ジェナは、モバイルやロボット、ウェアラブルなどのデバイスなどを活用した新しいIoTサービス、ビジネスの創出をサポートするアプリケーション開発ベンダーだ。国内最大規模のスマートフォン・タブレット向けアプリ開発実績を有し、特にスマートデバイスならではの優れたUI/UXを実現するクリエイティブが評価されている。代表取締役社長の手塚康夫氏によれば、「ジェナが提供するIoTは、従来の数値化が容易なセンサー情報に加えて、人の言語や感情など数値化が難しい、人間を取り巻く環境を対象にした、これまでにない情報を取り扱っている。リアルな体験・サービスを提供できる仕組みだ」という。それを支えるのがIBMのコグニティブテクノロジーを採用しているIoTプラットフォーム、「IBM Watson IoT Platform」だ。同社は、Watson IoT Platformを活用して、どのようなサービスを開発・提供しているのだろうか。
近年、これまでにないほど多くの先進的なIT技術が世に登場し、さまざまな企業がこぞって取り組み、新しいビジネス・新しい顧客価値を創造しようと躍起になっている。モバイルデバイスやクラウドサービス、SNSやビッグデータ分析など、魅力的な技術が多い中、特に関心が高まっているのが「IoT(Internet of Things)」だ。
IoTは、産業機器などに取り付けられたセンサーからの情報をリアルタイムに分析してフィードバックし、機械が自律的に生産性の向上を図る「M2M(Machine to Machine)」の流れを組む技術であるが、その広がりは大きく異なる。インターネットを活用し、あらゆるモノがオープンにつながっていくこと、そのつながりを新しい価値の源泉とするのがIoTだ。
しかし、ジェナの代表取締役を務める手塚康夫氏によれば、IoTはもっと大きな広がりを持つものであるようだ。「IoTで取り扱われるデータは“モノ”だけから取得するのではなく、人の言動や感情、そして人を取り巻く環境全体まで広がります。従来のITで取り扱われるデータ、そこから得られるユーザーエクスペリエンス(UX)は、PCやモバイルの画面の中に閉じたものでした。しかし、実際に人を動かすのは外部環境との関わり合いや、コミュニケーションを通して得る感情や感覚です。その時の状況に即したサービス・情報を最適なタイミングで提供されてはじめて、顧客は“良い経験をした”と感じるのです」。
初期のIoTは、M2Mのイメージが強いためか、前述のような産業機器・工場機械などで利用する重厚長大なものばかりが注目されており、気軽に取り組めるようなものではないと考えられていた。ところが手塚氏が率いるジェナでは、そのような考え方を取り払い、広く普及しているモバイルデバイスとクラウドサービスを活用して、企業が簡単かつ迅速にIoTに取り組めるサービスを展開している。今まで適用領域や投資対効果の観点からIoTの推進が難しかったさまざまな業種、例えば、リテールやサービス業など多岐にわたる産業の企業が、コンシューマーに直接働き掛けることができるIoTを目指している。
ただし、単にモバイルデバイスをIoTセンサーとして活用するだけでは、単なる数値データしか得られない。しかし、実際の人とのコミュニケーションは、感情や感覚に依るところが大きい。
「こうした人が作り出す感情や感覚、いわゆる“文系のデータ”を扱うことが新しいIoTのカタチです。それを実現する手法として最も期待できるのが“コグニティブ”の分野だと考えています。機械が人の心の動きや考えを分析して、最適なサービスを提供するのです。この分野で、実際のプラットフォームとして最も進んでいるのが『IBM Watson IoT Platform』です。当社では、Watson IoT Platformを活用したサービスを提供しています」
2006年にモバイルアプリの開発ベンダーとして創業したジェナの強みは、極めて迅速に開発し、できる限り早く見える化する点にある。
現在のIoTは、まずデータを可視化してみることが重要で、何が起きるか、何が得られるかはやってみなければ分からない状況にある。手塚氏は、「従来のIT開発のように大きなコストを掛けて鈍重な開発を行うことはできません。モバイルやクラウド、そしてWatson IoT Platformをフル活用して、素早く安価にビジネスを推進することが求められているのです」と述べる。
そのスピード感こそが、ジェナが提供するIoTサービスやWatson IoT Platformの価値というわけだ。
ジェナが提供するIoT関連サービス紹介しよう。2014年にリリースされた「Beacapp」は、Beaconデバイスをスマートフォンアプリで検知し、ユーザーへ位置情報と連動したコンテンツやアクションを提供するためのアプリを簡単に作成できるBeacon管理プラットフォームサービスである。
例えばビル管理などの現場であれば、点検項目や点検箇所を管理対象の機器に近づくだけで自動的に表示する。これにより、作業の効率や正確性を高めることができる。オフィスの出退勤、受付業務などを自動化することも可能だ。多数の顧客が集まるショッピングモールや多数の来場者が集まるイベントなどであれば、ユーザーの行動を収集・解析することで的確なサービスをリアルタイムに提供できるようになる。
もともとBeacappは、Beaconのデータを収集・蓄積して可視化するためのサービスだ。詳細な分析をしたい場合には手動で分析を行うか別のシステムを用いて分析を行う必要があった。2016年7月現在の最新バージョンではWatson IoT Platformと連携することで、データ収集から分析、アクションまでをリアルタイムに提供することが可能となった。
