第32回 諦めでも妥協でもなく――非スーパーエンジニアが見つけた天職とはマイナビ転職×@IT自分戦略研究所 「キャリアアップ 転職体験談」

「転職には興味があるが、自分のスキルの生かし方が分からない」「自分にはどんなキャリアチェンジの可能性があるのだろうか?」――読者の悩みに応えるべく、さまざまな業種・職種への転職を成功させたITエンジニアたちにインタビューを行った。あなた自身のキャリアプラニングに、ぜひ役立ててほしい。

» 2014年10月31日 10時00分 公開
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一生エンジニアでいたい、でも……

 職業人生を、技術者として開発だけに携わり続けたいと考えるエンジニアは少なくないが、現実にそうしたキャリアを全うできる人はそう多くはない。希望とスキルとの間に何らかのギャップを感じた時、エンジニアはどんな判断を下すべきだろうか――。


【転職者プロフィール】
伊藤裕史さん(36歳)

アマゾン データ サービス ジャパン株式会社 技術支援本部
テクニカルアカウントマネージャー(2013年3月入社)

【転職前】
外資系ITベンダー企業の子会社で、技術サポートや研修提供、プリセールスサポートからグリッドコンピューティングや仮想化、クラウドコンピューティング分野でのプリセールス、SI、コンサルテーションのサポートなど幅広く担当
 ↓
【転職後】
AWSのテクニカルアカウントマネージャーとして、クライアントへのアカウントマネージメント、サポート、トラブル対応などを行う



 クラウドコンピューティング市場をけん引し続けているアマゾン ウェブ サービス(AWS)。国内でAWSのサポートを行っているアマゾン データ サービス ジャパンのテクニカルアカウントマネージャー(TAM)として、顧客とサービスをつなぐ仕事に就いている伊藤裕史さんも、そんな悩みに直面した一人だ。

 TAMの仕事をひと言で表現すると、エンタープライズ顧客とAWSの橋渡し役だ。顧客のビジネスの中にクラウドをどのように落とし込み、戦略的に活用していくかを共に考え、実現に結び付けていくコンサルティング的な役割を果たしながら、万一システムトラブルが発生した際には一元的なサポート窓口となり、復旧につなげていく。そして、定期的なヒアリングを通じて顧客の要望をサービスにフィードバックする――顧客と二人三脚で問題解決に取り組む、技術力とコミュニケーション能力の双方が求められる仕事だ。「いろいろな技術を知ることができ、同時に顧客が考えていることも分かる、やりがいのある仕事です」と伊藤さんは言う。

 第三者から見ればまるで天職のように見えるが、グリッドコンピューティング、仮想化、そして現在のクラウドと、常に技術の最前線に触れてきた伊藤さんはある時「凄腕のエンジニアに技術力では勝てない。ならば自分にできることは何か」と考えたことが、転職の背景にあったと言う。

大学で「にわか管理者」デビュー

 伊藤さんのキャリアをつないできたのは、「面白そう」と感じた技術にすぐ足を突っ込んでいく、フットワークの軽さと柔軟さだ。

 新潟県新津市に生まれ育った伊藤さん。通っていた中学校にたまたま設けられていたコンピュータールームでPC-9800シリーズに触ったのが、初めてのコンピューター体験だったという。しかしその後、高校ではPCに触れる環境すらなくなり、「むしろ環境はデグレった(笑)」そうだ。

 特にコンピューター少年というわけではなかった伊藤さんにとって大きな転機となったのは、筑波大学への入学だ。もともと国際関係学に興味があり選んだ大学だったが、学内の変わり者や有志が集まって「インターネットを使って何かをしよう」と作った学生グループに参加したことが、伊藤さんのその後の人生を変えた。

 当時はインターネット黎明期。大学職員の中にもインターネット技術に詳しい人は少なかった時代だ。「ネットワークもサーバーも全部学生が運用の手伝いをしており、ここで初めてネットワーク管理に携わることになりました。当時はWindows NT 4.0が全盛期。学生をドメインに登録して管理するといった作業を行っていました」。遊び半分、仕事半分のような環境で、ネットワーク管理やPerlによる簡単なプログラミングなどを、専門書を参考にしながら手探りで学んだそうだ。周囲には、メールクライアントのmuleにPerlで手を加え、当時は目新しかったWebメールにしてしまう腕を持った学生までおり、大いに刺激を受けたと言う。

 こうした経験を通じて「将来、仕事をしていくならばITを知らなければどうにもならない」と感じた伊藤さんは、外資系ITベンダーの子会社であるシステムインテグレーターに新卒で入社した。

手探りで取り組んだグリッドコンピューティングや仮想化技術

 2001年、入社後に配属されたのは商用UNIX「AIX」に関わる部署だ。AIXをベースにした高可用性クラスターシステムの技術サポート部隊で、プリセールスや社内エンジニアに対するサポート、研修業務などを担当した。

 「障害解析や新機能の検証、それらの社内向けへの説明といった業務を行いました。まだ商用UNIXが主流だった時代でしたが、Linuxの業務利用についても本格検討が始まり、そちらも担当しました」

 2年ほどその業務に携わった後に、当時注目を集めていたグリッドコンピューティング関連の部署に異動した。「グリッドコンピューティングに着目し、他社に先駆けて取り組もうということで、社内的なタスクフォースが結成され、私も関わることになりました」

