ハイパーコンバージドインフラ製品はなぜ注目されているのか、そして、仮想化環境の導入作業における、「第一世代製品」と「第二世代製品」の違いを、具体的に説明する。
ビジネス環境の急激な変化に伴い、企業における業務システムのためのITインフラに、様々な課題が浮かび上がってきている。
全体として、ビジネス要求に即座に対応できる柔軟性が強く求められるようになってきた。既存・新規を問わず、アプリケーションのデータが突如として急増を始めるような状況にも対応できなければならないとされる。一方で、運用管理の複雑化やコストの肥大化を回避しなければならない。コストについては逆に、不断のスリム化が求められている。
これらの課題を解決する次世代のITインフラとして注目を集めているのが、「ハイパーコンバージドインフラ」だ。
従来のITインフラは、サーバハードウェアと専用ストレージを別々に用意し、システムを設計・構築する必要があった。これに対して、ハイパーコンバージドインフラでは、サーバとストレージを一体化して1つのノードとし、複数のノードでクラスタを構成するシステムとなる。物理的に必要となるのはサーバハードウェアのみで、専用ストレージは不要。サーバ内のローカルディスクをソフトウェアで統合し、共用ストレージとして活用する仕組みだ。
これによって、システムの拡張性、柔軟性は大幅に向上し、運用管理の簡素化やコスト削減も図ることができる。
導入時における、サーバ機とストレージ装置を組み合わせた構成作業は不要となり、仮想化環境を即座に展開できる。運用についても、個別の装置を管理するというより、環境を制御する感覚で実行できるようになる。拡張作業も容易だ。適切な構成のノードを追加購入して接続すれば、あとは少数の設定のみで、ストレージ領域を含めて仮想化環境を拡張できる。こうした容易さ、迅速性により、ITインフラの調達のあり方を変えることができる。5年に1度などでなく、ビジネスニーズに応じて、「オンデマンド」でのITリソース投入が可能になる。
しかし、ハイパーコンバージドインフラへの注目度が高まる一方で、多くの企業は“様子見”の状況で、実際の導入にまで踏み切れていないのが実状だ。この背景には、ハイパーコンバージドインフラ製品が抱えている大きな問題が1つ挙げられる。それは、ネットワークが統合されていないという点だ。サーバとストレージが1つのノードに一体化されたとはいえ、これらノードを集約して機能させるにはネットワークの煩雑な設計作業が不可欠。ここが、ハイパーコンバージドインフラを導入検討している企業の悩みの種になっているのだ。
こうした中で、ハイパーコンバージドインフラ導入に向けた大きな障壁を取り払うべく、シスコシステムズがリリースしたのが、インテル® Xeon®プロセッサーを搭載した「Cisco HyperFlexシステム」(以下、Cisco HyperFlex)だ。Cisco HyperFlexでは、サーバとストレージを一体化しているのに加えて、ネットワークまで統合したSoftware Defined化を実現。これにより、ネットワークアダプタの構成やVLAN、QoSなど、ネットワークに関わる様々な設定作業を自動化・簡略化し、ハイパーコンバージドインフラ導入・運用のハードルを大幅に引き下げることに成功している。従来のハイパーコンバージドインフラを“第一世代”とするならば、Cisco HyperFlexは、まさに“第二世代”のハイパーコンバージドインフラといえるだろう。
Cisco HyperFlexがサーバ、ストレージ、ネットワークを一体化して提供できる背景には、同社が手掛けてきたインテル® Xeon®プロセッサーを搭載した「Cisco Unified Computing System」(以下、Cisco UCS)の存在が見逃せない。Cisco UCSは、サーバとネットワークを統合した画期的なインフラソリューションで、Cisco HyperFlexは、このCisco UCSのプラットフォームをベースにしてシステムが構築されている。
