企業ITインフラの集約が進む中、ワークスタイルの柔軟性を同時に得るための選択肢として「デスクトップ仮想化」「モバイル対応」などが考えられる。これらと同時に展開すべきなのは、パフォーマンスのロスがないサービス提供と効率の良い運用だ。シトリックス・システムズ・ジャパンが提示したのは、全てをカバーする“ワークスペーステクノロジー”だった。
シトリックス・システムズ・ジャパン(以下、シトリックス)は2015年7月23日、同社が推進するコンセプト「モバイルワークスペース(Mobile Workspace)」をテーマにしたイベント「Citrix TechDay」を都内で開催。アプリケーション/デスクトップ仮想化から、モバイル管理、ネットワーク製品に至るまでの同社の製品群(=同社のいう“ワークスペーステクノロジー”)により、いつでも、どこからでも仕事ができる「モバイルワークスペース」を実現できることをユーザーやパートナーに訴えた。
午前中のジェネラルセッションでは、営業推進本部 プロダクトソリューション推進部 シニアプロダクトソリューション推進マネージャー 竹内裕治氏が登壇。「〜ワークスペーステクノロジー最前線〜」と題して、シトリックスが展開する主要製品の最新アップデート情報やデモを披露した。
最初に紹介したのは、アプリケーションとデスクトップ仮想化ソリューション「XenApp/XenDesktop」の最新情報と既存顧客向けのサポートプログラムだ。XenApp/XenDesktopは6月30日に最新版となる「7.6 Feature Pack 2」の国内提供が開始され、同時に「XenApp 6.5」の機能拡張とサポート延長が発表された。
特にXenApp/XenDesktopは日本国内での市場シェアが高いことから*、既存ユーザーのIT投資保護のための施策が重要になる。そこで、XenApp 6.5では、製品サポートを2017年まで延長すること、「6.5 Feature Pack 3」を提供し最新版の7.6とほぼ同等の機能を利用できるようにすること、最新版への移行サービスの提供という三つの施策を実施している。
*IDCジャパン「2014年国内バーチャルクライアントコンピューティング市場ベンダー別売上額実績」『国内ソフトウエアシステム市場2014年の分析と2015〜2019年の予測』による。
7.6についてはFeature Pack 2の新機能を、デモを交えて解説した。Feature Pack 2では、接続クライアントソフト「Receiver」と企業向けアプリストア「StoreFront」を機能拡張し、XenMobileのクライアントとして提供していた「Worx Home」の機能を統合した。新しいStoreFront 3では、複数バージョンのXenAppが混在できるようになった他、コンシューマー向けアプリストアのようなクールなビューとクラシカルなビュー、さらにユーザー企業独自のブランディングにも対応する柔軟性も実現している。
また、通信プロトコルとして従来のICAに新しい「Framehawk」画面転送プロトコルを統合し、遅延やパケットロスの多いモバイル環境でのパフォーマンスを大幅に強化した。これらにより、デスクトップとモバイルのユーザー体験がより近くなり、環境の違いを意識することなく利用できるようになった。
ビジネスへの影響という点では、「Windows 10」への対応とVDI(仮想デスクトップインフラストラクチャー)でのLinux対応が興味深い。リリースされたばかりのWindows 10についても、プレビュー版から動作検証を進めており、安心して利用できる環境を提供するという。Windows 10に対応した「Receiver for Windows 4.3」は既に提供済み。Windows 10のVDI環境も準備中で、Tech Previewプログラムでお試しが可能だ。また、「AppDNA」を使ったWindows 10アプリケーションの移行支援策もパートナー向けに実施する。AppDNAを利用すると、アプリケーション移行の問題や修正内容の把握を自動的に行うことができる。
VDIでのLinux対応では、「SUSE Linux」と「Red Hat Enterprise Linux」に対応し、Windowsと同じ仕組みでデスクトップやアプリケーションを配信できるようにした。例えば、金融機関などでは、より安全なWebアクセスを確保する仕組みとして、DMZ上に配置したXenApp上のInternet Explorerを経由して社外にアクセスするという構成を採用することが多い。今後は同じように、DMZ内に配置したXenApp上のLinuxのWebブラウザーを経由させることで、より安価でセキュアなインターネット利用環境が構築できる。また、VDI環境についても、Linuxを用いることで低コスト化を実現できる。
モバイル環境については、企業向けモバイル管理製品「XenMobile」とファイル共有サービス「ShareFile」の機能強化を中心に、営業推進本部プロダクトソリューション推進部 プロダクトソリューション推進部 プロダクトソリューション推進マネージャー 山田晃嗣氏が説明を行った。
XenMobileの最新版では、新たにOutlookのタスクと連携するタスクアプリ「WorxTasks」とセキュアコンテナー内で動作するSalesforceアプリ「Citrix for Salesforce」の二つが加わった。また、メールアプリ「WorxMail」、ノートアプリ「WorxNotes」などが機能強化した。
デモでは、WorxMailでのスワイプ操作やZip圧縮されたファイルをその場で開いて閲覧できること、WorxNotesでは音声入力への対応やデスクトップ環境との連携強化を示した。
また、ShareFileを使って、Windowsデスクトップで作成したPowerPoint資料が即座にスマートフォンからも閲覧でき、さらにはその資料のスライド再生がスマートフォンからもできることを示した。加えて、MDM(モバイルデバイス管理)については、「リモートワイプ」機能により、管理コンソールからの指令よってセキュアコンテナー内のアプリを削除する様子も紹介、「XenMobileと、ShareFileをはじめとしたWorxモバイルアプリにより、働く場所や状況を問わず、データはセキュアに保ちながら、それぞれのデバイスに最適なエクスペリエンスを提供できる。」と山田氏。フロント側のUIだけでなく、バックエンドの管理機能も強化されている。