 この部署は会社の中でも一風変わった部隊で、新しい技術の研究や、実用化に向けた挑戦を楽しむ人が集まっていた。「グリッドコンピューティングは新しく生まれた分野で、しかもブームが来ていたため、とにかく人が足りませんでした。技術だけやっているわけにはいかず、いろんなことを何でもやらなくてはなりません。社内向けの研修はもちろん、顧客に説明したり、オープンソースコミュニティと情報交換したり、展示会に出展してブースで説明したり、そのために必要なデモを作ったり……『これは俺の仕事じゃない』なんていうことを言う人は誰もおらず、全員が柔軟に取り組んでいました」

 大変やりがいのある部署だったが、技術の進化と共に発展的解消を遂げ、メンバーは分散コンピューティングやWeb 2.0、あるいは仮想化など、次なるステージへ進んでいった。

 伊藤さんが次に取り組んだのが、これまた黎明期にあった仮想化技術だ。同時期、別の部隊がVMwareに取り組む一方で、伊藤さんはオープンソースの仮想化技術「Xen」に注目し、これをどうビジネスにつなげていくかを考えた。

 「開発者向けのメーリングリストやwikiを参照したり、『仮想化友の会』に参加したり、仲間と共に手探りで情報を集めました。当時はサーバー仮想化技術の勃興期でしたが、『これが普及すれば世界は変わる』という思いで取り組んでいました」

 最終的にはVMwareや、オーケストレーションソフトウェアを活用した初期のクラウドコンピューティングにも興味を持ち、片足を突っ込んでいたという。「VMwareの検証を仕事にしつつ、時にはクラウドコンピューティングに関するコンサルティングのお手伝いもやっていました」

「この人には勝てない」……ならば、どこで勝負するか

 こうした経験を積み、エンジニアとして順調にステップアップしていたので、職場に不満は感じていなかった。だが一方で、「常に次の何かを探していたのも事実」だったそうだ。

 加えて、30代半ばを前に悩むこともあったという。「当時は、これからも技術者としてやっていくか、それともプロジェクトマネージャーの道に進むかという2つの選択肢しかありませんでした。技術者としてやっていくには、残念ながら自分には技術力が足りない。周囲には圧倒的な技術力を持つスーパーエンジニアが複数人いて、彼らに勝てるかというと、正直それは難しいと感じていました。かといって、プロジェクトマネージャーという選択も違う気がしていました」。そんなところに舞い込んだTAMという仕事は、伊藤さんにとって魅力的だった。

 「自分が生かせるところはどこか、自分はどこが強いのかを考えたとき、技術的背景について理解した上で、顧客をはじめ、いろいろな人と話しながらまとめ上げていくこの仕事は、今までのキャリアの中で最も自分に合っている仕事だと思ったのです」

 2013年3月にAWSのTAMに転じた伊藤さんは、顧客とのコミュニケーションを通じて本当の問題を見つけ出し、解決したときに最も達成感を覚えると言う。「TAMという仕事は、技術をきちんと理解していないと顧客への説明もできません。いろいろな技術を知るだけでなく、顧客がどんなことを考えているかも分かる必要があります。技術力を生かしながら、顧客がクラウドを活用していく手助けをする、ある意味クラウドの最前線の仕事だと思っています」とほほえむ。

 AWSは立ち上げ当初からプライベートで触っており、Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2)が出たときには「コマンド1つで仮想マシンが起動して、しかもそれが1時間単位で使える」ことに、とても驚いたそうだ。

 グリッドコンピューティングにしてもXenにしても、あるいはAWSにしても、何らかの可能性、将来性のある技術にいち早く触れてきた伊藤さん。その経験を踏まえ、「何かに最初に取り組むときには、マニュアルもなければノウハウもありません。ましてや、日本語の情報など落ちていません。その中でも手探りでやっていく姿勢、いうなれば『根性』が大事かもしれません」と言う。

食わず嫌いをしない「柔軟性」が自分の財産

 伊藤さんは商用UNIXからクラウドまで、またエンジニアとしての技術検証から顧客説明までと、幅広い業務を経験してきた。常に新しい技術に触れつつ、時にはInteropのワークショップで講師を務めたり、会社が主催するカンファレンスでスピーカーとして壇上に立つなど、講演の経験もあったという。

 このように一口に「技術者」「エンジニア」とはくくりきれない過去のさまざまな経験を通じて「柔軟になったことが自分の財産だと思っています」と伊藤さんは言う。

 「こっちがだめならあっちを試してみるとか、新しいことにも物怖じしないで取り組む姿勢とか……グリッドコンピューティングやクラウド、あるいはWeb 2.0など、さまざまな技術の裾野に触れ、視野が広がったからこそ今の自分があります。何か新しいものに出会ったときに拒絶するのではなく、まずは試してみる。いうなれば『味見』をしてみようと思える柔軟性が大切ではないかと感じています」

 伊藤さんが次に「味見」をするのはどんな技術であり、それがAWSの次なるサービスにどう反映されていくのか、期待したい。

人事に聞く、伊藤さんの評価ポイント

 日本ではTAMという職種は珍しく、伊藤さんもTAMとしての経験はありませんでした。しかし今までのキャリアの中で、携わってきたさまざまな技術一つ一つに真剣に取り組んできたことが面接で確認できたため、急激な進化・発展を続けるAWSの技術についても学び続けられると感じました。

 また、単に技術力が高いだけでなく、複雑な技術的内容を説明する際には、相手の技術レベルに合わせて言葉を変えて話すといった顧客志向のコミュニケーション力を持っていることも分かったため、TAMとして活躍してもらえると確信しました。


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提供:株式会社マイナビ
アイティメディア営業企画/制作:@IT自分戦略研究所 編集部/掲載内容有効期限:2014年11月30日

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