メインフレーム上にある基幹データはビジネス機会を掘り起こす宝庫。基幹データをモバイルやWebで参照できれば収益向上のチャンスは大きく広がる。これまでは実現することが難しかったメインフレームのデータを柔軟に活用するための現実解を紹介する。
近年、オープンシステムが当たり前のものとなり、多くの企業でクラウドの利用が進む中、メインフレームの重要性が再認識されている。特にビジネスとそれを支えるシステムの重要度に応じて「適材適所のインフラ活用」が求められ、高度な安定性、データの保全性が不可欠となるSoR(System of Record)分野のシステムにおいては、メインフレームの信頼性・安全性が高く評価されている。
事実、メインフレームは常に一定のニーズがあり、その市場も衰退するどころか、堅調に推移している。これまで、オープン系の技術しか触れたことがないICT技術者にとって、メインフレームは縁遠い存在に思えるかもしれないが、多くの企業が今も基幹システムの中心にメインフレームを据えていることには、れっきとした理由があるのだ。
国内メインフレーム市場で長らくトップシェアを誇る富士通でメインフレームビジネスに携わる、同社 プラットフォーム技術本部 メインフレームソリューション統括部 GSソリューションセンター エキスパート 井上武則氏によれば、「多くのメインフレームユーザー企業が、メインフレームをオープン系に移行するより、そのまま使い続けた方がメリットが大きいと判断しています」という。
「これまで長きに渡る運用の中でビジネスのノウハウを蓄積してきたメインフレームソフトウエア資産を、オープン系への移行で手放すことに多くの企業がリスクを感じています。実際、オープン系への移行では多くのコストやさまざまなリスクが発生します。メインフレームならハードウエアを更新してもソフトウエアはそのまま使えることが多いのですが、オープン系では、システム更改のたびにソフトウエアのバージョンアップに多額のコストと手間が掛かります。メインフレームのこうした互換性を高く評価し、メインフレームを使い続けている企業も多いのです」(井上氏)
しかし一方で、メインフレームを使い続けることで被るデメリットも当然のことながら存在する。最も大きな懸念の一つが、メインフレーム資産が足かせとなってICTのイノベーションに追随できなくなることだ。「昔ながらのメインフレームの世界と、モバイルやクラウド、IoTといったイノベーションの世界とのギャップは、年々広がりつつあります」と同社 プラットフォーム技術本部 メインフレームソリューション統括部 GSソリューションセンター 芹澤好行氏は指摘する。
「オープン系ではモバイルやクラウド、ソーシャルといった新たな潮流が生まれ、エンタープライズICTでも積極的に取り入れられています。オープン系システムのデータだけでなく、メインフレームが管理するデータも最新のフロントエンド端末を使って参照したいという多くのニーズがありますが、これまでは、『できるはずがない』と、そうしたソリューションの可能性は端から排除されてきました」(芹澤氏)
そこで富士通では、このギャップを埋めてメインフレームと最新のフロントエンド技術を連携させるためのさまざまなソリューションに取り組んできたという。いかにメインフレームとオープン系の世界を密接に連携させ、かつオープン系の技術しか知らないエンジニアでもメインフレームのデータを簡単に扱うことができるようにするか。こうした点に重点を置き、メインフレームのデータをSQL(Structured Query Language)で扱えるようにするミドルウエアや、メインフレームデータをオープン系データベースにレプリケーションできるソリューションなどを開発・提供してきた。
そしてこのたび、そうしたソリューション群に新たな製品が加わった。同社が提供するホストエミュレーションソフトウエア「FUJITSU Software WSMGR for Web(ワークステーション マネージャ フォー ウェブ)」の最新バージョンだ。
WSMGR for Webはその名の通り、Webブラウザー上でホストエミュレーション機能を実現するソフトウエアだ。富士通はメインフレームメーカーとして、長年エミュレーションソフトウエアの開発・提供を続けてきたが、「WSMGR for Web 」の最新バージョンでは、前述したような「オープン系のイノベーションとメインフレームを結び付ける」ことを目的とした、さまざまなユニークな機能を備えている。
その一つが「完全Web対応」だ。WSMGR for Webには、「Active Xモード」と「HTMLモード」の二つの動作モードがある。前者はInternet ExplorerとActive Xコンポーネントの組み合わせによって、旧来のWindowsアプリケーション版エミュレーションソフトウエアと同じ仕様をInternet Explorer内で動作させるWebアプリケーションだ。一方、HTMLモードはActive Xコンポーネントを必要とせず、HTMLだけでエミュレーションソフトウエアの機能を実装したものだ。他社にもエミュレーターソフトはあるが、両方に対応しているのは富士通製だけだという。
つまり、HTMLモードではブラウザーの種別に依存せず、Internet Explorer以外のブラウザーを搭載するPCはもちろんのこと、スマートフォンやタブレットでもブラウザーさえ搭載されていればエミュレーションソフトウエアを利用できるようになる。またWSMGR for Webはサーバーアプリケーションとして動作するため、クライアントには何もインストールする必要がない。
