「転職には興味があるが、自分のスキルの生かし方が分からない」「自分にはどんなキャリアチェンジの可能性があるのだろうか?」――読者の悩みに応えるべく、さまざまな業種・職種への転職を成功させたITエンジニアたちにインタビューを行った。あなたのキャリアプランニングに、ぜひ役立ててほしい。
就職活動や転職活動を経て、目指す会社に入社してみたものの、思い描いていたイメージと「何かが違う」――そんな経験を持つ人も少なくないだろう。
世の中、理想と現実が細部まで一致することはまずあり得ない。多くの人が、細かなギャップを埋めながら現実と向き合っているはずだ。
しかしそのギャップが埋めきれないほど大きかった場合には、将来のためにも早い段階で大きな方向修正を行うべきかもしれない。たとえ転職してでも。
今回お話を伺った芝端紹公さんは、理想とするエンジニア像を曲げることなく追い求め、理想の仕事に巡り合えたエンジニアの一人である。
芝端さんの行動力は、理想と現実とのギャップに悩む多くのエンジニアにとっても参考になるのではないだろうか。
【転職者プロフィール】
芝端紹公さん(30歳)
株式会社はてな
アプリケーションエンジニア(2012年4月入社)
【転職前】
メーカー系SIerにて、社内標準の開発基盤を整備する部署に所属。社内フレームワークの開発やワークフロー管理ツールの保守を担当する。
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【転職後】
はてなが手掛けるさまざまなシステム/サービスの開発に携わり、2015年4月より、はてなブックマークチームに所属。Scalaによるはてなブックマークのフルスクラッチを担当している
芝端さんは、2010年春に大学院の情報理工学研究科で修士課程を修了し、いわゆる院卒で大手メーカー系のSIerに就職した。
同期入社は100人弱。システム開発の仕事を志望して入社したメンバーが大半だが、全ての人が技術指向というわけではなかったことが、芝端さんには衝撃的だった。
芝端さんが学生時代に描いていたソフトウエア開発職のイメージは「プログラミングに関する深い知識を持つ人が、複雑なアルゴリズムを考えながら、コードをバリバリ書いていく」というもの。しかし、入社したSIerでの業務は上流工程が中心。コーディングはほんの少しで、早い段階から仕様書の作成などを担当する。「就職活動時に業界研究や企業研究をしっかりやっていなかったので、上流下流の違いもよく分かっていませんでした」
プログラミングに深く携わることなく、データベースやネットワークの知識もないままに仕様書を書く――それで、果たしてホンモノのエンジニアとしての力が身に付くのだろうか? 芝端さんは疑問を抱かずにいられなかった。
会社の体制はそうだとしても、一緒に働くメンバーの中にはプログラミングに強い興味がある人もいるのではないかと考えたが、配属された部署ではそうした人に出会えなかった。
個人的にRubyから勉強を始め、プライベートでいろいろなプログラムを組み、プログラムのオンラインジャッジを解くなどしていた芝端さんは、同期のメンバーにプログラム談義を持ちかけてみたが、同じように自主的にプログラムに関心を示すメンバーには出会えなかったという。
先輩たちを見ても、芝端さんが理想としているような、コードをとことん知り尽くした上で設計を行う業務スタイルを取っているシステムエンジニアは、ほとんど見当たらなかった。
「このままこの会社にいても、自分の思い通りのキャリアを形成できないのではないか?」。そんな焦りにも似た気持ちが芽生え、入社1年で早くも転職を考え始めたという。
実は、芝端さんがやりたいことのために軌道修正を図ったのは、今回が初めてのことではなかった。
芝端さんは「ものづくりがしたい」という漠然とした思いから、大学では建築系の学科を専攻した。
建築の勉強も楽しかったが、所属サークルのホームページ制作などを手掛けるうちに新たな世界が広がった。
レンタルサーバーを借り、サイトにさまざまな機能を盛り込んでいくうちに、Web制作の面白さにハマり始めた。最初のうちはWeb制作ツールを利用していたものが、直接コーディングするようになり、さらにはWebプログラミングそのものが面白いと感じるようにまでなった。
大学卒業時は、就職という選択肢を取らず、大学院に進むことを決意。
ここからの決断は速かった。せっかくの機会なので本格的にプログラミングを学ぼうと、大学院では情報系学科を専攻することにした。芝端さんのプログラミングに対する情熱の多くは、この大学院時代に培われたといってもよいだろう。
「友人たちは、自分でコードを工夫して、さまざまなプログラミングコンテストなどに応募していました。それがとても楽しそうで、自分も次第に感化されていきました」
