市場変化が速い近年、ICTシステムにはイノベーティブな機能と変化対応力が強く求められている。これを実現する上では、ベンダーの事情に縛られず「本当にやりたいこと」ができるオープンソースソフトウェア(以下、OSS)の活用が欠かせない。だがとりわけ高度な信頼性・安定性が求められる企業システムのデータベースの場合、導入のハードルはひときわ高くなる。無理なく導入・活用するアプローチをPostgreSQLコミュニティの理事企業である富士通に聞いた。
ICT活用の在り方がビジネスの成否を決めることは、もはや当たり前となった。特に、市場環境変化が激しい近年は、基幹システムによって支えられる「既存のビジネス価値」に加え、市場ニーズの変化に応じていかにスピーディに“新しい価値”を創造できるかが、競争優位を大きく左右する。
そうした中で、今あらためてオープンソースソフトウェア(以下、OSS)が注目されている。OSSは2000年代から新しい技術をけん引し、企業が“新しい価値”を生み出す原動力になり続けてきた。特に昨今は「コスト削減」や「ベンダーロックインからの解放」というメリットも重視されている。こうしたOSSならではのメリットを使いこなすことは、ビジネスの変化に応じたシステムを、低コストかつスピーディに導入する上で不可欠になっているといえるだろう。
ただこうした潮流にある中で、データベースはやや遅れた状況にある。周知の通り、基幹システムで用いられるデータベースは、「Oracle Database」や「SQL Server」などのプロプライエタリソフトウェアのシェアが非常に大きい。なぜなら、これらのソフトウェアは高い信頼性・安定性を提供しているからだ。特に基幹系システムなどミッションクリティカルな領域においては、信頼性・安全性が何にも代えがたい前提条件となる。
富士通 ミドルウェア事業本部 データマネジメント・ミドルウェア事業部 プロダクト技術部 アシスタントマネージャーの佐野哲也氏は、こうした状況について次のように語る。
「市場環境変化が速い近年、ICTシステムには変化に対応できるスピードと柔軟性が強く求められています。加えて、例えばIoTサービスのように、大量データから瞬時に有効な知見を引き出す仕組み、その知見を自動的にアクションに生かす仕組みや、FinTechのように既存のサービス同士を連携させた全く新しいサービスなど、ビジネスの差別化に役立つイノベーティブな機能が強く求められています。これらに応えるためには、常に新しい技術を実現しており、ベンダー事情に左右されず、低コストで自由に導入できるOSSの積極的な活用が欠かせません。しかし多くの企業にとって、商用製品で構築された既存システムを、OSSを使ったシステムへと一気に切り替えるのは困難です。既存システムとOSSを使ったシステムをうまく連携させるためには、新しく作るシステムにOSSを利用し、徐々に目指すシステムへと変えていく必要があります。ビジネスの差別化に役立つイノベーティブな機能の実装を目指すのであれば、データベースも含めて、早い段階でOSSに対応していくことが望ましいと考えます」
こうした中で、注目を集めているのがOSSのリレーショナルデータベースソフトウェア「PostgreSQL」である。トランザクション処理、ストアドプロシージャ、オンラインバックアップなど、リレーショナルデータベースとして必要な機能がそろっている他、少ないリソースでも稼働するコンパクトな設計、さまざまな商用パッケージ製品との連携も容易といった特長が支持されている。
設立以来、20年以上に及ぶコミュニティ活動も活発だ。PostgreSQLの価値向上を目的に、世界中の技術者たちがプログラムを改善・チェックし続けているため、常に一定以上の品質・信頼性を担保している。OSSのリレーショナルデータベースソフトウェアとしては「MySQL」も挙げられるが、“ベンダー非依存”というOSSとしての基本的な魅力や、上記のような特長から、PostgreSQLは近年急速にシェアを伸ばしている。ただOSSである故、使いこなすためにはそれなりの知識・スキルが求められる。
こうした状況を鑑み、富士通ではPostgreSQLをエンジンに採用したDB製品『FUJITSU Software Symfoware Server(PostgreSQL)』(以下、Symfoware Server(PostgreSQL))を提供している。
「PostgreSQLはメリットも多い半面、データベースとして最低限必要な機能とライブラリのみをそろえたシンプルな構成であり、その他に必要な機能があれば、別途、他のOSSを組み合わせて使う仕組みになっています。例えば、PostgreSQLに他のOSSを組み合わせる場合、その設定・運用が煩雑なことに加え、各OSSのバージョン間の動作を検証しなければならず、ビジネス用途で活用するには高い技術力が必要となります。そういった課題に対し、富士通では独自技術と高品質なサポートを組み合わせ、スキル、ノウハウを問わず、PostgreSQLの多くのメリットを享受できるようにしました。エンタープライズ用途でも『本当にやりたいこと』を手軽にかつ安心して実現できるデータベースへと進化させているのです」
Symfoware Server(PostgreSQL)では、ビジネス用途に十分耐えられるよう、PostgreSQLのビジネス利用上の課題を補完するため、「信頼性・安全性」と「性能」を強化している。
「信頼性・安全性」の強化では、ビジネスに不可欠な高度なデータ保全を実現するために、暗号化、冗長化、災害対策の3つを実装。
まず暗号化では、アプリケーションを改修することなくデータを暗号化できる透過的暗号化を採用。クレジットカード業界のセキュリティ標準、PCI DSSに対応し、情報漏えいを防ぐ強固なセキュリティを実現している。
