EMCジャパンによる、2015年度に優れた実績を上げたパートナー企業を表彰し、2016年度の製品・ビジネス戦略をパートナーへ示すイベント「EMC Business Partner Day 2016」が開催された。クラウド、ビッグデータ、IoT技術が普及し、取り扱うデータ量が爆発的に増えていく今後のデジタルビジネス時代に向け、EMCとEMCのパートナーは、その解決策をどう示し、どのように提供していくのだろうか。
クラウド、ビッグデータ、IoT技術の普及を背景に、企業が管理するデータ量が今、“爆発的”に増加している。企業のITインフラは、クラウドやソフトウェアデファインドの度合いがますます強まっていくことは間違いなく、企業の重要な資産である「データ」をどのように保存し、どう使っていけるかが、将来の企業価値を左右すると言われている。
こうした時代において、企業はどんなソリューション(解決策)を選択すべきか。また同時に今後のITシステムが、これまでのようにシステムの保守やコスト、効率性だけでなく、総じて「ビジネスを着実に成長させていくために必要な基盤」としての資質が求められている中で、ベンダーとベンダーSIerは、その解決策をどう示し、どのように提供していくのだろうか。
「キーワードは『モダナイズ』。“Platform 2”と呼ばれる既存システムのコスト効率を高める『ITトランスフォーメーション』と、“Platform 3”と呼ばれる、次世代のアプリケーションで企業競争力の向上を追求する『デジタルトランスフォーメーション』。EMCは、一見相反するテーマの変革を両軸で支援する」(EMCジャパン代表取締役社長の大塚俊彦氏)
2016年4月19日、セルリアンタワー東急ホテル(東京・渋谷)にてEMCジャパン主催のイベント「EMC Business Partner Day 2016 in TOKYO」が開催された。本イベントは、EMCのパートナー企業の営業担当者やマーケティング担当者、技術者に対して、EMCの最新製品やビジネス戦略の情報を提供するために毎年開催されている。
冒頭のEMCジャパン社長 大塚俊彦氏が語ったキーワード、「モダナイズ」は、コスト削減/省力化とともに、変化が速い市場環境の中で収益・ブランド向上を狙う「攻めのIT活用」を両立させる上で、今、多くの企業にとって、まさしく最優先課題となっているテーマだ。
EMCではこのテーマに対し、具体的には「オールフラッシュ」「コンバージドプラットフォーム」「ハイブリッドクラウド」という3領域を中心に、俊敏・高速かつ低コストを両立するビジネスプラットフォームを提供していく戦略を示した。
コンバージドプラットフォームについては、あらゆるシステム規模に適用できるというコンバージドインフラ製品、またストレージ内蔵型のハイパーコンバージド製品のラインアップがそろい、国内での導入事例も増えてきているという。
一方、EMCが「2015年度のキーワード」としてきた「オールフラッシュストレージ」については、「もはや、オールフラッシュ化の流れは止まらない。企業の意向がこれまでの様子見から、具体的に導入を検討する次のステージに移った」と、EMCジャパン 執行役員パートナー営業本部長の渡部洋史氏は説明する。
2016年現在、オールフラッシュストレージは、既に多くの企業導入実績がある「XtremIO」以外にも、基幹システム向けの大規模オールフラッシュストレージ「VMAXオールフラッシュ」、そして2016年3月に発表されたPCIe直結型フラッシュストレージ「DSSD D5」をラインアップする。さらに、企業向けオールフラッシュ製品の普及が加速すると期待される中小規模向けのオールフラッシュ新製品「UNITY」も近日の登場が予定されている。
渡部氏は、こうした状況を振り返り、「EMCジャパンは2015年度、日本市場において前年比2桁の成長を達成できた」と、“モダナイズ”に対するユーザー企業の導入意欲の高まりと、それを裏付けるビジネス実績を紹介。パートナー企業各社に対する協業体制への感謝を示した。
渡部氏はまた、「数々の製品をフックに、今後はパートナーさまとの密接な協業を通じてエンタープライズ市場はもちろん、2016年度はミッドマーケットにおいても新規顧客の開拓に力を入れていきたいと考えています」と強調。そのために2016年度は「新たな需要を喚起するためのワークショップやセミナーなど、さまざまな施策を展開していく予定です」と締めくくった。
