスだ。大規模な仮想化環境を構築しようとする企業、あるいはこれからデスクトップ仮想化を導入するなど、仮想化環境の運用を本格化する企業を、さまざまな面倒から解放することのできる製品だ。運用ノウハウ不足や運用負荷の点から、仮想化環境の本格利用に二の足を踏んでいる企業の後押しをする製品だともいえる。

 富士通では、機動的なICTインフラを手にしたい組織、あるいは仮想化環境が大規模化して運用が手に負えなくなってきたと感じている組織に、ETERNUS TR seriesを提案している。

LUNやボリュームの概念からの解放

 一般的なストレージ装置を使って仮想化環境を構築・運用する場合、ブロックストレージ(SANストレージ)ではアプリケーションごとに、LUNと呼ばれる論理区画を作成するのが普通だ。これを行う理由は、性能やデータ保護の観点からアプリケーションごとに制御を行うためである。例えば、各アプリケーションの仮想マシンを格納するLUNでは、そのアプリケーションに合わせてRAIDレベルを決めてRAIDグループを作成し、データ保護の最適化を図る。さらに特定のLUNに関してはIOPSの上限を設定するなどして、性能の最適化を図ることも広く行われてきた。

 しかし、これらの煩雑な構築・運用は、システム管理者に大きな負担を強いることになる。さらに、仮想マシンを作成するたびにLUNを作成し、そのために時間とコストを掛けるようなことはシステム管理者にとって避けたい問題であろう。

 ブロックストレージの代わりに、ファイルストレージを使ったとしても、問題は解消しない。スナップショットも、本来は仮想マシン単位に採取したいが、ボリューム単位になってしまう。性能とデータ保護をきめ細かく制御しようとすると、運用負荷が大きくなる。

 仮想化環境におけるストレージの運用が煩雑なのは、仮想化環境とストレージとで、データ管理の単位が異なる点に根本的な原因がある。これに対してETERNUS TR seriesでは、仮想マシン単位でデータを管理する。性能管理やスナップショット、レプリケーションも仮想マシン単位だ。ここに、ETERNUS TR seriesが仮想化環境専用ストレージだという理由がある。

仮想化環境ならではのパフォーマンス問題を解決

 ETERNUS TR seriesは、仮想化されたあらゆるアプリケーションを支えるために開発された、SSDとHDDを搭載するハイブリッドなファイルストレージだ。そういうと、オールフラッシュストレージのほうが優れているのではないかと考える人がいるかもしれない。だが、ETERNUS TR seriesでは、きめの細かなストレージ自動階層制御機能により、頻繁にアクセスされるデータは自動的にSSDに配置され、かつ、SSD上のデータは重複排除と圧縮により容量効率を向上できる。これにより、アクセスされるデータは99%SSDで処理可能という。書き込みはもちろん、SSDに対して行われるため高速だ。

 さらに重要なことは、仮想化環境で経験する性能上の問題は、しばしばストレージアクセス競合が原因になっていることにある。単一のアプリケーションだけを動かすならまだいい。しかし、例えば多数の仮想デスクトップとデータベースを、統合インフラの上で同時に動かせるのか。それぞれのアプリケーション、ユーザーに対して十分な性能を提供できる確信が得られないと、仮想デスクトップのための専用インフラ、データベースのための専用インフラと、次々に独立したインフラをつくっていかなければならなくなる。

 こうしたインフラの断片化の問題を解消し、性能面でも安心して統合インフラを運用できるようにするための製品がETERNUS TR seriesだ。

性能を引き出すために複雑な作業は要らない

 ETERNUS TR seriesは、4Uサイズの製品1台で、安定的な性能を確保しながら、最大約1500の仮想マシンを稼働できる。こうした高い密度を実現できるのも、インテリジェントな性能制御機能のおかげだ。一方で、ストレージ装置としては、できるだけシンプルな設計にすることで、導入に掛かる時間とコスト、そして運用の負荷を大きく減らしている。

 ETERNUS TR seriesは、機器構成が非常にシンプルだ。SSDとHDDの搭載容量は、機種(モデル)ごとに決められている。そして、搭載した記憶媒体をすべて使って、1つのボリュームが構成された形で出荷される。RAIDも設定されているため、システム管理者はこれを意識することはない。

ETERNUS TR seriesには、ETERNUS TR 650、ETERNUS TR 620の2機種がある。写真のETERNUS TR 650は33.5TBの実行容量を備え、1500までの仮想マシン稼働をサポートする

 こうしたシンプルな、決め打ちの構成になっているため、導入作業には10分程度しか掛からない。IPアドレスなどの基本的なネットワーク設定を入力し、管理者パスワードを決め、VMware vSphereと連携するためにvCenter ServerのIPアドレスを入力するだけで済む。

 ETERNUS TR seriesでは、こうしたシンプルな構成を土台に、仮想マシン単位で性能管理を行う。つまり、仮想マシンおよびこれに付帯する仮想ディスクは、ファイルとなっている。ETERNUS TR seriesは、1つ1つの仮想マシン/仮想ディスクのファイルを、vCenterとの連携によって認識し、それぞれの読み書きを認識、制御する。ETERNUS TR seriesにおけるデータ管理の単位は、LUNやボリュームではなく、仮想マシンそのものなのだ。

 では、仮想マシン単位の性能管理は、どのように行われるのか。実は、この製品には、ある特定仮想マシンのI/Oを他の特定仮想マシンのI/Oよりも優先するとか、ある特定仮想マシンのIOPSの下限・上限を指定するような設定はない。性能管理は全自動で実行される。

