日本オラクルは4月8日にJavaに関する国内最大級のイベント「Java Day Tokyo 2015」を東京国際フォーラムで開催する。今年の注力テーマは「IoT」と「クラウド」というJava Day Tokyoの注目セッションや、IoTを企業の業務システムに採用するための技術要素、それに対応するJava技術について、日本オラクル シニアJavaエバンジェリストの寺田佳央氏に聞いた。
現在、インターネットとさまざまなデバイスをつないで新たなサービスを創出する「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」の関心が世界中で高まっている。そして、このIoTを活用して業務サービスを向上させるとともに、業務システムと連携させる動きも加速しつつある。
今年(2015年)で生誕20周年を迎える「Java」は、「Java SE(Standard Edition)」を基礎技術に、エンタープライズシステムには「Java EE(Enterprise Edition)」、組み込み機器には「Java SE Embedded」「Java ME(Micro Edition)」「Java ME Embedded」として、その適用分野を広げ、業務システムを中心に多くの企業で導入され続けた。
組み込みハードウエア、クラウド、エンタープライズシステム、データ解析、そして、それらをつなぐアーキテクチャなどが求められる「企業システムを支えるIoT」においても、Java EEやJava ME、Java SE Embedded、Java ME Embeddedを擁するJavaの存在感が大きくなりつつある。
そのような中、4月8日に日本オラクルはJavaに関する国内最大級のイベント「Java Day Tokyo 2015」を東京国際フォーラムで開催する。2013年以降、毎年開催されている「Java Day Tokyo」だが、今年の注力テーマは「IoT」と「クラウド」だという。「Java Day Tokyo 2015」のテクニカルセッションにおいて、IoTを企業の業務システムに採用するための技術要素と、それに対応するJava技術について、日本オラクル シニアJavaエバンジェリストの寺田佳央氏に聞いた。
――現在、IoTへの関心が世界中で高まっていますが、日本ではどうなのでしょうか。
寺田氏(以下、敬称略) 革新的なIoTサービスというものは、欧米が中心となっているように見えるかもしれません。一方で、日本で現行業務においてIoTの考え方を取り入れている事例は実際にいくつもあります。
例えば、自動販売機をインターネットに接続することによって遠隔から在庫管理できる仕組みや、客先に設置されたプリンターの状況をオンラインでモニタリングし、迅速にメンテナンス対応するサービスなど、実業務に直結したシステムがすでに存在します。
この考え方を特定領域に閉じずにもっと拡張していくだけでよいのですから、既存の概念にとらわれなければ、日本でのIoTは潜在的な可能性を十分に持っていると思っています。
――業務に直結するIoTサービスを実現するための基盤技術として、今後Javaはどのような役割を担うのでしょうか。
寺田 Javaは、今年で発表から20年が経ちますが、いまやITインフラにはなくてはならない存在になっています。このことは、これから到来するIoT時代でも変わりません。
その可能性の一つが、昨年9月に米国サンフランシスコで開催された「JavaOne 2014」において、デモが行われた「Java Car」です。これは、車のダッシュボードにRaspberry PiなどのIoTデバイスを組み込み、さまざまなセンサー情報をJavaによってオンラインでサーバーに収集し、車を制御するというものです。センサーとしては例えば、加速度センサー、ブレーキライトのセンサーなどが付いています。またバッテリの使用状況を監視し、バッテリの寿命が近づいたら交換のタイミングを通知するといったことも可能になります。
「Java Car」のデモの様子は動画で確認できます。
――「Java Day Tokyo 2015」の基調講演でも、Javaによって実現するIoTのデモが披露されることを期待しています。
――IoTを業務システムで活用するには、さまざまな技術要素が求められますが、Javaではどのようにこれらに対応しているのでしょうか。先ほどの動画では、Javaを使ったIoTシステムの構築事例のアーキテクチャが掲載されていましたが、「Java Day Tokyo 2015」でポイントとなるセッションを教えてください。
