共同開発3社が語る、ハイパーコンバージドシステムVxRailの知られざる実像EMC、VCE、ヴイエムウェアが投入

ハイパーコンバージドシステム製品は、どれも同じなのか。パブリッククラウドとはどのような関係になるのか。EMCのVxRailは、何を目指した製品なのか。同製品を共同開発した3社の専門家に聞いた。

» 2016年05月13日 10時00分 公開
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 EMCジャパンが2016年3月に国内発売したハイパーコンバージドシステム製品「VCE VxRail Appliance(以下、VxRail)」。発売当初から問い合わせが相次ぎ、「EMCジャパンにおいて、2009年にスタートしたコンバージドインフラ製品で製品発表から最も引き合いの強い製品」とEMCジャパンのコンバージドプラットフォームディビジョン ハイパーコンバージドアプライアンスリードである小川高寛氏は話す。

 ハイパーコンバージドシステム製品は、どれも同じではないのか。VxRailは何を目指した製品なのか。企業の情報システム部門が、VxRailに期待できることは何か。パブリッククラウドとはどのような関係になるのか。同製品を共同開発した3社でVxRailに関わる、EMCジャパンの小川氏、ヴイエムウェアのチーフエバンジェリストである桂島航氏、VCEテクノロジー・ソリューションズのvアーキテクトシニアマネージャーである三邉祥一氏に聞いた。(聞き手:アイティメディア 三木泉)

――ハイパーコンバージドシステム製品では、一般的にストレージソフトウェアが製品選択の重要なポイントになります。VxRailではヴイエムウェアの「Virtual SAN(以下、VSAN)」を採用していますが、VSANとはどういうものなのかを教えてください。

ヴィエムウェアのチーフエバンジェリスト、桂島航氏

桂島氏 VSANの目的は、サーバ仮想化との緊密な統合の下で、ストレージを仮想化し、リソースプール化し、自動化して提供することです。これは、一般的なソフトウェアストレージと根本的に異なるポイントでもあります。

 VSANを発表してから2年経ちますが、既に3500社以上のお客さまがいます。最も成功しているソフトウェアストレージ製品の一つだといえます。これだけ多くの企業に採用されている理由としては、性能、コストに加え、VMware vSphereとの親和性による管理の容易さが挙げられます。

 VSANはvSphereに組み込まれています。ライセンスを有効にするだけで、すぐに使えます。管理も容易です。vCenterの管理ツールだけで、vSphereとVSAN両方の設定と運用管理が一体的に実行できます。管理といってもストレージの専門知識は不要で、vSphereのクラスタを組むだけで使えます。運用における敷居の低さは、VSANの大きな魅力です。

 日本国内のある金融機関では、VSANを使い、ディザスタリカバリ(災害対策)システムを運用しています。運用は、新卒入社後間もない新人の方が1人で担当しています。また、岡山県の万成病院では、病院の方が専門知識なしに運用できるストレージとして採用されました。

 スピードも重要な要素です。導入時点で予見したストレージ需要に基づいてVSANを構成し、その後はデータ量の増加、あるいは性能ニーズの高まりに従ってノードを増やすだけで、即座に増設が可能です。こうした特性のため、特にデスクトップ仮想化(VDI)やサービス事業者における採用が増えています。

――そのVSANをベースに、EMC、VCE、ヴイエムウェアの3社が共同開発したのが今回のハイパーコンバージドシステム「VxRail」というわけですね。どういう経緯で生まれたのでしょうか。

小川氏 時間を掛け、システムをSIで構築するしか選択肢がなかった時代は終わり、クラウドやサービスの活用が進んできました。こうした時代にマッチするITインフラの選択肢の1つとして、汎用的なハードウェアに基づき、短期間で展開できるようなシステム、小さく始められるシンプルなシステムが求められるようになってきました。これが「ハイパーコンバージドシステム」です。

EMCジャパンのコンバージドプラットフォームディビジョン ハイパーコンバージドアプライアンスリード、小川高寛氏

 EMCは専用ストレージ装置を提供してきましたが、新たなユーザーニーズに率先して応えるため、自ら主体となり、ヴイエムウェアのVSANという優れた製品を用い、これまで統合インフラシステムを展開してきたVCEの知見をフルに生かして、VxRailを共同開発しました。EMCジャパンが一括してサポートを提供します。

 コンセプトは新しいですが、構成要素としては、汎用のサーバハードウェアに、実績の十分な、成熟したソフトウェアを搭載しています。専門家のいない環境でも、安心して使っていただけることを念頭に開発しました。全て自分たちのソフトウェアですから、自信を持って提供できます。サポート窓口も一つです。

