エンタープライズITへのアプローチを明確化しつつあるデル。直近に開催されたイベントでもそのメッセージは極めて明確だ。本稿では、ITインフラのクラウド化がもたらす変革に対してデルの技術的なアプローチがどのようなものであるかを、イベントレポートを通じて紹介する。
迅速で柔軟なビジネス展開には、ITインフラのクラウド化が欠かせない要素となりつつある。クラウドには、パブリック、プライベート、ハイブリッドといった形態があるが、あらためていま関心が集まっているのがプライベートクラウドだ。選択と構成の自由度が高い上、データの機密性、管理の柔軟性など、プライベートクラウドには多くのメリットがある。加えて、昨今では総コストにおいても、パブリッククラウドに引けを取らない場合がある。
では、いまプライベートクラウドを構築するときに知っておくべき技術と選択肢は何だろうか? デルが2015年10月14日に国内で開催したプライベートイベント「Dell Solutions Roadshow 2015」からそのヒントを探る。
サーバーハードウエアから、ネットワーク、ストレージ、運用管理、セキュリティ、仮想化といった幅広いソリューションを展開するデル。PCやサーバーを中心としたハードウエアベンダーから、ハードやソフトを統合したソリューションベンダーへと業容を拡大させてきた。特に近年は、クラウド、モバイル、ビッグデータといった「新しいIT」が大きなうねりになるなか、従来のITと新しいITを支える基盤を提供する企業として注目度が増している状況だ。
こうした中で開催された「Dell Solutions Roadshow 2015」では、デルが考える「企業のITシステムの在り方」と、新しいITに向けて注力しているテクノロジとソリューションが多数披露された。デルでは、従来のITと新しいITを支えるソフトウエア指向の共通基盤、それに向けた考え方、ソリューションを「Future-Ready Enterprise」というコンセプトでまとめている。
Future-Ready Enterpriseでは、従来のITについては「ワークロード対応」と「仮想化基盤対応」の2点が、新しいITについては「Software-Defined」「クラウド対応」「ビッグデータ最適化済み」の3点がポイントになる。それぞれで実現すべき目的を簡単にまとめたのが以下だ。
このFuture-Ready Enterpriseのポイントは、プライベートクラウドの構築にも大きく関わってくる。例えば、サーバーについては、仮想化基盤やクラウド対応は欠かせない技術だ。また、ネットワークやストレージ、運用管理についてはSoftware-Definedが大きなインパクトを持つことになる。具体的にどんなソリューションを提供しているのか。以下で、プライベートクラウドに関する注目のセッションを振り返ってみよう。
プライベートクラウドを含めたデルの仮想化、クラウドソリューションを把握する上で参考になるのが、エンタープライズソリューションズ統括本部エンタープライズソリューションズ&アライアンス クラウドビジネス開発マネージャ 増月孝信氏による、セッション「進化型クラウドと革新型クラウド:選択のポイント」だ。
増月氏はまず、先に挙げたFuture-Ready Enterpriseの考え方や目標を紹介。そこで重視しているのは「従来のように技術のトレンドを追うだけではなく、ビジネスとして最も重要な課題は何か、そのためのソリューションは何かという視点への発想の転換」だとした。その上で、従来のITと新しいITへの取り組み方について、次のようにアドバイスした。
「企業はそれぞれのITの交差点に立っており、そこをどう進んでいくかは、100社あれば100社で異なるものになっても不思議ではありません。重要なことは、時代の転換期に立っていることを認識すること。また、そうした中にあって、将来に備えてどういう方向を考えていくべきかを決めることです」
講演のタイトルである進化型クラウドと、革新型クラウドというのは、それぞれ従来のITにおける取り組みと、新しいITにおける取り組みを指している。具体的には、仮想化基盤を進化させてプライベートクラウドを構築していくアプローチと、新しいクラウドの技術を導入することによって既存環境を革新させるアプローチになる。どちらのアプローチが優れているというものではなく、業務やワークロードに応じて、両方のアプローチを取り入れていくことがポイントになる。
デルでは、これら二つのアプローチを適切に採用できるように、ソリューションを大きく「Reference Architecture」と「Engineered Solutions」の二つに分けて提供している。Reference Architectureは、推奨する機器のモデルや構成例を提示して効率よく導入できるようにしたソリューションだ。一方、Engineered Solutionsは、機器を事前にセットアップしすぐに利用できるようにして提供するソリューションだ。
デルでは「Dell Blueprints」と呼ばれるワークロードごと(仮想化・クラウド、データ分析、VDI、H/TPC)に最適化したソリューションの「青写真」を作成しており、その具体的な実装が、Reference Architectureと、Engineered Solutionsになる。
具体的には、拠点向けのコンパクトなデータセンターを構築できる「PowerEdge VRTX」と仮想化基盤「Hyper-V」を使ったソリューション、高密度ハイパフォーマンスなコンバージドインフラを構築できる「PowerEdge FX2」とスイッチ「S4810」ストレージ「SC4020」を使ったソリューション、VMware vSphereやVSANを使ったハイパーコンバージドインフラ「EVO: RAIL」などだ。
