シスコが日本の中小企業向けに、5万円以下からの低価格ルーター「Cisco 841M J」を販売開始した。設定が簡単で、ネットワーク運用やセキュリティーの機能も充実している。この奇跡的なルーターの魅力を探る。
シスコシステムズは2015年9月、日本専用ネットワーク製品ブランド「Cisco Start」の提供を開始した。これは従業員数100名以下の中小企業のための製品シリーズだ。なかでもルーターの「Cisco 841M J」は推奨小売価格が5万円以下からという衝撃的なレベルで、ネット通販でも気軽に購入でき、販売開始直後から大きな話題を呼んでいる。
Cisco 841M Jはれっきとした、シスコのネットワークOS「Cisco IOS」を搭載するルーターだ。いろいろ細かな機能を試したいという人には、触り甲斐のある製品となっている。だが、一番の特徴は、面倒な設定や管理がいやだという人が、グラフィカルな画面で初期設定や運用管理を簡単に実行できるという点にある。「しかも、価格には2年間の保守が含まれていて、安心してお使いいただけます」と、シスコのエンタープライズネットワーキング事業 ビジネス担当 渡邊靖博氏はいう。
Cisco 841M Jを象徴するのは、Webブラウザーで利用できる設定・管理の画面「Cisco Configuration Professional Express」だ。アメリカの製品だと、英語ばかりで分かりにくいということが多いが、この画面は完全に日本語化されているし、何よりも分かりやすい。
WANにつなげるための設定も、この画面からウイザード形式で実行できる。家庭でインターネット接続を設定するのとほとんど同じような感覚で、接続するネットワークサービス事業者から送られてきた情報を入力していけばいい。ファイアウオール機能の設定まで、一気に実行できる。
ネットワークに関する知識がほとんどない人でも設定ができるので、例えば全国に小規模拠点があるような会社のIT担当者が、各拠点を回って設定するといったことは不要だ。各拠点の人に頼めばいい。
この管理画面では、WAN接続設定以外にも、VPNの設定やLANスイッチの設定など、WAN、LANの多様な機能をグラフィカルなインターフェースで利用できる。特にVPNの設定は、通常複雑で、懸命に勉強しなければならないことが多いが、このルーターでは心配する必要がない。LANに関しては、この画面を通じてルーターからLANスイッチの設定を実行できる。これも、ネットワーク運用を楽にしてくれる面白い機能だ。
Cisco 841M Jおよびその他のCisco Start製品群は、「Cisco Network Assistant」というもう一つの管理アプリケーションにも対応している。このアプリケーションではLANのトポロジーを示し、LAN機器の設定を変更することもできる。
上記では物足りないという人向けには、「Embedded Event Manager」という、上級者向けの機能もある。これは、ルーターの機能をスクリプトで制御できるというもの。夜間はインターフェースを落としておくことも可能だ。
上記を通じて、もし分からないことが出てきても安心だ。主要な機能については、シスコのWeb上に、シスコ日本法人の社員お手製の痒い所に手が届く資料が掲載されている。また、専用のサポートコミュニティが運営されている。ここに自分の質問を投げかけることができるし、自分と同じような質問とその答えを見ることもできる。シスコの電話サポート窓口に、電話で聞くことも可能だ。だから、ちょっと複雑な設定にも、気軽にチャレンジできる。
「ネットワークの運用管理などと言われても、そんなことはできない」という人は多い。Cisco 841M Jでは多くのルーターと同様、正常に動作しているなら、特段管理作業が要求されることはない。ほとんどあり得ないが、万が一ルーターがダウンして立ち上がらなくなったとしても、システムイメージのバックアップをあらかじめ保存したUSBメモリーを挿して、再起動するだけで、設定を含めた復旧ができる。こうした点でも安心だ。
一方、Cisco 841M Jには、「ネットワーク状況の可視化」という、とても興味深い機能が搭載されている(モデルによる)。これは日常的なネットワークの運用管理に大いに役立つだろう。
