「転職には興味があるが、自分のスキルの生かし方が分からない」「自分にはどんなキャリアチェンジの可能性があるのだろうか?」――読者の悩みに応えるべく、さまざまな業種・職種への転職を成功させたITエンジニアたちにインタビューを行った。あなたのキャリアプランニングに、ぜひ役立ててほしい。
「最初に入った損保系システムの保守を担当する会社は、いわゆる堅いシステムを運用しており、トラブルに厳しい環境でした。優秀な人が多く集まっていて、たくさん学ばせてもらいました」
社会人10年目でe-Janネットワークスに転職し、技術グループのメンバーとして働く野上雅洋さんのキャリアの道程は、場所も働き方もかなり振れ幅の広い“紆余(うよ)曲折”を経たものだった。淡々と語る言葉の裏には、全ての経験を血肉として生かす努力家の姿があった。
【転職者プロフィール】
野上雅洋さん(35歳)
e-Janネットワークス 技術グループ(2013年1月入社)
【転職前】
SI企業でのインフラエンジニア、起業、コールセンターオペレーター、外部協力会社として「カチャット」の技術担当など、さまざまな仕事を経験
↓
【転職後】
e-Janネットワークス 大阪支社にて、技術グループのメンバーとしてカチャットの導入支援・技術サポート周りを担当。クライアントに最も近いエンジニアとして、社内外からの信望が厚い。趣味は「投網(とあみ)」
野上さんの経歴は特殊だ。大阪の大学で理工系を専攻し、卒業研究でVisual C++を使ったキーボードレイアウトのカスタマイズプログラムを制作。その流れで東京のSI企業へ就職した。
「いろいろな勉強ができましたが、その企業はいわゆるブラック系でした。もう少し具体的にいうと、上司が下に全部仕事をさせて、本人はフリーセルで遊んでいるような」と野上さんは苦笑いする。それが原因になったかどうかは定かではないが、入社3年目で野上さんは、ちょっとした冒険の旅に出た。
「きっかけは『起業しようか?』という言葉でした」――野上さんは、友人と共にITとは無関係なサービス事業を運営し始めた。「会社の運転資金を稼ぐため、実務は知人に任せ、私は通信系のコールセンターで働きました。一度はコールセンターを経験したいと思っていたので」と当時を振り返る。しかし、起業はうまくいかず、約1年で事業から手を引くことになった。
2007年、野上さんは大阪に戻り、就職先を探し始めた。悲壮感の漂うUターンではなかったという。
「決して『東京に疲れた』ということではありませんでした。1回地元に戻って働くのもいいかな、と思って。それに、友人から『バンド活動を再開しないか』とも誘われていましたし(笑)」。
大阪に戻り、携帯電話キャリアのアンテナ設置に携わる会社に勤めつつ、バンドで作曲を担当。しかし音楽活動が花開くことはなく、起業同様こちらも1年程度でフェードアウトしてしまう。
そのとき、野上さんに転機がやってきた。
「当時お付き合いしていた人と結婚の話が出まして、『正社員にならないと』と考えました」
「やってみたかったこと」を一通り経験した野上さんは、自分の好みや強みを勘案して、IT系の仕事に焦点を定め、2008年6月、大阪のソフトハウス企業に就職した。
「働く以上、『お金』はとても重要です。給与水準が良い会社で働くためには、これまでやったことを生かせる、経験のある仕事がいいと考えました。もともとPCに触るのが好きでしたので、『向かうべきはITだ』と思いました」
野上さんが入社したのは創業間もない小さな企業で、メンバーはまだ少なく、社員番号は15番だった。「社長が『目指すは株式上場』といつも言っていて、頑張ればうまくいくかもと思いました」と振り返る。
最初は大手通販会社にインフラ担当として派遣され、IBMのAS400やダム端末があふれる環境で、IAサーバの管理や古いサーバのリプレース作業に従事した。「運用を楽にするスクリプトを作ったりしました。1社目でやっていたことが、ここで生かせました」と話す野上さん。
「このころ目指していたのは『課長』でした。ミュージシャンのスガシカオさんが、デビュー前に一般企業で課長になっていたことを知りました。そこで、『自分もまずは課長になろう』と努力し、結果、課長になりました」
さらにこの時期、簿記二級も取得した。「社会人に必要なスキルは、ITと英語と会計だと思った」からプライベートの時間に勉強したという。実は野上さんは、起業やバンドデビューにチャレンジする裏でしっかりと勉強を続けていたのだ。
そして野上さんは、とあるプロダクトに出会う。それがe-Janネットワークスのリモートアクセスサービス「CACHATTO(カチャット)」だった。