寺田 まず、IoT時代に向けた組み込み系Javaのビジョンを知る上で、トラック1-3「Java ME 8 Versus Java SE 8: What Developers Need to Know」、1-4「Programming the Real World」、1-5「Java and The Internet of Things For Automotive Applications」は必見です。
トラック1-3では、「Java SE 8」と「Java ME 8」の機能差異や、開発者が理解しておくべき内容など、各製品のオーバービューを説明します。また1-4では、先ほどのJava Carを本場JavaOneの基調講演でデモした、IoTのアーキテクトである米オラクルのJasper Potts氏が登壇ます。ここでは、JavaによるIoTがさまざまな分野に広がっていることを紹介しながら、サーバーとデバイス間での効果的な通信方法やアーキテクチャ、プログラミングのノウハウなどをアドバイスします。さらに1-5では、Javaのエバンジェリストである米オラクルのSimon Ritter氏が、Javaによって実現するIoTの具体例として、車にフォーカスを当て、車のセンサー情報を収集して活用する方法についてデモを交えて紹介します。
――IoTデバイスと業務システムとの接続において、「Java EE」も重要な役割を果たすことになると思います。Java EEに関して注目のセッションを教えてください。
寺田 IoTデバイスから収集したセンサー情報を、サーバー側に送るためには「Java EE」が欠かせません。
「Java EE」に関するセッションで注目してほしいのは、トラック2-1「Java EE 8 - directions and new features」と2-4「CDI and EJB - Java EE alignment and strategy」です。この2トラックでは、米オラクルで「Java EE」のスペックリードを務めるLinda DeMichiel氏が10年ぶりに来日し、次期バージョンである「Java EE 8」の概要や今後のロードマップについて語ります。このトラックを聞いておけば、「Java EE 8」がリリースされた際に、スムーズなバージョンアップが可能になると思います。
また「Java EE 7」は、サーバー側とIoTデバイス側のリアルタイムな双方向通信を実現する技術「WebSocket」に対応しています。この「WebSocket」については、トラック2-5「Reactive Java EE 7 - Let Me Count the Ways !」で解説しますのでチェックしてください。
――収集したセンサーのデータをためてデータ分析を行う場所として、クラウド環境が重要になると思います。Javaのクラウドへの対応については、いかがでしょうか。
寺田 オラクルでは、クラウドへの取り組みにも力を注いでおり、新たにPaaS環境として「Javaクラウド・サービス」をリリースします。「Javaクラウド・サービス」では、オンプレミス環境で動いているJava EEアプリケーションをクラウド環境にそのまま移行することができます。
この「Javaクラウド・サービス」について紹介するセッションが、トラック4-1「Javaクラウド・サービスが実現する新しいエンタープライズJava」と4-2「Oracle Developer Cloud Service, what can you do?」です。日本の開発者の皆さまに「Javaクラウド・サービス」の詳しい情報を公開するのはこれが初めてになりますので、PaaSを扱う開発者にとっては見逃せないセッションになると思います。
また、IoTに特化した機能をクラウドと併せて提供する「IoT Cloud Service」も今後出てくるようです。こちらは、翌日(2015年4月9日)のOracle CloudWorld Tokyo 2015(セッションS1-203)で紹介されますので、ご興味のある方は、Oracle Cloud Worldへもお越しください。
――IoTデバイスのフロントエンド開発では、JavaScript/HTML5アプリケーションの開発が注目されています。
寺田 Java EE 7はHTML5アプリケーション開発に対応していますし、そのデザインツールとして「NetBeans」が有力なものになっています。NetBeansは、Java SE、Java EEでの開発だけではなく、JavaScript/HTML5アプリケーションの開発まで幅広く活用することができ、生産性を大幅に向上することができます。