友人たちとプログラムの話で盛り上がり、新たなプログラミングテクニックを見付けては、互いに刺激し合う毎日。次々と登場する新しい技術をキャッチアップし、自身のプログラムに取り込んでいく過程は、芝端さんが理想とする「ものづくり」そのものだった。
芝端さんが仕事に求めていたのも、こうした知的好奇心を満たしていくような楽しさだった。
芝端さんの転職活動は、どのようなものだったのだろうか。
「早く転職をしたいと考えていましたが、複数の企業に同時に応募はせず、一社ずつ丁寧に応募して結果を待つことにしました」
一般ユーザー向けのインターネットサービスを行う企業を中心に入念な企業研究を行った結果、最初に応募したいと思えたのが、普段からよく利用している「はてなブックマーク」を提供する「はてな」だった。
Twitterで当時のはてな社長(現会長の近藤淳也氏)が、社員募集についてツイートしていたことも、応募への後押しになったという。
「絶対に受かりたい」と思ったので、面接に臨む際は、いかに自分をアピールするか準備を怠らなかった芝端さん。
「いくら面接で『できます』『やったことがあります』と言っても、それが証明できなければ信ぴょう性に乏しい。そこで、はてなブックマークを手軽に使えるブラウザー拡張アプリを作成してGitHubで公開しておき、面接官にそれを見てもらいました」
自分の技術力や努力をきちんと評価してほしい。芝端さんの行動からは、そんな思いが読み取れる。
こうしたアピールが功を奏して、見事内定を勝ち取り2012年4月に同社に入社した。
前職では理想と現実のギャップに悩まされた芝端さんだが、「はてな」での仕事には違和感はないだろうか?
「おかげさまでミスマッチは特にありません。はてなは開発環境も整っているし、新しい技術要素も積極的に取り入れています。今所属しているチームは開発手法にSCRUMを採用し、スピーディな開発を行っているのも心地良く感じています。運用チームとの距離が近いため、運用のしやすさを取り入れたDevOps的な開発が行えるのも魅力です」
前職では仕事でコードを書くことがなかったので、はてなに入社してから経験することもあった。
「先輩エンジニアからコードレビューを受けたり、人と一緒にコードを書いたり、というのは初めての経験でした。こうした実務に即したノウハウはとても勉強になります」
入社から3年ほど「はてな」のさまざまなプロジェクト/サービスに携わってきたが、2015年4月からは「はてなブックマーク」の開発チームで働いている。
「はてなブックマーク」は今年で10周年の節目を迎え、年内に新機能の追加や新たなプロジェクトも予定されている。芝端さんは現在、大きなプロジェクトであるScalaを使ったはてなブックマークのフルスクラッチを担当しているという。「『はてなブックマーク』の開発に携わりたい」という転職時の希望を、入社4年目にして実現したことになる。
ところで、大手企業の安定を手放し、企業としてはまだ若い「はてな」に転職することに不安はなかったのだろうか。
「僕は、子どものころ大手証券会社の倒産をニュースで見て『大きな会社でもつぶれることがある』ことを知った世代です。だから僕にとって『安定』とは、会社が与えてくれるものではなく、自分が力を持つことなんです。エンジニアとして力を付けること、それこそが最も安定していることなんです」
「これからも、興味を持って自主的に仕事に取り組んでいきたい。そして、多くの人たちに影響を与えられるような新たなサービスを自分の手で創り出していきたい」と芝端さんは屈託なく笑った。
まずは、今後リリースされるであろうフルスクラッチされた新たな「はてなブックマーク」を楽しみに待ちたい。
採用フローの中で経験のない言語でのプログラムを課題に出しましたが、真剣に取り組み、エンジニアとしての向上心を強く感じさせる提出をもらえ、そのことが決め手になり採用に至りました。
持っている技術力や向上心だけでなく、気持ちよくコミュニケーションできる人柄も魅力に感じました。また、はてなではSIer出身のエンジニアの前例が少なく、彼が入社することによって、これまでにはない新しい風を吹き込んでくれることを期待していました。
入社後は、面接時の印象通りめきめきと成長し、適応能力の高さから社内でもさまざまなシステム・サービスの開発に取り組んでもらえています。
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提供:株式会社マイナビ
アイティメディア営業企画/制作:@IT自分戦略研究所 編集部/掲載内容有効期限:2015年7月31日
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