@ITでは、企業におけるグループウエアの利用状況を明らかにするべく、2015年9月に読者調査(有効回答数695)を実施。今回、このアンケート結果を踏まえながら、グループウエア導入・活用の現場を知る担当者に、グループウエア活用の現状と移行への課題を聞いた。
グループウエアは、いまやほとんどの企業に導入され、ビジネスを円滑に進める上でなくてはならないツールとなっている。一方で、長く使ってきた旧来のグループウエアを刷新し、新たな環境へ移行するニーズも高まりつつある。技術の進歩に伴い、低コストで大量の情報を蓄積できるようになったり、クラウド利用の促進により、蓄積されるデータ容量の不安が解消されるなど、昨今はユーザーが扱う情報量が増大している。その結果、適切な情報共有や蓄積されたデータから欲している情報を探し出すのが困難な旧来のグループウェアでは、情報が氾濫する傾向にあるからだ。また、ワークスタイルの変革やモバイルデバイスの普及も旧来のグループウエアを刷新することを後押ししているといえよう。
こうした背景の中、@ITでは、企業におけるグループウエアの利用状況を明らかにするべく、2015年9月に読者調査(有効回答数695)を実施した。今回、このアンケート結果を踏まえながら、グループウエア導入・活用の現場を知るサイボウズ ビジネスマーケティング本部 ガルーンプロダクトマネージャーの池田陽介氏に、グループウエア活用の現状と移行への課題を聞いた。
まず、アンケート回答者の属性を見てみると、「社内情報システム部門のスタッフ(企画・設計・開発・運用)」が最も多く、「社内情報システム部門のマネジャー」、「システムエンジニア(アプリケーション)」と続いていた。また、グループウエアに関する製品/サービスの導入に、主にどのように関与しているかとの問いには、「導入したシステムを使う立場」が約4割を占めており、次に「導入についての検討・選定する立場」、「導入についての検討・選定する立場」となり、全体的に、グループウエアを実際に利用しているユーザーの意見が反映されたアンケートとなった。
では、現在どのようなグループウエアが利用されているだろうか。最も利用頻度の高いグループウエアを一つ選んでもらったところ、第1位は「Microsoft Sharepoint/Exchange/Office 365」(22.8%)第2位は「サイボウズOffice/ガルーン」(20.31%)、第3位は「IBM Notes/SmartCloud Notes」(14.5%)だった。
「IBM Notes」は、グループウエアの定番として以前は圧倒的なシェアを持っていたが、近年では急速に移行が進みつつあるようだ。実際に、以前アイティメディアが行った読者調査でも、最も利用頻度の高いグループウエアのシェアが、2012年は約20%だったのに対して、今回は約14%と低下する傾向になっている。
ここからは、グループウエアの利用実態について探っていこう。利用中のグループウエアで絶対に外すことのできない機能については、「スケジュール管理」が最も多く69.2%を占めた。この他、「メール」(43.6%)「備品・設備予約」(30.9%)「掲示板」(30.9%)が上位に挙がっていた。一方、利用中のグループウエアで不満に感じている機能のトップも「スケジュール管理」(23.1%)であった。次いで、「検索機能」(19.5%)「メール」(18.9%)「アドレス帳」(18.4%)への不満度も高かった。
また、同じ質問の結果をNotesユーザーに絞り込んで見てみると、利用中のグループウエアで絶対に外すことのできない機能については、「メール」(61.7%)が1位となった。続いて、「スケジュール管理」(54.9%)「掲示板」(39.8%)となり、「備品・設備予約」は21.8%と順位に変動が見られる。利用中のグループウエアで不満に感じている機能については「スケジュール管理」(39.6%)、「検索機能」(29.5%)「アドレス帳」(25.9%)「メール」(25.9%)となり、「スケジュール管理」「検索機能」について不満を持つ割合が全ユーザーよりも高い傾向にある。
この結果について池田氏は、「『スケジュール管理』は、グループウエアの中核を担う機能の一つであり、ユーザーが最も重視している機能でもある。それだけに、製品によって満足・不満足の評価が両極端に現れる結果になったと思われる。また、気になるのは『検索機能』の不満足度が高かった点。データ量の増大を受けて、より横断的に便利に検索できる機能が求められている」との考えを述べた。
グループウエアを利用する際に、「あったら便利だ」と思う機能を選んでもらったところ、ここでも「スケジュール管理」がトップとなり、「備品・設備予約」「掲示板」「アドレス帳」「通知機能」「ファイル・文書管理」「メール」などが上位に挙がった。これらは不満に感じている機能とほぼ重なっており、ベンダー側に改善が求められる機能といえる。
「こうしたグループウエアへの不満と要望は、当社でも把握しており、もっと便利に活用してもらえるよう機能改善に取り組んでいる。例えば、『ガルーン』では、独自の通知機能や各機能を横断してファイルの中身まで検索できる全文検索機能を搭載している」(池田氏)という。
一方、グループウエアのモバイル環境での利用状況はどうなのだろうか。グループウエアをスマートフォンなどのモバイル端末から利用しているかを聞いたところ、「利用している」との回答が約5割を占めた。一方、「利用していない」は約2割で、「利用できない」が約3割となった。
池田氏は、「いまや、ビジネスでモバイルデバイスを活用するのは当たり前になった。しかし、この結果を見ると、グループウエアをモバイルデバイスで使いたくても使えないという人が多くいることが分かった。『モバイル対応』は、不満に感じる機能の上位にも挙がっていることから、ベンダー側のさらなる努力が必要だ。当社では、スマートフォン向け無料アプリケーションの「サイボウズ KUNAI」を提供している他、最新版の『サイボウズ ガルーン 4』では、スマートフォン専用の画面を提供している。今後もデバイスの変化に伴い、改善、強化していく」と話し、モバイル対応は、グループウエアベンダーの大きな課題であると訴えた。