 具体的には、ヴイエムウェアによる仮想化ソフトとしてvSphere、ストレージソフトウェアとしてVSAN。これに、業務担当者の方でもサーバ仮想化インフラの運用ができる管理インターフェースの「VxRail Manager」を、3社で共同開発して組み合わせています。

 仮想化環境の初期導入、増設、日常的な利用は、VxRail Managerだけでできます。機材が届くと、ウィザードを通じた設定で、15分以内に仮想化環境を立ち上げられます。増設時は、ネットワークに接続し、仮想環境を立ち上げるとVxRail Managerが新しいアプライアンスを自動で認識するので、あとは5分程度で拡張が行われます。日常の仮想マシン作成も、ウィザードで専門知識なしに実行できます。VxRailの健康状態は、高度な自動分析システムにより常時可視化され、何らかの異常が見られた場合には、EMCにご連絡いただければすぐに対応します。

――日本では、主にどのような用途で、どのように使うためにVxRailが採用されていくと考えていますか?

VCEテクノロジー・ソリューションズのvアーキテクトシニアマネージャー、三邉祥一氏

三邉氏 ITインフラの調達と展開のスピードアップで活用していただけると考えています。これまで日本の企業の多くは、新しいシステムの導入で、例えば6カ月、1年といったリードタイムを見込んでいました。もともとそういうものでしたから、疑問に思う方は少なかったと思います。

 ところがこの数年、ビジネスのスピード化が進み、システムについてもすぐに立ち上げなければならない、これまでの考えでは、競争に勝ち残っていけないということを、実感し始めるお客さまが急速に増えてきました。そこで、VxRailのような製品を使い、仮想化環境をスピーディに構築するケースが、目立つようになっていくと思います。

小川氏 私は2通りの使われ方を想定しています。まず、全社データセンターでVMware vSphereを導入していて、支社や支店に同様なインフラを展開したいケースです。バックアップをはじめとした運用ポリシーを標準化したいときに、支社、支店のvSphere環境を全社データセンターと容易に統合できる、VxRailのような製品が求められます。

 もう一つは、これからvSphereを使い始めたいが、運用管理が大変なのではないかと心配されている組織における導入です。本格的な環境を簡単に利用したいと考える中小企業や、運用管理者がいない組織、こうしたところが最も大きな市場になると思います。

――日本では、ある程度大きな企業の情報システム部門で、サーバ更改にかかわる作業の負担が大きく、こうした作業をやり続けていたくないという理由で、パブリッククラウドサービスへの移行を考える人々の話をよく聞くようになってきました。

三邉氏 もちろん、パブリッククラウドという選択肢もあります。ただし、お客さまからは、例えば仮想マシン300台といった規模になると、データ保護対策やネットワーク回線費用、運用管理に関わる費用を考えると、コストが下がらないと言われます。一方、社内で運用すれば、性能についてはパブリッククラウドに比べて高いSLA要件を満たせます。データをできれば外に出したくないというニーズにも応えられます。

 ユーザー部門によるシャドーITは、最終的な責任の所在が曖昧になってしまうという課題があります。そこでVxRailを、情報システム部門がユーザー部門におけるシャドーIT的なニーズに応えるために、活用できます。

小川氏 パブリッククラウドとハイパーコンバージドシステムは、根本的な価値が似通っています。インフラ管理では、情報システム部門の方々が大変な思いをしてきました。この2つはどちらも、そうした管理の部分を簡素化して、差別化のためのIT活用にお金やリソースを回していくことができるようになります。スピードについても同様です。ユーザー部門がパブリッククラウドを求めるようになったのは、ビジネス的に何かをやりたいときに、それをすぐに始められるからです。ハイパーコンバージドシステムでも、同様にスピードを飛躍的に高められます。VxRailの導入は大企業ではエッジの部分から始まりますが、情報システム部門の管理する全社データセンターも変えていく可能性があると思います。米国で情報システム部門がVxRailを導入する場合も、小さく始めて効果を確認し、利用を拡大するケースが非常に多いそうです。

――改めて、ハイパーコンバージドシステム製品が増えてきているなかで、顧客がVxRailを選ぶべき理由は何だと考えていますか?

