日本が、そして世界が熱狂したリオデジャネイロオリンピックでは、前回のロンドンオリンピックの2倍を超えるトラフィックがインターネット上を行き交ったという。インターネットのさらなる活用が見込まれる中、企業はどのような備えを行う必要があるのだろうか。アカマイに聞いた。
日本が、そして世界が熱狂したリオデジャネイロオリンピック。テレビの前はもちろん、PCやスマートフォンの画面から、世界中の人々がアスリートたちの熱戦を見守った。
「リオデジャネイロオリンピックでは、インターネット経由でのライブ中継が格段に増えました。各放送局やメディアがインターネットを活用し、テレビで放映した内容をインターネット経由でオンデマンド視聴できるようなサービスを盛んに展開したためです」、アカマイ・テクノロジーズ(アカマイ)最高技術責任者 新村信氏はこう振り返る。事実、アカマイが観測した範囲でも、インターネット上のトラフィック量はロンドンオリンピック時の倍に達していたという。
こうした現象は、スポーツなどのビッグイベントの度に繰り返されてきた。ライブ画像が4K/8K化し、コンテンツそのものが高品質化するだけでなく、周辺のサービスやアプリと連動し、デジタル情報を中核にした多様な付加価値サービスが展開されることで、トラフィック量は莫大になるだろう。
だが、もしそこで「動画やWebサイトが見られない」「表示が遅い」などという事態が発生すれば、事業者にとっては大問題だ。あらゆるビジネスがデジタル化された現代では、インターネットを経由してステークホルダーに、情報やサービスを迅速に提供することが求められる。日銀による過去のオリンピックに関する経済分析では、オリンピック開催年までに、累計で10%程度開催国のGDPが押し上げられるという。インターネットはそもそもが「ベストエフォート」の世界だ。誰もその品質を保証してはくれない。ではその中で安定したサービスを確実にユーザーに届け、パフォーマンスやセキュリティといった課題をクリアするには、どうすればよいのだろうか?
アカマイは、長年にわたってこれらの課題の解決に取り組んできた、知る人ぞ知る“インターネットを支える企業”だ。世界100カ国以上に約20万台の配信サーバを配置してグローバルなプラットフォームを構築し、ユーザーに最も近いところから最適化されたコンテンツを提供する「コンテンツ配信サービス(CDN)」を中心に、快適なWebを閲覧のための環境を整備している。今や、世界のWebトラフィックの15%から30%は同社経由で配信されている。同時に、この分散プラットフォームの強みを生かし、DDoSをはじめとするさまざまなサイバー攻撃に妨害されることなくコンテンツを提供できる仕組みも提供している。
アカマイが注力する領域の1つがメディア配信だ。インターネット黎明期のユーザーの中には、リンクをクリックしてから画像が表示されるまで、しばらく待たされた記憶をお持ちの方もいるだろう。しかし今は時代が違う。見たいときにすぐに動画などのコンテンツが再生されることが“当たり前”になりつつある。
一方、コンテンツの多様化、高品質化に伴い、通信負荷は増大を続けている。アカマイ・テクノロジーズ ウェブ&セキュリティ・マーケティング本部 本部長 岡本智史氏は、「ユーザー数の増加に加え、コンテンツの量も、多様なユーザーのニーズに応える形で増えています。さらに4Kや8Kのように、1つ1つのコンテンツのクオリティーそのものも上がっています」と指摘する。しかも受け手は世界中に拡散しているため、インターネットの仕組みを“そのまま”使うだけでは、どうしてもユーザーにストレスを与えてしまうことになる。
何より悩ましいのは、ビッグイベント時のワークロードは一定ではなく、想定外のタイミングで集中する可能性があることだ。「ロンドンオリンピックの際には、自転車ロードレースのインターネット配信に、想定の“7倍”のアクセスが集中したことがありました。また過去には、コンピュータ対人間の将棋対決の中継にも、予想を1桁上回るアクセスが集まりました。今後もこうした想定外のコンテンツの人気が“爆発”するなどの事態が考えられます」(新村氏)。
既に国内では、今後のビッグイベントに向けてどの程度のキャパシティーが必要かの議論が始まっているという。ただ、通信事業者やISPが単独で、想定外のトラフィックにも耐えられるインフラを構築するのは非現実的な話だ。こうした場面で、分散型プラットフォームを展開しているアカマイが強みを発揮する。多数のサーバのうち、ユーザーに最も近い箇所からコンテンツを配信することで、負荷を分散しつつサービスレベルを担保することができる。
アカマイでは、今後のビックイベントに向けたに向けた設備状況を進めている。来日する多くの観光客が活用するであろうモバイルデバイス向けに快適に配信できるよう、モバイルキャリアと協力して最適なサーバ配置を検討している他、「4Kコンテンツ配信に適したプロトコルの改良や、配信効率改善に向けたUDPの改良など、技術面でも取り組みを進めている」(岡本氏)。
こうした取り組みを通じて、「アカマイでは、正規のテレビ放送と同等のクオリティーで、ライブを安定的に見せる仕組みを備えています。これを前提にすることで、今後のビッグイベントでもあらゆるコンテンツやサービスを提供することが可能になります」と、新村氏は意気込みを見せる。
さらに、アカマイはメディアだけでなく、Webコンテンツを快適に配信できる仕組み作りにも、長年にわたって取り組んできた。