NetBeansについては、トラック5-2「NetBeans IDE最新情報」で最新情報が聞けるので、いままでフロントエンド開発にEclipseを使っていた開発者や、開発ツールの刷新を検討している開発者には、ぜひ参加してほしいですね。
――IoTを業務システムに取り入れる際には、個々の技術要素はもちろんですが、全体的なアーキテクチャの考え方や運用の視点も求められます。この視点から、注目のセッションはありますか。
寺田 全体のアーキテクチャや運用の視点では、トラック7-3「実践的なJavaアプリケーションサーバーの構築・運用〜転ばぬ先の杖」と7-4「アジャイル時代のモデリング」がおすすめです。
トラック7-3では、ミドルウエアの領域で優れた能力を備え「Oracle ACE」に認定されている、伊藤忠テクノソリューションズ ソリューションビジネス部の山田貴裕氏が、Javaアプリケーションサーバーの開発・運用に関するノウハウを紹介します。
またトラック7-4では、アジャイル開発の分野で数多くの書籍を出版され、日本における第一人者として知られる、チェンジビジョン代表取締役社長の平鍋健児氏が、アジャイルの活用ポイントを解説します。
――Java SE 8への注目が高まっているようですが、開発者が現場で生かせる情報が得られるセッションには、どんなものがあるでしょうか?
寺田 トラック3-2「Java EEアプリケーションサーバの開発現場で見たJava SEの実際」は注目セッションです。
Java SE 7のEOLに伴って、システムやアプリケーションをJava SE 8へ移行する作業は今後間違いなく増加しますが、このセッションでは移行の実体験に基づく事象と、その対応を具体的に聞くことができます。こうした貴重な情報はまだまだ市場に提供されていないのが現状ですので、ぜひ聴講していただきたいと思います。
――トラック1-1「Lambdas and Streams: Taking the Hard Work Out of Bulk Operations in Java SE 8」と1-2「Date & Time API and other technology of Java SE 8」では、最新バージョンである「Java SE 8」の新機能が紹介されます。このセッションは、「Java SE」を扱う全ての開発者にとって必見といえそうですが。
寺田 そうですね。トラック1-1では、「Java SE 8」で導入された新たな表記法「ラムダ式」を紹介します。また1-2は、「Java SE 8」の新機能「Date&Time API」にフォーカスを当てたセッションになっています。どちらも、これから「Java SE 8」を活用しようという開発者には見逃せない内容といえるでしょう。
――トラック9では、オラクル・ユニバーシティによるJava初心者向けセッションも用意されていますね。
寺田 トラック9のセッションは、Javaを扱い始めた開発者や、Javaにこれから取り組もうという開発者に向けた内容になっています。このトラックには、初心者や未経験者も含めて、幅広い開発者に積極的に参加してほしいと思っています。
――さらに多くの開発者に参加してもらうべく、「Java Day Tokyo 2015」に登録した人を対象に「Java20周年 盛り上げ大作戦!!」を実施していると聞きました。
寺田 「Java Day Tokyo 2015」に事前登録すると、個人の番号が記載された「登録完了メール」が送られます。友人や知人などに「Java Day Tokyo 2015」を紹介して、登録時にこの番号を入力してもらうと、ご紹介数がカウントされていきます。
ご紹介いただいた人数が多かった人などには、Javaの公式マスコットキャラクター「Duke」の限定グッズをプレゼントする予定なので、ぜひ「Java Day Tokyo 2015」を多くの人に紹介してください。そしてより多くのJava開発者の皆さまと、東京国際フォーラムでお会いできることを心より楽しみにしています。
このように誕生から20年が経過するJavaは、さまざまな技術要素やツールを拡充し続け、同じく業務システムで活用するために、さまざまな技術要素を必要とするIoTにも対応し、事例も増えつつある。IoTを業務システムへ活用することを検討している方、また、IoTを機にJavaの導入を検討し始めた方は、「Java Day Tokyo 2015」に足を運んでみてはいかがだろうか。
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提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2015年4月7日