どんな機能かというと、「拠点内でだれがインターネット接続を大量に使っているか」、そして「どんなアプリケーションやサービスが使われているか」に関する情報が見られるというものだ。「だれが」使っているかについては、通信量の多い端末のIPアドレスが、棒グラフとともに上位から示される。「何が」使われているかについては、サービスあるいはアプリケーションの名前で、通信量の多い順に棒グラフとともに示される。
職場における社員のプライベートなインターネット利用をどこまで制限するかについては、企業によって考え方が異なる。だが、少なくとも拠点のインターネット接続がプライベートな利用で占められてしまい、業務上のWAN利用に影響が及ぶようでは困る。そこで、可視化機能を活用し、プライベートでインターネットを過度に利用している社員に、自制を促すなどの対策が打てる。
Cisco 841M Jは、シスコのセキュリティクラウドサービスと連携できる。このサービスは、リーズナブルな価格で使えるWebセキュリティーサービス。ウイルス対策ソフトを不要にし、マイナンバー対策にも使える。
このセキュリティクラウドサービスは、シスコが運用している本格的なセキュリティーサービスの一部を切り出して、安価に提供するというもの。だから、低価格であるにもかかわらず、機能に妥協はない。
このサービスでは、シスコが運用するWebサイトの評価データベースに基づき、社内の端末が不正なサイトに接続しようとした場合、クラウドサービスでこの通信を遮断することができる。また、社内のWebブラウザーのインターネット通信を対象としたウイルススキャンをクラウドが実行し、ウイルスがダウンロードされようとした場合には、これを止めることができる。
仕組みとしては、シスコのセキュリティクラウドサービスが、社内端末のWebブラウザーのプロキシサーバーとして機能する。中小企業では、社内でプロキシサーバーを運用しているところは少ないが、クラウドサービスとして提供されることで、高度なセキュリティーが保てることになる。もう少し補足すると、プロキシサーバーは、通常Webブラウザーごとに設定しなければならない。だが、Cisco 841M Jを利用している場合は、ルーターが自動的にHTTP通信をシスコのセキュリティクラウドサービスに向けるため、端末ごとの設定は不要だ。
インターネットとの間で、Webブラウザーの通信しかしていなければ、端末ごとにウイルス対策ソフトを導入する必要は、もはやない。また、マイナンバーの導入に伴い、中小企業でもセキュリティー対策の強化が迫られているが、このセキュリティクラウドサービスを使えば、新たに専用セキュリティー機器を購入する必要はなくなる。
Cisco Startでは、Cisco 841M Jに加え、LANスイッチや無線LANアクセスポイントといった製品が用意されている。日本の中小企業が、Cisco Startを使うメリットは何なのだろうか。シスコの渡邊氏は、次のように説明する。
「まず、日本の多くの中小企業では、マルチベンダーでネットワークを組んでいることが多いですが、シスコに統一することにより、ネットワークのことで何か困ったことがあれば、何でもシスコにご相談いただくことができます。
また、Cisco StartではルーターからLAN機器を簡単に設定できるので、LAN全体の構築や運用が非常に楽になります。社内ネットワークを構築、あるいは拡張する場合、新たにLANスイッチを購入しさえすれば、あとはユーザー企業の方がご自身で導入作業を行えます。ネットワークの構築・拡張に掛かる時間とコストが、大きく節約できます。
さらに、セキュリティーサービスまでシスコ一社で提供していますので、ネットワークおよびセキュリティーで導入する製品の数を減らすことができます。これは、導入コストと保守コストの双方に、直接響いてきます。Cisco Startでは、製品価格に保守も含まれている点にも、ぜひご注目いただきたいと思います。
ルーターから始めて、ネットワーク全体をコスト効率よく、自ら運用できる世界が広がることが、Cisco Startの最大の魅力です」
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提供:シスコシステムズ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2015年11月20日