本イベントでは、2015年度に優れた実績を上げたパートナー企業各社を表彰する「EMC Business Partner Award 2016」の結果発表と表彰式も行われた。「ビジネスリーダーシップ部門」「ソリューション部門」「特別部門」の3部門それぞれに設けられた複数のカテゴリーで、計14社のパートナー企業が賞を獲得した。
各賞の受賞企業は以下の通り。
2015年度のEMCのビジネスに最も貢献したパートナー企業1社が受賞する「総合部門 EMC Japan Business Partner of the Year 2016」は、4年連続で伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が受賞した。同社は国内トップとなる、前年を上回る取引目標額を達成し、EMCの国内市場の開拓に大きく貢献したと同社は評価。XtremIO関連の売り上げは前年比で約2倍、スケールアウト型NASである「Isilon」の売り上げも150%に伸ばし、EMCの製品ポートフォリオの拡充と強化に努めた結果がBusiness Partner of the Year 2016の受賞につながった。
CTC ITサービス事業グループ 製品・保守事業推進本部 本部長の西崎学氏は、以下のように受賞の謝辞を述べた。
「昨今、ITプラットフォーム製品のビジネスを取り巻く環境が厳しさを増す中、EMC製品に関してはEMCジャパンの協力の下、順調にビジネスを伸ばすことができました。なお、2016年度には新たな製品やサービスも続々登場すると聞いています。私たちもそれら新商品をいち早くキャッチアップして、引き続きEMCとの強固なパートナーシップの下、さらにビジネスを伸ばしていきたいと考えています。
また弊社は、2016年4月からは、2015年にEMCグループに新たに加わったVirtustreamとの提携をベースにしたエンタープライズ向けクラウドサービスの提供も開始しました。このように製品だけでなくサービス面においても、EMCさまとともに市場を開拓していきます」(西崎氏)
CTCは、長年にわたるEMCとの協業を通じて強固なパートナーシップを築き上げている。4年連続でのEMC Japan Business Partner of the Year受賞という結果を見るまでもなく、EMC製品を使ったソリューションでは国内屈指の実績とノウハウを持つベンダーとして知られている。
そんな同社は今、EMCとのパートナーシップを通じてどのようなビジネス戦略を描いているのか。CTC 取締役 兼 常務執行役員 ITサービス事業グループ担当役員 兼 CTOの大久保忠崇氏に話を聞いた。
── 4年連続でのEMC Japan Business Partner of the Year受賞となりました。率直な感想をお聞かせください。
大久保氏 大変光栄に思います。振り返ってみると、当初はデータセンター向けのオールフラッシュ製品「VMAX」を中心とした大型案件が中心でしたが、数年前から中小規模向けのハイブリッドストレージ「EMC VNX」の売り上げ台数が圧倒的に多くなりました。そして2015年度は、スケールアウト型NAS である「Isilon」の売り上げが一気に伸びました。このように4年連続といっても、ただ同じ製品を売り続けてきたわけではなく、そのとき、その業種、その企業に必要とされる製品を、市場環境の変化に応じてタイムリーにお客さまに提供してきました。これも、EMCさんが市場のニーズをいち早く先取りして、それに対応できる製品を素早く提供していただいたおかげだと思います。
── 2015年度のストレージビジネスの実績を踏まえ、オールフラッシュに対する現在の需要や顧客ニーズをどう見ていますか。
大久保氏 当初は「オンプレミスのストレージ製品の需要がクラウドに取って代わってしまうのではないか」という予測も立てていました。しかし、いざ蓋を開けてみると、売り上げが減るどころか、オールフラッシュ型のVMAXやVNXのビジネスが極めて堅調でした。ビッグデータやIoTをキーワードに、データを捨てずに自社内にどんどん溜め、データを活用することを見込んだ運用が一般化しつつあることが背景にあると見ています。
── 中でも重視したのはどんな分野やソリューションでしたか。
