後半の「ガチンコ対決」パネルディスカッションには、アイティメディアの三木泉をモデレータに、各ストレージベンダーが擁するエバンジェリスト6人、EMCの三保尚澄氏、IBMの佐野正和氏、NetApp/SolidFire担当の大削緑氏、Nimbleの江川学氏、Pureの志間義治氏、Tintriの東一欣氏が登壇。昨今のフラッシュストレージ製品における最新事情とともに、「性能」「性能以外の機能(データ管理機能、運用管理機能、サボート体制など)」「コスト」の3テーマについて、某討論番組『朝まで〜』のような濃い討論が交わされた。
「IOPSやレイテンシなどカタログでの公表値が各社異なる。そもそも比較しにくいが、これをどう思うか? 本当にこんな状況でいいの?」と、三木はいきなり各社が答えにくそうなお題を投げかけた。
IBMの佐野氏は、「IOPSの値は、それがほしい人にだけ意味のある数字。その数字だけに戸惑わされてはいけない。そもそもユーザーは、自社のシステムのIOPSがどのくらいかを知らない人のほうが多いでしょう。まず、自社の環境のヘルスチェックを行い、今後のシステムに、どのくらいIOPSが必要になるか知ることが大事」と指摘した。
Pureの志間氏も、「IOPSの絶対的な値をクルマで例えましょう。子どもの送り迎えをするクルマがF1カーである必要はありません。フラッシュストレージ選定の考え方も同じです。Pureはこのユーザー目線に沿った指標として、ミックスドワークロードに多い32KBのブロックサイズでのIOPSを重視しています」と話す。ユーザーの環境に合わせた測定による指標の掲示が必要との考えだ。
また、Nimbleの江川氏も「自社の環境に適したIOPSを知るといっても、なかなか難しいはず。そのためにNimbleでは、クラウドベースの予測分析ソフトウェア“InfoSight”を用意して、ストレージだけではなくインフラ全体の監視をし、ストレージが起因しない原因も特定できるようにしています」と、運用面を想定した全体的なメリットや効果で考えてほしいと強調した。
一方、アーキテクチャの違いにも注目すべきと提言したのがEMCの三保氏だ。「ストレージの総合的な性能は、コントローラーとSSDのバランスだと思っています。例えば最近ではSSDモジュール単体のコントローラーの性能も高まっています。それに処理を効率的に委譲する工夫によって、トータルで性能を上げることができます。XtremIOでは、この概念を用いた“X-Brick”を基本単位とし、これを追加してスケールアウトしていけるアーキテクチャであるのが大きな違いです」と述べる。X-Brickの単位を追加した分だけリニアにスケールできること、そして、一般的にIOPSが上がると増えがちなレイテンシを1ms以下に抑えられるという「レイテンシが落ちない性能メリット」をアピールした。
一方、IOPSを公表していないTintriの東氏はこう切り返す。「Tintri製品は仮想環境専用ということもあり、IOPSは公表していません。仕様としては、リード/ライトの半々を1つの指標として性能測定しています。ちなみに、速度評価においては、ブロックサイズだけでなく、ノード単位やLUN(Logical Unit Number:論理ユニット番号)単位で把握できるかといった視点も必要ではないでしょうか」。
さらに、NetAppの大削氏も「ユーザーのワークロードが多様化している昨今、やはり用途に応じて使い分けるのが大事です。SolidFireは1つ1つのワークロードを見ることができるのが大きな特徴です」と、製品単位ではなく、ワークロードに合わせて性能を最適化できる強みで応酬する。
確かに、仮想環境における「ノイジーネイバー」の問題や、SSDでのガベージコレクション、SSDとコントローラーの処理の分担など、フラッシュストレージ特有の性能問題がある。これに対して、各社がさまざまな技術で解決に取り組んでいるポイントが、言い換えるとその製品の強み/特長となる。この特長に対して、自社のワークロードがどれだけマッチするか。ここを考えることが製品選定に向けたヒントになりそうだ。
第2ラウンドは、「性能以外の機能」の強みについて。まず「圧縮と重複排除機能」はどうか。