シスコシステムズ データセンター/バーチャライゼーション事業 シニアテクニカルソリューションズアーキテクトの石井伸武氏は、「当社では、2009年からCisco UCSを市場に投入し、サーバとネットワークを統合したユニファイドコンピューティングをリードしてきました。Cisco UCSは、サーバ製品の『Cisco UCSサーバ』と、ネットワークスイッチ製品の要素を持つ『UCSファブリック インターコネクト』で構成されるシンプルなプラットフォームです。統合管理ツールの『Cisco UCS Manager』を利用することで、UCSファブリック インターコネクトに接続されるCisco UCSサーバのリソースや稼働状況を最大160台まで一元管理できます。また、各サーバのネットワーク接続を最大256まで論理的に分割し、制御できる『バーチャルインターフェースカード』と、各サーバのハードウェア設定を一括して設定ファイルで行えるようにした『サービスプロファイル』により、サーバとネットワークの運用を根本的に変革しました」と、Cisco UCSのメリットを改めて訴える。
「Cisco HyperFlexは、Cisco UCSをベースに構成され、Cisco UCSで培ってきたテクノロジーを最大限に生かしながら、Software Defined Storage(SDS)によってローカルディスクを仮想化統合することで、サーバとネットワーク、ストレージを一体化した次世代のハイパーコンバージドインフラを実現しています」と、石井氏は力を込める。ハイパーコンバージドインフラにおいては、後発に位置づけられている同社だが、実はCisco UCSを通じて、他社に先駆けて次世代ハイパーコンバージドインフラに向けた土台を築いていたのである。
Cisco HyperFlexでは、ハイパーコンバージドインフラの導入をより簡略化するツールとして、「HXインストーラー」を提供している。「Cisco UCS Managerは、ネットワークの要素管理と共に、複数のサーバノードを一元管理する機能を備えていますが、導入時の設定は慣れないと少々難しいところがありました。そこで、HXインストーラーを新たに提供することで、機材の設置・配線後から60分以内で、ネットワーク関連や仮想サーバ環境まで含めて、容易に設定を完了できるようにしました」(石井氏)という。
ここで、「Cisco HyperFlex」の設定作業がどれだけ簡単なのか、そのセットアップ手順を見てみよう。導入編では、HyperFlexの設置方法から設定、vCenterへの登録、HXクラスタの構成までを紹介する。
上のビデオをご覧いただければ一目瞭然だが、導入作業の流れを文章で表現すると、次のようになる。
ラックにHyperFlexを設置、電源ケーブルを挿し、各ノードをそれぞれ2本のネットワークケーブルでファブリックインターコネクトと接続する。各ノードのネットワーク接続は、その後HyperFlexクラスタを拡張したとしても、変更する必要はない。
HyperFlexインストーラーからCisco UCS Managerを立ち上げると、ネットワーク接続により自動検知済みのHyperFlexノードが表示される。設定したいノードを選択し、ネットワーク情報を入力すると、自動的に初期設定が行われる。初期設定に要する時間は約3分だ。初期設定が終わると、自動的に対象ノードでハイパーバイザのVMware ESXiが起動する。そこでvCenterにこれらのノードをホスト登録する。
最後はストレージを中心としたHXクラスタの構成だ。各ノード、HXクラスタ、vCenterなどの情報を入力する。これで作業は終わりだ。あとは30〜40分待つだけで、導入作業は完了する。
導入がどれだけ簡単か、お分かりいただけただろうか。
今、ハイパーコンバージドインフラの導入を検討していながら、最後の一歩が踏み出せていない企業にとって、シスコが提案するCisco HyperFlexは、その課題解決へのベストプラクティスといえるだろう。“第二世代”のハイパーコンバージドインフラで、ビジネス上の変化への柔軟な対応が、本当の意味でできるようになるはずだ。
(後編はこちら)
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提供:シスコシステムズ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2016年9月21日
機動的なITインフラの実現を目的として、「ハイパーコンバージドインフラ」製品の導入を考える企業は明らかに増えてきた。だが、真剣に検討したものの、導入にまで至らないケースも多い。理由は既存のハイパーコンバージドインフラ製品が、ユーザー企業の求めるものに対してミスマッチになっていることにある。
ハイパーコンバージドインフラでは、運用の簡素化および負荷軽減が重要なテーマだ。だが、製品によってその中身には大きな違いが見られる。Cisco HyperFlexでは、運用負荷がどのように、どれだけ軽減できるのだろうか