大久保氏 分散ストレージソフトウェア「ScaleIO」(汎用サーバをスケールアウト型の共有SANストレージとして利用できるようにするソフトウェア)を使ったSDS(Software Defined Storage)のソリューションを本格的に立ち上げることができたのが大きかったですね。
── SDSを求める顧客は今、どのような課題を抱えているのでしょうか。
大久保氏 SDSに関しては、具体的にどのような効果があるのか、まだ懐疑的な見方をするお客さまも少なくありません。しかし、特にビッグデータやIoTなど容量が増え続けるシステムでは、ストレージのキャパシティーを柔軟にスケールアウトしていけるSDS、すなわちScaleIOのメリットは大きいはずです。
── その解決策を示す、EMCとの協業で得られた成果や強みとは。
大久保氏 2015年度に、EMCさんの協力をいただきながら新しいアセスメントサービスを幾つか立ち上げました。その1つが「Custom Order Storage」です。ScaleIOを含めたSDS製品と汎用IAサーバを組み合わせて、お客さまの要望に応じた構成のSDS環境を提供するサービスです。お客さまのシステム状況や用途をヒアリングし、自社の検証データを基に構成することで、お客さまに最適なストレージシステムを提供できます。
また、2015年12月に、EMCさんを含むフラッシュストレージ製品の効果測定を行うサービス「フラッシュストレージラボ」も設立しました。もちろんこれまでと同様に、EMC製品の専属担当者を置いたり、EMCさんと共同でお客さまへの提案に当たるといった、弊社ならではの付加価値を付けた上でEMC製品を提供しています。
── デジタルビジネス時代に向けて、データセンターをモダナイズする必要性が叫ばれています。今後、これについてどのような価値を顧客に提供していきたいとお考えでしょうか。
大久保氏 2016年4月より、ミッションクリティカルシステム向けのIaaS(Infrastructure as a Service)「CUVICmc2」の提供を開始しました。このサービスのベースになっているのは、EMCグループのパブリッククラウドベンダーである「Virtustream」の技術です。IaaSでありながら、高セキュリティのガバナンスとパフォーマンスを保証します。また、「μVM(マイクロヴイエム)」と呼ばれる技術を使い、仮想マシンの実稼働時間をベースに課金する仕組みを取り入れるなど、これまでのIaaSサービスにはなかった特徴を備えています。今後はEMCさんの協力を仰ぎながら、このサービスの展開に力を入れていく予定です。
── ちなみに、大久保さんは今、どんな技術や製品に注目していますか。
大久保氏 個人的には、これまでにない高速/低遅延を実現するラック型フラッシュストレージ「DSSD D5」にとても注目しています。サーバのPCIeスロットにフラッシュを直結し、サーバとストレージを一体化する製品ですが、長らく当たり前だと思われてきた「サーバとストレージを分離して、ネットワークで結ぶ」というアーキテクチャに風穴を開けると期待しています。
例えば、IoT分野はいかがでしょう。センサーデータが大量に発生する工場などの現場で、大量のデータを高速かつ的確に管理するニーズが沸き上がってくるはずです。こうしたニーズに、DSSD D5はうまくマッチすると思います。
── これまでのエンタープライズ向けストレージの概念が、大きく変わる可能性がありそうですね。最後に、IT基盤のモダナイズに悩む企業、あるいはIT技術者に一言アドバイスをいただけますか。
大久保氏 DSSD D5のような、いわゆる「サーバサイドフラッシュ」や、SDSといった新しい技術が次々と登場してきています。ですから、ストレージ技術者もこれらを積極的に吸収していく必要があるでしょう。
その際に重要なキーワードとなるのが、やはり「ソフトウェア志向」だと思います。
SDSはもちろんですが、これからはストレージだけでなく、サーバやネットワークも含め、インフラの全てをソフトウェアで動的に制御する世界に向かうと見ています。ストレージ技術者もシステムのお守りだけではなく、これからはソフトウェアの技術を取り入れることが重要視されるようになってくるかもしれません。もちろん弊社もこうした動向をいち早く先取りしつつ、EMCさんと一緒に価値の高いソリューションをお客さまに届けていきたいと考えています。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2016年6月18日