かつては、WebサイトはPCで閲覧されるものと決まっていた。しかし今や、スマートフォンやタブレット端末、それもメーカーごとに画面解像度やディスプレイサイズが異なるさまざまなデバイスからアクセスがあり、閲覧環境は多様化の一途をたどっている。多様なデバイスを利用するユーザーそれぞれに快適なエクスペリエンスを提供することが求められるが、その際の課題が「画像」だ。
岡本氏によれば、「Webサイトのデータの8割は画像」だという。だが、デバイスそれぞれに最適化した画像を変換し、それらの派生系を全て保存・管理するのは企業にとって大きな負担となる。変換ツールの活用に加え、特に配信用途の高パフォーマンスストレージはコストも高く、画像数の増加に比例して容量を消費する。
これに対しアカマイでは、派生系の作成、保存、配信を全てクラウドで提供する。そのため、これらのプロセスに関わる、工数を全てオフロードすることが可能だ。加えて、派生系の画像を、各地域に分散キャッシュするため、パフォーマンスもさらに改善する。既存のWebサイトに変更を加える必要はなく、URLをアカマイ側で書き変える仕組みだ。
「画像の作成、管理まで丸ごとアカマイが肩代わりすることによって、運用コストの削減と顧客満足度の向上を同時に実現します。インフラが世界的に広がっているため、戦略都市の近くからコンテンツを配信できます。画像の最適化だけでなく、ユーザーがどこにいても高速に利用できる点も強みです」(岡本氏)
この仕組みは、世界中からやってくるインバウンド向けの配信最適化だけでなく、日本から世界に向けた情報発信にも活用可能だ。例えばパナソニックは、それまで国ごとに運用していたコーポレートサイトの管理を、コンテンツガバナンスの観点で本社に一元化した。その上で、コンテンツを各国にスムーズに配信するためにアカマイのサービスを活用している。同様の事例が、他にも多数あるという。
こうしてストレスなく快適なサービスを提供できる環境が整っても、最後にもう1つ、大きな課題が残されている。セキュリティだ。「企業はWebサイトを通じてインターネットにつながっていますが、その接点を通じて攻撃を仕掛けてくる攻撃者がいます。アカマイはこうした攻撃に対し、コンテンツ配信と一体化されたセキュリティ対策技術で、不適切なユーザーからの攻撃を遮断しつつ、正しいユーザーにだけコンテンツを提供する仕組みを備えています」(新村氏)。
もともとアカマイは、コンテンツやWeb配信を最適化するため、Webリクエストの内容を1件1件細かく精査しながら制御してきた。そのノウハウをセキュリティ対策にも応用することで、DDoS攻撃やWebアプリケーションの脆弱(ぜいじゃく)性を突く攻撃を検出し、オリジナルのサーバに影響が及ぶ前に対処することを可能にしている。
「DDoSは攻撃を受け取った時点で“負け”です。従って“前さばき”が必要となりますが、それを実施する絶好の位置にいるのがわれわれでしょう。アカマイのサーバで通信内容を検査し、怪しいものは遮断するため、サーバ本体に攻撃が届くことはありません」(新村氏)
セキュリティ領域でも、グローバルに展開した分散プラットフォームが力を発揮する。現在、DDoS攻撃の規模は拡大の一途をたどっている。10〜20Mbps規模から数百Mbps規模のものが複数発生しており、遠くない時期にTbpsクラスの攻撃が登場するという予測まである。これは、単一の企業や通信事業者で対処できる量ではない。しかし、アカマイのインフラは約20万台というサーバで構成されているため、DDoS攻撃が発生してもセキュリティ機構がダウンする恐れはない。アカマイでは、1日当たり2兆件以上のリクエストをさばき、100億件以上の攻撃に対処しているという。
「セキュリティの管理は生き物です。われわれのSecurity Operation Center(SOC)ではこうした攻撃の動向やデータを解析し、インテリジェンスに変えて知見として活用しています。単に全てを遮断するのではなく、『このIPアドレスからのアクセスは止めよう』『こちらにはオルタナティブなコンテンツを返そう』といった具合に、IPアドレスごとの脅威レベルと顧客のポリシーに基づいて最適なコントロールが実現できます」(岡本氏)
24時間365日体制で運用しているサポートセンターを通じて顧客と連動しながら、柔軟な対応を行っている。
かつては「実験」や「趣味」扱いされていたインターネット経由のライブ映像配信も、ユーザーの拡大と技術の革新によってれっきとした「ビジネス」と位置付けられるようになってきた。
「多くの人は、インターネットでの情報提供は当たり前と思っています。しかし、日々の活動のインターネット依存度が高まり、データの流通量が増え、リアルタイム性が求められるにつれ、一筋縄にはいかない課題も次々と生まれています。アカマイは17年にわたって、インターネット上で快適かつ安全に情報を送り出すため、あらゆる課題の解決に取り組んできました。これからも、一層取り組みを強化していきます」(岡本氏)
視点を広げると、Internet of Things(IoT)やインダストリー4.0など、インターネットにつながることを前提とした新たなビジネスを模索する動きも始まっている。新村氏は最後に、「インターネットを重要な活動ができる『実用』の世界にしていくことこそが、アカマイのミッションです」と述べ、引き続きその一翼を担っていく意欲を強調した。
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提供:アカマイ・テクノロジーズ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2016年11月2日