全世界で運用している会社の“顔”でもあるWebサイトを、いかに遅延なく、安全に利用可能にするか。ヤマハ発動機の挑戦を追った。
バイク/スクーターをはじめとするモーターサイクル製品や船舶、スノーモービルなどの製品でおなじみのヤマハ発動機。近年では車椅子やプールなど、モーターサイクル以外にも実に幅広い製品を取り扱っている。また同社は日本を代表するモノ作り企業であるだけでなく、全売り上げの中で海外が占める割合が実に9割になるグローバルメーカーとしても知られる。
同社では、グローバルビジネスを推進していく上で、1990年代からWebサイトを積極的に活用してきた。しかもそのやり方は、他の企業とは大きく異なる独自のものだったという。ヤマハ発動機 企画・財務本部 プロセス・IT部 IT技術戦略グループ 主務 原子 拓氏は、次のように説明する。
「北方の国・地域ではスノーモービル、南方ではマリンといったように、世界中の国や地域、あるいは季節によって売れ筋の製品が異なる。このためWebサイトも、国・地域ごとに訴求製品が異なり、世界共通というわけにはいかない。ブランディングサイトだけは世界共通にしているが、製品サイトに関しては現地に構築・運用を任せており、現時点では131ものWebサイトがある」
本社の広報部門がこれらWebサイトを統括する立場にあり、さらに原子氏が所属するプロセス・IT部がIT面におけるガバナンスを担当しているという。ヤマハ発動機のシステム構築・運用を手掛けるヤマハモーターソリューション ITサービス事業部 ITサービス企画部 部長 浅野哲孝氏によれば、海外で運営されているWebサイトに関するさまざまな取り組みの中でも、特にパフォーマンス改善には長らく力を入れてきたという。
「当社は海外でモータースポーツに参戦していることもあり、『スピード』が重要なブランドイメージになっている。従って、ライバルメーカーよりWebサイトのパフォーマンスが劣ることは、即座にブランドイメージの低下につながる」。浅野氏はこう断言する。
そのためヤマハ発動機では、10年以上前からCDN(コンテンツデリバリーネットワーク)サービスを導入し、海外製品サイトのパフォーマンスを向上させる取り組みを進めてきた。これらは一定の成果を収めてきたものの、当初採用したCDNサービスではパフォーマンスが頭打ちになるケースも出てきた。
この辺りの事情について、ヤマハ発動機 企画・財務本部 プロセス・IT本部 IT技術戦略グループ IT技術担当 主査 稲垣 徹氏は次のように説明する。「例えば、世界共通のブランディングサイトは、世界中に配信する必要がある上、パフォーマンスがブランドイメージに直結するため、極力パフォーマンスに優れるCDNサービスを選んだ」
最もパフォーマンス向上が必要とされていた発展途上国のWebサイトに対して適用されているのが、ベライゾンジャパン(以降、ベライゾン)が提供する「ベライゾンデジタルメディアサービス(VDMS)」だ。同サービスは、世界最大級のティア1(インターネットの最上位のバックボーンネットワークを持つ)通信事業者であるベライゾングループがその優位性を生かして提供する、バックボーンネットワークに直結した高速CDNサービスで、1万社以上の企業が利用している。
原子氏は、「世界中に幅広く、多くのアクセスポイントが設けられているので、当社のようにさまざまな国・地域でWebサイトを運営しているケースには特に適している。さらにコストもさほど高くない」と、VDMSを評価する。
また稲垣氏は、VDMSの柔軟な運用性も高く評価する。「他のCDNサービスの中には、ユーザーが直接設定を変更できないものもある。一方、VDMSは管理ポータルがユーザーに開放されており、われわれが直接設定を変更できる。製品サイトやブランディングサイトはお客さまが直接利用されるものだけに、何か問題が起こった際には一刻も早く対処したい。その点、システムインテグレーター(SIer)を介さず自分たちで直接対処できるVDMSは重宝している」
現在ヤマハ発動機では、海外に展開するWebサイトの中でも、現地のインフラの制約上、なかなかパフォーマンスを発揮することができなかったWebサイトに対してVDMSを適用し、大幅なパフォーマンス向上を実現しているという。かつて、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)で「ヤマハ発動機のWebサイトは遅い」との書き込みがあった地域でも、今ではライバルメーカーのWebサイトに負けないパフォーマンスを発揮しているとのことだ。
「マーケティング部門では、SNSでのお客さまの声に常に耳を傾け、敏感に反応している。その点、それまでWebサイトのパフォーマンスが不評だった地域では、VDMSを適用することでそうした書き込みがピタリと止んだ」と、原子氏は説明する。「少し前までCDNサービスのベンダーは大手1社の一人勝ちのような状態だったが、今では多くのベンダーが参入し、それぞれに強みや特徴を発揮している。従ってパフォーマンスやコスト、セキュリティといった要件を考慮して、適材適所で使い分けるのが賢明だと考えている。特に、世界中に広くサービスを展開しつつ、パフォーマンスとコストのバランスに優れるVDMSは、グローバルにWebサイトを運営する上で極めて広いニーズに合致するサービスだと感じる」(同氏)
グローバルサイト運営においては、セキュリティ対策も重要な課題だ。特にここ最近はWebサイトへの攻撃がますます激化している。ヤマハ発動機も例外ではなく、かつてはサイト改ざんなどの被害にも度々遭ったという。同社ではこれまでクラウド型WAF(Webアプリケーションファイアウオール)による防御策を講じてきたが、ゼロデイ攻撃など高度な攻撃を受けた際の迅速な対応を可能にするために、ベライゾンが提供する「セキュリティインシデント対応支援サービス(Rapid Response Retainer)」の採用に踏み切った。浅野氏は、同サービスを採用した理由について「とにかく“グローバル対応の強さ”に尽きる」と述べる。
ヤマハ発動機ではかつて、海外サイトでインシデントが発生した際、浅野氏などのスタッフが現地に飛んで調査に当たったこともあった。今日の標的型攻撃ではそうした対応では間に合わないし、フォレンジック調査のような高度な調査はユーザー企業単独では手に負えない。「その点ベライゾンのセキュリティインシデント緊急対応支援サービスは、世界中にいる同社のセキュリティエンジニアが即座に現地に飛んで対応してくれるし、世界的に知名度が高いベライゾンのエンジニアであれば、どこの拠点でも高い信頼感を持って迎えられる」と、同氏は評価する。
幸いなことに、現在に至るまでベライゾンの現地調査サービスを使う機会はなく、原子氏はセキュリティ対応においては「いざというときへの備え」が何より重要だと力説する。「グローバル対応の体制を自前で整備するには、膨大な手間とコストが掛かり、ほぼ不可能だと言っていいだろう。そのことを考えれば、同サービスの費用は驚くほどリーズナブルだと思う。何より、同サービスを採用した後は事前の備えをかなりの部分任せられるようになったため、セキュリティ以外の仕事により注力できるようになった」(同氏)
ヤマハ発動機は、組織内CSIRT(情報セキュリティインシデント対応チーム)を立ち上げ、社外とも積極的に情報を交換しているが、ベライゾンのセキュリティインシデント緊急対応支援サービスをCSIRT活動におけるフォレンジック調査サービスの一部として活用している。「やはりこれからのセキュリティ対策は、“やられること”を前提に考えていかないといけないだろう」と原子氏は語り、セキュリティ対策の手を緩めない考えだ。
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