またHTMLモードでは、単にホスト端末のグリーンディスプレイ画面をエミュレートするだけではなく、ホストアプリケーションの機能はそのままに、フロントエンドのUI(ユーザーインターフェース)を最新のWebアプリケーションのようにカスタマイズできる。それも、開発者がJavaScriptなどのプログラムを記述する必要はなく、「スクリプトエディター」と呼ばれるツールのGUI上でUI部品を配置して、そのプロパティを設定するだけで、ホストアプリケーションをWebアプリケーション化できるのだ。
Java Scriptを記述して、操作や表示をより高度なものにカスタマイズすることも、もちろんできる。
Webアプロケーション化は至って簡単。まずはホストアプリケーションの操作を一通り行い、その画面と操作をツールに自動的に記録させる。その後に、カスタマイズしたい画面を呼び出し、操作項目をどのようなWebアプリケーションコントロールに置き換えるかを指定する。例えば日付入力の項目を選択し、プロパティを設定する3ステップのみで、Webアプリケーションでよく使われるカレンダーコントロールに置き換えることができる。
こうして、既存のホストアプリケーションの一部のみをカスタマイズすることもできれば、同様の操作でアプリケーションの全てのインターフェースを本格的なWebアプリケーション仕様に作り換えることも簡単にできる。
同社 プラットフォーム技術本部 メインフレームソリューション統括部 GSソリューションセンター 小林直子氏によれば、ここまで洗練されたカスタマイズ性を備えたエミュレーションソフトウエアは、WSMGR for Webくらいだという。
「メインフレームアプリケーションの操作性を最新のオープン系技術に合わせるには、これまではアプリケーション本体の大幅な改修が必要でした。しかしWSMGR for Webなら、アプリケーション本体には手を加える必要がなく、スクリプトエディターを使ってフロントエンドに足りないところを追加できます。しかも、それをコーディングレスで簡単に実現できるのが最大の特長です」(小林氏)
こうしてメインフレームの世界とオープン系の世界を簡単につなげられるようになると、メインフレームの利用価値が高まる半面、セキュリティー上の懸念も新たに生じてくる。PCだけではなくスマートデバイスからもメインフレームのデータにアクセスできるとなれば、おのずと社外からスマートデバイスを使ってメインフレームで管理されている基幹データを参照したいという現場ニーズが出てくる。
例えば、それまで商談の場で「一度持ち帰って検討させてください」となっていたようなケースでも、その場でメインフレーム上の基幹データを直接参照して顧客に在庫や見積を即座に提示できるようになれば、商機を逸することも減るだろう。
しかし、企業にとって基幹データは生命線とも言える重要なもの。それをインターネット経由で社外からのアクセスにさらすことには、誰しもが慎重にならざるを得ない。富士通は、社外からセキュアにメインフレームにアクセスできるよう、WSMGR for Webと合わせてセキュリティーソリューションも提供しているという。
「WSMGR for Webには、もともと認証管理やアクセスログ、暗号化通信といった機能が含まれており、メインフレームに対する社外からのセキュアなアクセスを実現するためのセキュリティーにも配慮しています。さらに、WSMGR for Webの機能だけでは対応できないセキュリティー要件に対しても、富士通が提供している他のセキュリティー製品・サービスをWSMGR for Webに連携させたソリューションを提供しています。また、これらをクラウドサービスとしてパッケージングした『メインフレームコネクト』というソリューションも提供しています。富士通は、セキュリティーだけでなく、スマートデバイスを基幹業務で利用する際に必要となる端末からネットワーク、サーバーまでをトータルに提供しています。」(芹澤氏)
ライセンス体系も、端末数によってライセンス費が決まるWSMGR for Webとは別に、サーバー導入型エミュレーションソフトウェア「FUJITSU Software WSMGR for Web External(ワークステーション マネージャ フォー ウェブ エクスターナル)」では、端末の数が読めないグループ会社や取引先などのパートナー企業からのアクセスを想定し、プロセッサーライセンスを採用している。実際に、これを使いパートナー企業や代理店から直接自社メインフレームに対して情報入力できる仕組みを構築し、システムの利便性を大幅に向上させることに成功した企業も出てきている。
このように、メインフレームの信頼性や堅牢性、高い互換性といったメリットはそのままに、オープン系の世界との橋を架けることで、最新のICTイノベーションとメインフレームを融合させた新たなソリューションを実現するWSMGR for Web。しかも、富士通製のメインフレームだけではなく同社のオフコン、さらにはIBM製メインフレームにも対応している。現在メインフレームを運用している企業は、オープン系への移行だけではなく、これまであきらめていた「メインフレームによる新たなシステム価値の創造」の可能性を、アドオンするだけで簡単に基幹データをモバイル端末などで利用できるWSMGR for Webを使って切り拓いてみるのはいかがだろうか。
なお富士通では、WSMGR for WebおよびWSMGR for Web Externalの実機体験セミナーを定期的に開催している(参加無料)。本稿を読み興味を持たれた方は、ぜひ参加してみることをお勧めしたい。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2015年7月22日