桂島氏 既存のvSphere環境をお使いの方々が、ハイパーコンバージドシステムへ円滑に移行できるというのが、VSANの良さであり、VxRailの良さだと思います。vSphereの機能を今までと同じように利用できます。また、仮想マシンとして動作するソフトウェアストレージ製品に比べ、VSANは性能面で圧倒的に有利です。ソフトウェアアップデートについても、vSphereと完全に一体化していますので、お客さまが組み合わせを気にする必要はありません。

 それでも、ソフトウェアストレージ製品は新しいので不安だと思われる方がいます。だからこそ、専用ストレージ装置の世界で確たる実績を持つEMCがハイパーコンバージドシステムを出したことは、大きな意味があると思います。これまでEMCのストレージ製品を使ってきたお客さまにとって、大きな安心材料になるからです。

三邉氏 これまでのITインフラは、複数ベンダーによる各種製品の多様な組み合わせで構築されていますから、パッチ当て一つをとっても、整合性の検証が大変です。一方、VxRailでは、全てのソフトウェアがEMCとVMwareの製品で構成されており、標準化されています。EMC、VCE、ヴイエムウェアが緊密な連携に基づいて一体的なサポートを提供するため、お客さまはこの製品が将来にわたり安定的に動き続けることに、安心していただける。これが最も重要だと思います。

 また、ハイパーコンバージドシステムでは、ストレージの通信がネットワークを経由するので、ネットワークスイッチも重要な要素です。VxRailでは、EMCがブロケードからOEM供給を受けて提供している「Brocade VDX」を採用していて、スイッチについてのサポートも一体的に提供します。

小川氏 EMCが提供してきたデータサービスソフトウェアを搭載することで、データ保護も統合し、利用シーンを広げていることも、VxRailの特色です。具体的には、使われなくなったデータを、自動階層化管理機能で遠隔拠点やクラウドのストレージに自動待避させて、VxRailのストレージの利用効率を高められる「EMC CloudArray」、仮想マシン単位で自動バックアップが行える「vSphere Data Protection」、仮想マシンの遠隔複製ができる「EMC RecoverPoint for VM」といった製品を組み込んでいます。

 ニーズによっては、さらにヴイエムウェアのネットワーク仮想化製品「VMware NSX」を組み合わせることで、遠隔拠点やパブリッククラウドに安心して接続できます。

 つまり、VxRailは「使いやすいが独自の閉じた世界を作り上げるようなもの」ではないのです。ハイブリッドクラウドへの展開という点でも、安心してお使いいただけます。

――パブリッククラウドを含めて選択肢が増えているため、今後のITインフラ投資をどうすべきか迷っている一般企業の方々は多いと思います。こうした方々に、VxRailについてはどういった点を注目してもらいたいですか?

桂島氏 ストレージベンダーであるEMCが、満を持してハイパーコンバージドシステムを出してきたことだと思います。当然ながら、これに採用されたソフトウェアストレージのVSANの完成度は高いといえます。従来、ストレージといえば専用ストレージ装置しか選択肢として考えなかった方でも、「EMCが自信をもって提供するというのなら検討したい」と考えていただけるのではないかと思います。最終的には、「手の掛からない安心できるITインフラが、非常に簡単に手に入る」ということを評価していただきたいと思います。

小川氏 ハイパーコンバージドシステム製品がここにきて急増し、一般企業の方々の関心も高まり、市場が盛り上がってきたことを、ひしひしと感じています。こういう時期に、新規性ばかりを狙うのではなく、実績のあるものを、新しい使い方で使えるようにしていることが、VxRailの最大の魅力です。この製品で、お客さまにおけるITインフラの選択について、明確な方向性が示せると思います。

 これまでは、「従来型のITインフラ製品かパブリッククラウドか」という2つの選択肢しかありませんでした。VxRailは、この双方の中間に位置する、新しい選択肢となる製品だと考えています。

三邉氏 VxRailは、お客さまの次のITインフラ投資へのブレークスルーポイントになると思っています。5年おきに将来を懸命に見通そうとしながら投資するスタイルから、スモールスタートをして、ニーズに応じて臨機応変に拡張していくスタイルへの変革は、今後の大きな流れです。ただし、個々のお客さまにとって、これが自社にとってどこまで現実的なのか、実際にどういう意味を持つのかは、導入してみないと分かりません。VxRailは数百万円台から導入できますので、この製品を、ITインフラ見直しのための入り口として活用いただければと思います。

小川氏 お客さまには、VxRailを少しずつ使いながら、変革を目指していただきたいと思っています。ハイパーコンバージドシステム製品だからといって、お客さまのニーズを型にはめようとすることのない柔軟な製品であるVxRailを通じ、EMCジャパンもお客さまと一緒に、最適解を探るお手伝いをしていきたいと考えています。

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