それぞれのソリューションについては、講演中に機能の詳細や効果を含めて紹介されているので、ぜひ動画を確認いただきたい(動画一覧はこちら)。
プライベートクラウドに関するソリューションのなかでも、新しい技術として注目できるものの一つがコンバージドインフラだろう。「次世代ITのシンプル化を実現するコンバージドソリューション」では、エンタープライズソリューション&アライアンス エンタープライズテクノロジストの日比野正慶氏が、PowerEdge FX2を使ったコンバージドインフラの詳細を紹介した。
日比野氏はまず「コンバージドインフラ導入において、ユーザーは三つの課題を抱えている」と指摘した。
一つ目は、初期投資が掛かり過ぎることだ。コンバージドインフラは、ストレージやネットワーク機器を筐体に統合しているため、一般的なラックサーバーに比べて高価になる。初期投資の高さがネックになり、予算獲得が難しくなることも少なくない。
二つ目は、構成の自由度が低く、既存システムの移行が困難であることだ。コンバージドインフラはベンダー指定のものしか使えないケースが多く、既存のラックサーバーやPCIカードの流用はできない。CPUについても、例えば2ソケットのものしか対応しないなど、CPUに合わせて構築したアプリケーションの移行ができないといったケースもある。
三つ目は、ワークロードの多様化に応じて、プラットフォームが乱立しがちなことだ。例えば、Web特化型、VDI特化型、ビッグデータ分析向け基盤などをそれぞれ導入することになると、運用管理コストも高くつくことになってしまう。
「そこで提案したいのが、ブレードサーバーの密度と管理、ラックサーバーの柔軟性を兼ね備えたプラットフォームです。デルでは、PowerEdge FX2を使って、さまざまなワークロードに適したプラットフォームを柔軟に構築できます」(日比野氏)
PowerEdge FX2は、モジュラー型のアーキテクチャを採用していることが特徴の一つだ。筐体の中でストレージとサーバーの配置などを柔軟に組み合わせられる。4種類のコンピュートノードと高密度ストレージノードの組み合わせ方次第で、あらゆるワークロードに適したインフラを構築できる。サイズも2Uとコンパクトで、必要なノードだけを追加できるため初期投資も抑えられる。
講演では、日比野氏が具体的にどのようなワークロードでどういったモジュールを組み合わせればいいか、実際にどんな効果が得られるかを詳しく解説。さらに、仮想化・クラウドのReference Architectureと、Engineered Solutionsの全容を解説している。詳細は講演動画を確認いただきたい。
コンバージドインフラと並んで、プライベートクラウドの構築に関わる大きなトレンドの一つが「ソフトウエアデファインド(Software-Defined)」だろう。ネットワーク領域でのSDN(Software-Defined Network)から、ストレージ領域(Software-Defined Storage)、最近ではデータセンター(Software-Defined Datacenter)にまで適用範囲が広がりつつある。
実はデルはこの分野における先進的なベンダーだ。特にネットワーキングでは、Open Networkingを提唱して、さまざまな取り組みをリードしている。セッション「デルが目指す次世代ネットワーク基盤 Open Networking の全貌」では、その取り組みの全容が明らかにされた。
講演を行ったデル ESG エンタープライズ・プロダクトセールス・グループ ネットワークセールスグルーブ部長の草薙伸氏はまず、現在のネットワーキングの世界には、プロプライエタリな管理ツール、無数のプロトコル、プロプライエタリなOS、プロプライエタリなASICといった課題があることを指摘した。
「デルはこうした課題に対し、入手しやすいCPU、オープンスタンダードなハードウエア、オープンなOS、オープンなSDN、NVOコントローラーを推進しています。その上で、標準的なオーケストレーションと自動化ツールを提供しています。サーバーの世界で起こった仮想化によるパラダイムシフトと同じことをネットワークの世界で起こそうという取り組みです」(草薙氏)
これは、いわゆる「ホワイトボックススイッチ」上で、広く用いられているLinuxをベースとしたツールを使って、包括的で一貫したデータセンターソリューションを展開していこうという取り組みだ。例えば、CPUとしてはブロードコムやインテルのアーキテクチャを採用し、OSにLinuxベースの「Cumulus Networking OS」や「Switch Light OS」を選択できる。デル自身も「Dell Networking OS」を提供する。
これらを使って、モニタリングネットワークやEthernetファブリック、MPLS対応など、デルのOSだけでは対応できないテクノロジを、さまざまなパートナーと連携してソリューション展開することがデルの大きな強みになっているという。
講演では、そうしたさまざまなソリューションや、デルが展開する100GbEにまで対応したスイッチ製品群を詳しく解説している。データセンターのネットワーク環境は、いま最も大きな変革が進んでいる技術領域の一つと言っていいだろう。デルのラインアップを理解できるのはもちろんだが、直近の複雑化するネットワーク周りの技術動向を押さえる上でも有効だ。
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提供:デル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2015年12月8日