圧縮と重複排除機能について、IBMでは機能ごとに製品のラインアップを分けて提供している。つまり、全ての製品に備わっているわけではない。この理由についてIBMの佐野氏は、「顧客の環境によっては、圧縮や重複排除がまったくといっていいほど効かないケースがあるからです。効果のないワークロードならば、その分コストも無駄ですよね。使いたいワークロードにだけに使っていただく/用意するという発想で製品をラインアップしています」と述べる。
Nimbleの江川氏は、「InfoSightの統計データから、圧縮機能は平均して1.5倍の効果があることが分かっています。Nimbleは特に重複排除に自信があり、また使い分けについても重複排除を自由にオン/オフできるようにしています」と、使い分けによって柔軟に最適化できる機能の強みを説明した。
これに対し、EMCの三保氏は「EMC製品は、圧縮や重複排除のオン/オフ機能はありません。常にオンです。なぜならば、そもそもフラッシュ前提の設計で作りこまれているからです。スケールアウトに欠かせない技術です」と話す。Tintriの東氏も、「Tintri製品も、圧縮/重複排除は常にオン。DR(Disaster Recovery:災害復旧)用途にフラッシュストレージが使われるケースも増え、重複排除のニーズはむしろ増しています」と、ビジネス面でのメリットが大きいことをアピールした。
続いてPureの志間氏も、「重複排除のデータの切り方を512バイトとしています。他社の4KBや16KBより小さく、障害率が低いことがポイントです」と同社製品の強みを説明する。
続いて「データ保護機能」に対する違いはどうだろうか。
口火を切ったPureの志間氏は、「NANDフラッシュメモリは消耗デバイスです。そのため、いつかは壊れてしまうことを想定した考え方と、それを補完する機能が必要です」という。データをどのように保護するかの機能については、製品選定における重要な指標になりそうだ。
続いて、Nimbleの江川氏が「Nimbleは、トリプルパリティRAIDにおいて最大3台の同時障害に対応できます。また、この構成においても物理容量に対して7割を使用可能とするなど、実効容量が大きく減らないことも強みです」とアピールすると、一方のTintriの東氏が「Tintriは、パリティこそダブルだが、チェックサムで制御することで信頼性をより高めています」と、自社製品ならではの特色で対抗する。
SolidFireやEMCは、RAIDを使わずにアーキテクチャレベルで信頼性を担保していることを特徴に据える。まず、NetAppの大削氏が「SolidFireは、データ格納時に細かいブロックに分けて、ストレージノード全体に分散する仕組みとしています。そして、万が一の障害発生時には、“セルフヒーリング”機能で自己修復し、高速にリビルドできるのが強みです」とアピールすると、EMCの三保氏も「XtremIOにも、“XDP”と呼ぶ柔軟性の高いデータ保護の仕組みがあります。XDPは、容量効率がよく、RAID 6以上の信頼性を確保できます」と独自技術の強みを訴える。
この他、運用管理に関しても、Nimbleの「InfoSight」や、Pureの「予防検知サービス」、Tintriの「データ分析機能」など、各社それぞれがポイントをアピールした。製品選択においては、性能だけでなく「導入後の運用管理のしやすさ」も含めて考えることが肝要だ。モデレータの三木は、「自社の状況をモニタリングした上で、性能/実効容量/データ保護機能/運用サービスなどを検討していくことが望ましい」と、このラウンドを締めくくった。
第3ラウンドは、「あらためて“コスト”をどう考えるべきか」。
フラッシュストレージ刷新の目的は、選定や導入ではなく、ビジネス視点で見た「自社のビジネス躍進に貢献すること」であることを忘れてはならない。しかし、当然だが予算には限りがある。それを踏まえて、各ベンダーは「コスト」面でどんなアプローチで提案してくれるのだろうか。
3次元NANDへの移行で、フラッシュの容量単価は一層下がるだろう。圧縮と重複排除などの効果を踏まえつつ、今後数年単位のトータルコストで計算すると、既に容量単価がHDDと同レベルになったとうたう製品もある。そこでお題は、「単にHDDの置き換えとして考えるだけでは、フラッシュの魅力や効果を十分に引き出せないといわれる。それについて皆さんはどう考えているか?」とした。