次に、グループウエアの導入検討者・運用管理者を対象にした、グループウエアの移行に関する質問をピックアップした。まず、「IBM Notes」からの移行・追加を検討している理由を聞いたところ、「Notesの技術者・管理者がいない(不足している)」が最も多く、53.33%を占めた。続いて「保守・サポート切れ」、「開発・運用コストが高い」が挙がった。「Notesは、企業で長く使われているケースが多く、最初に導入・設計した技術者がすでにいなくなっていることも珍しくない。Notes専門の技術者が今後増えていくことは見込めないため、そうした企業では、継続してNotesを使っていくことは難しく、移行を検討せざるを得ない状態になっている」と池田氏は指摘する。
「IBM Notes」からの移行・追加の際に検討した製品については、マイクロソフトの製品に次いでサイボウズ製品を検討したとの回答も多く挙がっていた。
サイボウズ製品への評価が高まっていることに対して、池田氏は、「いままでサイボウズ製品は、Notesからの移行対象として認知されていなかった。しかし、着実に製品の機能性、有効性が広がっていき、Notesの移行対象として検討してもらえるようになってきた。実際にサイボウズに移行した企業から高い評価を得ていることも、Notes移行を後押ししている。また、業務アプリ開発プラットフォームのkintoneは、グループウエア製品だけではカバーできない独自アプリ部分をユーザー自身が素早く、簡単に開発できることから、そのニーズが高まっている」としている。
今回のアンケートでは、「IBM Notes」からの移行・追加を検討する際と、実際に「IBM Notes」から移行・追加した際、それぞれにおいてグループウエアで重要視する点を聞いているのだが、この回答結果から興味深いデータが浮き彫りになった。「運用コスト」「初期導入コスト」「移行作業コスト」などのコスト面については、どちらも重視する項目の上位に挙がっていた。
コストを重視する点以外で大きな差が出たのが「既存機能の再現」だ。移行・追加を検討する際には「既存機能の再現」を重視するとの回答は57.14%だったのに対して、実際に移行・追加をした際には「既存機能の再現」は28.57%にまで減少していた。代わりに、コスト面を除いて重視したのが、ユーザーが使いやすいかどうかで71.43%、既存データの引き継ぎで57.14%だった。
「この結果から、多くの導入検討者が、既存のグループウエアの機能を完全移行することを目指している一方で、実際に移行・追加を行った企業では既存機能の再現を完全に目指しているのではなく、他に優先すべき要件があることが分かった」と池田氏は考察する。「もし、既存機能の完全再現に悩んで、グループウエアの移行をためらっている導入検討者がいるとしたら、機能再現にとらわれず、現場目線で、業務の再現性や効率化を重視することが、移行の成功につながるのではないか」とアドバイスしていた。
「IBM Notes」からの移行・追加をした際に、具体的にどのようなことをしたのかという問いでは、「具体的な見積もりを取った」が最も多く、次いで「現在のNotesの使用状況を調査した」「Webで情報を収集した」「展示会などで情報を収集した」「セミナーに参加した」が上位に挙がった。
「当社では、Notes移行を支援するために積極的にセミナーを開催している。セミナーでは、ユーザーの抱えている課題の紹介や、サイボウズのNotesマイグレーションの取り組み、移行のパターンや進め方などを分かりやすく説明する。サイボウズ製品への無料アセスメントサービスも実施しているので、ぜひ足を運んで、Notes移行のヒントを見つけてほしい」と池田氏は話していた。
このように、今回のアンケート結果から、グループウエアに関するさまざまな最新の傾向が浮き彫りになった。
例えば、Notesからの移行が叫ばれて久しい昨今だが、実際に移行は進んでおり、マイクロソフト製品やサイボウズ製品がシェアを伸ばしていること。ユーザーが最も重視している機能が「スケジュール管理」であり、一方で最も不満がある機能が「スケジュール管理」であること。一定のグループウエアの導入検討者・運用管理者が「既存機能の再現」を重視しているが、すでに移行に成功した企業は、実は「既存機能の再現」をそれほど重視しなかったことなどだ。
特に「既存機能の再現」について移行前後で差異が見られた理由は、移行した企業は、より使いやすさやデータのみの引き継ぎなど、現場の声を反映したからといえるだろう。
現場のユーザーが本当に必要としている課題の解決策は何なのか。不満があり改善してほしいと思っている機能はどんなことなのか。本稿を読んで気になった運用管理者は、現在使っているグループウエアの使用状況をあらためて調査してみてはいかがだろうか。その上で、新しいグループウエアの追加または移行にコストを掛けるのか、それでも「既存機能の再現」にこだわって追加や移行をためらい、レガシーな環境にコストを掛け続けるのかを判断しても遅くはないはずだ。
Notesから他のグループウエア・情報共有基盤への移行を検討されているお客さま向けに実際にNotesから「ガルーン」へ移行した事例や、サイボウズのNotes移行ソリューションをご紹介する無料セミナーです。
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提供:サイボウズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2015年11月12日
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