当時はまだe-Janネットワークスの拠点は東京にしかなく、野上さんが在籍していた企業は、そのサービスの大阪での技術パートナーとして機能していた。カチャット導入に関わる技術サポートを担当していた野上さんは、製品の魅力を感じることが多々あった。そんなある日、「e-Janネットワークスが大阪に事務所を構える」という話を聞いた。
「カチャットはお客さまから評判が良くて、売り上げも高かった。それに『e-Janネットワークスは技術者が優秀』という話も聞いていたので、そういう場所で働きたいと徐々に思うようになりました」と野上さんは振り返る。
今まで働いてきたどの会社も、状態が悪くなると優秀な人からいなくなった。その様子をじっと見てきた野上さんは、「優秀な人が辞めないところで働きたい」と切実に思っていたのだ。
そして野上さんは思い切った手段に出る。e-Janネットワークスの代表取締役、坂本史郎氏に“直談判”したのだ。
「お話したことがあったので、直接電話してみました。採用は正しい経路で、とのことで、最終的には普通に転職支援サイト経由で応募しましたが、話は聞いてくれました」。野上さんの意気込みが伝わったのか、この転職ストーリーは成功する。
転職して、どのような変化があったのだろうか。
それまでは社外の人としてサービスに関わってきたが、サービスを作る側に回って、見え方が大きく変わったと野上さんは話す。
「外からはスマートに働いているように見えましたが、開発や運用の現場は泥臭いものでした。雲の上の存在のようだったスターエンジニアたちが、いろいろなお客さまからの要望に必死に応えている姿も見えました」
現在、野上さんはシステムエンジニアとしてカチャットを支えている。顧客要望を吸い上げ、開発メンバーに適切に伝えることも行っている。「お客さまの要望を拾い上げ、その熱意を実装につなげる。お客さまと開発をつなぐのが自分の仕事です」と野上さんは述べる。テスト手法を考えたり、要望を点数化して客観視できるような工夫したりする姿は、技術グループからの評価も高いとのことだ。
「熱意をそのまま伝えるよりも、例えば『20社から要望がありました』と数で表現した方が説得力があります。そうやって自分で『把握』して、周囲に『納得』してもらう工程がとても好きです」
この転職において、e-Janネットワークスの代表取締役、坂本氏の存在は大きかったと野上さんは話す。坂本氏は毎日社員全員の「日報」を読み、きちんとコメントを付けて「朝メール」として全員に発信しているという。
「自分は大阪にいるので、毎日しっかり読むようにしています。いろいろな話があって触発されることも多いのです」
坂本氏は社員からは「史郎さん」と呼ばれている。「史郎さんは社員が気持ちよく仕事できる環境を作ることを重視しています。こういうことを本気でできる経営者はあまりいないのではないでしょうか」と述べる。
「史郎さん」は野上さんの「望み」の答えでもあった。
「社風は会社選びのポイントになりました。e-Janネットワークスは、史郎さんの信念が社風になり、それに共感した人たちが集まっています。それは、重要な社員が辞めないことにつながっています。史郎さんのためなら頑張れると思っている人が多いと思います」
多くの出会いときっかけが、いまの野上さんを作っている。
「仕事以外でも、新しい分野に興味を持ち、興味を持った分野はネットや書籍などからできる限りの情報を収集して把握するようにしています。最近は『投網(とあみ)』に凝っています。先日は取った魚を家族で食べました」と、行動を起こすのも速い。
4回の転職と1回の起業を経て、野上さんはe-Janネットワークスにたどり着いた。彼の経歴書の行数には、どれひとつとして無駄なことはない。全てが経験として昇華され、全てが今につながっている。野上さんは今、「優秀な人が辞めない会社」で学びの日々を送っている。
募集には多数の応募があり、より高いスキルをお持ちの候補者もいたのですが、野上さんからは、それまで携わってきた業務にとても意欲的に取り組んできたことが面接を通してはっきりと伝わってきました。それが採用の決め手です。
そして、その判断は間違っていなかったと実感しています。
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提供:株式会社マイナビ
アイティメディア営業企画/制作:@IT自分戦略研究所 編集部/掲載内容有効期限:2016年7月31日
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