まず、IBMの佐野氏は「それが、本当に役に立つかどうかに尽きるでしょう。フラッシュに置き換えれば、ディスクI/Oはこれまでより確実に高速になります。しかし、処理の9割がCPUで行われ、ディスクI/Oがほとんどないシステムをフラッシュ化しても意味がありません。自社のワークロードと製品の特長を理解した上で選ばなければなりません。ですから、購入前のアセスメントを用意しているベンダーを選んでいただく必要があるのではないでしょうか」と、総合ベンダーとしての意義や強みを訴えた。
Nimbleの江川氏は、「フラッシュシステムへの初期投資額は、やはり高価になりがちです。だからこそ、容量を効率的に使いながら、シンプロビジョニングを行っていくことが望ましいとNimbleは考えます。適材適所で細かく導入していくために、InfoSightのようなプロアクティブなサービスを用意する当社を選んで欲しいですね」と、容量をこまかに監視し、コストを抑える工夫のある製品こそが必要だとした。
Pureの志間氏は、「“保守のコスト”にも着目してほしいですね。Pureでは、“10年以上使えるストレージ”を目指して、保守の中でディスクやコントローラーを無償交換できるプログラムを用意しています。新しい部品への入れ替えとソフトウェアのバージョンアップによって、システムの品質を保ち続けることができます」とビジネスモデルの違いを強調した。
同様に、運用管理コストの削減に寄与する製品だとアピールしたのがTintriの東氏だ。「Tintri製品は、自動QoSや可視化機能など、“管理者の負荷軽減”につながる機能もウリにしています。仮に障害があっても、どこで、どんな問題が起こっているか。これをすぐに判別し、対処できます。大規模システムながら、ほんの数人の管理者で管理している顧客もいます。いえ、自動QoS機能によって運用を一切していない顧客もいます。なぜならば、これでも大丈夫だからです」と東氏。
さらに、NetAppの大削氏は「SolidFireは、全ての機能がコスト削減に直結するアーキテクチャになっています。コモディティハードウェアを使うことで導入コストを下げつつ、スケールアウトやQoSなどで運用管理コストも下げられます。特に“セルフヒーリング機能”は、使っているお客さまのほとんどが“いい”と言っていただけている機能です。保守要員が到着するころには、ほとんどが自然に治っています。つまり貴重なリソースは、保守や管理ではなく、本業である自社のビジネス躍進のために割いていただけるというわけです」とアピールした。
もちろん、業務内容やシステム全体を俯瞰して、コストを考えることも重要だ。EMCの三保氏は「EMCでは、ストレージシステムのコストというより、業務のトータルコスト(TCO)を削減するという考え方を取り入れています。X-Brickを積むごとにどのくらいの効果が出るのか、といったコストパフォーマンス面の情報も、ダッシュボードで瞬時に分かります。“3年間の性能保証”を用意するのも、安心いただけるポイントとなるはずです。運用、消費電力など含めて、TCOを削減するアプローチには絶対の自信があります」とした。
1社10分のプレゼンテーションのあと、約1時間にわたって展開されたパネルディスカッション。それぞれ特長や強みを持つ製品でしのぎを削るストレージ製品ベンダーとあって、丁々発止のやりとりも見られ、会場は大いに盛り上がった。
2016年に入ってフラッシュストレージの動向はがらりと変わった。さまざまな用途で使える可能性が広がった半面、選択肢が増え、選定の難易度が高まった。このことから、主力ストレージベンダーのポイントや強みを「まとめてチェックできる機会」を提供した本セミナーは、「各社の製品が、“特に何をポイントにしているのか”が分かった。有意義だった」と感じた来場者が多かったようだ。
モデレータの三木は、最後に「正しいフラッシュストレージ選定の仕方とは、各ベンダーそれぞれの“特色”を正しく理解し、それが“自社のワークロードに合致するのか”を正しく見極めること」と述べ、セミナーを締めくくった。
本セミナーで語られた内容を中心に、ストレージベンダー各社のフラッシュストレージ最新情報や選定のヒントになる情報をダウンロード資料としてまとめました。ぜひ併せてご覧ください。
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提供:株式会社ネットワールド
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2016年9月30日
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