第41回 「何とかなる」ではなく「何とかする」――思わず口にした「辞めます」の先にあったものマイナビ転職×@IT自分戦略研究所 「キャリアアップ 転職体験談」

「転職には興味があるが、自分のスキルの生かし方が分からない」「自分にはどんなキャリアチェンジの可能性があるのだろうか?」――読者の悩みに応えるべく、さまざまな業種・職種への転職を成功させたITエンジニアたちにインタビューを行った。あなたのキャリアプランニングに、ぜひ役立ててほしい。

» 2016年04月28日 10時00分 公開
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 マネーフォワードのエンジニアとして働く細谷直樹氏は、ITの力で誰もが簡単に家計簿をつけられることを目指したサービスの開発を行っている。2010年より金融系SI企業で「ITコンサルタント」として活動していた彼は、自ら発した言葉をきっかけに転職を経験する。

 学生時代に目指した仕事についたはずが、次第に大きくなる「もやもや」。それを細谷さんはどう捉え、どう変えてきたのか――転職に踏み切ったそのきっかけと、現在の思いを聞いた。


【転職者プロフィール】
細谷直樹さん(30歳)

マネーフォワード エンジニア(2015年6月入社)

【転職前】
大手SIerで、金融系ソリューションの企画〜導入まで担当
 ↓
【転職後】
マネーフォワードで「自動家計簿・資産管理サービス」の開発を担当。アプリ開発のみならず、サービス企画や戦略設計など、多方面で活躍している

物理専攻の学生が“意識高いITコンサル”を目指した結果

 細谷さんは、大阪の大学院で物理学を学んでいた。大学院まで進学した人は、メーカーか研究職に就くのがベーシックとされている分野だ。

 「ふと、自分はいったい何をやりたいんだろうと考えました。そこで『エンジニア』に興味があったので、プログラミングの経験はないけれど、メーカーではないところに行こうと考えました」と振り返る。

 頭にあったのは「ITコンサルタント」というキーワードだった。「今から考えると“意識高い系”だったと思います。職業については、ふわっとしたイメージがあったくらいです」と細谷さんは話す。

 細谷さんが考えていたITコンサルタントは、このようなものだ――「問題を抱えているクライアントがいて、その問題に対して解決案を提案する」。実際に入社した企業も、金融系の「ITコンサルティング」を行う企業だった。

 「しかし実際には、『SI事業者』そのものでした」。

 その企業は、銀行や証券会社などのクライアントに金融関係のシステムを提供していた。企画、要件定義から開発、保守運用まで全て行う。細谷さんが最初に配属されたのは、エンドユーザーが直接操作する「取引システム」を作る部署だった。「クライアントのシステムの安定稼働が最重要であり、技術的なチャレンジはなかなか行えず、レガシーな技術を使い続けることがほとんどでした」と振り返る。

希望に近い仕事、しかし次第に大きくなる「もやもや」

 「ITコンサル」という肩書きと、実際に行っている「システムインテグレーション」の気持ち的な乖離(かいり)は、日に日に大きくなっていく。最初の1,2年こそ吸収できることが多かったものの、それなりに理解できたら、少しずつ興味が薄れていったという。エンジニアとしての力量は周囲に認められており、社内からの期待は大きかったものの「正直、それほど面白くなくなってきてしまいました」。

 「その会社で求められていたのは、プログラミングでアウトプットすることよりも、多くの人をうまく使ってチームを動かし、レバレッジを効かせることでした」と細谷さんは述べる。細谷さんも徐々にプログラミングから離れていき、チームのスケジュール管理やクライアントとの調整などが仕事の中心になってくる。

 「もちろん、ユーザーの課題を深掘りして解決するという部分に面白さは感じていましたが、技術的な部分に力点が置けなくなっていきました」と細谷さんはつぶやく。

 「『ITコンサルとはそういうものではないか』とも思いましたが、そのときにやっていたのは『クライアントが欲しいと言ったものを単に作るだけ』に見える部分もありました。それも予算でできる範囲で返すことも。会社としては得をしていたかもしれないけれど、クライアントは得をしていたのだろうか? と自問自答していました」

 クライアントから要件を聞いていると、解決すべき課題が見えることがあった。しかしそれを解決するにはステークスホルダーが多過ぎる――「それを押し通すには時間もコストも掛かり過ぎてしまう。受託稼業の限界にぶつかり、徐々にもやもやとした思いが大きくなっていきました」。

 社会人3年目、細谷さんは大きく悩む。そこに大きな転機がやってきた。

思わず口に出た「辞めます」をきっかけに

 きっかけはとあるプロジェクトだったという。FXの取引画面を大きく刷新するプロジェクトに参加した際に、プロジェクトリーダーが「最新の手法・技術を使い、ユーザーが望むものを作ろう」と、これまでにないメンバーが集められたのだ。

 「スクラム、リーンスタートアップ、デザイン思考などの手法を使い、Node.js、Redisなどの最新の技術も使えました。このプロジェクトに参加して、自分のやるべきこと、やりたいことが明確になりました」と細谷さんは振り返る。「ユーザーを見るべきだ」――細谷さんのモヤモヤを解消する鍵だと直感したという。

 そのプロジェクトは無事、成功を迎えた。他のプロジェクトとは大きく異なる“回し方”はとても楽しく、細谷さんは大いに刺激を受けたが、残念ながらその手法はその後社内に展開されることはなく、また、これまでのもやもやの日々が戻ってきた。