バックエンド側の管理ソフトとしては、XenDesktop 7以降、ネットワーク監視の「Citrix Director」とパフォーマンス監視の「EdgeSight」の機能が統合されたことで、パフォーマンス監視・管理とネットワーク監視・管理/セッション録画・監査の統合管理が可能になっている。
仮想環境の管理というと、収集できるログの範囲がハイパーバイザーの取得ログに制限されがちだが、Directorを用いると、セッションの中身までログを取得することができる。そのため、例えば「仮想環境へのログインが遅い」といった問題が発生した場合はログを基に「Active Directory認証が遅い」「グループポリシーの適用が遅い」など、具体的な原因を事前に調査した上でトラブルシュートできるようになっている。また、通信遅延の問題についても、ICA、WAN、データセンター、ユーザーといった複数のレイヤーでグラフィカルに把握することができる。遅延の問題がどこにあるかを、インフラ、ネットワーク、ユーザーベースのぞれぞれの状態を同じ環境から確認できるため、トラブルシュートが早いという。
バックエンド側の機能でユニークなものは、「セッションレコーディング」と呼ばれるユーザーの操作を録画する機能がある。ログインしてからのデスクトップ画面の操作をムービーとして記録するもので、厳重な管理を要する端末などで利用すれば、インシデント発生時の追跡に貢献する。
この他、開発中の「Citrix Workspace Cloud」の機能や動作画面も紹介した。Workspace Cloudは、こうした管理系のシステムをクラウドに集約し、サービスとして利用するものだ。「マネージドサービスではなく、ワークスペース管理基盤の設計、構築をシトリックスが行い、クラウドベースのサービスとして提供する。時間とコストを圧縮した管理が可能になる他、アプリ、データ、デスクトップの保管場所に関しては顧客、パートナーのノウハウを駆使した柔軟な運用が可能になる」(竹内氏)という。
シトリックスが強みを発揮するのは、こうしたデスクトップやモバイルといったフロント側だけでなく、バックエンド側のハードウエア、ソフトウエアを製品として提供できる点だろう。デスクトップ環境、モバイル環境に続いて紹介されたのは、ネットワーキングだ。
営業推進本部プロダクトソリューション推進部シニアプロダクトソリューション推進マネージャーの臼澤嘉之氏が、具体的な製品として、アプリケーションデリバリコントローラー(ADC)製品の「NetScaler」、WAN最適化製品の「CloudBridge」、通信の可視化を実現する「HDX Insight」の三つを紹介した。
NetScalerについては、マイクロソフト「Exchange Server」のADCとしての実績が高く評価されているという。モバイルフロントエンド向けに配信の最適化を行う「NetScaler MobileStream」によって、Webページのロード時間を50%短縮できること、常時SSL化に対応したモデルでは、1秒当たりのSSLトランザクション数(2048ビット証明書)で56万と業界最高水準であることなどを紹介。
その上で「NetScalerは、Web/マイクロソフトアプリケーションの手前に設置する最適なソリューション。シトリックスアプリケーションとNetScaler、CloudBridgeを組み合わせることで最大限の効果を発揮できる」とアピールした。
最後に竹内氏は、シトリックスが提供するこうした製品群は、インフラの面で進んでいるトレンドを統合し、“Software-Defined Workplace”を実現できることが大きな特徴だ」と主張した。
インフラのトレンドとしては、Software-Definedなデータセンター、コンバージドインフラストラクチャ、IaaS(Infrastructure as a Service)によるパブリッククラウドなどがあるが、現在では、これらの連携はそれほど進んでいない。Software-Defined Workplaceは、こうしたインフラを統合(コンバージェンス)し、その上で、「配信ネットワーク」「ワークスペースサービス」「モビリティアプリ」を実現していくというコンセプトだ。
具体的な製品マッピングとしては、インフラコンバージェンスには「XenServer」ハイパーバイザーやクラウド基盤のCloudPlatform、買収したストレージ仮想化の「SANbolic」製品を利用。また、配信ネットワークではNetScalerとCloudBridgeを、ワークスペースサービスではXenApp/XenDesktopとXenMobieを、モビリティアプリではShareFile、Workspaceアプリ、リモートアクセス製品の「GoToMeeting」を使って構成することになる。そして、これらのうち、主要製品をまとめて提供するのがスイート製品「Citrix Workspace Suite」である。
竹内氏は、最後に「フロントエンド、バックエンドともに技術革新を継続し、ワークスタイル変革を強力に推進する。今後は、自動化、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)、ユーザーを真の知的作業に集中させることをテーマに、ワークスペースの進化をスピードアップさせていきたい」と宣言した。
同イベントでは、いくつかのユーザー企業による事例講演もあった。ヤフー システム統括本部 サイトオペレーション本部 インフラ技術3部 ロードバランスリーダー 宮田耕一氏は、NetScalerを採用した動画配信プラットフォームについての講演を行った。
宮田氏によると、コンシューマー向けの大規模動画配信プラットフォームでは、従来利用してきたレイヤー3、4のロードバランサーではサーバー負荷が高い点が課題だったという。そこで、サーバー負荷のオフロードを行う目的で高性能なレイヤー7ロードバランサーの採用を検討、パフォーマンス面で優れていたNetScalrを採用したという。
宮田氏は、常時SSL接続が一般的になりつつあることを念頭に、「NetScalerのSSLアクセラレーション機能によるパフォーマンス向上にも期待を寄せている」という。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2015年9月24日