 ETERNUS TR seriesでは、この上で稼働しているすべての仮想マシンのI/Oをモニターしている。そして10分ごとに、各仮想マシンのI/O負荷に基づいて、自身の処理リソースを割り当てる。この場合の処理リソースとは、ストレージ性能を決める複数の要素で構成されている。こうして、すべての仮想マシンに対して、最適な処理を行う。

 いずれかの仮想マシンで突発的にI/Oが増加した場合、一般的なストレージ装置では他の仮想マシンのI/Oを圧迫してしまう。しかし、ETERNUS TR seriesでは各仮想マシンに処理リソースが確保されているため、悪影響はまったく受けない。一方、突発的にI/Oが増加した仮想マシンに対しては、ストレージ側で確保している未使用の処理リソースを一時的に自動割り当てすることで対応する。もし、この仮想マシンにおいて高いレベルのI/Oが持続すれば、10分単位の自動リソース割り当てで、前回よりも多くの処理リソースが与えられることになる。

ETERNUS TR seriesでは、いずれかの仮想マシンが過大なI/O要求を出した場合、この要求には性能余力を追加割り当てすることで対応。他の仮想マシンのI/Oに悪影響を与えない

 そうはいっても、仮想デスクトップのように、I/Oレベルにほとんど差がないものを多数動かす場合はどう制御するのかと、疑問に思う人もいるだろう。仮想デスクトップでは、それぞれのI/Oは多くない。従って、多数動かした場合でも、ストレージ装置の処理リソースが問題になることは少ない。また、OSなどのアクセス頻度の高いデータは、重複排除機能を使って完全にSSDの上に載るため、ブートストームなどデータの読み出しでボトルネックが発生することはない。

自動化と可視化が導入・運用を大幅に省力化する

 上記でも分かるように、ETERNUS TR seriesではストレージの運用がほとんど自動化されている。このためシステム管理者は、基本的に何もする必要がない。

 唯一問題となり得るのは、稼働している仮想マシンの数が多くなりすぎると(あるいは総体的なI/O要求が多くなりすぎると)、処理リソースの割り当てが各仮想マシンのニーズに応えられなくなるため、増設しなければならなくなるという点だ。だが、増設作業も非常に簡単だ。導入時と同様の設定を行うだけで、10分程度のうちに作業は終わる。さらに、複数台のETERNUS TR seriesを、あたかも1台であるかのように管理できる。

 また、ストレージの運用を大きく変えるという意味で、大きな役割を果たすのは、ETERNUS TR seriesが備える性能と容量の可視化機能だ。これには2つの側面がある。ストレージ全体としての稼働状況の可視化、そして各仮想マシンのI/O性能分析機能だ。

 ETERNUS TR seriesの管理ツールである、ストレージ全体としての稼働状況表示画面では、IOPS、スループット、レイテンシ(遅延)、フラッシュヒット率、さらに処理リソースと容量の割り当て状況が分かりやすく示される。

 もう1つの、I/O性能分析機能は非常に重要だ。この機能では、ストレージ装置自体で収集した情報と、vCenterから取得した情報を合わせ、仮想マシン単位の詳細な性能情報を常時監視できるようになっている。

 各仮想マシンのIOPS、スループット、フラッシュヒット率、消費容量、そしてエンド・ツー・エンドのレイテンシなどの数値を、リスト表示する。このリストから、例えばIOPS値が小さいにもかかわらず、レイテンシが異常に大きい仮想マシンが見つかった場合、その仮想マシンのレイテンシ内訳の時系列グラフを表示し、ボトルネックがホスト、ネットワーク、ストレージのどこで発生しているのかを確認できる。その結果、ホストにおけるレイテンシが大きいということが確認できれば、この仮想マシンのホストに関するグラフに移動し、CPU負荷、メモリ負荷のいずれかに原因があるのかどうかを知ることができる。

 このように、ETERNUS TR seriesのI/O性能分析機能は、ストレージ装置の枠を超え、各仮想マシンの性能を確保するのに役立つようになっている。システム管理者がやりたいのは、まさにこれだ。仮想マシン、サーバー、ネットワーク、ストレージなどのコンポーネントのレベルで、性能を管理できても、仮想マシンによって思ったようなパフォーマンスが出ないことがある。こうした問題の解決に役立ってこそ、性能管理に意味がある。

仮想化環境を本当に支えられるストレージとは

 ETERNUS TR seriesは、もともと米ティントリ社の製品だ。富士通は、これをリセールではなくOEM提供するという判断をした。これは、顧客の大事な資産であるデータを、永続的に保持するストレージとして、富士通が自信を持って提供することの表れであり、また、品質を確保しなければならないと考えているからだ。

 国内屈指のサポート体制もそうした品質担保の一環だ。ティントリ社と緊密に連携し、万が一、製品に問題が発生すれば、両社の協力で即座に解決できる体制としている。マニュアルが英語であるケースも多い中、日本語化しているのはもちろん、自社における製品評価の中で見つけた運用のポイント、最適な活用方法なども含めて顧客に伝えていくという。

 だが何より品質に貢献しているのは、やはりETERNUS TR seriesが「仮想化環境の運用を根本的に変えられるストレージ装置」であることだろう。導入・運用にはまったくといっていいほど手間が掛からず、ストレージに関する専門知識のある人がいなくとも、十分に活用できる。また、仮想化環境における根本的な課題の一つは、さまざまな用途の仮想マシンが混在稼働することによる性能管理の難しさだが、ETERNUS TR seriesはこれも自動的にさばいてくれる。

 万全のサポート体制を用意しながら、それに頼ることなく、製品の素性によって「運用コストの低減」や「安定・安心」という価値を担保する――これが富士通の考える“品質”なのだ。ETERNUS TR seriesなら、大規模仮想化環境の運用が決して怖いものではなくなるはずだ。

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提供:富士通株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2014年10月24日

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