 「おそらく、変化を受け入れられるような組織のサイズを超えてしまっていたのでしょう」

 そこで細谷さんは、極端な行動に出る。いきなり上司に「辞めます」と宣言してしまったのだ。転職先が決まっているどころか、転職活動すら行っていなかった。

 しかし、自ら発した「辞めます!」という言葉こそが、自分を動かすきっかけになったという。起業した知人の会社の手伝いをしたり、つてを頼って面白そうな企業に話を聞きに行ったりを繰り返した。その中の1つが、現在細谷さんが在籍する「マネーフォワード」だった。

何とかしよう、そして「冒険しよう」

 細谷さんはマネーフォワードの自動家計簿・資産管理サービスを使っていて、サービスによって自分の行動が変わるという衝撃を受けて、自分も何か関わりたいと感じていた。そこで、自分のスキルを同社の知人に正直に話して相談したところ、ちょうどいいポジションに空きがあり、転職することになった。

 細谷さんは当初、開発推進担当として入社するが、後にスマホアプリの開発チームに異動となり、現在に至る。スマホアプリの開発経験はなかった。しかし「“何とかする”自信があった」と話す。

 「何とかしてほしい」「何とかなるかも」ではなく「何とかする」。これは、自分が行動し、未来を“確実”にする自信と決意がないと出てこない言葉だ。

 「当初は勢いで“辞めます!”と宣言しましたが、それがきっかけになって、考えをシフトチェンジできました。辞めようと思って吹っ切ったのなら、これまでとはとことん違うことをやろうと思えました。考え方が吹っ切れたのと同時に、モヤモヤしていた“自分”にも吹っ切れたのです」。

 そこから、細谷さんは「冒険を楽しもう」という考えを持つ。エンジニアとは、ユーザーの「困った」を「何とかする」のが仕事。だったら、これまでの何とかする、何とかしてきた経験を活用して、問題を解決していこう――不安はありつつも、「せっかく環境を変えて、未経験の分野にチャレンジしたのだから、何でもやらないと!」と変化を楽しむことにした、という。

 「毎日が楽しいです。朝、普通に『会社行こう!』と思えるし、ずーっと仕事のことを考えていられる。仕事と私生活の境目が少なくなっているみたいな状態です。いったい何なんでしょうね(笑)」

ボール拾いのプライド

 2015年6月にマネーフォワードに転職して1年弱、細谷さんの業務は徐々にプログラミングにかける時間を減らし、マネジメントやディレクションに費やす時間を増やしているという。しかし、マネジメントに対する考え方は、これまでとは異なるようだ。

 「以前はクライアントにシステムを納品することがゴールであり、目的でした。納品したシステムが実際にどう使われているのかは、請け負いの立場では分かりません。しかし今は、ダイレクトにユーザーからのフィードバックが来ます。作って終わりではなく、納品こそが“スタート”なんです」と述べる。

 1つ1つのプロジェクトのサイクルがとても速く、おのずとフィードバックが受けられる頻度も高い。ユーザーとの距離が近いことも楽しいことの1つだという。

 今後、細谷さんはどういうキャリアを考えているのだろうか。

 「正直、時代の流れが速いので遠い将来を考えてもしょうがない。だから考えない、が僕にとっては正しいのかもしれません」と細谷さんは述べる。キャリア構築もアジャイルな時代が来た。

 「この会社に来て、スマホアプリの開発にも携わり、マネジメントも経験できています。ディレクションや企画もできて、先日は、UXデザインにも関われました。サービスに関わることなら何でもやって、それぞれの道が楽しいと思える。どれかになるぞ! ということはなく、どれも関係していたいのです」

 今、細谷さんは「自分は主役じゃなくてもいい」と考えている。自分は“ボール拾い”と見られてもいいと言うのだ。

 「『この分野に関して絶対の自信がある』なんていう領域が自分にはないんです。そういうのは、その道のプロやトッププレイヤーが社内にいるので、その人に最大限やってもらう。その人がまっすぐ目を向けて作業ができるよう、こぼれた部分を自分がサポートする。それがチームや会社全体の高いアウトプットにつながればと思っています」

 これまでは組織の壁が大きかったという。「今はリスペクトできる同僚が“すごい”仕事をしてくれます。“チーム”でやっている意識を感じます」と述べる。

 思わず口にした「辞めます!」が、いまの細谷さんを形作っている。普通ならば「何とかなるさ」と言いそうな場面で、ふと出てきた言葉は「何とかする」だった――ふと出てくる言葉には、実は大きな意志やチャンスが隠れている。もやもやを吹っ切るきっかけは、意外なところに隠れているのかもしれない。細谷さんの事例をきっかけに、多くのエンジニアが自分の思いに気が付いてくれるとうれしい。

採用を担当した中出さんに聞く、細谷さんの評価ポイント

 細谷さんは前職が同じであったため、人となりを把握していましたので、自信を持って採用できました。

 採用に至ったポイントは以下の4点です。

  • 複数のミッションをこなす器用さと新しい分野に対するキャッチアップ能力があること
  • 開発だけではなく、サービス維持や安定運用のための行動基準が身についていること
  • 十分な情報がなくとも自分で考えて問題・課題解決に向けて行動できること
  • 情熱を外に出すタイプではないが、実は熱意もあって責任感があること

 これからはプロフェッショナルとしての個人のアウトプットだけではなく、チームとしてのアウトプットを向上することにコミットして、より大きな貢献をしてほしいです。

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提供:株式会社マイナビ
アイティメディア営業企画/制作:@IT自分戦略研究所 編集部/掲載内容有効期限:2016年5月31日

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