同時に、暗号化・復合処理をCPUで処理するAES-NIに対応。チップセットを利用することで、処理にかかるオーバーヘッドを最低限に抑えるとともに、データ暗号化を高速化した。一般に、商用データベース製品に暗号化機能を追加すると高額になりがちだが、Symfoware Server(PostgreSQL)はこの透過的暗号化機能を標準搭載しているため「安価に安全性を高められる」としてユーザー企業の評価も高いという。
次に冗長化機能では、共有ディスクによるクラスタ方式と、2台のデータベースサーバを完全に二重化するミラー方式を用意。また、更新ログの出力先を二重化する機能も搭載し、ディスク故障時でも最新の更新ログの損失を防ぎ、最新状態へリカバリできる。
「PostgreSQLにも冗長化機能は存在しますが、別のOSSを組み合わせる必要があるため、OSS全体の高い知識が求められます。Symfoware Server(PostgreSQL)のクラスタ方式ではこの問題を解決するとともに、データベース障害までも検知し、アプリケーションの接続先を自動的に切り替えることができます。またミラー方式では、冗長化の構成をシンプルにすることで、設定や運用の煩雑さをなくし、導入の容易性を高めています。これらをシステムの用途や規模に合わせて自由に選択できるため、導入・運用が容易です」
そして災害対策では、マルチプラットフォーム間をつなぐデータ連携製品を活用することで、遠隔地のデータベースへ高速にレプリカを作成することができる。
「性能」の強化については、並列SQL処理機能の実装が挙げられる。これは、サーバーに搭載されたCPUを有効に活用し、SQL処理の検索に加え、集計も並列で処理する富士通の独自技術だ。コアを投入して処理の多重度を上げていくことで、定期集計バッチ処理を効率よく実行できる。富士通で実測した1例では、他社データベースに比べて約2倍の速度が得られているという。
また昨今はビッグデータ/IoTトレンドを受けて、「OLTPシステムで扱う大量データを集計・分析したい」というニーズも高まっているが、これに応えている点もSymfoware Server(PostgreSQL)の大きな特長だろう。具体的には、トランザクション処理に向くとされる従来の「行形式」のデータ格納方法に加え、集計・分析処理に向くとされる「列形式」のデータ格納方法にも対応。さらに、行形式データの更新を列形式データに自動で反映するとともに、専用メモリ上にデータを展開する仕組みとすることで、他業務への影響を抑えながら、OLTPシステムにおける大量データのリアルタイム集計・分析を可能としている。
前述のように、こうしたエンタープライズレベルの信頼性、安全性、性能を商用データベース製品で確保しようとすれば、コストは青天井になりがちだ。一方で、OSSで確保しようとすれば、それなりの高いスキル、ノウハウが求められる。その点、Symfoware Server(PostgreSQL)ならば、“検証済みのPostgreSQL機能強化版”をより低コストで入手できるため、コスト、スキル、ノウハウに制約がある多くの企業にとって、「OSS導入の理想的な第一歩」となるのではないだろうか。
また、OSSの懸念点としてサポートも挙げられるが、Symfoware Server(PostgreSQL)なら富士通ならではの手厚い長期サポートを受けられることも大きな魅力だろう。他社の場合、製品の最終リリースから5年でサポート期間が終了するのが一般的だが、同社の場合、販売終了後5年間のサポートはもちろん、最短でも出荷開始から7年間はサポート。さらにユーザー企業の要望に応じて任意の期間を延長できる「延長サポート」も用意している。実際に、10年以上サポートを利用し続けているユーザー企業も少なくないという。
保守サポートについても「できるだけ長く使いたい」という顧客のニーズを反映し、「長期サポートサービス」を用意している。長期サポートサービスでは、PostgreSQLがバージョンアップされたとしても、顧客の要望に応じ以前のバージョンもサポートする。何らかの問題が起きた際、使用しているバージョンでは解決策がコミュニティから提供されないような場合は、PostgreSQLに精通した富士通のエンジニアがソースコードレベルまで踏み込んで解決策を提示する。
“あんしん”運用を支援するワンストップサポートを提供していることも大きな特長だ。長年、多数のミッションクリティカルシステムを支えてきたサポートノウハウを基に、24時間365日、年間約10万件の問い合わせに対応しているという。複数拠点体制のため、災害時でも他拠点からサポートを引き継いで対応できる点も大きな強みだ。
もちろん、PostgreSQLコミュニティと密接な関係を築いていることは言うまでもない。同社では10年以上にわたり、機能追加や障害修正、コミュニティに属する他の開発者のソースコードレビューなどさまざまな貢献を果たしている他、PostgreSQLエンタープライズコンソーシアムにも理事企業として参画し、コミュニティをリードしている。
一般的に、OSSのバグ修正や機能追加をコミュニティに希望することは可能だが、必ずしも望んだ解決策が得られるとは限らない。そうした中、富士通はコミュニティとの関係が深く、豊富な知見を有することから、コミュニティでは対応できるか分からない障害にも対応できるというサポートの強みは、ユーザーにとって非常に心強いものとなるはずだ。
「OSSは、多様なツールやコンポーネントとの連携によって、安価であらゆる価値を生み出すことができます。しかし目的ごとの“ベストな組み合わせ”を見つけ、エンタープライズレベルで安定運用するのは決して簡単なことではありません。富士通は長年の経験と技術力を生かして検証を繰り返し、PostgreSQLのメリットを引き出し、安心して長く活用できるSymfoware Server(PostgreSQL)を生み出しました。実装だけではなく、日々の運用や将来的な拡張、展開、クローズまで含めたサポート体制と併せて、新しいビジネスの創出、差別化に大いに貢献できると確信しています」
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2016年6月29日