「例えば、2015年の東京モーターショーでは、約600台のBeaconデバイスを設置して来場者のナビゲーションや混雑具合を可視化するヒートマップを表示する公式アプリのインドアマッピングサービスを提供しました。実は開会する直前までアプリを調整していましたし、会期中にもデータを見ながらリアルタイムに修正を加えたりしていました。開発のリアルタイム性も、私たちが考えるIoTの重要なポイントです」
「Watson IoT Platformと連携するシステムは開発が容易で、結果を見てアプローチを変えたり、開発現場で思い付いたことをその場で反映させたりすることができます。そのため、リアルタイムなアプリ開発にはWatson IoT Platformは最適なサービスです」
2つ目は、「ロボティクス」だ。ロボットは人とシステムとのインタフェースとして、急速に進化を遂げてきた。ジェナでは、ロボットとユーザーとのやりとりをシナリオから企画・演出、ユーザーインタフェースやUXまで、トータルでコミュニケーション・デザインを提供する。
ジェナの開発方針の2つ目は、“より良いUXとは何か”を考えることからスタートする点にある。このとき、センサーが収集する数値化しやすい文字やテキストなどの各種データや、システムと連携して取得が可能な顧客情報など、いわゆる“理系のデータ”から得られるUXももちろん重要だ。しかし手塚氏は、「言語や感情などの“文系のデータ”、人を取り巻く全てのデータを併せて活用することが重要」だと述べる。
ロボットのインタフェースを通じて、各種センサーの情報から性別や年代の情報を取得したり、ユーザーの会話内容をWatsonにより分析し、怒りや喜び、悲しみなどの感情をつかむ。それらの条件に応じて、最適なコンテンツを提供することで、より高度な接客サービスを提供できるようになり、顧客体験が向上するという。
3つ目の代表的なIoTは、「ウェアラブル」デバイスの活用。現在ではさまざまなベンダーがウェアラブルデバイスを開発し、サービスの提供を開始している。ジェナでは、Apple Watchやその他さまざまなウェアラブルデバイスからのデータ取得と、Watson IoT Platformによるリアルタイム分析・コグニティブ技術を組み合わせて、既にさまざまな領域でイノベーティブなサービスを提供しているという。
例えば、読売新聞社・読売ジャイアンツなどの協力で2016年3月に開催された「ジャイアンツハッカソン」では、ウェアラブルデバイスで観客の応援時の活動状態を測り、会場の盛り上がりを可視化するアプリ「TOHKON COUNTER」を発表している。このTOHKON COUNTERもWatson IoT Platfromを活用することにより、大人数のユーザーから大量のデータをウェアラブルデバイス経由で取得して、リアルタイムにアプリと連動する仕組みを簡単に実現している。
2020年には東京オリンピックが開催され、多くの観光客が訪れる。そのとき、ジェナが開発したようなワクワクするサービスが、スポーツ観戦や日本での滞在をより楽しいものへと進化させるのではないかと期待できる。IoTとWatson IoT Platformは、本当に新しいUX、新しいビジネスを創出するものなのだ。
今では、あらゆる企業がIoTへ取り組もうと真剣に考えている。手塚氏の述べるように、IoTは、重く、大きく、取り組みにくいものではない。スマートフォンなどのすでに普及しているデバイスと、Watson IoT Platformのように使いやすいクラウド上で提供されるサービスを活用すれば、素早く柔軟にビジネスを開発できる。
手塚氏は、従来のアプリケーションはデバイスの中に閉じた2次元のものが多く、文字や画像のようなデジタルの情報に対して、デジタルな情報を返すものにすぎなかったと分析する。ジェナが提供するIoTサービスは、アナログからデジタルへの変換、アナログなデバイスの外の世界、現実の空間とデジタルなデバイスの中の世界をつなげるようなものだ。
従来はセンサーやデバイスを経由してテキストや画像などの数値化しやすいデータのみがIoTの要素として扱われていたが、今後はロボットなどを介した会話などの自然言語データ、それから分析される人の感情・感覚などの要素も併せて考慮することにより、IoTで新たな発見と価値を生み出せるようになるだろう。この要素を追加するのに必要な仕組みがコグニティブ──IBM Watsonというわけだ。
「当社はアプリケーションの開発を得意とするベンダーで、プラットフォームやセンサーの提供に強みを持っているわけではありません。その点で、Watson IoT Platformを取り巻くパートナーのエコシステムは、活気あふれる古き良き町の商店街のように、さまざまな得意分野を持つプレイヤーが参加するエコシステムが形成されています。私たちは、さながら料理人のように、商店街にあるそれぞれのパートナーが持つ最高の食材を用いて、素早くビジネスという料理を作り、仕上げるのです。これからのIoTは、1社だけで全ての材料を調達して調理するのではなく、さまざまなパートナーと連携して最適な食材を持ち寄って、最高の料理を実現することが求められていきます。その点でWatson IoT Platformには、さまざまなプレイヤーが連携して、IoTを実現できる環境が整っているのです。それが大きな魅力だと感じています」
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2016年8月20日